人材開発支援助成金

人材開発支援助成金「人への投資促進コース」AI・DX研修 活用事例3選

人材開発支援助成金「人への投資促進コース」AI・DX研修 活用事例3選

この記事の結論

人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」でAI・DX人材を育成した3つの想定シナリオを紹介。

人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」は、令和4年度から令和8年度までの期間限定措置。長期教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務制度の導入に対して、制度導入経費+賃金助成が受けられる点が最大の特徴です。AI・DX分野の人材育成に特化して活用した3つの想定シナリオをもとに、申請の勘所を整理します。

中小企業の経営者から「AI人材を育てたいけど、研修費用が重い」という声をよく聞きます。ぶっちゃけ、人への投資促進コースはその悩みにかなりフィットする制度です。ただし「訓練経費は無料になりません」(厚労省の注意喚起そのまま)。あくまで事業主が全額負担した訓練費の一部を後から助成する仕組み。この点を誤解すると不正受給になるので要注意。

人材開発支援助成金には複数のコースがあり、制度全体の概要については「人材開発支援助成金 AI・DX研修コース別助成率比較」で詳しく解説しています。今回はその中でも「人への投資促進コース」にフォーカスし、実際に制度導入を検討する際の具体的なイメージをお伝えします。


製造業A社(従業員45名)が長期教育訓練休暇でAIエンジニアを育成した想定シナリオ

事例区分:想定シナリオ(制度の仕組みに基づく試算例。実在の企業・案件ではありません)

なぜこのコースを選んだか

A社は金属加工の中小企業。熟練工の暗黙知をAI画像検査システムに落とし込むプロジェクトを立ち上げたが、社内にAI人材がゼロ。大手SIerに外注すると数千万円。そこで、社内の若手技術者1名を半年間、大学院のAI専攻コースに派遣することを決断した。

通常の人材育成支援コースでは訓練経費助成が中心だが、A社が本当に必要だったのは「半年間、業務から離れて集中学習できる環境」。そこで人への投資促進コースの長期教育訓練休暇制度に着目した。30日以上の有給休暇制度を整備すれば、半年間の大学院通学も現実的になる。

申請で工夫したこと

長期教育訓練休暇制度(30日以上の有給休暇)を就業規則に規定した上で、当該技術者に適用。大学院の授業料(半年で約50万円)に加え、休暇中の賃金助成(1時間あたり1,000円×最大1,600時間=最大160万円)を申請。さらに、長期教育訓練取得者の業務を代替するため派遣社員1名を採用し、業務代替支援も合わせて申請した。

ポイントは、大学院の授業料を「人材育成支援コース」で訓練経費助成の対象としつつ、休暇期間中の賃金助成と制度導入助成を「人への投資促進コース」で申請する併用戦略。ただし、このような併用が可能かどうかは管轄の都道府県労働局によって判断が分かれるため、必ず事前相談を行っている(という設定)。

試算される助成額

助成項目 金額(目安)
長期教育訓練休暇制度導入 20万円(定額)
賃金助成(1,000円/h × 約800h) 約80万円
業務代替支援(派遣社員採用) 最大50万円
合計 約150万円

IT企業B社(従業員28名)が教育訓練短時間勤務制度でAI資格取得を促進した想定シナリオ

事例区分:想定シナリオ(制度の仕組みに基づく試算例。実在の企業・案件ではありません)

なぜこのコースを選んだか

B社は受託開発が主力だったが、生成AIの普及でクライアントからの「AI導入支援」依頼が急増。社内にG検定・E資格保有者が1名しかおらず、提案機会を逃していた。全社的なAIリスキリングが急務だったが、通常業務を止められない。

人への投資促進コースの「教育訓練短時間勤務等制度」は、こうした悩みに直接応える制度。30回以上の所定労働時間短縮と所定外労働免除を制度化することで、従業員が業務時間内に学習できる仕組みを整えられる。

申請で工夫したこと

教育訓練短時間勤務等制度(30回以上の所定労働時間短縮+所定外労働免除)を就業規則に導入。AI関連資格(G検定・E資格・AWS認定等)の受験対策として、週2回・1回2時間の勤務時間短縮を3名に3か月間適用した。短縮時間中は社内のオンライン学習環境で自習。

