えるぼし認定の基準が2026年4月1日に改正されました。最大の変更点は3つ——1段階目の認定基準が「改善傾向にあること」を条件に取りやすくなったこと、女性の健康支援に取り組む企業向けの新区分「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」が新設されたこと、そして情報公表の義務対象が常時雇用労働者301人以上から101人以上に広がったことです。根拠となる省令は令和7年12月23日に公布されています。
あまり大きく報じられていませんが、実務上のインパクトは小さくありません。えるぼし認定は「デジタル化・AI導入補助金2026」をはじめ複数の補助金で加点項目に採用されているからです。この記事では、2026年8月時点の改正内容を整理したうえで、補助金の加点にどうつながるのかを見ていきます。
えるぼし認定という制度の基本情報
えるぼし認定は、女性活躍推進法にもとづき厚生労働大臣が女性の活躍を推進する企業を認定する制度です。まずは制度の骨格を押さえておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | えるぼし認定・プラチナえるぼし認定(女性活躍推進企業認定) |
| 根拠法 | 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法) |
| 所管・申請窓口 | 厚生労働省/都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) |
| 認定区分 | 1段階目・2段階目・3段階目・プラチナえるぼし(2026年4月からえるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスを新設) |
| 直近の改正 | 2026年4月1日施行(省令公布:令和7年12月23日) |
| 認定企業数 | 3,490社(うちプラチナえるぼし83社、令和7年4月末時点・厚生労働省公表) |
| 申請費用 | 行動計画の届出・認定申請そのものに手数料はかかりません |
認定は「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5項目のうち、満たした項目数に応じて段階が決まる仕組みです。満たす項目が1〜2個で1段階目、3〜4個で2段階目、5項目すべてで3段階目——という積み上げ式になっています。制度の全体像は、他の主要補助金との比較がAI導入に使える補助金の徹底比較でも扱っているので、あわせて確認してみてください。
2026年4月の改正点まとめ
今回の改正で変わった点を、施行前後で並べると次のようになります。
| 項目 | 2026年3月まで | 2026年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 1段階目の基準 | 実質的に2年以上連続の改善が必要 | 「改善傾向」の考え方を明確化し取得しやすく緩和 |
| 認定区分 | 1〜3段階目・プラチナの4区分 | 上記に加え「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」を新設 |
| 情報公表の義務対象 | 常時雇用労働者301人以上 | 常時雇用労働者101人以上に拡大 |
| プラチナの基準(2026年10月〜) | — | 求職者等へのセクハラ防止措置の公表を追加予定 |
正直なところ、これだけ見ても「自社に関係あるのか」判断しづらいと思います。次の項目から、それぞれの変更点を一つずつ具体的に見ていきます。
1段階目基準の緩和は何が変わったのか
これまでの1段階目の運用は、実質的に「2事業年度連続で数値が改善していること」が前提でした。1年だけ数値が良くても、翌年に足踏みすると認定ラインから外れてしまう——という声が中小企業の担当者から多く上がっていた部分です。
2026年4月以降は、これに加えて「3事業年度の平均値を比較して改善傾向にあること(A>B>Cのように段階的に良くなっていること)」という考え方が明示されました。単年度の数字がぶれても、複数年の傾向で改善が読み取れれば1段階目の対象になり得るということです。ただし、これはあくまで基準の見直しであり、無条件で取得できるわけではありません。自社の指標が該当するかどうかは、都道府県労働局の窓口や社労士に個別に確認するのが確実です。
えるぼしプラス・プラチナえるぼしプラスの新設
今回の改正で新しく生まれたのが「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」という区分です。既存の認定基準に加えて、女性の健康支援に関する取り組みが要件として上乗せされます。
- 不妊治療や更年期の症状などへの配慮を含む健康支援制度の整備
- 時間単位の有給休暇、在宅勤務など柔軟な働き方の選択肢
- 健康支援の方針を社内に周知し、従業員向けの研修を行っていること
- 相談を受け付ける担当者を選任し、周知していること
