「人材開発支援助成金を申請したいが、結局どの様式をいつ出せばいいのか分からない」——AI研修の導入相談を受ける中で、この質問は本当によく出てきます。特に事業展開等リスキリング支援コースは、計画届の段階だけでも様式が10種類前後あり、支給申請の段階になるとさらに増えます。
この記事では、事業展開等リスキリング支援コースを中心に、計画届から支給申請までに必要な様式を段階別の早見表で整理します。あわせて、当サイトへの検索流入でも上位表示されている「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」でつまずくポイントも重点的に解説します。
早見表:申請フェーズ別に必要な様式
まず全体像を押さえましょう。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、大きく分けて「計画届」「訓練実施中の変更」「支給申請」「実施後の報告」の4フェーズで様式を使い分けます。
| フェーズ | 主な様式 | 提出タイミング |
|---|---|---|
| 1. 計画届提出時 | 様式第1-1号、第1-3号、第3-1号、第10号、第11号、第14-1号/14-2号、第19号(該当時:第21号) | 訓練開始日の原則1か月前まで |
| 2. 訓練実施中の変更 | 様式第2-1号(職業訓練実施計画変更届) | 計画内容に変更が生じた都度 |
| 3. 支給申請時 | 様式第4-2号、第5号、第6-2号/6-3号、第7号、第8-1号ほか、第12号、第13号、第17号、(該当時:第22号)、様式第28号(疎明書) | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
| 4. 実施後の報告 | 様式第20号、第27-1号/27-2号(該当時) | 制度・機器の運用状況に応じて |
※ 上記は令和8年5月14日以降の申請様式(厚生労働省公表)に基づく、事業展開等リスキリング支援コースの早見表です。人材育成支援コース等、他コースは様式番号が一部異なります。詳しい助成率・スケジュールは人材開発支援助成金の申請手順ガイドもあわせてご覧ください。
そもそも事業展開等リスキリング支援コースとは
人材開発支援助成金には複数のコースがありますが、AI・DX関連の研修でよく使われるのが「事業展開等リスキリング支援コース」です。新たな事業展開や事業転換にあわせて従業員のスキルを再教育する場合に、経費助成・賃金助成を受けられる仕組みになっています。
このコースは「人への投資」の集中投資期間に連動する時限的な位置づけとされており、現行の枠組みでは令和8年度が実施年度として案内されています。令和9年度以降の取り扱いは本記事執筆時点で未定のため、最新情報は必ず厚生労働省 人材開発支援助成金ページでご確認ください。
Step 1: 計画届段階で準備する様式
訓練を始める前に、事業所を管轄する労働局・ハローワークへ提出する書類です。ここでつまずくと、そもそも助成対象として認められません。
- 様式第1-1号(職業訓練実施計画届):訓練の目的・実施期間・対象労働者数などを記載する基本様式
- 様式第1-3号(事業展開等実施計画):新規事業展開・DX化など「なぜこの訓練が必要か」を説明する書類。ここが曖昧だと計画届自体を受理してもらえないケースがあります
- 様式第3-1号(対象労働者一覧):受講予定者の氏名・雇用形態等を一覧化
- 様式第10号(OFF-JT講師要件確認書):外部講師・社内講師それぞれの要件確認
- 様式第11号(事前確認書):訓練内容が助成対象の要件を満たすかの事前チェック
- 様式第14-1号/第14-2号(事業所確認票):定額制サービスや本社一括申請を使う場合に必要
- 様式第19号(訓練受講承諾書):受講者本人の同意を証明する書類
- 様式第21号(設備投資実施計画):設備投資加算(中小企業のみ)を利用する場合のみ必要
正直なところ、様式の数だけ見ると身構えてしまいますが、実務上つまずきやすいのは様式そのものより「様式第1-3号の事業展開等実施計画をどう書くか」です。抽象的な目的だけでは差し戻しの対象になりやすいため、具体的な業務課題と訓練内容の対応関係を書き込む必要があります。
Step 2: 訓練実施中に計画変更が生じたとき
