人材開発支援助成金

【新設】人材開発支援助成金 中高年齢者実習型訓練|助成率75%

【新設】人材開発支援助成金 中高年齢者実習型訓練|助成率75%

この記事の結論

人材開発支援助成金の人材育成支援コースに令和8年4月8日、45歳以上向け「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。経費助成率75%・OJT実施助成13万円の内容と対象要件を解説します。

人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」に、2026年4月8日付けで新しい訓練メニュー「中高年齢者実習型訓練」が加わりました。45歳以上の労働者を対象に、OJT(実務を通じた訓練)とOFF-JT(座学等の訓練)を組み合わせて実施する場合、経費助成率は最大75%、OJT実施助成額は1人1コースあたり最大13万円まで支給されます。

「実習型」という名前がついていますが、対象となる訓練内容は「職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練」であれば幅広く認められます。ミドル・シニア層の社員にAIツールの実務活用スキルを身につけてもらう研修も、要件を満たせば対象になり得ます。この記事では、対象者・助成率・訓練要件・申請の流れを、厚生労働省の公式資料に基づいて整理します。

中高年齢者実習型訓練の基本データ

項目 内容
制度名 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)中高年齢者実習型訓練
所管省庁 厚生労働省
新設日 2026年4月8日(令和8年4月8日)
対象労働者 訓練開始日において45歳以上の雇用保険被保険者
訓練形態 OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練を2か月以上実施
訓練時間数の要件 総訓練時間数が6か月あたり換算で425時間以上
経費助成率 60%(中小企業以外45%)、賃金要件等を満たす場合75%(同60%)
OJT実施助成額 1人1コースあたり10万円(中小企業以外9万円)、賃金要件等を満たす場合13万円(同12万円)
申請窓口 事業所を管轄する都道府県労働局・ハローワーク
公式資料 厚生労働省 人材開発支援助成金

制度全体の仕組みや対象コースの一覧は、人材開発支援助成金 令和8年度改定ガイド|AI研修に使える全コース解説でも整理しています。あわせてご覧ください。

経費助成率とOJT実施助成額の内訳

金額面で押さえておきたいのは、OFF-JT部分の経費助成・賃金助成と、OJT部分の実施助成が別建てになっている点です。カッコ内の数値は中小企業事業主「以外」(大企業等)に適用される額です。

助成の種類 賃金要件等を満たさない場合 賃金要件等を満たす場合
OFF-JT 経費助成率 60%(45%) 75%(60%)
OFF-JT 賃金助成額(1人1時間あたり) 800円(400円) 1,000円(500円)
OJT 実施助成額(1人1コースあたり) 10万円(9万円) 13万円(12万円)

「賃金要件等を満たす場合」とは、訓練修了後1年以内に対象労働者の賃金を5%以上引き上げる、または資格等手当の支給により賃金を3%以上引き上げるケースを指します。加算分は事後に別途申請する扱いで、訓練終了時にまとめて自動加算されるわけではないので、賃上げを予定している場合は申請時期を管理しておく必要があります。

対象となる労働者の要件

誰でも対象になるわけではなく、次のいずれかに当てはまる45歳以上の被保険者であることが求められます。

  • 新たに雇い入れた被保険者(雇入れ日から訓練開始日までが3か月以内)
  • 短時間等労働者から通常の労働者へ転換した者(転換日から訓練開始日までが3か月以内)
  • すでに雇用している被保険者(上記2つに該当しない在籍者)

加えて、訓練開始前にキャリアコンサルタント(職業訓練に付帯する場合は職業訓練指導者も含む)によるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを実施し、その中で「中高年齢者実習型訓練への参加が必要」と判断されている必要があります。この手続きを省略すると、後から要件不備として扱われる可能性があるため、訓練計画届の提出前に済ませておくのが安全です。

訓練に求められる主な要件

公式パンフレットに記載されている訓練要件を、実務でつまずきやすい順に整理しました。

  1. 職務関連訓練であること — 職務に関連した専門的な知識・技能の習得を目的とする訓練
  2. OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせること
  3. 訓練実施期間が2か月以上であること(1か月以上訓練が空いた期間は実施期間に含めない)
  4. 総訓練時間数が6か月あたり換算で425時間以上であること
  5. OJTの割合が総訓練時間数の1割以上9割以下であること
  6. OFF-JTは通学制または同時双方向型の通信訓練で、1コースの実訓練時間数が10時間以上であること
  7. OJTは適格な指導者(出退勤時刻を確認できる者)の指導のもとで計画的に行うこと
  8. OJTは原則対面で実施すること(労務管理・経理・書類作成・プログラム開発等の一部業務はテレワークでも可)

