ものづくり補助金は、個人事業主でも申請できるのか。できます。公募要領が補助対象者を「会社又は個人」と書いているので、法人でなければ門前払い、ということはありません。
ただし、そこで話が終わらないのが2026年度からの姿です。同じ公募要領の「補助対象外となる事業者」に、応募申請時点で従業員数が0名の事業者という1行が入りました。そして中小企業庁は、個人事業主本人は「常時使用する従業員」に該当しないと解している。この2つを重ねると、開業届を出して一人で事業を回している事業主は、本人を1人と数えてもらえないため、申請の入口に立てません。
2026年9月28日時点で公開されている一次情報(公募要領 第1回 1.2版・事務局のよくあるご質問・中小企業庁の定義FAQ)を突き合わせて、個人事業主が実際にどこで線を引かれるのか、いくらまで出るのか、何を添付するのかを順に見ていきます。検索して出てくる「従業員がいなくても申請できる」「役員報酬を上げれば賃上げ要件を満たせる」という説明は、いま参照すべき要領とは一致しません。
申請する制度の名前が、まず変わっている

「ものづくり補助金」で検索して事務局サイトにたどり着くと、2つの別サイトが出てきます。ここが最初の混乱ポイントです。
従来のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(締切回が1次〜23次と番号で数えられていた制度)とは別に、2026年度から新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が動いています。事務局サイトは「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」とわざわざ注記しています。いまから設備投資で申請する個人事業主が読むべきは、後者=新しい統合制度の公募要領です。
| 項目 | 内容(2026年9月28日時点) |
|---|---|
| 制度名 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募) |
| 実施主体 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構 |
| 申請枠 | 革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠の3枠 |
| 補助率 | 1/2 または 2/3(枠・事業者区分による) |
| 補助上限額 | 750万円〜7,000万円(枠と従業員数による。賃上げ特例適用時は上振れ) |
| 対象者 | 会社又は個人(業種別の資本金・常勤従業員数の範囲内)。個人事業主を含む |
| 対象外の例 | 応募申請時点で従業員数が0名の事業者 |
| 公募開始 | 令和8年6月29日 |
| 応募締切 | 令和8年9月30日 18:00/令和8年10月30日 18:00(第1回は締切が2つ) |
| 採択発表 | 令和8年12月(予定)/令和9年1月(予定) |
| 申請方法 | 事務局の電子申請システムのみ。GビズIDプライムが必要 |
締切が2つあるのは、第1回公募のスケジュールが途中で組み替えられたためです。申請受付が令和8年8月31日に開いた分は9月30日18:00が締切、9月30日に開く分は10月30日18:00が締切という並びで、公募要領の表紙にも「令和8年6月29日(月)~ 令和8年10月30日(金)18:00まで(厳守)」と書かれています。3枠それぞれの上限額と補助率をまとめて確認したい場合は、新事業進出・ものづくり統合補助金 第1回|3枠の上限額・補助率・申請完全ガイドも参照してください。
「個人事業主も対象」の根拠は、公募要領1-4-1にある

対象者の定義は公募要領の「1-4-1. 補助対象者」にあります。その(1)中小企業者の先頭が、こうです。
「①会社又は個人(資本金又は常勤従業員数が下表の数字以下であること。)」
「会社又は個人」の「個人」が、個人事業主です。法人格の有無は問われません。なお同じ条文で、組合・連合会の一部、財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人、法人格のない任意団体は補助対象外と明記されています。個人事業主は除外リストではなく、対象リストの側に書かれている、という位置関係です。
そのうえで、業種ごとの上限を超えていないかを見ます。資本金と常勤従業員数はどちらか一方を満たせばよいとされているので、資本金という概念を持たない個人事業主は、実質的に常勤従業員数だけで判定されます。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種 | 3億円 | 300人 |
個人事業主の規模でこの上限に触れることは、まずありません。実務上意識すべきなのは、むしろ下限側です。
