2026年8月1日、育児休業給付金を含む雇用保険の各種給付の支給限度額が改定された。この記事を書いている2026年8月4日時点で、すでに新しい上限額が適用されている。中小企業の人事労務担当者にとっては、「育休中はいくらもらえるんですか」という従業員からの質問に、正確な数字で答えられるかどうかが問われるタイミングだ。
今回の改定で最も押さえておきたいのは、給付率67%のときの支給上限額が332,454円、給付率50%のときが248,100円に引き上げられたこと。加えて、2025年4月から始まった「出生後休業支援給付金」を組み合わせると、最初の28日間だけは給付率が最大80%まで上がる仕組みも、あわせて理解しておく必要がある。
令和8年8月1日から何が変わったのか
育児休業給付金をはじめとする雇用保険の給付は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減にあわせて、毎年8月1日に支給限度額が見直される。今回の改定内容は次の通りだ。
| 項目 | 令和7年8月1日〜 | 令和8年8月1日〜(現在) |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 支給上限額(給付率67%) | 323,811円 | 332,454円 |
| 育児休業給付金 支給上限額(給付率50%) | 241,650円 | 248,100円 |
| 出生時育児休業給付金 支給上限額(給付率67%) | 302,223円 | 310,290円 |
| 出生後休業支援給付金 支給上限額(給付率13%) | 58,640円 | 60,205円 |
| 休業開始時の賃金月額 上限額 | 483,300円 | 496,200円 |
| 休業開始時の賃金月額 下限額 | 90,420円 | 96,090円 |
出典:厚生労働省「高年齢雇用継続給付金、介護休業給付金、育児休業等給付の受給者の皆さまへ」(参照日:2026年8月4日)
額面だけ見ると数千円〜1万円弱の引き上げにすぎない。ただし、この上限額は「賃金が高い社員ほど頭打ちになる」という育児休業給付金の設計を理解するうえで欠かせない基準値になる。詳しい理由は後述する。
育児休業給付金の計算式——「賃金日額×支給日数×給付率」の中身
育児休業給付金の金額は、次の式で決まる。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数(通常30日) × 給付率(67%または50%)
「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6か月間に支払われた賃金の総額(基本給・諸手当・残業代を含み、賞与は含まない)を180で割った金額だ。「育休手当 計算 いつの給与」で検索する担当者が多いのも、この起算点が直感的にわかりにくいからだろう。答えは「育休開始日の直前6か月分の給与」であり、育休中の賃金ではない。
給付率は最初から一律ではない。育児休業開始から180日目までは67%、181日目以降は50%に切り替わる。1年前後の育休を取る社員が多い会社では、開始から半年ほど経ったところで振込額が下がることを、事前に伝えておいたほうが親切だ。
そして、この賃金日額には上限と下限がある。上限を超える高収入層は、実際の賃金ではなく上限額をベースに計算される。ここが「うちの給料なら67%もらえるはず」という誤解の温床になりやすい。
出生後休業支援給付金を足すと最大80%になる仕組み
正直なところ、この制度をきちんと説明できる人事担当者はまだ多くない。2025年4月に始まったばかりで、社内マニュアルの更新が追いついていない会社もあるはずだ。
出生後休業支援給付金は、夫婦とも14日以上の育児休業を取得した場合に、最初の28日間に限り給付率13%相当が上乗せされる制度だ。通常の育児休業給付金(67%)と合算すると、給付率は最大80%になる。手取りベースで見ると、休業前とほぼ同水準の収入が確保される設計になっている。
- 父親は、子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得する必要がある
- 母親は、産後休業(産後8週間)後に14日以上の育児休業を取得する必要がある
- 配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などは、本人のみの育休取得で受け取れる
- 申請は勤務先を経由してハローワークへ提出する必要がある
出典:厚生労働省「育児休業を取得される方へ(出生後休業支援給付)」(参照日:2026年8月4日)
この給付金は独立した13%ではなく、あくまで育児休業給付金(または出生時育児休業給付金)に上乗せする形で支給される。「育休給付とは別に、もう一つ申請が要る」と説明すると、従業員側もイメージしやすい。
給与別シミュレーション——結局いくらもらえるのか
従業員に説明するとき、一番刺さるのは自分の月給に近い具体例だ。3つのモデルで概算してみる。いずれも賃金日額は「月給÷30」で簡易的に近似した参考値であり、実際は直近6か月の総支給額から算出される点に注意してほしい。
| 月給の目安 | 賃金日額(概算) | 67%期間(月あたり) | 50%期間(月あたり) |
|---|---|---|---|
