ものづくり補助金の条件を調べるとき、検索で最初に出てくる「第23次公募要領」を開いてしまう方が少なくありません。付加価値額は年平均3.0%以上、一般事業主行動計画は従業員21名以上の企業だけ。ところが2026年9月28日時点で、その数字はもう現行の条件ではありません。
いま公募が動いているのは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回です。事務局である中小企業基盤整備機構は公式サイトに「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」と注記しています。名前にものづくりの4文字が残るので同じ制度の続きに見えますが、条件は別物として組み直されました。付加価値額の基準値は年平均4.0%以上に上がり、一般事業主行動計画の公表は従業員数にかかわらず全事業者の要件です。
第1回の応募期間は2026年9月30日(水)から10月30日(金)18:00まで。この記事では第1回公募要領(1.2版・2026年8月14日改訂)をもとに、対象者の条件、賃上げ条件、申請枠ごとの追加条件、対象になる経費とならない経費、条件を満たせなかったときの返還までを一覧化します。数値はすべて2026年9月28日時点の公表内容です。
「ものづくり補助金の条件」は、いまどの要領を見るのが正解か

整理しておきます。従来のものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、第23次締切(公募期間2026年2月6日〜5月8日17:00)の情報が公募要領として残っています。一方、2026年6月29日に公募が始まったのが新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で、中小企業庁は6月30日付けで第1回公募要領の公開を告知しました。この2つは制度として別建てです。条件を比べると、どこが動いたかがはっきりします。
| 条件の項目 | ものづくり補助金 第23次(2026年2月6日〜5月8日) | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回(2026年6月29日〜10月30日) |
|---|---|---|
| 付加価値額 | 年平均成長率3.0%以上 | 年平均成長率4.0%以上 |
| 一人当たり給与支給総額 | 年平均成長率3.5%以上 | 年平均成長率3.5%以上(据え置き) |
| 最低賃金の水準 | 事業所内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準 | 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準 |
| 一般事業主行動計画の公表 | 従業員数21名以上の事業者のみ | 全事業者(ワークライフバランス要件) |
| 子育て等の職場環境整備 | 基本要件としての規定なし | 3つの取り組みから1つを選んで実施 |
| 金融機関の確認 | 基本要件としての規定なし | 資金提供を受ける場合は確認書の提出が必要 |
| 申請枠 | 製品・サービス高付加価値化枠/グローバル枠の2枠 | 革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠の3枠 |
| 補助上限額の最大 | 製品・サービス高付加価値化枠2,500万円、グローバル枠3,000万円 | 新事業進出枠・グローバル枠で7,000万円(賃上げ特例適用時9,000万円) |
数字の動きだけ追うと「付加価値額が1ポイント厳しくなった」で済みそうですが、実務で効くのは下半分です。一般事業主行動計画の公表は従業員5名の会社にも求められます。公表手続きには1〜2週間かかると公募要領自体が注意しており、締切直前に気づいても間に合いません。
第23次の中身はものづくり補助金|2026年の公募と第23次の変更点に、採択状況はものづくり補助金23次採択結果|採択率35.1%と24次の公募状況にまとめてあります。過去回の傾向を読む土台としては有用ですが、条件そのものを確認する用途では現行の第1回公募要領を見てください。
対象になる事業者の条件 — 資本金と常勤従業員数の線引き
補助対象者は、日本国内に本社および補助事業実施場所を有すること、そして中小企業者・小規模企業者・特定事業者の一部・特定非営利活動法人・農事組合法人・対象リース会社のいずれかに当てはまることが前提です。中小企業者は中小企業等経営強化法第2条第1項の定義で、業種ごとに線が引かれています。覚えておきたいのは、資本金と従業員数はどちらか一方が下表の数字以下であれば該当する点です。両方を満たす必要はありません。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤおよびチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
| ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種 | 3億円 | 300人 |