もう一段細かい区分として小規模企業者・小規模事業者があります。常勤従業員数が製造業20人、商業・サービス業5人(うち宿泊業・娯楽業は20人)、その他の業種20人以下なら該当し、革新的新製品・サービス枠では補助率が2/3に上がります。ほとんどの個人事業主はこちらに入るので、補助率の話をするときは2/3を起点に考えるのが実態に近いです。ただし採択後から交付決定までの間、あるいは交付決定後から補助事業実施期間終了日までの間にこの定義から外れると、補助率は1/2に落ちます。従業員を一気に増やす計画とは相性が悪い、という点は頭に入れておいてください。
従業員0名の壁 — 事業主本人は従業員に数えない

ここが本題です。公募要領「1-4-2. 補助対象外となる事業者」の18番に、こう書かれています。
「18. 応募申請時点で従業員数が0名の事業者」。注記は「中小企業等の新規事業への進出を通した企業規模の拡大や賃上げを事業の目的とすることから、従業員が0名の事業者は対象となりません。」
事務局のよくあるご質問Q18は、もっと直接的です。「応募申請時点で従業員がいない場合も申請できるか。」に対して、回答は「申請できません。」の一言から始まります。
では事業主本人は1人と数えられるのか。数えられません。ここで効いてくるのが中小企業庁の定義です。中小企業基本法上の「常時使用する従業員」は労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、「会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないので、中小企業基本法上の『常時使用する従業員』には該当しない」と中小企業庁のFAQに明記されています。自分を自分で解雇予告する人はいないので、当然といえば当然の帰結です。
事務局FAQ Q8も、役員だけの法人について「常時使用する従業員がいない場合は、従業員数0名として取り扱われます」と同じ結論を出しています。法人の役員と個人事業主本人は、この制度では同じ扱いになる、と読めます。
| 働いている人 | 常時使用する従業員に数えるか |
|---|---|
| 事業主本人 | 数えない |
| 期間の定めなく雇っている従業員 | 数える |
| 日々雇い入れられる者 | 数えない |
| 2か月以内の期間を定めて使用される者 | 数えない |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 | 数えない |
| 試みの使用期間中の者 | 数えない |
| パート・アルバイト・契約社員・派遣社員・出向者 | 労働基準法第20条にもとづき個別に判断される |
つまり「一人親方」「本人だけのフリーランス」の状態では、この補助金は使えません。では雇えばいいのか。事務局FAQ Q23は、現在0名でも応募申請時までに雇用して要件を満たせば申請可能、と答えています。ただし同じ回答の後半に釘が刺してあります。「専ら本補助金の対象事業者となることを目的として、資本金や従業員数、株式保有割合等を変更していると認められた場合には、申請時点に遡って補助対象外となる場合があります」。公募要領1-4-2の28番も同趣旨で、申請時点や事業実施期間だけ一時的に人数を動かす行為を対象外としています。
正直なところ、締切に合わせて1人雇う、という発想は制度の趣旨と真正面からぶつかります。この補助金は補助事業終了後3〜5年の賃上げと規模拡大を約束させる仕組みなので、雇用が続く前提でなければ後述の成果目標で詰まります。従業員がいない状態なら、ここは無理に狙わず、個人事業主の補助金・助成金一覧|使える制度と順番で条件の合う制度を先に当たるほうが現実的です。
いくら出るのか:枠と従業員数で上限額が決まる

補助上限額は、申請枠と従業員数の組み合わせで決まります。従業員数が少ない個人事業主は、テーブルの一番上の段に入ります。
| 枠 | 従業員1〜5人 | 従業員6〜20人 | 補助率 | 補助下限額 |
|---|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 750万円(850万円) | 1,000万円(1,250万円) | 中小企業者1/2、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3 | 100万円 |
| 新事業進出枠 | 2,500万円(3,000万円) | 2,500万円(3,000万円) | 中小企業者(小規模企業者・小規模事業者・再生事業者を含む)1/2 | 750万円 |
| グローバル枠 | 2,500万円(3,000万円) | 2,500万円(3,000万円) | 2/3 | 750万円 |
小規模事業者として革新的新製品・サービス枠で申請する場合、補助率2/3・上限750万円なので、補助対象経費1,125万円の計画を組めば計算上は補助金額が上限の750万円に届きます(補助率と上限額から導いた試算例です。実際の交付額は交付申請の精査で決まります)。
ここで見落としやすいのが補助下限額です。新事業進出枠とグローバル枠の下限は750万円。つまり補助金額が750万円に届かない規模の計画は、そもそもこの2枠に乗りません。個人事業主が現実的に検討しやすいのは、下限100万円の革新的新製品・サービス枠です。