特筆すべきは、教育訓練短時間勤務等制度で受講する訓練についても、OFF-JTの最低時間数要件(1コースあたり10時間以上)が課される点。B社では週2時間×12週=24時間のコース設計とし、この要件をクリアした。eラーニングや通信制の扱いは労働局により解釈が異なる場合があるため、事前確認が必要。

試算される助成額

助成項目 金額(目安)
教育訓練短時間勤務等制度導入 20万円(定額)
合計 20万円

制度導入の20万円は少額に見えるが、就業規則の整備コスト(社労士報酬含む)の大部分をカバーできる。さらに、短時間勤務制度を整備することで「資格取得支援あり」と求人票に明記でき、採用競争力の強化にもつながる。正直、20万円以上の副次効果がある。


小売業C社(従業員120名)が教育訓練休暇制度で全社DX研修を実施した想定シナリオ

事例区分:想定シナリオ(制度の仕組みに基づく試算例。実在の企業・案件ではありません)

なぜこのコースを選んだか

C社は地方で5店舗を展開する食品スーパー。POSデータ分析のAI化と在庫管理の自動化を進めたかったが、パート従業員を含めた全社員のデジタルリテラシーが低く、ツールを導入しても使えない状態だった。正社員20名に対して、3日間の集中DX研修を企画。

人への投資促進コースの「教育訓練休暇制度」は、3年間に5日以上の取得が可能な有給教育訓練休暇を制度化するもの。これにより正社員が安心して研修に参加できる環境を整えた上で、制度導入に対して30万円の定額助成が受けられる。

申請で工夫したこと

教育訓練休暇制度(3年間に5日以上の取得が可能な有給休暇)を就業規則に導入。正社員20名全員を対象に、初年度に3日間のDX基礎研修を実施。研修は外部講師を招いての集合型OFF-JTとし、制度導入後に適用を開始した。

就業規則の整備にあたっては、常時10名以上の従業員を雇用する事業場であるため、労働基準監督署への届出が必要。社労士に依頼し、制度導入・適用計画届の提出と就業規則変更届を同時に進めた。

試算される助成額

助成項目 金額(目安)
教育訓練休暇制度導入 30万円(定額)
合計 30万円

3日間×20名の研修費用(講師料+教材費で約60万円想定)に対して、制度導入助成30万円で約半分をカバー。さらに人材育成支援コース(訓練経費助成率60%)と併用すれば、訓練経費の60%も助成対象となり、実質的な事業主負担を大幅に圧縮できる可能性がある。具体的な併用申請のノウハウについては「人材育成支援コース活用事例」も参考になる。



申請の流れ — 制度導入から助成金受給までのステップ

人への投資促進コースの申請は、大きく5つのステップで進みます。

Step 1: 訓練計画の策定(1〜2週間)

まず、どの従業員にどんな訓練を受けさせるか計画を立てます。長期教育訓練休暇制度なら30日以上の休暇が必要な訓練、教育訓練短時間勤務等制度なら30回以上の勤務時間短縮が必要な訓練を選定します。AI分野であれば、大学院のAI専攻コース、専門学校のデータサイエンス講座、JDLA認定のE資格対策講座などが候補になります。

Step 2: 就業規則の整備(2〜4週間)

選定した制度に合わせて就業規則を改定します。社労士に依頼するケースがほとんどで、報酬の目安は5〜10万円。常時10名以上の事業場は労働基準監督署への届出が必要です。届出の受理までに2〜4週間かかるため、早めの着手が肝心です。

Step 3: 計画届の提出(訓練開始の1か月前まで)

職業訓練実施計画届を管轄の都道府県労働局に提出します。計画届には訓練の内容、期間、対象労働者、訓練機関の情報などを記載。不備があると差し戻しになるため、社労士のチェックを受けてから提出するのが無難です。

Step 4: 訓練の実施と制度の適用

計画届が受理されたら、計画に沿って訓練を実施します。長期教育訓練休暇制度なら従業員に実際に休暇を取得させ、教育訓練短時間勤務等制度なら勤務時間の短縮を適用します。制度を「導入した」だけでなく「実際に適用した」ことが支給要件です。

Step 5: 支給申請と受給

訓練終了後、2か月以内に支給申請書を提出します。必要書類には、訓練の実施を証明する資料(出席簿、修了証など)、賃金の支払いを証明する資料(賃金台帳)、就業規則の写しなどが含まれます。申請から実際の入金までは、通常2〜3か月程度かかります。