小規模企業者・小規模事業者の判定は従業員数だけで決まります。製造業その他の業種は20人以下、商業・サービス業は5人以下、うち宿泊業・娯楽業は20人以下。革新的新製品・サービス枠ではこの区分に入ると補助率が2/3になります。ただし採択後から交付決定までの間、または交付決定後から補助事業実施期間の終了日までの間に小規模の定義から外れた場合は、補助率が1/2に戻ります。
中小企業者にも小規模にも当てはまらない会社には「特定事業者の一部」という受け皿があります。資本金10億円未満で、製造業・建設業・運輸業なら常勤従業員500人以下、卸売業400人以下、サービス業または小売業300人以下、その他500人以下。規模を理由に見送っていた企業でも、ここに入れば対象です。特定非営利活動法人と農事組合法人も、従業員数300人以下・収益事業を行っているなどの条件をすべて満たせば対象になります(NPO法人は交付申請時までの経営力向上計画の認定と、認定NPO法人でないことが追加条件)。一方、該当しない組合・連合会、財団法人、社団法人、医療法人、法人格のない任意団体は対象外と明記されています。
個人事業主も会社と同じ基準で判定されます。従業員数の条件が別にかかる点はものづくり補助金は個人事業主も対象?従業員0名は不可を参照してください。
資本金と従業員数をクリアしても落ちる、対象外のライン
公募要領は「補助対象外となる事業者」を34項目にわたって列挙しています。数が多いので、申請前に自社で確認すべきものを抜き出します。
- 応募申請時点で従業員数が0名の事業者。企業規模の拡大と賃上げを目的とする制度であることが理由として明記されています
- 新規設立・創業後1年に満たない事業者(新事業進出枠に限る)。最低1期分の決算書の提出が必要です
- みなし大企業。発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有、3分の2以上を大企業が所有、大企業の役員または職員を兼ねる者が役員総数の2分の1以上——このいずれかに当たると対象外です
- 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者。申告済みの数字で判定されます
- 申請締切日を起点にして16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金の交付候補者として採択された事業者、または締切日時点でそれらの交付決定を受けて事業実施中の事業者
- 応募申請日を起点にして過去3年間に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者
- みなし同一事業者による複数申請。親会社が議決権の50%超を持つ子会社は同一事業者とみなされ、1回の公募で1申請しか認められません。代表者と住所が同じ法人、主要株主と住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も同様です
- 収益事業を行っていない法人、政治団体、宗教法人、法人格のない任意団体
やりがちな失敗が、最後から3番目です。グループ会社2社でそれぞれ事業計画を作り、両方出してしまう。この場合、公募要領は「申請した全ての事業者において申請要件を満たさないものとして扱います」としています。片方が通るのではなく、両方落ちます。
もうひとつ、条件合わせのための数字いじりも封じられています。応募申請時点や事業実施期間に限って資本金を減資したり従業員数を削減したりして、終了後に元へ戻すような操作が認められた場合、申請時点にさかのぼって対象外になる可能性があると明記されています。みなし大企業の判定ロジックはみなし大企業とは|中小企業の定義と補助金の対象外6条件で図解しているので、株主構成に大企業が入っている会社は先に確認しておくと安全です。
賃上げ条件は、3つの数字と3つの手続きで決まる

「ものづくり補助金の賃上げ条件は?」への答えは、正確には2階建てです。数値目標が3つ、手続き要件が3つ。この6つの基本要件を満たす3〜5年の事業計画を作ることが求められます。
| 要件 | 満たすべき水準 | 未達のときの扱い |
|---|---|---|
| 付加価値額要件 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間で、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上。付加価値額は営業利益・人件費・減価償却費の合計 | 返還規定の記載なし(審査上の評価対象) |
| 賃上げ要件 | 一人当たり給与支給総額の年平均成長率が3.5%以上。交付申請時までに全従業員または従業員代表者へ目標値を表明 | 未達成率に応じて返還。表明がなかった場合は交付決定取消のうえ全額返還 |
| 事業場内最賃水準要件 | 事業計画期間中、毎年、事業場内最低賃金が実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準 | 補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額を返還 |
| ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」で公表。申請締切日時点で有効なもの | 応募時点の要件(満たさなければ申請できない) |
| 子育て等に関する職場環境整備 | ライフデザインサービスの活用/家事代行・ベビーシッターサービスの活用/既存の両立支援制度の周知・普及・啓発の3つから1つを選んで実施 | 実績報告時に証憑の提出。くるみん認定等の取得事業者は免除 |
| 金融機関要件 | 補助事業の実施にあたり金融機関から資金提供を受ける場合は、資金提供元から事業計画の確認を受け「金融機関による確認書」を提出 | 自己資金のみで実施する場合は提出不要 |
一人当たり給与支給総額の中身は細かく決められています。給与支給総額とは従業員に支払った給与等(給料・賃金・賞与等を含み、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は除く)で、これを従業員数で割った金額です。算出に含めるのは全月分の給与等の支給を受けた従業員のみで、中途採用や退職でそうなっていない従業員はその事業年度に限って除きます。産前・産後休業や育児・介護休業で時短勤務中の従業員も除くことができ、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して人数を出します。
事業場内最低賃金は、比較対象が動く点に注意が必要です。基準になる地域別最低賃金は毎年改定されるため、いま30円上回っていても、翌年の改定で基準が上がれば自社の賃金も引き上げないと条件割れを起こします。補助事業を実施する事業場が複数あるときは、事業場内最低賃金が最も低い事業場の数字で判定されます。改定額は厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で毎年確認してください。
そして地味に効くのがワークライフバランス要件です。「両立支援のひろば」への掲載手続きには1〜2週間程度かかり、審査過程で不備が見つかることもあるため2週間以上の余裕を持つよう促されています。GビズIDプライムアカウントの発行にも1週間程度。事業計画の中身がどれだけ良くても、この2つが間に合わなければ申請できません。
上限額や補助率を上げる2つの特例と、その代わりに増える条件
基本要件に上乗せすることで補助上限額や補助率を引き上げる特例が2つあります。どちらも「条件を増やす代わりに金額を増やす」取引だと考えると分かりやすいと思います。
賃上げ特例 — 上限額を引き上げる代わりに、基準値が跳ね上がる
賃上げ特例を適用すると各枠の補助上限額が引き上がります。革新的新製品・サービス枠なら従業員51人以上で2,500万円が3,500万円に、新事業進出枠とグローバル枠なら従業員101人以上で7,000万円が9,000万円に。その代わり、満たすべき水準はこうなります。
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、基準値の3.5%にさらに2.5ポイント上乗せして合計6.0%以上
- 事業場内最低賃金を、基準値の30円にさらに20円上乗せして、地域別最低賃金より50円以上高い水準
この2つはどちらか一方でも未達だと、引き上げ分の補助金交付額の全額を返還することになります。按分ではなく全額です。適用の可否も、応募申請時に入力する大幅な賃上げ計画の妥当性が審査されたうえで決まります。なお、各申請枠の補助上限額に達しない申請額の場合、革新的新製品・サービス枠で地域別最低賃金引上げ特例を申請する事業者、革新的新製品・サービス枠およびグローバル枠で申請する再生事業者は、いずれも適用できません。
地域別最低賃金引上げ特例 — 補助率を上げる代わりに、実績データを出す
もうひとつは補助率を1/2から2/3へ引き上げる特例で、条件は過去の雇用実態で判定されます。2024年10月から2025年9月までの間で、「その期間の地域別最低賃金以上から2025年度改定の地域別最低賃金未満」の水準で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あること。応募申請時に指定様式と賃金台帳の提出が求められます。
この特例を適用すると、基本要件から事業場内最賃水準要件が除外されます。最低賃金近辺の従業員を多く抱える事業者は、補助率が上がるうえに毎年の30円上乗せ判定から外れる形です。ただし革新的新製品・サービス枠で申請する小規模企業者・小規模事業者と再生事業者、グローバル枠で申請する事業者は、もともと補助率が2/3のため適用できません。
申請枠ごとに変わる条件と、従業員数で動く上限額
3つの枠は対象になる事業の性質が違います。同じ設備投資でも、既存製品の生産プロセス改善なら革新的新製品・サービス枠の対象外ですし、既存製品の商圏を広げるだけの計画は新事業進出枠に該当しません。
| 項目 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 対象となる取組 | 革新的な新製品・新サービス開発 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化 |