そしてこの枠には、金額以上に重い条件があります。事務局サイトの説明では、革新的新製品・サービス枠は「既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外」で、「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」も該当しません。業種ごとに同業他社へ既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発も外れます。生産性を上げるための設備更新、という説明の仕方では通らない枠です。
経費区分は、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費。このうち機械装置・システム構築費は必須で、区分ごとに上限も設定されています。ソフトウェアだけ、外注費だけ、という組み立てはできません。
3つの成果目標は、従業員を雇った瞬間から効いてくる

補助対象事業の基本要件は、補助事業終了後3〜5年の事業計画で次の3つをすべて満たすことです。未達なら補助金の一部または全額を返す義務が生じます。
| 要件 | 水準 | 定義のポイント |
|---|---|---|
| 付加価値額要件 | 付加価値額の年平均成長率4.0%以上 | 付加価値額=営業利益、人件費、減価償却費を足したもの。年平均成長率は複利計算 |
| 賃上げ要件 | 一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上 | 給与支給総額は従業員に支払った給与等。役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金は除く |
| 事業場内最賃水準要件 | 毎年、事業場内最低賃金が実施場所都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準 | 事業場が複数なら最も低い事業場で判定 |
個人事業主が特に注意すべきは2つ目です。給与支給総額の定義から役員報酬が明示的に除かれており、そもそも個人事業主本人は従業員に含まれません。自分の取り分をいくら増やしても、この指標は1ミリも動かない、ということです。「役員報酬を上げて賃上げ要件をクリアする」という解説を見かけたら、いま参照している要領と合っていない、と判断してよい箇所です。
算定対象になるのは、基準年度と各事業年度で全月分の給与等の支給を受けた従業員です。中途採用や退職で全月分に届かない従業員は、その年度に限って算定から外す必要があります。産前・産後休業、育児休業、介護休業などで時短勤務の従業員は外すことができ、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して人数を出します。従業員1〜2人の事業だと1人の出入りで数字が大きく揺れるので、計画段階でこの換算ルールを踏まえておかないと、あとで返還の議論になります。
返還額の考え方も要領に明記されています。賃上げ要件は「交付額×(1−(達成した年平均成長率/目標値))」で計算し、成長率がゼロまたはマイナスなら全額返還。事業場内最賃水準要件を満たせなかった年があれば、交付額を事業計画の年数で割った額の返還を求められます(付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体で営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は求められません)。
上限額の括弧内に上振れするための賃上げ特例は、これをさらに上に積む仕組みです。一人当たり給与支給総額の年平均成長率を基本要件に2.5ポイント足して合計6.0%以上、事業場内最低賃金を20円足して地域別最低賃金より50円以上高い水準、の両方が条件になります。各枠の補助上限額に達しない計画には適用できず、未達なら引上げ分の全額返還です。従業員が数人の規模で6.0%の複利成長を5年約束するのは相当に重い。無理に取りに行く性質のものではありません。
要件はこの3つに加えて、ワークライフバランス要件と、子育て等に関する職場環境整備の取り組み要件があります。前者は次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、申請締切日時点で有効なものを厚生労働省の「両立支援のひろば」に公表しておくこと。事務局FAQ Q21は「100人以下の企業等であっても一般事業主行動計画の策定・公表を行うことが必要です」と明言しており、規模による免除はありません。公表手続きに1〜2週間程度かかるとされているので、ここは着手順を間違えると締切に間に合いません。
個人事業主だけ様式が違う添付書類
必須の添付書類は3点(金融機関から資金提供を受ける場合は4点)です。法人と個人事業主で、①と③の中身が入れ替わります。
| 書類 | 個人事業主の場合の中身 |
|---|---|
| ① 決算書 | 青色申告なら直近3期分の青色申告決算書における損益計算書、損益計算書の内訳、貸借対照表(4ページすべて)。簡易簿記なら直近3期分の損益計算書1ページ目と貸借対照表4ページ目。白色申告なら収支内訳書 |