全体のリードタイムは、制度導入の検討開始から助成金の入金まで最短で約4か月、余裕をもって半年は見ておくべきです。特にAI研修の場合は訓練機関の選定やカリキュラム調整に時間がかかるため、早めの情報収集をおすすめします。

なお、ここで紹介した3つの事例はいずれも「想定シナリオ」であり、実際の助成額は申請内容や労働局の審査によって変動します。自社の状況に合わせた具体的な試算は、管轄の都道府県労働局または社会保険労務士にご相談ください。特にAI・DX分野の訓練は「職務に関連した専門的な知識及び技能の習得」に該当するかの判断がケースバイケースになるため、事前確認が不可欠です。

また、本コースは令和8年度(2026年度)までの時限措置であるため、導入を検討されている企業は早めの情報収集をおすすめします。延長の可否は現時点では未定であり、年度内の予算執行状況によっては早期に受付終了となる可能性もあります。厚生労働省の公式サイトで最新の公募状況を随時ご確認ください。

3つの事例から見える成功パターン

3つの想定シナリオに共通するポイントを整理する。

① 「制度導入」が最初の関門 — このコースの最大の特徴は、訓練経費助成ではなく「制度導入」への助成が軸であること。就業規則の整備が必須であり、社労士との連携が事実上の前提条件となる。社労士報酬の相場は就業規則変更で5〜10万円程度だが、このコースの制度導入助成でそのコストを十分回収できる。

② 人材育成支援コースとの併用がカギ — 人への投資促進コースだけでは訓練経費そのものはカバーされない。訓練経費の助成を受けたい場合は「人材育成支援コース」等の他メニューとの併用がポイント。ただし、併給可否は労働局によって判断が分かれる場合があるため、事前相談が必須。

③ 期間限定措置であることの意識 — 令和8年度(2026年度)までの措置。現時点で延長は発表されていないため、活用を検討している企業は早めの制度導入が得策。ぶっちゃけ「来年で終わるかも」と思って動いた方がいい。

④ 制度そのものが人材定着に効く — 助成金額以上に「長期教育訓練休暇制度がある会社」というブランディング効果は侮れない。AI人材の採用市場では、学習機会の充実が決め手になるケースが増えている。

⑤ 中小企業こそ恩恵が大きい — 長期教育訓練休暇制度の賃金助成は、中小企業で1,000円/h、大企業で800円/hと差が設けられている。従業員数100名以下の企業は特に制度の恩恵を受けやすい。


申請前に必ず確認すべき5つのチェックポイント

  1. 就業規則の整備:制度導入には就業規則への規定が必須。常時10名以上の事業場は労働基準監督署への届出も必要。届出が受理されるまでに2〜4週間程度かかるため、余裕をもったスケジュール設計が重要。
  2. 訓練内容の適格性:対象となる訓練には一定の要件がある。OFF-JTの最低時間数要件(1コースあたり10時間以上)を満たしていること。eラーニング・通信制の扱いは労働局によって解釈が異なる場合があるため要確認。
  3. 不正受給のリスク認識:「訓練経費が無料になる」という勧誘は危険サイン。事業主が全額負担したことの証明が必須。不正受給と判断された場合、会社名・代表者名の公表、不正受給額の返還+2割相当額+延滞金、5年間の雇用関係助成金支給停止などの制裁がある。
  4. 他の助成金との併給制限:教育訓練給付金との二重取り等はできない。同じ訓練に対して複数の助成金を重複申請することは制度上不可。事前に管轄労働局で確認。
  5. 計画届の提出期限:訓練開始前に職業訓練実施計画届を提出する必要がある。事後申請は一切認められないため、訓練開始の少なくとも1か月前には届出を完了させておくこと。

人への投資促進コースと他メニューの比較表

メニュー 主な助成対象 中小企業の主な助成内容
人材育成支援コース 訓練経費+賃金助成 経費60%+加算15%、賃金800円/h
教育訓練休暇等付与コース 休暇制度導入+賃金助成 制度導入30万円
人への投資促進コース 長期休暇制度+短時間勤務制度導入 制度導入20〜30万円+賃金1,000円/h(中小)
事業展開等リスキリング支援コース 新規事業向け訓練経費+賃金助成 経費75%、賃金1,000円/h(中小)