| 補助率 | 中小企業者1/2(2/3)、小規模企業・小規模事業者と再生事業者は2/3 | 中小企業者(小規模・再生事業者含む)1/2(2/3) | 中小企業者(小規模・再生事業者含む)2/3 |
| 補助下限額 | 100万円 | 750万円 | 750万円 |
| 補助上限額(従業員1〜5人) | 750万円(850万円) | 1〜20人:2,500万円(3,000万円) | 1〜20人:2,500万円(3,000万円) |
| 補助上限額(従業員6〜20人) | 1,000万円(1,250万円) | ||
| 補助上限額(従業員21〜50人) | 1,500万円(2,500万円) | 4,000万円(5,000万円) | 4,000万円(5,000万円) |
| 補助上限額(従業員51人以上) | 2,500万円(3,500万円) | 51〜100人:5,500万円(7,000万円)/101人以上:7,000万円(9,000万円) | 51〜100人:5,500万円(7,000万円)/101人以上:7,000万円(9,000万円) |
| 補助事業実施期間 | 交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内) | 交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内) | 交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内) |
| 必ず含める経費 | 機械装置・システム構築費 | 機械装置・システム構築費または建物費のいずれか | 機械装置・システム構築費または建物費のいずれか |
新事業進出枠の「新規性」は、世の中における新規性ではなく申請する事業者自身にとっての新規性です。日本初・世界初である必要はありません。ただし、申請予定の公募回の公募開始日(第1回なら2026年6月29日)以降に初めて取り組んでいる事業であることが条件で、すでに動かしている事業を書いても通りません。
該当しない例も具体的に挙げられています。既存製品の製造量を増やすだけ、過去に製造していた製品の再製造、単なる製造方法の変更、既存製品と対象市場が同一(単なるメニュー追加を含む)、既存市場の一部のみを対象とするもの、商圏だけが異なるもの。自社計画と突き合わせておく価値があります。
枠ごとの上限額と補助率の詳細は新事業進出・ものづくり統合補助金 第1回|3枠の上限額・補助率・申請完全ガイドでも扱っています。
対象になる経費、ならない経費 — 線はどこに引かれているか

補助対象経費の条件は、ひとことで言えば「専ら補助事業のために使用されること」です。既存事業と共用するもの、汎用性があって目的外使用になり得るものは落ちます。区分ごとに上限が設定されているものもあります。
| 経費区分 | 内容 | 区分ごとの上限 |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 専ら補助事業に使用する機械装置・工具器具、専用ソフトウェアや情報システムの購入・製作・構築・借用と、一体で行う改良・据付け・運搬 | 上限の設定なし(単価10万円税抜き以上が対象) |
| 建物費 | 専ら補助事業に使用する生産・加工・販売・検査施設等の建設・改修、必要な建物の撤去、付随する構築物の建設 | 新事業進出枠・グローバル枠のみ対象 |
| 運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等 | 上限の設定なし |
| 技術導入費 | 補助事業遂行に必要な知的財産権等の導入 | 補助対象経費総額(税抜き)の3分の1 |
| 知的財産権等関連経費 | 特許権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料など | 補助対象経費総額(税抜き)の3分の1 |
| 外注費 | 検査・加工・設計等の一部を外注する場合の経費 | 補助対象経費総額(税抜き)の4分の1 |
| 専門家経費 | 技術指導や助言が不可欠な専門家への謝金・旅費 | 補助対象経費総額(税抜き)の5分の1。1日1人あたり5万円が上限 |
| クラウドサービス利用費 | 専ら補助事業に使用するクラウドサービスの利用に関する経費 | 上限の設定なし(自社の他事業と共有する場合は対象外) |
| 原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料・副資材の購入 | 上限の設定なし(期間終了時点の未使用残存品は対象外) |
| 広告宣伝・販売促進費 | 製品・サービスの広告作成と媒体掲載、PR用ウェブサイト構築、展示会出展など | 事業計画期間1年当たりの新製品等の売上高見込み額(税抜き)の5% |
| 海外旅費 | 海外事業の拡大・強化を目的とした渡航・宿泊等 | グローバル枠のみ。補助対象経費総額(税抜き)の5分の1、1人当たり最大50万円 |
| 通訳・翻訳費 | 事業遂行に必要な通訳・翻訳 | グローバル枠のみ。30万円(税抜き) |