| ② 従業員数を示す書類 | 労働基準法に基づく労働者名簿の写し。応募申請時点の最新情報を記載したもの |
| ③ 収益事業を行っていることを説明する書類 | 直近の確定申告書第一表および所得税青色申告決算書の控え(白色申告なら確定申告書第一表および収支内訳書の控え) |
| ④ 金融機関による確認書 | 金融機関から資金提供を受けて補助事業を実施する場合のみ。自己資金だけなら提出不要 |
細かいところで落ちやすいのが③です。確定申告書第一表には電子申告の日時・受付番号が記載されていることが必要で、紙で申告した場合は収受日付印の押印があるか、納税証明書(その2 所得金額用・事業所得金額の記載のあるもの)の提出が求められます。e-Taxの受信通知を保存していない、控えに収受印がない、というのはよくある状態なので、先に手元を確認しておいてください。
②の労働者名簿は、従業員数の判定と補助上限額の判定に直結する書類です。事務局FAQは、申告内容に誤りがあると補助上限額や補助率の判定に影響するほか、内容によっては申請要件を満たさないものとして扱われる場合があると注意しています。
なお創業して1年に満たない場合、革新的新製品・サービス枠とグローバル枠では、個人事業主は開業届を添付します(法人は履歴事項全部証明書)。新事業進出枠は「新規設立・創業後1年に満たない事業者」自体が補助対象外なので、この枠は使えません。
GビズIDから採択発表までの段取り
申請は事務局の電子申請システムからのみ行います。公募要領の本文に「jGrants」「Jグランツ」という語は1か所も出てきません。他の補助金と同じ入口だと思って待っていると、締切を落とします。
| 順番 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | GビズIDプライムアカウントの取得 | 公募要領は発行に1週間程度と案内。書類申請の審査期間は最大1か月 |
| 2 | 一般事業主行動計画を策定し「両立支援のひろば」に公表 | 公表手続きに1〜2週間程度 |
| 3 | 事業計画書の作成(申請者本人が作成) | 枠の該当性・3つの成果目標・経費内訳の詰めに数週間 |
| 4 | 添付書類をそろえて電子申請システムで提出 | 要領は電子申請の入力に数時間程度と案内 |
| 5 | 採択発表、交付申請、交付決定通知 | 交付申請の締切は原則、採択発表日から2か月以内 |
GビズIDプライムについて、事務局FAQ Q48は「法人代表者もしくは個人事業主以外は作成できません」と回答しています。家族や支援者のアカウントで代わりに作る、という運用はできません。デジタル庁の案内では書類申請の審査期間が従来の最大2週間から最大1か月に変更されており、マイナンバーカードを使うオンライン申請にも条件があります(有効期限が切れたカード、署名用電子証明書が未搭載または期限切れのカード、顔認証マイナンバーカード、スマホ搭載マイナンバーカードは使えません)。アカウントの有効期限は発行日から2年3か月で、期限切れのまま放置していると申請直前に慌てます。
交付決定後は、補助事業実施期間が革新的新製品・サービス枠で交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)、新事業進出枠とグローバル枠で交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)。実績報告の締切は補助事業を完了した日から起算して30日を経過した日、または補助事業完了期限日です。その後も事業化状況報告が計6回続きます。申請して終わり、ではない制度だという前提で日程を引いてください。
個人事業主の申請でつまずく4つのポイント
つまずき1: 交付決定を待たずに発注してしまう
❌ 採択の連絡が来たので、設備を発注する
⭕ 交付決定通知を受け取ってから発注・契約する
事務局サイトも公募要領も、交付決定日より前に製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)をした経費は補助対象にならない、と繰り返し書いています。採択と交付決定は別の段階です。さらに事務局FAQ Q51は、採択結果は申請額の全額に対する交付決定を保証するものではなく、交付申請時の精査で減額または全額対象外になる場合があると説明しています。
つまずき2: 事業計画を外部に作ってもらう
❌ 申請サポート業者に事業計画書ごと作成してもらう
⭕ 助言は受けつつ、事業計画は申請者自身が作成する
公募要領は、事業計画は申請者自身が作成するものとし、外部委託した場合は不採択・採択取消・交付決定取消の対象になるとしています。事務局FAQ Q49も「委任状等があれば特例などは認められるのか」に「認められません」と答えています。認定経営革新等支援機関の確認は任意なので、相談は自由です。線は「助言を受ける」と「代わりに書かせる」の間にあります。
つまずき3: 既存業務の効率化として書いてしまう
❌ 設備を入れて既存サービスの生産性を上げる計画として書く
⭕ 革新的な新製品・新サービスの開発として、何が新しいかを書く