すでにえるぼし認定・プラチナえるぼし認定を持っている企業がさらに上位区分を目指す位置づけで、ゼロから「プラス」だけを狙うというより、既存認定の延長線上にある制度と捉えるのが実態に近いでしょう。
情報公表義務は101人以上の企業に拡大
もう一つ見逃せないのが、情報公表義務の対象拡大です。これまでは常時雇用労働者301人以上の企業が対象でしたが、2026年4月1日から101人以上300人以下の企業にも義務が広がりました。
| 企業規模 | 公表が必要な項目数 | 主な公表項目 |
|---|---|---|
| 常時雇用労働者301人以上 | 4項目以上 | 男女間賃金差異、女性管理職比率、女性の職業生活に関する機会の提供、職業生活と家庭生活の両立に資する雇用環境の整備 |
| 常時雇用労働者101〜300人 | 3項目以上 | 男女間賃金差異、女性管理職比率、機会の提供または両立支援のいずれか |
101人以上300人以下の中小企業は、これまで「行動計画の策定・届出」までが義務でしたが、今後は情報公表まで求められる点に注意が必要です。自社が対象規模にあたるかどうかは、パート・有期雇用労働者も含めた「常時雇用する労働者」の数え方を誤解しやすいポイントなので、労働局への確認をおすすめします。
デジタル化・AI導入補助金2026での加点の扱い
ここからが本題です。えるぼし認定は、複数の補助金で加点項目として採用されています。中小企業庁が公表している「デジタル化・AI導入補助金2026 加点項目一覧」(2026年6月3日更新版)を直接確認したところ、「くるみん・えるぼし認定」は通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠のすべてで加点対象になっていました。
くるみん認定と並列で扱われており、どちらか一方を持っていれば加点対象になる建て付けです。ただし、加点項目一覧のPDF自体には「何段階目から加点対象か」という詳細までは書かれていません。複数の専門家サイトでは「1段階目〜3段階目・プラチナのいずれでも対象」とする解説が一致していますが、最終的な条件は必ず公募要領本文で確認してください。
くるみん認定についてはくるみん認定とは?基準・申請方法と助成金への効果で詳しく解説しています。次世代法にもとづく制度で、根拠法も評価軸もえるぼしとは別物なので、混同しないよう注意してください。
くるみん・えるぼし以外にも、健康経営優良法人やSECURITY ACTION、パートナーシップ構築宣言といった認定・宣言制度が同じ枠組みで加点対象になっています。それぞれの内容は健康経営優良法人2026の認定ガイドやSECURITY ACTION宣言のやり方で個別に取り上げているので、加点を積み増したい場合はあわせて検討する価値があります。
常時雇用労働者100人以下なら認定なしでも加点対象になり得る
ここは意外と知られていないポイントです。常時雇用する労働者が100人以下の企業は、えるぼし認定を取得していなくても、「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」を厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースに公表するだけで、加点対象として扱われる補助金があります。次世代法にもとづく行動計画についても、両立支援のひろばへの公表で同様の扱いになる場合があります。
ただし、この「行動計画公表だけで加点」という扱いは、すべての補助金で有効なわけではありません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のように、認定取得そのものを条件にしている制度もあります。自社が申請したい補助金がどちらの扱いかは、必ず該当する公募要領の加点項目欄で確認するようにしてください。
認定取得までの流れ
ここからは実際の取得プロセスを整理します。認定は思い立ってすぐ取れるものではなく、一定の準備期間が前提になっている点は正直に共有しておきます。
- 自社の状況把握:採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアという5つの観点で、自社の実績を数値で洗い出す
- 一般事業主行動計画の策定:課題に対応した数値目標と取組内容を盛り込み、都道府県労働局へ届け出る
- 行動計画の周知・公表:社内への周知に加え、女性の活躍推進企業データベースなど所定の方法で公表する
- 計画期間中の取組の実施:計画に沿った取組を実行し、採用・継続就業などの実績を積み上げる
- 5項目の自己点検:どの項目を、いくつ満たしているかを自社で確認する
- 認定申請:基準を満たした段階で、都道府県労働局へ認定申請書類を提出する
- 審査・認定:労働局の審査を経て認定されると、認定マークの使用が可能になる
ステップ2から6までの間には、最低でも1事業年度分の取組実績が必要になるのが一般的です。「来週の補助金締切に間に合わせたいから今から認定を取る」という進め方は現実的ではなく、数か月から1年以上先を見据えた準備として位置づけるのが実態に近いでしょう。