受講予定者の変更、訓練日程のずれ、訓練時間数の変更などが生じた場合は、様式第2-1号(職業訓練実施計画変更届)を速やかに提出します。変更届の提出を怠ると、支給申請時に計画届の内容と実績が食い違い、不備扱いになることがあるため注意しましょう。
Step 3: 支給申請段階で提出する様式(ここが本丸)
訓練終了後、原則として訓練終了日の翌日から2か月以内に提出する書類群です。計画届より枚数が多く、実務担当者が最も時間を取られる工程になります。
- 様式第4-2号(支給申請書):申請の中心となる様式
- 様式第5号(賃金助成の内訳):訓練期間中の賃金相当額を算定
- 様式第6-2号/第6-3号(経費助成の内訳):受講料・教材費等の経費を積み上げる書類。定額制サービスを使う場合は第6-3号を使用
- 様式第7号(自発的職業能力開発に関する申立書)
- 様式第8-1号ほか(訓練実施結果報告書):OFF-JT/eラーニング/通信制など訓練形態ごとに様式が分かれる
- 様式第12号(支給申請承諾書):訓練実施者(研修会社等)からの承諾書
- 様式第13号(事業所確認票)
- 様式第17号(賃金要件等確認シート)
- 様式第22号(設備投資実施状況報告):計画届で設備投資加算を申請した場合のみ
- 様式第28号(受講料等の価格設定に関する疎明書):後述の重点解説を参照
ここまで見ると分かる通り、経費助成の内訳(様式第6-2号/6-3号)と訓練実施結果報告書(様式第8号系)は、訓練の証憑(出席簿・受講記録・請求書等)との突合が前提です。証憑がバラバラのまま支給申請の準備を始めると、様式作成そのものより「証憑集め」に時間を取られます。
対象となる訓練の時間数要件を先に確認する
様式を揃える前に、そもそも今回の訓練が助成対象になるかどうかを確認しておく必要があります。人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コースを含む主要コース)では、事業所内での訓練であるOFF-JTについて、原則として1コースあたり10時間以上であることが助成対象の下限要件とされています。10時間に満たない短時間の研修は、内容がどれだけ良くても対象外となるため、カリキュラム設計の段階で訓練時間を10時間以上に組み立てておくことが前提になります。
経費助成・賃金助成の助成率や、時間数帯(10〜100時間、100〜200時間、200時間以上等)に応じた支給限度額の詳細は、コースの種類や年度によって変わるため、本記事では様式の解説に絞り、金額の詳細は人材開発支援助成金の申請手順ガイドおよび厚生労働省の公式ページでご確認いただくことをおすすめします。様式第6-2号(経費助成の内訳)を作成する段階になって「時間数が足りず対象外だった」と判明するケースもあるため、計画届の様式第1-1号を作る時点で時間数要件をクリアしているか必ずチェックしましょう。
疎明書(様式第28号)でつまずくポイント
当サイトへの検索流入データを見ても、「受講料等の価格設定に関する疎明書」「様式28号」というキーワードでのアクセスが目立ちます。それだけ実務で悩む担当者が多いということです。
様式第28号は、令和8年5月14日の支給要領改正により、人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの支給申請時に提出が必要となった書類です。訓練を委託した研修会社との間に資本関係・人的関係等の「特別な関係」がある場合はもちろん、特別な関係がない場合でも、受講料の価格設定が市場相場と比べて妥当であることを説明する必要があります。
つまずきやすいのは、次のようなケースです。
- 比較対象として挙げた研修が、時間数・内容の異なる「同種でない」研修だった
- 「弊社の一般価格です」とだけ書き、算定根拠を示していない
- グループ会社が講師を務めているのに「特別な関係なし」と記載してしまう
様式第28号の具体的な書き方・記入例は、当サイトの様式28号の書き方・記入例ガイドで詳しく解説しています。また、令和8年5月14日の改正内容そのものについては様式28号の変更点まとめを参照してください。
書類作成でよくある不備6選
不備1: 計画届の実施計画と支給申請の実績が食い違う
❌ 計画届では10時間の訓練だったのに、支給申請の報告書では8時間になっている
⭕ 変更が生じた時点で様式第2-1号を提出し、計画と実績を常に一致させる
