人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは?コース一覧・助成率・申請の流れ|2026年度

人材開発支援助成金とは?コース一覧・助成率・申請の流れ|2026年度

この記事の結論

人材開発支援助成金は、研修費用の最大75%を助成する雇用保険の制度です。6コースの選び方、助成率、計画届から支給申請までの流れを2026年度の厚労省公式情報で整理しました。

人材開発支援助成金は、社員の研修費用と訓練期間中の賃金の一部を、厚生労働省が雇用保険の枠組みで助成する制度です。中小企業であれば経費助成率は最大75%、賃金助成額は1人1時間あたり最大1,000円が目安で、AI・DX関連の研修も対象に含まれます。

ただし実際には「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」など6つのコースに分かれていて、どれを選ぶかで助成率も必要書類も変わります。正直、この制度名だけで検索してもコースごとの解説記事が大量に出てきて、結局どれを読めばいいのか迷う方が多いはずです。この記事では、コースの選び方・助成率・申請の全体フロー・つまずきやすいポイントを1本に整理しました。個別の手続きの詳細は、本文中で該当する解説記事にリンクしています。

人材開発支援助成金とは — 位置づけと財源

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です(厚生労働省パンフレット「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」令和8年5月14日版より)。財源は雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)にあたるため、雇用保険適用事業所であることが前提になります。

「補助金」と「助成金」はよく混同されますが、一般的にIT導入補助金ものづくり補助金のような補助金は予算の範囲内で審査を経て採否が決まるのに対し、人材開発支援助成金のような雇用関係助成金は支給要件を満たせば原則として受給できる仕組みです。とはいえ本助成金も予算の範囲内で支給されるものであり、確認項目が多いため他の助成金より支給決定までに時間がかかるとパンフレットでも案内されています。他の補助金制度と比較検討したい場合は、中小企業向け補助金5制度の比較記事もあわせてご覧ください。

項目 内容
制度名 人材開発支援助成金(令和8年度/2026年度)
所管 厚生労働省
財源 雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)
コース数 6コース(人材育成支援/教育訓練休暇等付与/人への投資促進/事業展開等リスキリング支援/建設労働者認定訓練/建設労働者技能実習)
経費助成率の目安 中小企業で最大75%(コース・要件により変動)
賃金助成額の目安 1人1時間あたり最大1,000円(コース・要件により変動)
対象者 雇用保険適用事業所の事業主。訓練を受ける労働者は雇用保険被保険者
申請方法 労働局窓口・郵送、または雇用関係助成金ポータルでの電子申請(GビズIDが必要)
公式サイト 厚生労働省 人材開発支援助成金

6つのコースと選び方 — 自社に合うのはどれか

人材開発支援助成金には6つのコースがあります。このうちAI・DX研修との相性が特に良いのは「人材育成支援コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」の3つです。残る「教育訓練休暇等付与コース」は有給の教育訓練休暇制度そのものを導入した場合の助成、「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」は建設業界向けの専用コースになります(なお障害者職業能力開発コースは令和6年4月から高齢・障害・求職者雇用支援機構に移管されており、本記事では扱いません)。

コース名 主な対象訓練 経費助成率(中小企業・目安) こんな会社に向いている
人材育成支援コース 実訓練時間数10時間以上のOFF-JT、OJTと組み合わせた訓練、正社員転換を伴う有期実習型訓練、中高年齢者実習型訓練など 45%〜70%程度 新卒・中途社員の基礎研修から、正社員化を目的とした訓練まで幅広く使いたい会社
人への投資促進コース 高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練、定額制訓練(サブスク型研修)、自発的職業能力開発訓練など 45%〜75%程度 AI・DXなど高度デジタル人材の育成に特に使いやすい
事業展開等リスキリング支援コース 新分野への展開、DX化・GX化に伴うOFF-JT(設備投資加算あり) 60%〜75%程度+設備投資費用の50%加算 新規事業展開やDX推進に伴う研修と設備投資をセットで進めたい会社
教育訓練休暇等付与コース 有給教育訓練休暇制度・教育訓練短時間勤務等制度の導入 定額助成(訓練内容ではなく制度導入自体が対象) 社員が研修を受けやすい休暇・勤務制度を新設したい会社

上記はあくまで目安の範囲です。実際の助成率は、賃金要件・資格等手当要件を満たしているか、正規雇用労働者かどうかなど細かい条件で変わります。特に中高年齢者実習型訓練は経費助成率60%(要件を満たす場合75%)の解説記事で、AI・DX研修への人への投資促進コースの使い方は「人への投資促進コース」AI・DX研修 活用事例3選で、それぞれ詳しく解説しています。コース別の助成率をさらに細かく比較したい場合は厚労省要件準拠のAI・DX研修コース別助成率もあわせてご確認ください。

AI・DX研修で対象になる経費の例

「うちの研修は対象になるのか」という疑問は、コースを選ぶ前に必ず出てきます。厚生労働省のパンフレットが示す訓練の分類に沿って考えると、AI・DX関連では次のような研修がイメージしやすいでしょう。

