「法人じゃないと補助金は使えない」——そう思っていませんか?
実はこれ、よくある誤解のひとつです。開業届を出して事業を営む個人事業主・フリーランスでも、国や自治体の補助金・助成金を活用できる制度は複数あります。
ただし、”なんとなく申請してみよう”では採択されません。後払いの仕組み、税務上の扱い、よくある失敗パターン——これらを知らずに動くと、採択後に資金繰りが詰まったり、想定外の税負担が生じたりするリスクがあります。
この記事では、個人事業主・フリーランスが使える主要な補助金・助成金カテゴリを整理し、申請の共通フロー・注意点・受給後の税務までをまとめました。制度の金額は年度・公募回ごとに変わるため、最新の数字は公式サイトで必ず確認してください。
AI導入に使える補助金5選の徹底比較はこちらもあわせてご覧ください。

個人事業主・フリーランスでも補助金は使える——その根拠
補助金・助成金の多くは「中小企業・小規模事業者」を対象としています。中小企業基本法上、個人事業主は法人と同様に「小規模事業者」に該当します。つまり、法人格の有無は申請の可否に直結しません。
たとえば小規模事業者持続化補助金の公募要領には、「商業・サービス業・宿泊業・娯楽業以外の業種で常時使用する従業員数が20名以下」などの要件が示されており、個人事業主もこの基準を満たせば対象です。
ただし、注意点があります。雇用関係に基づく助成金(代表例:人材開発支援助成金)は、雇用している従業員に訓練を実施する事業主が対象です。従業員を雇っていない一人フリーランスは原則として対象外になります。
補助金(経費の一部を事後補助)か、助成金(雇用に関する費用を支援)かによって、個人事業主が使えるかどうかが変わってきます。制度の種別をまず確認することが重要です。
個人事業主が使える補助金カテゴリ早見表
| カテゴリ | 代表的な制度名 | 個人事業主の可否 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 販路開拓・事業継続支援 | 小規模事業者持続化補助金 | ○ 可 | チラシ制作・広告・HP・設備購入など販路開拓経費 |
| デジタル化・IT活用 | デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | ○ 可(要件確認) | 業務ソフト・クラウドサービス・AIツール導入 |
| 創業支援 | 各自治体の創業補助金・小規模事業者持続化補助金(創業枠) | ○ 可(創業後一定期間内など条件あり) | 開業初期の設備・宣伝費 |
| 雇用・人材育成 | 人材開発支援助成金 | △ 従業員を雇用している場合のみ可 | 従業員へのAI研修・資格取得訓練 |
| 自治体独自制度 | 都道府県・市区町村のDX推進補助金 | ○ 制度による(地域内事業者が対象) | デジタル化・省力化投資 |
| 事業転換・新規事業 | 新事業進出補助金など | △ 制度による(従業員要件など) | 新分野進出・DXによる新規事業 |
※ 各制度の補助率・上限額・対象要件は年度・公募回によって変わります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
主要制度の概要と個人が使えるポイント
小規模事業者持続化補助金——個人の「販路開拓」に最も使いやすい
個人事業主・フリーランスが最も申請しやすい制度のひとつが、小規模事業者持続化補助金です。販路開拓や業務効率化のための経費を補助します。
補助対象となる経費の例としては、ウェブサイト制作費・広告費・チラシ制作費・机や什器などの設備購入費・専門家への相談費などがあります。「こんな経費も対象になるのか」と驚く方も多い制度です。
補助率・上限額は通常枠・特例枠・創業枠など類型によって異なります。確認は公式情報(日本商工会議所または全国商工会連合会の事務局)からどうぞ。申請は原則、地域の商工会・商工会議所を通じて行います。
重要な点が一つ。「採択=交付決定」ではありません。採択通知を受けた後に交付申請を行い、交付決定後に事業を開始する流れです。交付決定前に発注・購入した経費は補助対象外になるので注意が必要です。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)——AIツール・業務ソフトの導入に
