新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領は、実は2026年7月17日にバージョン1.1へ改訂されています。表紙に記載の公募期間が変更され、申請受付開始は令和8年9月30日(水)、応募締切は令和8年10月30日(金)18:00に修正されました。6月末〜7月上旬に公開された情報をもとに「受付8月31日・締切9月30日」と記憶している方は、この記事を機に最新の要領で確認し直してください。
とはいえ、多くの申請者が最終的に一番つまずくのはスケジュールではなく「この経費、対象になるのか」という判断です。この記事では、補助率や補助上限額といった全体像には触れず(そちらは3枠の上限額・補助率・申請完全ガイドにまとめています。他のAI・DX関連補助金との比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較を参考にしてください)、公募要領第1-6章「補助対象経費」の中身だけを、実務目線で徹底的に掘り下げます。
公募要領v1.1改訂で確定した第1回スケジュール
まず前提となる日程を、公募要領PDF(バージョン1.1・2026年7月17日改訂)の記載どおりに整理します。古い情報が出回っている分野なので、必ず一次情報の日付を確認する癖をつけましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公募要領 初版公開 | 2026年6月29日(月) |
| 公募要領 改訂(v1.1) | 2026年7月17日(公募期間・補助率の対象者説明などを修正) |
| 申請受付開始 | 2026年9月30日(水) |
| 応募締切 | 2026年10月30日(金)18:00(厳守) |
| 採択発表(予定) | 2027年1月頃 |
| 申請枠 | 革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠 |
公募開始から締切まで4ヶ月以上の期間がありますが、電子申請の入力には数時間程度かかるとされており、事務局も「締切間際は申請手続きが滞る可能性がある」と注意喚起しています。全体スケジュールの詳細は8-12月の締切スケジュール総まとめもあわせてご確認ください。なお申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、電子申請システムでのみ受け付けられます。未取得の場合は経費区分の整理と並行して取得を進めておきましょう。
対象経費の大原則|「専ら補助事業のために」が判断の分かれ目
公募要領は、補助対象経費の条件を次のように定義しています。「本補助金の対象として明確に区分できるものであり、必要性及び金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できる経費」であること。言い換えると、既存事業と共用する経費、内訳が曖昧な経費は、たとえ関連性があっても対象外になります。
もう一つ重要なのが、枠ごとに「必ず計上しなければならない経費区分」が決まっている点です。
- 革新的新製品・サービス枠:機械装置・システム構築費が必須
- 新事業進出枠・グローバル枠:機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須
広告宣伝費や専門家経費だけを積み上げても、この必須区分が欠けていると事業計画そのものの説得力が弱いと判断されやすくなります。設備投資かシステム投資のどちらかを軸に据えることが、申請設計の出発点です。
3枠共通で使える7つの経費区分
3枠すべてに共通する経費区分は次の7つです。区分ごとに補助対象経費総額に対する上限比率が設定されているものもあるため、あわせて整理します。
| 経費区分 | 上限の考え方 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 区分特有の上限なし(ただし単価10万円税抜以上が対象) | 専ら補助事業に使う機械装置・工具、専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築・借用 |
| 運搬費 | 特になし | 運搬料、宅配・郵送料等 |
| 技術導入費 | 補助対象経費総額(税抜)の3分の1 | 知的財産権等の導入(実施権取得を含む)に要する経費 |
| 知的財産権等関連経費 | 補助対象経費総額(税抜)の3分の1 | 特許権等の取得に係る弁理士手続代行費、外国出願の翻訳料等 |
| 外注費 | 補助対象経費総額(税抜)の4分の1 | 検査・加工・設計等の外注。ペネトレーションテストや脆弱性診断の外注費も対象 |
| 専門家経費 | 補助対象経費総額(税抜)の5分の1 | 技術指導・助言を行う専門家への謝金・旅費(上限1日1人5万円) |
| クラウドサービス利用費 | 特になし | 専ら補助事業で使うサーバー領域・SaaS等の利用費 |
| 原材料費 | 特になし | 試作品開発に必要な原材料・副資材 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 事業計画期間1年当たりの新製品等売上見込み額(税抜)の5% | パンフレット・動画制作、PR用ウェブサイト構築、展示会出展等 |