実務でつまずきやすいポイント
思い込み1:直近の補助金締切に認定取得が間に合うと考えてしまう
❌ 「デジタル化・AI導入補助金の次回締切までに、えるぼし認定を新規取得して加点を狙う」
⭕ 直近の締切には間に合わない前提で、次回以降の公募や来年度の申請に向けて準備を始める
認定には行動計画の届出から実績の積み上げ、審査までの期間が必要です。焦って進めるより、加点なしでも通る事業計画の完成度を優先したほうが現実的なケースが多いです。
思い込み2:100人以下だから加点は無関係だと諦めてしまう
❌ 「うちは従業員50人だから、えるぼし認定なんて関係ない」
⭕ 100人以下の企業は行動計画の公表だけで加点対象になる補助金もあるため、まず該当補助金の加点項目欄を確認する
思い込み3:くるみんとえるぼしを同じ制度だと混同してしまう
❌ 「くるみん認定を取ったから、えるぼしの要件も自動的に満たしている」
⭕ くるみんは次世代育成支援対策推進法、えるぼしは女性活躍推進法という別の法律にもとづく別制度。評価する観点も異なるため、それぞれ個別に要件を確認する
思い込み4:加点条件を公募要領で確認せずに準備を進めてしまう
❌ 「加点項目一覧に載っているから、どの段階のえるぼし認定でも確実に加点される」
⭕ 加点の詳細条件(対象となる認定段階、必要な証明書類)は公募回ごとに更新される可能性があるため、申請する年度・回の公募要領本文で最終確認する
よくある質問
Q. えるぼし認定とは何ですか?
女性活躍推進法にもとづき、女性の活躍推進に関する取組が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアという5つの評価項目のうち、満たした数に応じて1〜3段階目、さらに上位のプラチナえるぼしという区分があります。
Q. えるぼし認定は何社くらいが取得していますか?
厚生労働省の公表資料によれば、令和7年4月末時点で3,490社(うちプラチナえるぼし83社)が認定を受けています。最新の認定企業一覧は厚生労働省のサイトで随時更新されているため、直近の件数を確認したい場合は公式ページをご覧ください。
Q. くるみん認定とえるぼし認定の違いは何ですか?
くるみんは次世代育成支援対策推進法にもとづく「子育てサポート企業」の認定、えるぼしは女性活躍推進法にもとづく「女性が活躍しやすい職場」の認定です。根拠法も評価する観点も異なりますが、デジタル化・AI導入補助金2026のように、どちらか一方を持っていれば加点対象になる補助金もあります。
Q. えるぼし認定を受けると補助金以外にどんなメリットがありますか?
認定マークを商品や広告、求人票に使用できるため、採用活動でのアピール材料になります。日本政策金融公庫の低利融資制度や、一部の公共調達における加点対象になるケースもあります。ただし制度や条件は変更される場合があるため、活用の際は各制度の最新情報を確認してください。
Q. 常時雇用労働者100人以下の中小企業でも補助金加点の対象になりますか?
補助金によっては、認定を取得していなくても一般事業主行動計画を所定のデータベースへ公表するだけで加点対象になる場合があります。ただし対象になるかどうかは補助金ごとに異なるため、申請予定の公募要領で個別に確認してください。
Q. 2026年10月からのプラチナえるぼしの新基準とは何ですか?
2026年10月1日から、プラチナえるぼし認定の基準に「求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していること」が追加される予定です。すでにプラチナえるぼしを取得している企業も、更新時にはこの基準への対応が必要になります。
行動計画の策定や認定申請の実務は、労務管理の専門知識が必要になる場面が少なくありません。制度の詳細や自社への当てはめ方に迷う場合は、社会保険労務士など専門家への相談も検討してください。
AI導入の計画づくりや、どの補助金の加点を狙うべきかで迷っている場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。今日できることとしては、まず自社の常時雇用労働者数を数え、101人以上か100人以下かを確認するところから始めてみるとよいでしょう。今週中には、申請予定の補助金の加点項目一覧に「くるみん・えるぼし認定」や「行動計画の公表」の記載があるかをチェックしておくと、後の準備がスムーズになります。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
参考・出典
- 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定) — 厚生労働省(参照日: 2026-08-14)
- 女性活躍推進法への取組状況(一般事業主行動計画策定届出・えるぼし認定状況) — 厚生労働省(参照日: 2026-08-14)
- 女性活躍推進法が改正されます(令和8年4月1日施行) — 北海道労働局(参照日: 2026-08-14)
- デジタル化・AI導入補助金2026 加点項目一覧 — 中小企業基盤整備機構(更新日: 2026-06-03、参照日: 2026-08-14)
- ミラサポplus 補助金・助成金情報 — 中小企業庁(参照日: 2026-08-14)
免責事項
本記事の情報は2026年8月14日時点で厚生労働省・中小企業基盤整備機構が公表している資料にもとづく参考情報です。制度内容は予告なく変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の要件・公募要領をご確認ください。本記事の情報にもとづく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