不備2: 経費助成の内訳と請求書の金額が一致しない
❌ 様式第6-2号の記載金額と、添付した請求書・領収書の金額に差がある
⭕ 提出前に金額を突合し、差異があれば理由を明記する
不備3: 疎明書の比較対象が不適切
❌ 比較対象の研修が、時間数もカリキュラムも大きく異なる
⭕ 同じ分野・同程度の時間数の研修を複数比較し、算定根拠を明示する
不備4: 受講者一覧の記載漏れ・雇用形態の誤り
❌ 様式第3-1号に有期雇用の労働者を「正社員」として記載してしまう
⭕ 雇用契約書と照合してから記載する
不備5: 講師要件確認書の添付を忘れる
❌ 外部講師を起用したのに様式第10号(OFF-JT講師要件確認書)が未添付
⭕ 講師が社内・社外どちらかに関わらず、要件確認書を必ずセットで準備する
不備6: 訓練時間数が助成対象の下限を下回っている
❌ カリキュラムを詰め込みすぎないよう調整した結果、休憩時間を除いた正味の訓練時間が10時間の要件をわずかに下回っていた
⭕ 計画届の様式第1-1号を作成する時点で、休憩・移動時間を除いた正味の訓練時間が下限要件を満たしているか必ず確認する
これら6つの不備は、どれも「様式そのものの書き方」よりも「訓練の実態と書類の整合性」に起因しています。様式を埋める作業に入る前に、訓練の記録(誰が・いつ・何時間・どんな内容を受けたか)をきちんと残しておくことが、結果的に様式作成のスピードを上げる一番の近道です。特に複数事業所・複数コースを同時並行で申請する場合は、事業所ごとに担当者を分けず、1名が横断的に進捗を管理する体制にしておくと、様式間の記載の食い違いに早く気づけます。
訓練終了後・支給決定後に提出する様式も忘れずに
早見表の「4. 実施後の報告」に当たる部分です。支給申請が通れば終わり、と思われがちですが、コースや加算の種類によっては支給決定後にも提出が必要な様式があります。
- 様式第20号(変更等届出書):支給決定後に事業所の名称・所在地・代表者などに変更があった場合に提出
- 様式第27-1号/第27-2号(該当時):定額制サービスや特定の加算を利用した場合の運用状況報告。加算の対象設備・サービスを継続利用しているかの確認に使われます
これらは「該当する場合のみ」提出する様式のため、自社が加算や定額制サービスを利用していない場合は不要です。ただし、労働局から提出を求められてから慌てて内容を確認するのではなく、支給申請時点で「自社はどの様式まで対象になるか」を一覧化しておくと、その後の手戻りを防げます。
電子申請(雇用関係助成金ポータル)を使う場合の注意点
人材開発支援助成金は、紙の様式を労働局・ハローワークへ持参・郵送する方法に加えて、「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請にも対応しています。電子申請を使う場合は、あらかじめGビズID(法人・個人事業主向けの共通認証システム)の取得が必要です。GビズIDの発行には数日かかることがあるため、計画届の提出期限が近い場合は早めに準備しておきましょう。
電子申請では、様式そのものの内容・添付書類の要否は紙申請と変わりません。違いは提出方法だけですが、添付ファイルの形式(PDF等)や1ファイルあたりの容量制限がある点には注意が必要です。証憑類をスキャンする際は、様式ごとにファイルを分けて管理しておくと、申請時のアップロード作業がスムーズになります。電子申請の詳細な手続き・対応状況は厚生労働省「雇用関係助成金の電子申請」ページで随時更新されているため、申請の都度ご確認ください。
実務担当者がやるべき準備の進め方
ぶっちゃけ、様式そのものは埋めるだけなら難しくありません。時間がかかるのは「証憑の整理」と「実施計画と実績のすり合わせ」です。実務では次の順番で進めると手戻りが少なくなります。
- 訓練開始前に、計画届段階の様式(様式第1-1号・第1-3号など)を一式そろえる
- 訓練実施中は、出席簿・受講ログ・請求書など証憑をリアルタイムで保管する
- 訓練終了後、支給申請様式(様式第4-2号以降)を証憑と突合しながら作成する
- 研修会社との関係性を確認し、様式第28号(疎明書)の要否・記載内容を早めに固める
この点、様式の要否や記入内容の最終判断は制度が複雑なため、社労士や労働局の窓口に確認しながら進めることをおすすめします。当社が提供できるのは、AI研修の実施内容そのものの計画策定や、講師要件・カリキュラムの整理といった部分です。