  • 生成AIツールの業務活用研修: 全社員・部門横断で実施するOFF-JT型の研修は、人材育成支援コースの「人材育成訓練」に該当し得ます。実訓練時間数が10時間以上であることが要件です。
  • 高度デジタル人材・データ分析人材の育成訓練: 専門性の高いデジタル人材を育てる訓練は、人への投資促進コースの「高度デジタル人材訓練」の対象になり得ます。
  • サブスクリプション型のオンライン研修サービス: 定額制で受け放題のeラーニング・研修サービスを契約する場合は、人への投資促進コースの「定額制訓練」というメニューで扱われます。
  • 新規事業展開に伴うDX人材育成+ツール導入: 新分野への展開やDX化に伴う研修と、それに付随する設備投資をあわせて行う場合は、事業展開等リスキリング支援コースの対象になり、設備投資費用の加算措置も利用できます。

いずれの場合も、研修内容が「職務に関連した専門的な知識・技能の習得」を目的としているか、実訓練時間数など各コースの要件を満たしているかがポイントです。自社の研修が具体的にどのコースに該当するかは、計画届の提出前に管轄の労働局・ハローワークへ確認することをおすすめします。

コース別の助成上限額・賃金助成額(2026年度時点)

賃金助成額は1人1時間あたり800円〜1,000円程度(要件を満たす場合に上振れ)、経費助成率は先述のとおりコースごとに45%〜75%程度です。事業展開等リスキリング支援コースには、研修とあわせて設備投資を行った場合の加算措置(導入費用の50%)もあります。

ここで一つ、実務上とても重要な点があります。事業展開等リスキリング支援コースは令和4年12月に新設された制度で、令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置として設けられています。延長されるかどうかは2026年7月時点で公表されていません。設備投資加算を含めてこのコースの活用を検討している場合は、時限措置であることを前提に、早めに計画届のスケジュールを組んでおくことをおすすめします。

助成率・上限額の正確な数字は、訓練の種類・雇用形態・賃金要件の充足状況によって細かく分岐するため、この記事では代表的な水準のみを示しています。実際に申請する際は、必ず厚生労働省の最新パンフレットと支給要領で確認してください。

対象になる事業主・労働者の要件

助成の対象になるのは、雇用保険適用事業所の事業主で、訓練を受ける労働者が雇用保険の被保険者であることが前提です。個人事業主・フリーランス自身が受ける学び直しは、雇用する労働者ではないため対象外になります。

「中小企業事業主」に該当するかどうかは、業種ごとに資本金額(または出資の総額)と常時雇用する労働者数のいずれかの基準で判定されます。支給申請時点の企業規模で助成率が決まる点にも注意してください。

主たる事業 資本金の額または出資の総額 企業全体で常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種(製造業等) 3億円以下 300人以下

また、同一の経費・賃金・訓練を対象に他の助成金や補助金を重ねて申請することはできず、いずれか一方しか支給されない「併給調整」の対象になる点も、社内で検討する段階で押さえておきたいポイントです。

申請から支給までの3ステップ

人材開発支援助成金の手続きは、大きく「計画届の提出」「訓練の実施」「支給申請」の3段階です。

Step 1: 職業訓練実施計画届の提出
訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、職業訓練実施計画届(様式第1-1号)と必要書類を、事業所の所在地を管轄する労働局に提出します。窓口・郵送に加えて、GビズIDを取得すれば雇用関係助成金ポータルからの電子申請も可能です。電子申請の具体的な手順は人材開発支援助成金の電子申請手順で解説しています。GビズIDをまだ取得していない場合はGビズID登録の完全ガイドから準備を進めてください。

Step 2: 訓練の実施
計画届の内容どおりに訓練を実施します。訓練経費は支給申請までに事業主が全額負担している必要があり、教育訓練機関から実質的な値引きやキックバックを受けている場合は支給対象外になります。計画に変更が生じた場合は、原則として変更前後どちらか早い訓練実施日の前日までに変更届の提出が必要です。詳しくは人材開発支援助成金の変更届で解説しています。

Step 3: 支給申請
訓練終了日の翌日から2か月以内(厳守)に、支給申請書(様式第4-1号)と必要書類を提出します。この期限を過ぎると原則として支給対象になりません。支給申請に必要な様式の一覧は支給申請様式一覧を、申請手順と締切をさらに詳しく知りたい場合は申請手順と締切の解説記事を参照してください。書類提出後は労働局による審査を経て支給・不支給が決定します。

コース選定の前提として「リスキリング支援制度の全体像」をご覧ください。

よくあるつまずきと対策

厚生労働省のパンフレットでは、支給されないケースの代表例が具体的に列挙されています。以下は特に見落とされやすいものです。

つまずき1: 計画届の提出が訓練開始日の1か月前を過ぎている

❌ 訓練を先に手配してから計画届を出そうとする
⭕ 訓練開始日から逆算して、遅くとも1か月前までに計画届を提出する

計画届を期限内に提出していない訓練は、原則として助成の対象になりません。訓練の企画段階で提出スケジュールを先に確定させることが重要です。

つまずき2: 訓練経費を事業主が全額負担していない

❌ 教育訓練機関から研修費用の一部を後から返金してもらう、または割引を受ける
⭕ 支給申請までに訓練経費を事業主が全額負担する

「助成金を使えば実質無料で研修を受けられる」といった営業トークで、返金や過大な値引きを持ちかける教育訓練機関やコンサルティング会社の存在が、厚生労働省のパンフレットでも名指しで注意喚起されています。実質的な負担軽減を受けた場合、その訓練は支給対象外になります。

