2026年6月29日に公募要領が公開された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回は、電子申請の受付が2026年9月30日(水)に始まる。公募要領は7月17日にバージョン1.1へ改訂され、当初予定していた8月31日受付開始・9月30日締切から、受付開始9月30日・締切10月30日18:00へと1か月後ろ倒しになった経緯がある。この後ろ倒しで生まれた1か月強の準備期間を、事業計画書の作成だけでなく「加点」を取りに行く時間に使えるかどうかで、採択の可能性はかなり変わってくる。
この補助金には17の加点項目があり、そのうち少なくとも6つは、事前に取得しておく認定・宣言制度が土台になっている。パートナーシップ構築宣言、くるみん認定、えるぼし認定、健康経営優良法人、事業継続力強化計画、DX認定の6つだ。正直、どれも名前は聞いたことがあっても「うちはどれを取ればいいのか」「間に合うのか」が分からないまま後回しにしている経営者は多い。この記事では、6制度を取得の速さと効果の両面から比較し、9月30日の受付開始までに何をすべきかを整理する。

結論から先に — 6制度の取得しやすさ早見表
まず全体像をつかんでおこう。取得までにかかる労力と、代表的な対象企業を一覧にした。
| 制度名 | 取得の性質 | 対象になりやすい企業 | 今から間に合うか |
|---|---|---|---|
| パートナーシップ構築宣言 | 宣言文を作成しポータルサイトで公表するだけ。審査なし | 下請取引がある全企業 | ◎ 数日で間に合う |
| 事業継続力強化計画 | 電子申請+審査。策定の手引きに沿って計画を作れば認定率は高い | 防災・BCPに取り組む意思がある企業 | ○ 早めに着手すれば間に合う |
| DX認定 | 自己適合宣言型。DX戦略の策定・開示が前提 | ITツールでなく経営戦略としてDXを進めている企業 | △ 戦略の言語化に時間がかかる |
| 健康経営優良法人 | 健康経営度調査票への回答+審査。認定は年1回サイクル | 従業員の健康管理に取り組んでいる企業 | △ 次回認定サイクル次第 |
| くるみん認定 | 一般事業主行動計画を策定し、目標を達成してから申請 | 子育て支援の実績が積み上がっている企業 | × 今から新規は間に合いにくい |
| えるぼし認定 | 女性活躍に関する数値目標を満たした実績が必要 | 女性の管理職登用・採用実績がある企業 | × 今から新規は間に合いにくい |
ここで誤解してほしくないのは、「間に合いにくい」=「取る意味がない」ではないということだ。今回の第1回に間に合わなくても、次回以降の公募や他の補助金の加点として効いてくる。9月30日の受付開始だけを見て一喜一憂せず、中長期の加点戦略として捉えるのが正しい距離感だと思う。
そもそも「加点」は審査にどれくらい効くのか
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領では、「加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります」と明記されている。つまり、10月30日の締切日にその条件をクリアしていなければ、加点そのものが成立しない。ここが実務上いちばんの落とし穴になりやすい。
公募要領に列挙されている加点項目は全部で17。パートナーシップ構築宣言加点、くるみん加点、えるぼし加点、健康経営優良法人加点、再生事業者加点、経営革新計画加点、事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画加点、DX認定加点、J-Startup加点、輸出関連プログラム加点(グローバル枠のみ)、研究開発費計上に係る加点、技術情報管理認証制度加点、成長加速マッチングサービス加点、アトツギ甲子園加点、最低賃金引上げに係る加点が2種類、という構成だ。このうち本記事で比較する6つは、事前に「認定」や「宣言」という形で取得しておく必要があるタイプに絞っている。

もう一点、見落とされがちなのが「加点は必須ではない」という点だ。加点項目がゼロでも申請自体はできる。ただ、審査は相対評価であり、同水準の事業計画同士なら加点の有無が採択・不採択を分けることは十分にありうる。だからこそ、締切までの時間を使って「取れるものから取る」という発想が現実的になる。
最速で取れる加点 — パートナーシップ構築宣言
