人材開発支援助成金

AI人材育成の助成金|事業内職業能力開発計画の書き方・記載例

AI人材育成の助成金|事業内職業能力開発計画の書き方・記載例

この記事の結論

人材開発支援助成金の前提となる事業内職業能力開発計画の書き方を解説。AI人材育成の記載例、職業能力開発推進者の選任、よくある不備、関連様式への接続までまとめました。

「AI研修に人材開発支援助成金を使いたいが、そもそも事業内職業能力開発計画って何を書けばいいのか分からない」——AI人材育成の相談を受けていると、様式の話より先にこの疑問にぶつかる担当者の方が実は少なくありません。事業内職業能力開発計画は、訓練の中身そのものより先に整えておかないと、計画届自体を受け付けてもらえないことがある書類です。

この記事では、AI人材育成を計画に盛り込む場合を想定し、職業能力開発推進者の選任から個票1〜3の書き方、よくあるつまずきまでを実務の順番で解説します。

そもそも事業内職業能力開発計画とは何か

事業内職業能力開発計画とは、職業能力開発促進法にもとづいて事業主が作成する、社内の人材育成に関する基本方針の計画です。ざっくり言うと「うちの会社は、経営方針にあわせて、誰にどんな能力を身につけてもらうつもりか」を言語化したものだと考えると分かりやすいです。

厚生労働省は、計画の構成を大きく3つの個票に分けて示しています。個票1は経営理念・経営方針にもとづく人材育成方針と目標、個票2は昇進・昇格・人事考課など従業員の配置とキャリア形成に関する方針、個票3は職務ごとに必要な職業能力(いわゆる職能要件)です。

この計画自体は、人材開発支援助成金のためだけに存在する書類ではありません。ただ、人材開発支援助成金の複数コース(人材育成支援コース、事業展開等リスキリング支援コース等)では、この計画の作成と、後述する職業能力開発推進者の選任が、支給要件の前提として位置づけられています。

事業内職業能力開発計画の基本データ

項目 内容
計画の名称 事業内職業能力開発計画(個票1・個票2・個票3で構成)
根拠法令 職業能力開発促進法(職業能力開発推進者の選任は同法第12条の努力義務)
助成金上の位置づけ 人材開発支援助成金(人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース等)の支給要件の前提書類
主な構成 個票1(人材育成方針・目標)/個票2(配置・キャリア形成に関する方針)/個票3(職務ごとの職業能力=職能要件)
セットで必要な選任 職業能力開発推進者(計画の作成・実施、従業員への相談・指導を担当)
提出タイミングの目安 訓練開始日の原則1か月前までに、訓練実施計画届(訓練様式第1号等)とあわせて労働局へ
参照した支給要領 令和8年5月14日版(厚生労働省公表)
公式情報 厚生労働省「事業内職業能力開発計画」

AI人材育成を含む人材開発支援助成金でなぜこの計画が必要なのか

「AI研修だけやればいいのに、なぜ全社的な人材育成計画まで作らないといけないのか」と感じる方もいるはずです。正直、ここでつまずいて計画届の提出自体を後回しにしてしまうケースを何度か見てきました。

理由はシンプルで、人材開発支援助成金はあくまで「計画的な人材育成」を支援する制度だからです。単発のAI研修だけを切り出して助成するのではなく、その研修が会社全体の人材育成方針とどうつながっているかを、事業内職業能力開発計画で示す必要があります。

逆に言えば、AI人材育成を会社の人材育成方針の中に明確に位置づけてしまえば、計画そのものは難しいものではありません。次の章から、AI研修を想定した書き方を具体的に見ていきましょう。

まずこれだけ確認|計画がないと訓練開始1か月前で詰みます

  • 雇用保険適用事業所であること(人材開発支援助成金全般に共通する前提)
  • 事業内職業能力開発計画を、訓練開始日の原則1か月前までに整えておく必要があること
  • 計画とセットで職業能力開発推進者を選任しておくこと
  • 計画は作って終わりではなく、従業員への周知まで済ませておく必要があること

この4つのうち1つでも抜けていると、訓練実施計画届そのものが受理されない可能性があります。AI研修の内容を固める前に、まずこの土台から着手するのが結果的に近道です。

Step 1: 職業能力開発推進者を選任する

職業能力開発推進者は、社内で人材育成の取組みを推進するキーパーソンです。厚生労働省のページでは、事業内職業能力開発計画の作成・実施や、従業員への相談・指導を行える権限を持つ人を選任するよう案内されています。実務上は、人事部門や教育訓練を担当する部長・課長クラスが選ばれるケースが多いようです。