つまずき3: 実訓練時間数が10時間に届いていない

❌ 短時間の研修を組んで、あとから要件を確認する
⭕ 休憩・移動時間などを除いた実訓練時間数が10時間以上になるようカリキュラムを組む

一部の訓練メニューを除き、実訓練時間数10時間未満の訓練は対象外です。カリキュラムを組む段階で時間数を確認しておきましょう。

つまずき4: 支給申請の期限(訓練終了日の翌日から2か月以内)を過ぎる

❌ 訓練終了後、書類の準備に時間をかけすぎて期限を過ぎる
⭕ 訓練終了と同時に必要書類の準備に着手し、2か月以内に確実に提出する

書類の不備が多いコースでもあるため、申請前チェックリスト様式一覧&つまずきチェックリストを使って、提出前に必要書類を洗い出しておくと期限超過を防ぎやすくなります。訓練期間が長い場合は、実施状況報告3つの要点もあわせて確認してください。

つまずき5: 同一経費で他の助成金・補助金と重複申請してしまう

❌ IT導入補助金など他の制度と、同じ経費・同じ訓練を対象に二重に申請する
⭕ 経費ごとにどの制度で申請するかを事前に整理し、重複がないようにする

同一の経費、賃金、訓練を対象として他の助成金や補助金を申請する場合、どちらか一方しか支給されない「併給調整」が行われます。研修費用は人材開発支援助成金、設備投資費用は別の補助金、というように経費を切り分けて計画するのが安全です。

まとめ — まず何から手をつければいいか

ぶっちゃけ、この助成金でいちばん多い失敗は「訓練の中身」ではなく「計画届の提出タイミング」です。研修の企画が固まってから慌てて申請しようとすると、1か月前という提出期限に間に合わないケースが少なくありません。まずは訓練開始日を仮決めし、そこから逆算して計画届の提出期限をカレンダーに入れることから始めるのが現実的です。

そのうえで、①自社に合うコースを本記事の比較表で絞り込み、②GビズIDの取得状況を確認し、③該当コースの詳しい解説記事で必要書類を洗い出す、という順番で進めると、直前になって書類が足りないという事態を避けやすくなります。

よくある質問

Q. 人材開発支援助成金と補助金はどう違いますか?

補助金は予算の範囲内で審査を経て採否が決まるのに対し、人材開発支援助成金のような雇用関係助成金は雇用保険を財源とし、支給要件を満たせば原則として受給できる仕組みです。ただし本助成金も予算の範囲内で支給されるものであり、要件を満たせば必ず支給されると保証されているわけではありません。

Q. 個人事業主やフリーランスでも使えますか?

雇用保険適用事業所であり、雇用保険の被保険者を雇用していることが前提です。従業員を雇用していない個人事業主・フリーランス自身の学び直しは対象外です。

Q. 事業展開等リスキリング支援コースはいつまで使えますか?

令和8年度末(2027年3月末)までの時限措置として設けられています。延長の有無は本記事執筆時点(2026年7月)では公表されていません。活用を検討している場合は、時限措置であることを前提に早めに計画届のスケジュールを確認することをおすすめします。

Q. オンラインのAI研修サービスは対象になりますか?

職務に関連した知識・技能の習得を目的とし、実訓練時間数10時間以上など各コースの要件を満たすOFF-JTであれば対象になり得ます。定額制のサブスクリプション型研修サービスは、人への投資促進コースの「定額制訓練」というメニューで扱われます。個別の研修が対象になるかどうかは、計画届の提出前に管轄の労働局・ハローワークに確認することをおすすめします。

Q. 助成金の支給までどのくらいの期間がかかりますか?

訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請を行った後、労働局による審査を経て支給・不支給が決定します。確認項目が多いため、他の助成金より支給決定までに時間がかかると厚生労働省のパンフレットでも案内されています。具体的な審査期間は労働局によって異なるため、管轄の労働局に確認してください。

参考・出典


執筆: 株式会社Uravation 補助金ナビ編集部

監修: 佐藤 傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。AI導入×助成金活用の実務経験をもとに、中小企業のDX推進をサポートしています。

AI・DX研修の計画策定や、自社にどのコースが合うかのご相談は お問い合わせフォーム からお気軽にどうぞ。


免責事項
本記事の情報は2026年7月27日時点の厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。人材開発支援助成金の各コースの内容・助成率・上限額・時限措置の有無は、予算措置や制度改正により予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトで最新のパンフレット・支給要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

Need help turning subsidy knowledge into action?

補助金を使ったAI導入を検討中の方へ

制度の最終適用可否は公募要領の確認が必要ですが、AI研修・PoC・導入計画の整理はUravationが無料相談でサポートしています。

この記事をシェア

X Facebook LINE

関連記事