専門家経費の謝金単価は職種で細かく分かれています。大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・医師は1日5万円以下、准教授・技術士・中小企業診断士・ITコーディネータは1日4万円以下、それ以外は1日2万円以下(いずれも上限は1日1人5万円)です。AI導入の技術指導を専門家に依頼する場合も、この単価区分と「事業計画書への概略・略歴・依頼理由の記載」が必須になります。
新事業進出枠・グローバル枠だけに追加される経費
新事業進出枠とグローバル枠には、上記7区分に加えて建物費が追加されます。さらにグローバル枠には海外旅費と通訳・翻訳費が加わり、経費区分は合計9種類になります。
| 経費区分 | 対象枠 | 上限の考え方 |
|---|---|---|
| 建物費 | 新事業進出枠・グローバル枠 | 区分特有の上限なし(減価償却資産の耐用年数省令に基づき審査) |
| 海外旅費 | グローバル枠のみ | 補助対象経費総額(税抜)の5分の1、渡航1回あたり事業者3名まで・1人50万円上限 |
| 通訳・翻訳費 | グローバル枠のみ | 30万円(税抜)が上限 |
建物費は「機械装置・システム構築費とどちらか一方が必須」という位置づけであり、単なる建物の購入・賃貸は対象外です。生産施設・加工施設・検査施設など、事業計画の実施に不可欠な建物の建設・改修に限られ、③として建物に付随する構築物の建設費も対象になりますが、必ず①の建設・改修費とセットで計上する必要があります。取得した建物を不動産賃貸に転用すると、目的外使用として残存簿価相当額の国庫返納を求められる点にも注意が必要です。
対象外になりやすい経費|AI・DX案件で特によく引っかかるもの
公募要領の「1-6-2.補助対象外となる経費」には20項目近くが列挙されています。中でもAI・DX導入の相談でよく質問される、勘違いしやすいものを抜き出します。
- ❌ 事務用のパソコン・プリンタ・タブレット端末・スマートフォン・デジタル複合機・カメラなど、汎用性があり目的外使用になり得るもの
- ❌ 切手代、電話・インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く)
- ❌ 事業に係る自社の人件費・旅費(海外旅費を除く)
- ❌ 事務所等の家賃・保証金・敷金・仲介手数料・水道光熱費
- ❌ 消費税及び地方消費税額等(公租公課)
- ❌ 諸経費・会社経費・一般管理費・現場管理費・雑費など、内訳が確認できない経費
- ❌ 中古市場で流通が薄く価格の適正性が明確でない中古品(3者以上の古物商許可事業者から型式・年式記載の相見積もりを取得している場合を除く)
- ❌ フランチャイズ加盟料、各種保険料、借入金の支払利息
- ❌ 申請者と同一の代表者・役員が含まれる事業者、みなし同一事業者、資本関係がある事業者への支払い
特に「汎用パソコン・タブレット」は、AI活用のために新しい端末を揃えたいという相談で最も誤解が多いポイントです。既存業務にも使える汎用品は原則対象外で、専ら補助事業のために使う専用ソフトウェア・システムの構築費とは扱いが異なります。
相見積り・按分・発注タイミングの実務ルール
経費区分を理解しても、手続きを誤ると対象外になります。特に重要な3つの実務ルールを整理します。
相見積りは「1件50万円」がボーダーライン
交付申請の際、契約(発注)先の選定にあたっては経済性の観点から複数見積もりの取得が求められます。契約先1件当たりの見積額合計が50万円(税抜)以上になる場合は、3者以上の同一条件による見積もりが必須です。ペーパーカンパニーや販売実績のない業者からの見積もりは認められず、金融機関確認書を発行した金融機関や事業計画作成支援者への発注・見積もり依頼も不可とされています。申請準備の段階であらかじめ複数者から見積もりを取っておくと、交付決定後にスムーズに発注へ進めます。
按分計算が必要になるケース
リース・レンタル契約やクラウドサービスの利用契約が補助事業実施期間を超える場合、対象になるのは実施期間分だけです。たとえば契約期間24ヶ月のうち補助事業実施期間が12ヶ月であれば、単純計算では経費の半分程度が対象になります(実際の按分方法は契約内容によって事務局が個別に確認します)。全額を補助対象として計上しないよう注意してください。
交付決定前の発注は原則すべて対象外
公募要領は「事前着手の禁止」を明記しています。交付決定日より前に製品購入や役務提供の契約(発注を含む)をした経費は、理由を問わず補助対象になりません。見積もり取得やヒアリングまでは申請準備として問題ありませんが、契約・発注・支払いは必ず交付決定後に行う必要があります。支払い方法にも制限があり、銀行振込による実績確認が必須です。現金払い、手形・小切手、PayPayやPayPalなどの決済サービスは補助対象として認められません。
審査項目から逆算した事業計画書の書き方は「統合補助金の事業計画書はここで差がつく」で解説しています。
経費計上でよくある不採択・減額パターン
採択されたからといって、応募時に計上した経費がそのまま全額認められるわけではありません。交付申請時・実績報告時の精査で対象外と判断されれば、交付決定額が減額されたり、最悪の場合は採択取消になるケースもあります。よくあるパターンを整理しました。
パターン1:必須経費区分を積み上げていない
❌ 専門家経費や広告宣伝費だけで事業計画を組む
⭕ 革新的新製品・サービス枠なら機械装置・システム構築費、新事業進出枠・グローバル枠なら機械装置・システム構築費か建物費のいずれかを必ず主軸に据える
パターン2:既存設備の単純な置き換え
❌ 老朽化した機械を最新機種に入れ替えるだけの計画