正直なところ、6か月換算425時間という総訓練時間数のハードルは軽くありません。週5日フルタイムに近い訓練密度になる計算で、通常業務と並行させる場合はスケジュール設計がかなり重要になります。短期の座学研修だけで満たそうとすると要件を満たせないので、OJTと組み合わせた実践的なプログラムとして最初から設計する必要があります。

対象となる経費・ならない経費

経費助成の対象になるのは、次のような費用です。

区分 対象経費の例 上限・注意点
部外講師の謝金・手当 外部講師への謝礼 実訓練時間1時間あたり1万5,000円が上限(税込)
部外講師の旅費 会場までの交通費・宿泊費 国内招へいは1訓練5万円、海外招へいは15万円が上限
施設・設備の借上費 教室・実習室の会場使用料など 助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの
教科書・教材費 訓練で使用するテキスト等の購入・作成費 頒布目的で発行された出版物が対象
訓練コースの開発費 大学・専修学校等への訓練コース委託開発費 学校教育法上の教育機関への委託に限る

一方で、対象外になりやすい経費もあります。eラーニングや通信制による訓練の経費は、事業内訓練では対象になりません。中高年齢者実習型訓練はそもそもOFF-JTを「通学制」または「同時双方向型の通信訓練」で行う必要があるため、オンデマンド動画のような一方向型eラーニングでは訓練要件そのものを満たせない点にも注意が必要です。パソコンなど職業訓練以外の場でも汎用的に使う設備の購入費、繰り返し使える教材(学習ソフトなど)も対象外です。

申請までの流れ

  1. ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングの実施(訓練前・対象労働者ごとに実施記録を残す)
  2. 事業内職業能力開発計画の作成・労働者への周知
  3. 職業能力開発推進者の選任
  4. 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)・対象労働者一覧(様式第3-1号)の提出(管轄労働局へ)
  5. 訓練の実施(OJT実施日ごとに「OJT実施状況報告書(様式第9号)」を作成)
  6. 訓練終了後、ジョブ・カード様式3-3-1-1で職業能力の評価を実施
  7. 支給申請書類の提出(支給申請書、賃金助成・OJT実施助成の内訳、経費助成の内訳等)

電子申請は雇用関係助成金ポータルからも可能ですが、書類ボリュームが多いコースなので、初めて申請する場合は計画届の段階で管轄労働局に事前相談しておくと手戻りを減らせます。

よくある不備・見落としがちなポイント

不備1: 45歳という年齢の基準日を誤解する

❌ 訓練「申込時点」で44歳だったので対象外と判断してしまう
⭕ 要件は「訓練開始日」において45歳以上であること。申込時点で44歳でも、訓練開始日までに45歳になれば対象になり得ます

不備2: OJTの比率設計を誤る

❌ OJTをほぼ全時間(9割超)で計画し、座学をおまけ程度にしてしまう
⭕ 総訓練時間数に占めるOJTの割合は1割以上9割以下に収める必要があります。OFF-JTも1コースあたり実訓練時間数10時間以上を確保します

不備3: キャリアコンサルティングを後回しにする

❌ 訓練計画届を先に出し、キャリアコンサルティングは訓練開始後に実施する
⭕ 訓練前にジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングを行い、「参加が必要」と判断された記録を残してから計画届を提出します

不備4: OJT訓練指導者の出退勤記録が残っていない

❌ OJT訓練指導者(適格な指導者)の出勤状況を後から思い出して作成しようとする
⭕ OJT実施日ごとに、指導者・対象労働者双方の出退勤時刻を都度記録します。記録がない場合、OJTを実施したと認められません