6つのうちもっとも取得が速いのがパートナーシップ構築宣言だ。運営する「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで宣言文のひな形をダウンロードし、代表者名で宣言し、オンラインで登録するだけで完了する。第三者による審査はない。
ここで一つ注意が必要だ。今回の補助金の加点要件は「令和8年1月1日に更新されたひな形を利用して宣言を公表している事業者」と条件付けられている。つまり、それより前の旧ひな形のまま宣言している企業は、加点の対象外になる可能性がある。すでに宣言済みの企業ほど見落としやすいポイントなので、ポータルサイトで自社の宣言内容と公表日を確認しておくべきだ。宣言の作り方や記載すべき項目の詳細は、パートナーシップ構築宣言とは?補助金加点とひな形2026年版で個別に解説している。
自己申請型で認定率が比較的高い — 事業継続力強化計画
事業継続力強化計画(通称ジギョケイ)は、防災・減災の事前対策をまとめた計画を経済産業大臣が認定する制度だ。電子申請システムからGビズIDを使って申請する点はパートナーシップ構築宣言と異なり、内容の審査を経て認定される。とはいえ、中小企業庁が公開している策定の手引きに沿って項目を埋めていけば作成できる設計になっており、他の認定制度と比べると取り組みやすい部類に入る。
連携型(複数企業が連携して策定する形式)を選べば、取引先や地域の企業と共同で認定を受けることもできる。自社の防災対策を棚卸しする機会にもなるため、補助金の加点だけを目的にせず、事業継続そのものの見直しとしても意味がある制度だ。具体的な記載例や申請の流れは、事業継続力強化計画とは?認定の書き方・補助金加点・税制優遇にまとめている。
審査に時間がかかる本格派 — 健康経営優良法人
健康経営優良法人は、従業員の健康管理を経営的な視点で行っている法人を認定する制度で、「ACTION!健康経営」ポータルサイトから健康経営度調査票に回答し、審査を経て認定される。大規模法人部門と中小規模法人部門があり、中小企業の多くは中小規模法人部門で申請することになる。
この制度の特徴は、認定サイクルが年1回にほぼ固定されている点だ。調査票の回答時期・審査期間・認定発表時期があらかじめ決まっているため、思い立ってすぐ取れるものではない。今回の第1回に間に合わせるつもりなら、次の認定発表がいつになるかを「ACTION!健康経営」ポータルサイトで確認し、逆算して準備を始める必要がある。基準や申請の流れは健康経営優良法人2026とは?認定の取り方と補助金加点を解説で解説済みだ。
数値目標をクリアして初めて取れる — くるみん認定・えるぼし認定
くるみん認定とえるぼし認定は、他の4制度と性質がやや異なる。宣言や計画書の提出だけでなく、「一般事業主行動計画」を策定し、計画期間中に定めた数値目標を実際に達成した実績を厚生労働大臣に認定してもらう仕組みだからだ。
くるみん認定は次世代育成支援対策推進法に基づく「子育てサポート企業」の認定で、男性の育児休業取得率など複数の基準を満たす必要がある。えるぼし認定は女性活躍推進法に基づく認定で、女性の採用比率・管理職比率などの基準がある。どちらも行動計画の策定から実績の達成、申請までに一定の期間を要するため、今から着手して10月30日の締切に間に合わせるのは正直厳しい。すでに一般事業主行動計画を公表していて、基準に近い実績がある企業以外は、今回は加点を狙わず、次の公募や他の補助金・助成金に向けて準備を進めるのが現実的だろう。基準の詳細はくるみん認定とは?基準・申請方法と助成金への効果とえるぼし認定とは?2026年4月改正の基準とAI補助金加点にそれぞれまとめている。
なお、人材開発支援助成金など労務系の助成金では、同じ厚生労働省系の認定として「もにす認定」(障害者雇用に関する認定)が加点や優遇の対象になることもある。もにす認定は今回の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の加点項目には含まれていないが、他の補助金・助成金を検討する際の選択肢としてもにす認定とは?50点満点の基準と申請のコツを参考にしてほしい。

ITツールでなく「経営戦略」を認定する — DX認定
DX認定は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が所管する制度で、「DX推進のための経営ビジョン・戦略を策定し、社内外に公表している」ことなどを国が定めた指針に基づいて認定するものだ。ツールの導入実績ではなく、経営としてDXにどう取り組むかという方針そのものが審査対象になる。