⭕ 新製品・新サービスの事業化、または新市場進出に直結する投資として位置づけ、事業計画書で必要性を具体的に説明する
パターン3:見積もりの妥当性を示せていない
❌ 1社の見積もりだけで高額な経費を計上する
⭕ 50万円以上の契約先は3者以上の同一条件見積もりを取得し、価格の妥当性を証憑で示す
パターン4:経費区分の大半が一過性の支出
❌ 広告宣伝費や消耗品的な経費で総額の大部分を占める計画
⭕ 事業化に必要不可欠な事業資産(機械装置・システム・建物等)を中心に据え、一過性の支出の比率を抑える
リース会社との共同申請という選択肢
初期投資を抑えたい場合、中小企業等とリース会社が共同申請する仕組みも用意されています。リース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、機械装置・システムの購入費用についてリース会社を対象に補助金を交付できる制度です。ファイナンス・リース取引に限られ、リース料軽減計算書の事務局への提出、見積もり取得は中小企業等自身が行う必要があるなど条件は細かく定められています。設備投資の資金繰りに不安がある場合は、検討の選択肢として押さえておくとよいでしょう。
よくある質問
Q1. 対象経費に一律の上限額はありますか?
A. 経費区分ごとに個別の上限が設定されています。技術導入費・知的財産権等関連経費は補助対象経費総額の3分の1、外注費は4分の1、専門家経費・海外旅費は5分の1、通訳・翻訳費は30万円が上限です。補助金全体の補助率・補助上限額は枠によって異なるため、3枠の上限額・補助率・申請完全ガイドで確認してください。
Q2. 汎用パソコンやタブレット端末は対象になりますか?
A. 原則として対象外です。汎用性があり目的外使用になり得るもの(事務用パソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電等)は、公募要領で明確に補助対象外と定められています。
Q3. 見積もりは何社から取ればいいですか?
A. 契約(発注)先1件当たりの見積額合計が50万円(税抜)以上になる場合は、3者以上の同一条件による見積もりが必要です。50万円未満でも、価格の妥当性を示すために複数見積もりを取っておくことが推奨されます。
Q4. 交付決定前に発注してもいいですか?
A. 交付決定日より前に契約(発注)した経費は補助対象になりません。見積もり収集自体は申請準備の段階で進めても問題ありませんが、契約・発注・支払いは交付決定後に行う必要があります。
Q5. リース・レンタルで機械装置を導入する場合の扱いは?
A. 交付決定後に契約したリース・レンタル料のうち、補助事業実施期間に対応する分だけが対象になります。契約期間が実施期間を超える場合は按分計算が必要です。
Q6. 支払い方法に制限はありますか?
A. 銀行振込による実績確認が必須です。現金払い、手形・小切手による支払い、PayPayやPayPalなどの決済サービスは補助対象として認められません。分割払いの場合は、すべての支払いが補助事業実施期間内に完了している必要があります。
まとめ:経費区分の整理から始める3つのアクション
- 今日やること:自社の投資計画を9区分に当てはめ、必須区分(機械装置・システム構築費または建物費)が含まれているか確認する
- 今週中:50万円以上になりそうな契約先を洗い出し、3者以上の相見積もり取得の段取りを組む
- 申請受付(9月30日)までに:交付決定前に発注しないよう、見積もり取得と契約締結のタイミングを社内で共有しておく
AI・DX導入の投資計画をどの経費区分に整理すべきか迷う場合や、専門家経費として計上できる技術指導の内容について相談したい場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。申請書の作成代行は行っておりませんが、AI導入の計画策定支援という立場でご相談に対応しています。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
参考・出典
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 特設サイト — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-07-19)
- 第1回公募要領(バージョン1.1・2026年7月17日改訂) — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-07-19)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026-07-19)
- 「新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業」第1回公募要領を公開しました — 補助金活用ナビ(中小機構)(参照日: 2026-07-19)
免責事項
本記事の情報は2026年7月19日時点で公開されている公募要領(バージョン1.1)に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容や公募スケジュールは予告なく変更される場合があります(実際に本制度も2026年7月17日に公募期間が改訂されました)。申請にあたっては、必ず特設サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