他の人材育成支援コースメニューとの違い

人材育成支援コースには、中高年齢者実習型訓練のほかにも複数のメニューがあります。対象者やOJTの有無で整理すると次のとおりです。

訓練メニュー 主な対象者 OJTの有無
人材育成訓練 雇用保険被保険者全般 OFF-JTのみ(OJT実施助成なし)
認定実習併用職業訓練 正社員化を目的とする対象者等 OJT実施助成あり
有期実習型訓練 有期契約労働者等 OJT実施助成あり
中高年齢者実習型訓練 45歳以上の被保険者 OJT実施助成あり

細かい助成率・上限額はメニューごとに異なり、正規雇用/非正規雇用の別でも変わるため、この記事では新設の中高年齢者実習型訓練の数値に絞って解説しています。他メニューの正確な助成率は、公式パンフレットまたは管轄労働局にご確認ください。事業展開等リスキリング支援コースの様式や実施状況報告については、人材開発支援助成金 様式一覧&つまずきチェックリストで解説しています。

AI・DXスキル習得の場としての活用ポイント

中高年齢者実習型訓練が対象とする「職務関連訓練」は、業種や職種を問わず、業務に直結する専門知識・技能の習得であれば認められます。生成AIツールの実務活用(文書作成の効率化、データ整理、顧客対応の一次対応など)を、OJT(実際の業務での実践)とOFF-JT(体系的な研修)を組み合わせて習得させるプログラムも、訓練要件を満たせば対象になり得ます。

ミドル・シニア層は「AIは若手が使うもの」と距離を置きがちですが、実務でAIツールを使いこなせる中高年齢者を育てることは、人手不足が続く現場では特に価値があります。訓練期間が2か月以上、総訓練時間数が6か月換算425時間以上という要件を満たすには、単発のセミナーではなく、継続的なOJT併用の研修プログラムとして設計する必要があります。AI導入研修の企画段階で、この制度を組み込めるかどうかを検討する企業も出てきています。実際の活用パターンは人材開発支援助成金「人への投資促進コース」AI・DX研修 活用事例3選でも紹介しています。

人材開発は「教育訓練費を助成金でまかなう」話ですが、AIツールの導入自体(ソフトウェア費用等)には別枠の補助金が使えます。研修とツール導入をセットで進めたい場合は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q1. 中小企業とそれ以外で何が違いますか?
A. 経費助成率・賃金助成額・OJT実施助成額のいずれも、中小企業事業主の方が高い水準に設定されています。本記事のカッコ内の数値が中小企業以外(大企業等)の額です。中小企業の定義(資本金・従業員数の基準)は業種によって異なるため、公式資料でご確認ください。

Q2. 44歳の社員は対象になりませんか?
A. 要件は「訓練開始日」において45歳以上であることです。訓練開始日までに45歳の誕生日を迎える見込みであれば、事前に労働局へご相談ください。

Q3. eラーニングだけで訓練を組んでも対象になりますか?
A. 対象になりません。OFF-JTは「通学制」または「同時双方向型の通信訓練」であることが要件で、一方向型のオンデマンドeラーニングは訓練要件を満たしません。

Q4. 総訓練時間数425時間はどう数えますか?
A. 訓練実施期間全体を6か月あたりに換算した時間数で判定します。訓練期間が2か月であっても、6か月換算で425時間以上に相当する密度が必要です。具体的な計算方法は事前に管轄労働局へ確認することをおすすめします。

Q5. 業務独占資格が必要な業務(理美容等)のOJTでも使えますか?
A. 使えますが、業務独占資格に係るOJTを実施する前までに、対象労働者が当該資格を取得している必要があります。

中高年齢者実習型訓練を検討する企業がまずやること

  1. 今日やること: 45歳以上で今後スキルアップさせたい社員がいるか、対象候補をリストアップする
  2. 今週中: OJTとOFF-JTをどう組み合わせるか、業務内容ベースで訓練プログラムの骨子を検討する
  3. 今月中: 管轄の労働局・ハローワークに事前相談し、キャリアコンサルティングの実施計画を立てる

この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。

AI活用研修の設計や、人材開発支援助成金を組み込んだ研修プログラムのご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

参考・出典

免責事項
本記事の情報は2026年7月15日時点の厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。人材開発支援助成金の制度内容は改正される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトで最新の支給要領をご確認いただくか、管轄の労働局・ハローワークへお問い合わせください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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