人への投資促進コースのユニークさは「制度づくり」に助成がつく点。訓練そのものより「学べる環境整備」に投資したい企業に最適な選択肢だ。



なぜ「人への投資促進コース」がAI人材育成にフィットするのか

人材開発支援助成金には複数のコースがありますが、AI・DX人材の育成において「人への投資促進コース」が特にマッチする理由を整理します。

長期の学習期間が必要なAIスキルとの相性がいい — AIエンジニアの育成には通常6か月〜1年の学習期間が必要です。通常の「人材育成支援コース」では短期の集合研修が中心ですが、長期教育訓練休暇制度なら大学院の半年コースや専門学校の1年コースにも対応できます。これはAI分野特有の「学習の長期性」に直接応える仕組みです。

業務を止めずに学べる仕組みをつくれる — 中小企業の多くは「研修に人を出すと現場が回らない」というジレンマを抱えています。教育訓練短時間勤務等制度なら、週に数時間の勤務短縮で段階的に学習を進められるため、業務と学習の両立が可能です。実際に導入した企業からは「週2回2時間の短縮なら業務への影響は最小限だった」という声が聞かれます。

制度導入そのものが採用ブランディングになる — 人材開発支援助成金の多くは「訓練を実施したこと」への助成ですが、人への投資促進コースは「学べる制度をつくったこと」にも助成がつきます。求人票に「長期教育訓練休暇制度あり」「AI資格取得のための短時間勤務制度あり」と書けることは、AI人材の採用市場で大きな差別化要因になります。特に第二新卒や若手エンジニアの採用では、「研修制度の充実度」が入社の決め手になるケースが増えています。

知識集約型産業への転換を後押しする — 製造業や小売業など、これまで「人への投資」が後回しになりがちだった業種こそ、このコースの恩恵が大きいと言えます。AI導入の成否は「ツールを入れること」より「使える人を育てること」にかかっています。人への投資促進コースは、まさにその「使える人を育てる仕組み」に国がお金を出す制度です。

よくある質問

Q1. 人への投資促進コースはいつまで利用できますか?

令和4年度から令和8年度(2026年度)までの期間限定措置です。現時点で延長は発表されていません。最新は公式サイトでご確認ください。

Q2. 制度導入だけでも助成は受けられますか?

はい。教育訓練休暇制度の導入に30万円、長期教育訓練休暇制度の導入に20万円、教育訓練短時間勤務等制度の導入に20万円。実際の適用(従業員利用)までが要件です。

Q3. AI・DX分野のeラーニング研修は対象になりますか?

教育訓練の実施方法については、eラーニング・通信制の扱いが労働局によって解釈が異なる場合があります。OFF-JTの最低時間数要件(1コースあたり10時間以上)も満たす必要があります。事前に管轄労働局にご確認ください。

Q4. 他の助成金と併用できますか?

人材育成支援コース等他のコースとの併用は労働局の判断によります。人への投資促進コースと教育訓練休暇等付与コースの同時受給は事前確認推奨です。

Q5. パート従業員も対象になりますか?

雇用保険の被保険者であることが原則です。詳細は制度メニューにより異なりますので管轄労働局でご確認ください。


公式情報リンク集(必ず最新の公募要領で確認してください)

公式情報リンク集(必ず最新の公募要領で確認してください)

本記事の制度詳細・助成額・助成率・対象要件は予告なく改正される場合があります。申請前に必ず以下の公式情報源で最新の公募要領をご確認ください。

注記:本記事は2026年7月時点の公開情報(厚生労働省リーフレット「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース)のご案内(詳細版)」等)をもとに編集しています。制度名・助成額・助成率・スケジュール等は変更される可能性があります。最終的な可否判断は、管轄の都道府県労働局・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

AI導入のご計画や人材育成に関するご質問は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。


この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。

この記事の執筆・運営

佐藤 傑 株式会社Uravation 代表取締役CEO

生成AI研修・AI導入コンサルティングの株式会社Uravation代表。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。法人向けAI研修の受講者4,000名以上、AI導入支援100社以上。

補助金・助成金の金額・要件・締切等は、省庁・自治体の公式公表資料(一次情報)を確認のうえ執筆しています。制度は改定されるため、申請前に必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。

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