提出前セルフチェックリスト
支給申請の様式一式を提出する前に、次の項目だけでも自社で確認しておくと、労働局からの差し戻し・追加確認の回数を減らせます。
- 計画届(様式第1-1号・第1-3号)の内容と、実際に実施した訓練の内容・時間数が一致しているか
- 正味の訓練時間が10時間以上の下限要件を満たしているか(休憩・移動時間を除いた時間で計算しているか)
- 経費助成の内訳(様式第6-2号/6-3号)の金額と、添付した請求書・領収書の金額が一致しているか
- 受講者一覧(様式第3-1号)の雇用形態が、雇用契約書の内容と一致しているか
- 研修会社との間に資本関係・人的関係がある場合、様式第28号(疎明書)にその関係性を正しく記載しているか
- 設備投資加算や定額制サービスなど、該当する加算・特例に応じた追加様式に漏れがないか
このチェックリストはあくまで一般的な確認項目であり、事業所の状況やコースの種類によって必要な確認項目は異なります。最終的な要否判断は、必ず管轄の労働局・ハローワークまたは社労士にご確認ください。
よくある質問
Q. 様式第28号は全てのコースで必要ですか?
A. 人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの支給申請時に必要です。コースによって要否や運用が異なる場合があるため、詳細は厚生労働省の公式ページでご確認ください。
Q. 計画届と支給申請で様式番号が違うのはなぜですか?
A. 計画届は「これから行う訓練の計画」を審査するための書類、支給申請は「実際に行った訓練の実績」を確認するための書類のため、記載内容も様式も分かれています。
Q. 様式は年度の途中で変わることがありますか?
A. あります。事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年5月14日の支給要領改正で様式第28号の提出が新たに必要になったように、年度内でも改正が入ることがあります。申請の都度、最新の様式一覧ページを確認しましょう。
Q. 定額制サービス(サブスク型のeラーニング等)を使う場合、様式は変わりますか?
A. はい。定額制サービスを利用する場合は、様式第3-2号(定額制サービス対象労働者一覧)、様式第14-1号(定額制サービス事業所確認票)、様式第6-3号(定額制サービス経費助成の内訳)など、専用の様式に置き換わります。
Q. 様式の作成は自社だけでも対応できますか?
A. 様式自体は自社で作成・提出することも可能です。ただし、要件判断や証憑の整合性チェックが複雑なため、多くの企業が社労士に確認しながら進めています。
Q. 紙申請と電子申請、どちらを選べばよいですか?
A. どちらを選んでも様式の内容・添付書類の要否は変わりません。電子申請(雇用関係助成金ポータル)はGビズIDの取得が前提になるため、申請期限までに余裕を持って準備できるかどうかで選ぶとよいでしょう。すでに他の助成金でGビズIDを取得済みの事業所であれば、電子申請のほうが郵送・持参の手間を省けます。
参考・出典
- 人材開発支援助成金 申請書類(令和8年5月14日以降に計画届を提出された方) — 厚生労働省(参照日: 2026-07-04)
- 人材開発支援助成金の申請書類一覧 — 厚生労働省(参照日: 2026-07-04)
- 人材開発支援助成金(制度概要) — 厚生労働省(参照日: 2026-07-04)
- 雇用関係助成金の電子申請 — 厚生労働省(参照日: 2026-07-04)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
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免責事項
本記事の情報は2026年7月4日時点の厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。人材開発支援助成金の様式・要件は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトで最新の様式・支給要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