| 25万円 | 約8,333円 | 約16.7万円 | 約12.5万円 |
| 40万円 | 約13,333円 | 約26.8万円 | 約20.0万円 |
| 55万円(上限超) | 上限16,540円を適用 | 332,454円(上限) | 248,100円(上限) |
月給55万円のケースがポイントだ。額面通りに計算すれば67%は約36.9万円になるはずだが、賃金月額の上限(496,200円)を超えているため、実際には上限額の332,454円で頭打ちになる。「給料が高い人ほど、実質の給付率は67%より低くなる」というのは、人事担当者が説明を求められたときに誤解が起きやすいポイントだ。
出生後休業支援給付金を使えるケースでは、これに加えて最初の28日間だけ13%相当(上限60,205円)が上乗せされる。たとえば月給40万円の社員であれば、28日間の上乗せ額は概算で約4.9万円。67%分の月換算額(約26.8万円)とあわせて考えると、この期間はほぼ手取りが休業前と変わらない水準になる、というのが厚生労働省の説明だ。
従業員から聞かれたときに押さえておきたい支給要件
金額の話の前に、そもそも「もらえるかどうか」を確認する必要がある。基本的な要件は次の通りだ。
- 雇用保険の被保険者であること——正社員に限らず、要件を満たせばパート・契約社員も対象になる
- 1歳(延長要件を満たせば最長2歳)未満の子を養育するための育児休業であること
- 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または就業した時間数が80時間以上)ある月が12か月以上あること——産休等の理由でこの要件を満たせない場合は、期間を遡って算定する特例がある
- 休業中の就業が一定日数・時間を超えていないこと——1支給単位期間(おおむね1か月)で就業日数が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えると、原則として支給されない
実際の支給可否は、これらの要件を踏まえたハローワークの審査によって最終的に決まる。人事担当者が「絶対もらえます」と断言するのは避け、「要件を満たしていればハローワークの審査を経て支給されます」という伝え方をしたほうが、後々のトラブルを防げる。
人事労務担当者がやるべき実務——賃金月額証明書と支給申請
従業員への説明と並行して、会社側にもやるべき事務がある。ここを誤ると、支給が遅れたり差し戻しになったりして、結果的に従業員から突き上げられるのは人事担当者だ。
Step 1: 休業開始時賃金月額証明書を作成する
従業員ではなく、事業主(会社)が作成する書類だ。休業開始前6か月分の賃金を記載するが、賃金台帳の記載と食い違っていると、ハローワークから差し戻しになる。賃金台帳の整え方は助成金の支給申請で賃金台帳はどう見られる?整え方と不備例4選でも触れているので、育休給付金の証明書作成前にあわせて確認しておきたい。
Step 2: 支給申請書を提出する
初回は育児休業開始から4か月以内が目安。以降は原則2か月に1回のサイクルで、支給申請と振込が繰り返される。会社側の提出が遅れると、従業員への振込も連動して遅れる。
Step 3: 育休中に賃金の一部を支払う場合は忘れず届け出る
見舞金や一部給与を支払うケースでは、その金額によって給付額が減額されることがある。支払いの有無・金額は正確に記載する必要がある。
説明でよくあるつまずきと会社側のミス
つまずき1: 一律「67%もらえます」と説明してしまう
❌「育休中は給料の67%が振り込まれます」
⭕「最初の180日は67%、その後は50%に切り替わります。加えて、賃金には上限があるので、給与水準によっては67%より実質の受給率が下がることもあります」
つまずき2: 出生後休業支援給付金の存在を説明し忘れる
❌ 育児休業給付金だけを案内し、80%になる制度があることを伝えない
⭕ 夫婦で14日以上の育休を取得すれば上乗せがあることを、対象になりそうな社員には早めに案内する
つまずき3: 育休中の副業・スポット業務の影響を伝えていない
❌「育休中に少し働いても給付金には関係ありません」
⭕「1か月あたり10日、かつ80時間を超えて働くと、原則として給付金が支給されなくなります」と、具体的な基準を伝える
つまずき4: 賃金月額証明書を賃金台帳と突き合わせずに提出する
❌ 証明書の作成担当者が、賃金台帳を見ずに記憶や概算で数字を入力する
⭕ 提出前に賃金台帳の該当月と1円単位で突き合わせる(残業代の集計ミスが最も多い差し戻し理由だ)
会社が受け取る助成金と混同しないための整理
ここまで説明してきた育児休業給付金・出生後休業支援給付金は、いずれも従業員本人が雇用保険から受け取るお金だ。これとは別に、育休の取得や復職を支援した会社側が受け取れる助成金も存在する。人事担当者向けの説明会などでは、この2つを混同されることが少なくない。
- 育休中等業務代替支援コース——育休中の代替人員確保などに対して、事業主に最大81万円が支給される助成金
- 両立支援等助成金(全コース解説)——育児・介護と仕事の両立支援に取り組む事業主向けの助成金全体像
「従業員がもらう給付金」と「会社がもらう助成金」は財源も申請ルートも別物だ。従業員への説明資料と、会社が申請する助成金の資料は、意図的に分けて管理しておくと混乱が起きにくい。