2025年8月からは申請方法がウェブフォーム入力に切り替わっており、事前にGビズIDを準備したうえで、DX推進ポータル上のフォームに申請内容を入力する流れになる。書類のフォーマット作成に時間がかかっていた従来方式よりは着手しやすくなったが、それでも「自社のDX戦略を言葉にする」という作業自体には相応の時間がかかる。すでに社内でDX方針を議論している企業なら、その内容を申請フォームに落とし込むだけで済むケースもある。申請の勘所はDX認定申請ガイド|ものづくり補助金加点取得を参照してほしい。

加点はどこまで積み上げられるか — 併用の考え方
17ある加点項目のうち、複数を同時に満たしていれば、その分だけ加点を積み上げて申請できる。たとえばパートナーシップ構築宣言と事業継続力強化計画は、どちらも第三者資格を必要としないため、両方を今から取得して申請に間に合わせることも十分現実的だ。そこにDX認定や健康経営優良法人を組み合わせられれば、より厚みのある申請になる。
ただし、加点項目は「多ければ多いほど良い」と単純化しすぎるのも危険だ。公募要領には、加点項目を申請したにもかかわらず、その後の事業化状況報告等で要件を達成できていないことが判明した場合の扱いについても言及がある。取得見込みが不確実な加点を無理に積み増すより、確実に維持できる加点を優先するほうが、結果として審査でもリスクなく評価される。
【要注意】認定加点でよくある失敗パターン
認定加点まわりで実際によくあるすれ違いを、❌⭕形式で整理しておく。
❌ パートナーシップ構築宣言を2年前に宣言したまま放置している
⭕ ポータルサイトで自社の宣言が「令和8年1月1日改正のひな形」に基づいているか確認し、古い場合は宣言し直す
❌ 「くるみんは大企業向けだから」と最初から検討対象から外す
⭕ 中小企業でも取得している事例は多い。今回の締切には間に合わなくても、次の公募や人材開発支援助成金など他制度のために今から行動計画の策定を始める
❌ 加点項目をとりあえず全部申請しておく
⭕ 申請締切日時点で確実に要件を満たしているものだけを申請する。未達が後で発覚すると事業化状況報告等で扱いが問題になる
❌ 健康経営優良法人の認定サイクルを確認せずに「今から申請すれば間に合う」と思い込む
⭕ 調査票の回答時期と審査期間をポータルサイトで確認し、今回の第1回に間に合うかを早い段階で見極める

新事業進出・ものづくり補助金 第1回のスケジュールと今からやるべきこと
最後に、今回の公募全体のスケジュールを整理しておく。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年6月29日(月) | 公募開始・公募要領公開(バージョン1.0) |
| 2026年7月17日 | 公募要領がバージョン1.1へ改訂。公募期間(受付開始・締切)を変更 |
| 2026年8月14日 | 公募要領がバージョン1.2へ改訂。加点項目・対象経費等の説明を補記・修正 |
| 2026年9月30日(水) | 電子申請の受付開始 |
| 2026年10月30日(金)18:00 | 応募申請締切(厳守) |
| 2027年1月頃(予定) | 補助金交付候補者の採択発表 |
公募要領は6月の公開後も2度改訂されている。今回のように条件や日程が変わることは珍しくないため、申請直前には必ず新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公式サイトで最新版の公募要領を確認してほしい。事業計画書の書き方や対象経費、3つの枠(革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠)の詳細な比較は、新事業進出・ものづくり統合補助金 第1回|3枠の上限額・補助率・申請完全ガイド、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 事業計画書の書き方|審査項目から逆算、新事業進出・ものづくり補助金 第1回|経費9区分と按分・相見積り実務で個別に扱っているので、あわせて確認してほしい。他の補助金の締切スケジュールと横並びで見たい場合は、【2026年8-12月】5大補助金の締切スケジュール総まとめも参考になる。
よくある質問
Q1. 加点項目は何個まで申請できますか?