業務用ソフトウェアやクラウドサービス、AIツールの導入費用を支援する制度です。2025年度より「デジタル化・AI導入補助金」と改称されています。
個人事業主もこの制度を申請できます。ただし、IT導入支援事業者(事務局に登録された事業者)が販売するITツールに限られるという条件があります。「自分で購入したいクラウドサービスを補助してほしい」という場合、そのサービスが登録済みかどうかを先に確認する必要があります。
補助率・補助額は枠・類型によって異なります。公式の申請ポータルである jGrants(補助金の電子申請ポータル) でも制度情報を確認できます。
自治体独自の補助金——意外と穴場
国の制度だけが補助金ではありません。都道府県・市区町村が独自に設けているDX推進補助金や創業補助金は、個人事業主・フリーランスを対象に含めているものが多くあります。
補助額は国の制度より小さいことが多いですが、競争率が低い場合もあり、採択されやすい傾向があります。また、国の補助金と自治体補助金は、同一経費への二重計上を避ければ、原則として併用可能です。
GビズID登録ガイドはこちら——地方自治体の電子申請でも GビズID が必要な制度が増えています。
申請の共通フロー——個人事業主が踏む6つのステップ
Step 1:GビズIDプライムを取得する(所要:最短即日〜1週間程度)
多くの補助金はjGrantsを通じた電子申請が必要で、GビズIDプライムの取得が前提になります。個人事業主向けにはマイナンバーカードを使ったオンライン申請(最短即日)と、書類郵送申請(1週間程度)があります。まだ取得していない方は今すぐ始めましょう。
Step 2:申請したい制度の公募要領を読む(所要:数時間)
公募要領は制度の「ルールブック」です。対象者要件・補助対象経費・補助率・上限額・スケジュール・提出書類が全て書かれています。面倒でも必ず一読してください。「読んだ結果、自分は対象外だった」という確認作業自体が無駄にならず、むしろ時間節約になります。
補助金情報の横断検索には jGrants(電子申請ポータル) が便利です。
Step 3:事業計画書を作成する(所要:1〜4週間)
補助金申請の核心です。「現在の課題は何か」「どのようにその課題を解決するか」「補助事業の実施によってどんな効果が期待できるか」を、できるだけ数字で示します。
「売上が上がりそう」ではなく「月あたりの問い合わせ対応時間を現在の20時間から5時間に削減し、その分を商品開発に充てることで売上○%増を目指す」——この具体性の差が採否を分けます。
Step 4:jGrantsで電子申請する
書類を揃えてjGrants上で申請します。申請時点で発行番号が発行され、受付が完了します。GビズIDでログインするのはここです。
Step 5:採択通知・交付決定を待つ
審査後に採択通知が届きます。ただし、採択通知≠交付決定です。採択後に別途「交付申請」を行い、交付決定通知を受け取るまで発注・購入を始めてはいけません。
Step 6:事業を実施し、実績報告を提出する(補助金は後払い)
交付決定後に事業を実施します。完了後、支出した領収書・成果物などの証拠書類を添えた実績報告書を提出し、審査が通れば補助金が振り込まれます。補助金は全て後払い。採択されても先に立て替えが必要です。
最重要注意点:後払い制と自己資金の確保
正直に言います。補助金の”落とし穴”で一番多いのが、「後払い前提を知らずに動いてしまった」パターンです。
補助金は原則として「先に自分のお金で支出し、後から補填される仕組み」です。たとえば補助上限が50万円の補助金を申請するなら、事業実施中は50万円を自己資金で立て替えなければなりません。
「採択されたからもう大丈夫」と思って、持ち合わせのない状態でソフトウェア購入や設備発注を進めてしまうと、後で資金繰りが回らなくなります。申請前の段階から「もし採択されたら、いつまでにいくらを用意できるか」を考えておくことが不可欠です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金の支払いタイミング | 事業完了・実績報告提出・審査完了後(後払い) |
| 先払いが必要な費用 | 補助対象経費の全額(補助率分も含め一時立替) |
| 交付決定前の発注・購入 | 補助対象外になるリスクあり(要注意) |
| 補助金受取までの標準期間 | 申請から入金まで半年〜1年以上かかる制度も多い |
受給後の税務——個人事業主は「課税対象」が原則