専門家経費の謝金単価は職種で決まっています。大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・医師は1日5万円以下、准教授・技術士・中小企業診断士・ITコーディネータは1日4万円以下、それ以外は1日2万円以下。なお事業計画書の作成支援者に支払う費用は専門家経費の対象外です。では何が対象にならないのか、実務でつまずきやすいものを挙げます。
- 事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電——汎用性があり目的外使用になり得るものの購入費・レンタル費
- 既存の機械装置・システム等の単なる置き換えに係る経費
- 自動車等の車両、船舶、航空機の購入費・修理費・車検費用・内装費用
- 事務所等の家賃、保証金、敷金、仲介手数料、水道光熱費
- 諸経費・会社経費・一般管理費・雑費など、内訳の詳細が確認できない経費
- 自社の人件費と旅費(グローバル枠の海外旅費を除く)
- 販売・レンタルする商品、試作品、サンプル品、予備品の購入費
- 太陽光発電のソーラーパネルなど再生可能エネルギーの発電設備と一体不可分の附属設備
- 公租公課(消費税等)、収入印紙、振込手数料、各種保険料、借入金の支払利息
- 事業計画書・申請書・報告書など事務局に提出する書類の作成・提出に係る費用
- フランチャイズ加盟料、商品券等の金券、飲食・娯楽・接待の費用
- 申請者と同一の代表者・役員が含まれる事業者、みなし同一事業者、資本関係がある事業者への支払い
クラウドサービス利用費は線引きが細かいので補足します。サーバーの領域を借りる費用やサーバー上のサービス利用費は対象ですが、サーバーの購入費やサーバー自体のレンタル費は対象外。ルータ使用料・プロバイダ契約料・通信料などの付帯経費は対象になる一方、パソコン・タブレット・スマートフォンの本体費用は対象になりません。AIツールをクラウドで導入するなら、どこまでが「専ら補助事業のため」かを設計段階で切り分けておく必要があります。
経費区分ごとの按分や相見積りの実務は新事業進出・ものづくり補助金 第1回|経費9区分と按分・相見積り実務で具体例つきに解説しています。
条件を満たせなかったとき、いくら返すことになるのか
賃上げ要件と事業場内最賃水準要件には返還規定が明記されています。採択されてからではなく、申請前に理解しておくべき部分です。
| 未達となる要件 | 返還額の考え方 | 返還を求められない場合 |
|---|---|---|
| 賃上げ要件(一人当たり給与支給総額) | 補助金交付額×(1−事業計画期間最終年度の年平均成長率÷目標値)。年平均成長率がゼロまたはマイナス成長なら全額返還 | 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合。天災など事業者の責めに負わない理由がある場合 |
| 賃上げ要件の目標値を従業員等に表明していなかった場合 | 交付決定を取り消し、補助金全額の返還 | 規定なし |
| 事業場内最賃水準要件 | 補助金交付額÷事業計画期間の年数。毎年の事業化状況報告で判定 | 付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として当該事業年度の営業利益赤字の場合。天災など事業者の責めに負わない理由がある場合 |
| 賃上げ特例の要件(給与6.0%・最低賃金50円) | 2つの要件のいずれか一方でも未達なら、賃上げ特例による上限額引上げ分の全額 | 規定なし |
いずれも返還額は交付された補助金額が上限です。返還とは別に財産処分の制限もあり、補助事業で取得した財産を既存事業など補助事業以外で使った場合は交付の目的に反する使用と判断され、残存簿価相当額等を納付することになります。「事業計画書に記載されている事業にのみ使用する」が、公募要領の言う「専ら補助事業に使用」の意味です。
2026年10月30日18:00までに、条件を満たす順番
応募期間は2026年9月30日(水)から10月30日(金)18:00まで。採択発表は2027年1月頃が予定されています。逆算すると、着手の順番はこうなります。
- GビズIDプライムアカウントの取得。発行に1週間程度。手続きの遅れによる申請期限の延長は一切認められないと明記されています
- 一般事業主行動計画の策定と「両立支援のひろば」での公表。掲載手続きに1〜2週間、不備の可能性を考えて2週間以上の余裕を見ます
- 対象者条件の自己点検。資本金・常勤従業員数、株主構成(みなし大企業)、グループ会社の申請予定(みなし同一事業者)、過去の補助金採択履歴(16か月ルール・過去3年2回ルール)
- 決算書の準備。法人は直近3期分の貸借対照表・損益計算書等、個人事業主は青色申告決算書または収支内訳書
- 賃上げ目標値の設定と従業員への表明準備。表明は交付申請時までですが、目標値は応募申請時点で設定します
- 子育て等に関する職場環境整備の取組を1つ選定し、具体的な内容を事業計画に記載
- 金融機関から資金提供を受ける場合は確認書の取得。複数行から調達する場合も任意の1者分で足ります
- 事業計画の作成と電子申請。申請は電子申請システムでのみ受け付け、入力には数時間程度を要するとされています