よくある質問
Q. 育児休業給付金の給付率は67%と50%、どちらが基本ですか?
A. 育児休業開始から180日目までは67%、181日目以降は50%です。1年前後の育休を取得する社員が多い会社では、開始から半年ほどで振込額が下がる点を早めに伝えておくとよいでしょう。
Q. 「出生後休業支援給付金」で80%になるのはいつからですか?
A. 2025年4月1日から始まった制度です。夫婦とも14日以上の育児休業を取得すると、最初の28日間に限り13%相当が上乗せされ、通常の67%と合わせて給付率80%になります。配偶者が専業主婦(夫)やひとり親家庭の場合は、本人のみの取得でも対象になります。
Q. 育児休業給付金はいつ振り込まれますか?
A. 初回は支給申請から1〜2か月程度、以降は原則2か月に1回のサイクルで支給申請と振込が繰り返されます。会社側の申請書提出が遅れると振込も遅れるため、提出スケジュールの管理が重要です。正確な着金日は個別の申請状況によって変わるため、断定はできません。
Q. 育児休業給付金がもらえないケースはありますか?
A. 雇用保険の被保険者でない場合、休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上(または就業した時間数80時間以上)ある月が12か月に満たない場合、休業中の就業日数が1支給単位期間で10日(かつ80時間)を超える場合などは、支給されないか減額される可能性があります。個別の可否は最終的にハローワークの審査で判断されます。
Q. 計算のもとになる「賃金」には残業代や賞与は含まれますか?
A. 休業開始前6か月間の総支給額(基本給・諸手当・残業代を含む)をもとに計算しますが、賞与(ボーナス)は含まれません。賃金台帳の記載と休業開始時賃金月額証明書の記載が一致しているか、提出前に必ず確認してください。
Q. 育休中に少しだけ働いた場合、給付金は減額されますか?
A. 1支給単位期間(おおむね1か月)の就業日数が10日を超え、かつ就業した時間が80時間を超えると、原則として給付金は支給されません。10日以下・80時間以下でも、休業開始時賃金の一定割合以上の賃金が支払われた場合は減額の対象になります。副業やスポット業務も含めて、事前に本人へ伝えておくと安心です。
AI導入や業務のDXを検討する中小企業の中には、「育休や介護と両立できる働き方を、AIでどう支えるか」という相談も増えている。育児休業給付金の説明対応そのものに直接関わるものではないが、両立支援と業務効率化をあわせて検討したい場合は、Uravationのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年8月4日時点の厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。育児休業給付金・出生後休業支援給付金の支給額・支給要件は、個別の雇用形態や休業取得状況によって異なり、最終的な支給可否は管轄のハローワークの審査によって判断されます。本記事の計算例はあくまで概算の参考値であり、実際の支給額を保証するものではありません。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトまたは管轄のハローワークで最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく判断の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- 厚生労働省「高年齢雇用継続給付金、介護休業給付金、育児休業等給付の受給者の皆さまへ」(令和8年8月1日からの支給限度額)(参照日:2026年8月4日)
- 厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」(参照日:2026年8月4日)
- 厚生労働省「育児休業給付金について」(制度概要)(参照日:2026年8月4日)
- 厚生労働省「育児休業を取得される方へ(出生後休業支援給付)」(参照日:2026年8月4日)
- ハローワークインターネットサービス(参照日:2026年8月4日)