革新的新製品・サービス枠は、既存の製品・サービスの生産等プロセスの改善・向上を図る事業を対象外としています。設備投資の補助金だから設備の話を書けばよい、という組み立てで落ちる典型です。
つまずき4: 過去の受給歴を数えていない
❌ 以前ものづくり補助金を使ったことは関係ないと考える
⭕ 応募申請日を起点に過去3年間の交付決定回数を数える
応募申請日を起点として過去3年間に「新事業進出補助金」「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」の交付決定を合計2回以上受けている事業者は補助対象外です。過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も、同一事業者としてみなされます。
旧ものづくり補助金の採択率をどう読むか
「個人事業主の採択率は?」という質問には、正直に答えると「公表されていません」になります。事務局が出しているのは締切回ごとの申請者数と採択者数で、法人・個人の内訳はありません。参考になるのは、旧制度の直近の数字です。
| 締切回 | 採択発表日 | 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 21次 | 令和8年1月23日 | 1,872 | 638 | 34.1% |
| 22次 | 令和8年4月30日 | 1,552 | 582 | 37.5% |
| 23次 | 令和8年8月7日 | 1,275 | 448 | 35.1% |
23次の内訳は、製品・サービス高付加価値化枠が1,169者申請で418者採択、グローバル枠が106者申請で30者採択。採択結果ページに並ぶ締切回は23次が最後で、それ以降の締切回の採択結果は掲載されていません。3回並べると3分の1強で推移していることは読み取れますが、これは旧制度の数字です。新しい統合制度の第1回は令和8年12月と令和9年1月に採択発表が予定されている段階で、採択率はまだ存在しません。旧制度側の変更経緯はものづくり補助金|2026年の公募と第23次の変更点、23次の結果の詳細はものづくり補助金23次採択結果|採択率35.1%と24次の公募状況にまとめています。
採択率を動かせる要素として用意されているのが加点です。第1回は令和8年8月14日の1.2版改訂で3項目が追加され、17項目になりました。パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、研究開発費・試験研究費の計上、地域別最低賃金引上げ、事業場内最低賃金引上げなどです。加点は申請締切日時点で要件を満たしている必要があるため、いまから取得を始めて間に合うものは限られます。どの制度がどれだけ時間を要するかは新事業進出・ものづくり補助金|加点6制度を比較で整理しています。なお個人事業主が各認定制度の取得要件を満たせるかは制度ごとに異なるため、狙う加点が決まったらその制度の公式ページで対象者を確認してください。
よくある質問
Q1. ものづくり補助金は個人事業主でも対象ですか。
対象です。公募要領1-4-1は補助対象者の中小企業者を「会社又は個人」と定義しており、個人事業主が含まれます。ただし補助対象外となる事業者に「応募申請時点で従業員数が0名の事業者」が含まれるため、対象者の定義に入っていても、従業員がいなければ申請できません。
Q2. 従業員がいなくても申請できますか。
できません。事務局のよくあるご質問Q18は「申請できません」と回答しています。個人事業主本人は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」に該当しないため、本人だけの状態は従業員0名として扱われます。
Q3. 個人事業主はいくらもらえますか。
枠と従業員数で決まります。従業員1〜5人で革新的新製品・サービス枠なら補助上限額750万円(賃上げ特例適用時850万円)、新事業進出枠とグローバル枠は従業員1〜20人で2,500万円(同3,000万円)です。革新的新製品・サービス枠の補助下限額は100万円、他の2枠は750万円で、下限に届かない規模の計画は申請できません。
Q4. 補助率はいくらですか。
革新的新製品・サービス枠は中小企業者1/2、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3。新事業進出枠は1/2、グローバル枠は2/3です。多くの個人事業主は小規模事業者に該当するため革新的新製品・サービス枠では2/3になりますが、採択後から交付決定まで、または交付決定後から補助事業実施期間終了日までに小規模の定義を外れると1/2になります。
Q5. 個人事業主の採択率はどのくらいですか。
個人事業主に限った採択率は公表されていません。旧ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の23次締切は申請1,275者・採択448者(35.1%)でした。新しい統合制度の第1回は採択発表前のため、採択率はまだ出ていません。
Q6. 必要書類は何ですか。