強調しておきたいのは、事業計画は申請者自身が作成する必要がある点です。認定経営革新等支援機関を含む外部支援者の助言を受けるのは差し支えありませんが、作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚すれば不採択・採択取消・交付決定取消になります。事業計画作成支援者がいる場合は、支援者名・支援内容・報酬予定額・契約期間の入力義務があり、入力がなければ同じく取消の対象です。
基本要件を満たしたうえで審査の評価を押し上げるのが加点項目です。1.2版で17項目に拡充され、パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、健康経営優良法人2026、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、J-Startup、技術情報管理認証制度、アトツギ甲子園などが並びます。いずれも申請締切日時点で満たしている必要があるため、取得に日数がかかるものは早めに動くしかありません。AI・DX投資で申請するなら、取得の流れが読めるDX認定申請ガイド|ものづくり補助金加点取得が検討しやすい選択肢です。
それと、交付決定前の発注は補助対象になりません。採択と交付決定は別の段階です。根拠は補助金|交付決定前の発注・契約・着手が対象外の根拠で整理しています。
よくある質問
ものづくり補助金の対象となる条件は?
2026年9月28日時点で公募中の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回では、日本国内に本社と補助事業実施場所があり、中小企業者・小規模企業者・特定事業者の一部・特定非営利活動法人・農事組合法人・対象リース会社のいずれかに該当することが入口の条件です。そのうえで、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準という3つの数値目標と、一般事業主行動計画の公表・子育て等の職場環境整備・金融機関の確認という3つの手続き要件を満たす3〜5年の事業計画が必要です。
ものづくり補助金は2026年も実施されるのですか? 廃止になったのですか?
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金としての公募要領は第23次締切分が最後の公表分で、2026年度は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金として第1回の公募が行われています。中小企業基盤整備機構は公式サイトで、この制度は従来の2制度とは異なる補助金であると案内しています。次回以降の公募回の日程は、2026年9月28日時点で公表されていません。
ものづくり補助金は個人事業主でも対象ですか?
資本金または常勤従業員数の条件を満たせば、個人事業主も中小企業者として対象になります。ただし応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外と明記されているため、一人で営んでいる場合は該当しません。新事業進出枠ではさらに、新規設立・創業後1年に満たない事業者が対象外です。
賃上げ条件は必須ですか。達成できなかったらどうなりますか?
必須です。一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上と、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準はいずれも基本要件で、未達なら返還義務が生じます。返還額は、賃上げ要件が未達成率に応じた按分、事業場内最賃水準要件が補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額です。ただし付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、一部返還を求めないと規定されています。
ものづくり補助金でパソコンを購入できますか?
事務用のパソコンは対象外です。公募要領は「汎用性があり、目的外使用になり得るもの」の例として、事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電を挙げています。一方、専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェアや情報システムの購入・構築費は、機械装置・システム構築費として対象になります。
対象になる業種に制限はありますか?
業種を一律に除外する規定はなく、中小企業者の定義の表も製造業から小売業、サービス業まで幅広く含みます。ただし事業内容による除外はあります。不動産賃貸(寮を含む)、駐車場経営、暗号資産のマイニングなど実質的な労働を伴わない事業や資産運用的性格の強い事業、会員の募集・入会が公に行われていない会員制ビジネス、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に定める事業は対象外です。
過去にものづくり補助金を受けたことがあっても申請できますか?