補助金を受け取ったら申告不要、というのはよくある誤解です。個人事業主が事業に関連して受け取った補助金・助成金は、原則として事業所得などに含まれ、所得税の課税対象となります。
→ 国税庁:個人事業主が受け取った補助金の課税(No.1465)
具体的には、補助金収入を翌年の確定申告で事業所得の「収入」として計上する必要があります。一方、補助金で購入した設備の減価償却費は経費として計上できます。
ただし、固定資産の取得に充てた国庫補助金等については、一定の要件下で圧縮記帳(課税の繰り延べ)が認められる場合があります。これは「補助金分の課税を翌年以降に分散させる」テクニックで、キャッシュフローの観点から有効です。ただし手続きが複雑なため、税理士に相談することをお勧めします。
補助金の申告を忘れると後から追徴課税のリスクがあります。受取った年度の確定申告で必ず反映させましょう。
よくある失敗パターンと回避策
失敗1:交付決定前に発注してしまった
❌ 「採択通知が来たのですぐに業者と契約した」
⭕ 「採択通知の後に交付申請 → 交付決定通知を受け取ってから発注」
採択通知と交付決定は別物です。交付決定前の経費は補助対象外です。金額の大きさにかかわらず、必ず順序を守ってください。
失敗2:対象経費を事前に確認しなかった
❌ 「補助金を使って新しいパソコンを買おうとしたら、汎用PCは対象外だった」
⭕ 「公募要領の『補助対象経費』の章を事前に確認し、対象か否かをチェック」
汎用PCやスマートフォン端末は多くの制度で対象外、または条件付き対象です。先に公募要領を読む習慣をつけましょう。
失敗3:実績報告の書類が不備だった
❌ 「領収書はあるが、仕様書や成果物の証拠が揃っていなかった」
⭕ 「発注書・納品書・領収書・成果物(HP画像、操作マニュアル等)を全てファイリングしながら進める」
実績報告は事業完了後に行いますが、証拠書類は事業中からこまめに整理しておく必要があります。後から揃えようとすると、ベンダーへの再依頼コストや時間がかかります。
失敗4:複数制度の二重申請をしてしまった
❌ 「同じHP制作費を、持続化補助金とIT導入補助金の両方に計上した」
⭕ 「同一経費の二重計上は不正受給。制度ごとに計上する経費を明確に分ける」
補助金の不正受給は補助金の返還だけでなく、加算金や罰則の対象になる場合があります。複数制度を活用する場合は、費用の按分と根拠を明確にしておきましょう。
失敗5:締切ギリギリに動いてGビズIDが間に合わなかった
❌ 「公募締切の前日にjGrantsで申請しようとしたらGビズIDを持っていなかった」
⭕ 「申請を考え始めた時点でGビズIDを取得しておく」
GビズIDのオンライン申請は最短即日ですが、書類郵送では1週間程度かかります。締切直前に取得しようとすると間に合わないことがあります。「申請するかもしれない」と思ったらすぐ取得しておきましょう。
申請を始める前に知っておきたい中小機構の支援リソース
補助金の情報収集や事業計画の相談窓口として、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が頼りになります。全国に支援機関のネットワークを持ち、個人事業主・小規模事業者を含む中小企業の経営支援を無料または低コストで提供しています。
また、補助金の申請にあたっては、
- 地域の商工会・商工会議所(持続化補助金の窓口)
- よろず支援拠点(経営相談・補助金活用相談・無料)
- 税理士・中小企業診断士(申告・計画策定のサポート)
なども活用できます。「どの制度を使えばいいかわからない」という段階でも相談できるので、まず一度足を運んでみることをお勧めします。
参考・出典
- jGrants — 補助金の電子申請ポータル(デジタル庁・各省庁)
- GビズID 公式サイト(デジタル庁)
- 国税庁タックスアンサー No.1465 個人事業主が受け取った補助金の課税
- 中小企業基盤整備機構(中小機構)公式サイト
AI導入の計画策定や補助金の活用方法についてお悩みの場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項: 本記事の情報は2026年6月8日時点の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
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