A. 公募要領上、申請できる加点項目の数に上限は示されていない。ただし、それぞれの要件を申請締切日時点で満たしている必要がある。
Q2. くるみんとえるぼし、どちらを優先して取るべきですか?
A. どちらも一般事業主行動計画の策定から実績達成までに時間がかかる点は共通している。自社の実績(育児休業取得率が高いか、女性の採用・登用実績があるか)に応じて、より基準に近いほうから検討するのが現実的だ。今回の締切に間に合わないなら、次回以降の公募や他の助成金に向けて準備するという考え方でよい。
Q3. 認定・宣言を何も持っていなくても申請できますか?
A. できる。加点項目はあくまで審査の上乗せ要素であり、必須要件ではない。事業計画の内容そのものの評価が土台になる。
Q4. パートナーシップ構築宣言はどこで宣言すればいいですか?
A. 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトからひな形をダウンロードし、代表者名で宣言文を作成してオンラインで登録する。今回の加点対象は「令和8年1月1日に更新されたひな形」を使った宣言に限られる点に注意してほしい。
Q5. これらの認定は新事業進出・ものづくり補助金以外でも使えますか?
A. パートナーシップ構築宣言やくるみん・えるぼし認定は、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など他の補助金でも加点対象になっているケースが多い。ただし対象となる加点項目は補助金ごとに公募要領で定められているため、申請する制度の公募要領で個別に確認してほしい。
まとめにかえて
9月30日の受付開始まで、今日の時点で1か月ほどある。パートナーシップ構築宣言のひな形を確認し直すだけなら数日で終わる。事業継続力強化計画やDX認定も、今から着手すれば十分間に合う射程距離にある。逆に、くるみんやえるぼしのように実績の積み上げが前提の制度は、今回にこだわらず中長期の課題として位置づけたほうが建設的だ。事業計画書の作成に気を取られて加点の準備が後回しになりがちだが、締切までの残り時間を「取れる加点から確実に取る」ことに少しでも振り向けてみてほしい。
執筆: 株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修: 佐藤 傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。AI導入と補助金・助成金活用の実務知見をもとに、中小企業のDX推進をサポートしている。
AI導入の計画策定や、どの補助金・加点制度が自社に合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
免責事項
本記事の情報は2026年8月21日時点で公開されている中小企業庁「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」公募要領(バージョン1.2)および各認定・宣言制度の公式サイトの公表資料に基づく参考情報です。公募要領はこれまでに複数回改訂されており、今後も内容が変更される可能性があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領・募集要項をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。また、本記事は行政書士等による申請代行を提供するものではなく、AI導入・DX推進に関する計画策定支援を目的としています。
参考・出典
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026-08-21)
- 公募スケジュール|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-08-21)
- 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト — 公益財団法人全国中小企業振興機関協会(参照日: 2026-08-21)
- パートナーシップ構築宣言のひな形を改正します(令和8年1月1日改正) — 経済産業省(参照日: 2026-08-21)
- 事業継続力強化計画 — 中小企業庁(参照日: 2026-08-21)
- 健康経営優良法人認定制度 — 経済産業省(参照日: 2026-08-21)
- くるみん認定・プラチナくるみん認定・トライくるみん認定とは — 厚生労働省「両立支援のひろば」(参照日: 2026-08-21)
- DX認定制度のご案内 — 独立行政法人情報処理推進機構(参照日: 2026-08-21)