回数と時期の両方に制限があります。申請締切日を起点にして16か月以内に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金の交付候補者として採択された事業者、または締切日時点でそれらの交付決定を受けて事業実施中の事業者は対象外です。加えて、応募申請日から過去3年間にこれらの交付決定を合計2回以上受けた事業者も対象外。1回の事業者は申請できますが、減点項目に該当します。
今から準備して2026年10月30日の締切に間に合いますか?
GビズIDプライムアカウントの発行に1週間程度、一般事業主行動計画の「両立支援のひろば」への掲載に1〜2週間程度かかるため、この2つが未着手なら日程は厳しくなります。公募要領は、これらの手続きの遅れによる申請期限の延長は認められないと明記しています。間に合わないなら、次回以降の公募回に向けて要件を整えるほうが現実的です。
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参考・出典
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 — 独立行政法人中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-09-28)/応募期間、3枠の補助率・上限額、基本要件、従来制度とは異なる旨の注記
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版 — 独立行政法人中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-09-28)/対象者の業種別条件、対象外事業者34項目、基本要件6つ、特例措置、経費区分と上限、対象外経費、返還の計算式、加点17項目・減点5項目、公募期間、改訂履歴
- 資料ダウンロード — 独立行政法人中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-09-28)/公募要領PDFの更新日、参考資料の一覧
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026-09-28)/公募要領公開の告知(2026年6月30日付け)
- 地域別最低賃金の全国一覧 — 厚生労働省(参照日: 2026-09-28)/事業場内最賃水準要件の比較基準
- 両立支援のひろば — 厚生労働省(参照日: 2026-09-28)/ワークライフバランス要件で求められる一般事業主行動計画の公表先
- GビズID — デジタル庁(参照日: 2026-09-28)/申請に必要なGビズIDプライムアカウントの取得手続き
- 補助金・助成金の一覧 — 中小企業庁 ミラサポplus(参照日: 2026-09-28)/中小企業向け支援制度の横断的な一覧
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(第23次公募) — ものづくり補助金事務局(参照日: 2026-09-28)/第23次の公募期間、基本要件の数値、従業員21名以上の両立要件、2枠の上限額
ここまでの要点
ものづくり補助金の条件を確認するとき、見るべき資料は第1回公募要領です。第23次の数字で組んだ事業計画は、付加価値額の基準値も申請枠の構成も合いません。押さえるポイントは3つです。
- 入口の条件を先に確定させる。資本金と常勤従業員数、株主構成(みなし大企業)、グループ会社の申請予定(みなし同一事業者)、過去3年の採択履歴。ここで外れていると事業計画の出来は関係ありません
- 手続き要件から逆算する。GビズIDプライムに1週間程度、一般事業主行動計画の公表に1〜2週間程度。2026年10月30日18:00の締切に対して、この2つが最短距離のボトルネックになります
- 賃上げ条件は3〜5年の約束として読む。給与3.5%と最低賃金30円上乗せは、達成できなければ返還規定が働きます。賃上げ特例で上限額を取りにいくなら、6.0%と50円を自社の収益計画で支えられるかを先に検算してください
設備投資にAIを組み込むとき、どの業務を対象にすれば付加価値額の目標と整合するのか、クラウドで導入するAIツールをどこまで「専ら補助事業のため」に切り分けられるのか。この設計でお困りでしたら、お問い合わせフォームからお気軽にご質問ください。AI導入の計画づくりと社内研修のご相談を承っています。申請書類の作成代行は行っておりません。要件の個別判定や申請手続きそのものは、補助金事務局のコールバック予約システム、認定経営革新等支援機関、または行政書士・中小企業診断士へご相談ください。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年9月28日時点の独立行政法人中小企業基盤整備機構・中小企業庁・厚生労働省・デジタル庁およびものづくり補助金事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助率・補助上限額・対象要件・対象経費・公募スケジュールは予告なく変更される場合があり、公募要領も改訂されることがあります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