必須は決算書、労働者名簿の写し、収益事業を行っていることを説明する書類の3点です。個人事業主の決算書は青色申告決算書(4ページすべて)または収支内訳書、収益事業の書類は確定申告書第一表と所得税青色申告決算書の控えになります。金融機関から資金提供を受ける場合のみ、金融機関による確認書が加わります。
Q7. 給与支給総額はどうやって計算しますか。
従業員に支払った給与等(給料、賃金、賞与等)を合計し、役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金は除きます。それを従業員数で割ったものが一人当たり給与支給総額です。算定対象は全月分の給与等の支給を受けた従業員で、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算します。事業主本人の所得は含まれません。
Q8. 申請するにはどうしたらいいですか。
GビズIDプライムアカウントを取得し、一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表したうえで、事業計画書と添付書類を事務局の電子申請システムから提出します。jGrantsではありません。GビズIDの発行と行動計画の公表にそれぞれ1週間から1か月程度かかるため、締切から逆算して先にこの2つを終わらせてください。
Q9. 申請の代行を頼めますか。
事業計画書は申請者自身が作成する必要があり、外部委託は不採択・採択取消・交付決定取消の対象になります。認定経営革新等支援機関などから助言を受けることは差し支えないとされています。申請書類の作成代理そのものは行政書士の業務範囲にあたるため、代行の相談先としては行政書士に確認してください。
結論 — 今日の時点で個人事業主が踏む順番
2026年9月28日時点で、個人事業主とこの補助金の関係は「対象者ではあるが、従業員0名なら入口で止まる」の一言に尽きます。順番にすると、こうなります。
- 労働者名簿を見て、応募申請時点の従業員数を確定する。本人は数えません。0名なら、この補助金ではなく別制度を探すほうが早い。
- 1名以上いるなら、GビズIDプライムと一般事業主行動計画の公表に着手する。どちらも1週間から1か月程度かかる手続きで、遅れによる締切延長は認められません。
- 革新的新製品・サービス枠で「何が新しい製品・サービスなのか」を1枚に書き出す。既存業務の効率化として書けるなら、枠の要件を満たしていない可能性が高い。
第1回公募の応募締切は令和8年9月30日18:00と令和8年10月30日18:00。締切は厳守で、電子申請の入力自体にも数時間程度かかるとされています。最新の要件は必ず新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公式サイトと公募要領で確認してください。
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参考・出典
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版 — 独立行政法人中小企業基盤整備機構(令和8年8月・全61ページ/参照日: 2026年9月28日)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト — 中小企業基盤整備機構(3枠の補助率・補助上限額・成果目標/参照日: 2026年9月28日)
- 同 公募スケジュール — 中小企業基盤整備機構(第1回の2つの応募締切と採択発表予定/参照日: 2026年9月28日)
- 同 よくあるご質問 — 中小企業基盤整備機構(Q8・Q18・Q21・Q23・Q48・Q49・Q51/参照日: 2026年9月28日)
- 中小企業の定義に関するよくある質問 — 中小企業庁(Q3「常時使用する従業員」の定義/参照日: 2026年9月28日)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026年9月28日)
- GビズID — デジタル庁(書類申請の審査期間・アカウントの有効期限/参照日: 2026年9月28日)
- 両立支援のひろば — 厚生労働省(一般事業主行動計画の公表先/参照日: 2026年9月28日)
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 採択結果 — 同事務局(21次〜23次の申請者数・採択者数/参照日: 2026年9月28日)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年9月28日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金の制度内容・公募要領は予告なく改訂される場合があります(第1回公募要領は令和8年8月14日に1.2版へ改訂されています)。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。個別の要件判断については、公募事務局のコールセンター、または行政書士・中小企業診断士等の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