根拠となる職業能力開発促進法第12条は、推進者の選任を事業主の努力義務として位置づけています。とはいえ、人材開発支援助成金を活用する場合は、実質的に選任が前提条件になっている点に注意してください。

選任にあたって特別な資格は求められていません。ポイントは、誰が推進者かを事業内職業能力開発計画の中に明記し、いつでも説明できる状態にしておくことです。選任の経緯(辞令や社内通知など)を書面で残しておくと、後で計画の内容を聞かれたときにも慌てずに済みます。選任に関する届出の要否・様式の取り扱いは労働局によって案内が異なる場合があるため、迷ったら管轄の労働局に事前に確認しておくと安全です。

Step 2: 個票1〜3で計画の骨格をつくる

推進者が決まれば、あとは個票ごとに内容を肉付けしていくだけです。

個票1(人材育成方針・目標)には、経営理念・経営方針を出発点に、会社としてどんな人材を育てたいかを書きます。AI人材育成を盛り込む場合は、「全社的な業務効率化・生産性向上のため、生成AIを含むデジタルツールを使いこなせる人材を育成する」といった方向性を明記するイメージです。

個票2(配置・キャリア形成に関する方針)には、昇進・昇格・人事考課とAIスキルの関係を書きます。AI活用スキルを人事評価の一項目に加える、AIツールを使った業務改善提案を昇格の判断材料に含める、といった記載が考えられます。

個票3(職能要件)には、職務ごとに必要な職業能力を具体的に書き出します。ここが一番、AI人材育成の内容を反映しやすい部分です。次の章で、具体的な記載イメージを見てみましょう。

Step 3: AI人材育成を盛り込んだ記載例

※以下は、AI人材育成を計画に盛り込む際のイメージをつかんでいただくために、当サイト編集部が作成した記載イメージです。厚生労働省が公表している記入見本そのものではありません。実際に提出する際は、貴社の経営理念・人材育成方針・実施する研修内容に沿った内容に書き換えてください。

個票1(人材育成方針・目標)の記載イメージ

人材育成方針:全社的な生産性向上のため、生成AIを含むデジタルツールを日常業務で活用できる人材を計画的に育成する。
目標:営業部門・事務部門の従業員を対象に、生成AIを用いた文書作成・データ整理等の基礎スキルを習得させる研修を計画的に実施する。

個票2(配置・キャリア形成に関する方針)の記載イメージ

AI活用スキルの習得状況を人事考課の項目の一つとして位置づけ、業務改善への活用実績を昇格・配置の判断材料の一つとする。

個票3(職能要件)の記載イメージ

職務名 必要な職業能力(職能要件)の記載イメージ
営業事務(DX推進担当) 生成AIツールを使った提案書・議事録の下書き作成ができる/社内データをもとにAIで業務改善案を提案できる
製造ライン管理者 AIを活用した検品・品質管理の仕組みを理解し、現場に導入できる
総務・経理担当 AI-OCR等を用いた帳票処理の自動化を運用できる

個票3は、実際に受講させる訓練内容(研修カリキュラム)と職能要件がずれていると、審査の過程で内容の説明を求められることがあります。AI研修の内容を決めるタイミングで、個票3の職能要件もあわせて確定させておくと、後の手戻りが少なくなります。

Step 4: 訓練実施計画届とセットで労働局へ提出する

事業内職業能力開発計画そのものを単独で労働局に提出する、という流れではありません。実務上は、訓練実施計画届(訓練様式第1号等)を提出する際に、事業内職業能力開発計画の内容を反映させるかたちで届け出ます。

タイミングの目安は、訓練開始日の原則1か月前までです。事業内職業能力開発計画の策定と職業能力開発推進者の選任は、この提出日までに完了している必要があります。

なお、計画は作って終わりではありません。労働者に対する周知(掲示・配布・説明会など)まで含めて「計画の策定」とされているため、周知を行った記録も残しておきましょう。

書類作成でよくある不備4選

不備1: 個票の内容が抽象的すぎる

❌ 「AIを活用した人材育成を行う」とだけ書いて終わってしまう
⭕ 「どの部門の、どの業務課題に対して、どんなAI研修を行い、どんな職業能力を身につけさせるか」まで具体的に書く

個票の記載が抽象的だと、実際の訓練内容(研修カリキュラム)とのつながりが見えにくくなり、計画届の段階で確認を求められることがあります。

不備2: 職業能力開発推進者の選任記録が残っていない

❌ 「誰が推進者か」を口頭で決めただけで書面化していない
⭕ 選任の経緯・役職・氏名を書面(辞令や社内通知)で残し、事業内職業能力開発計画とセットで保管する

不備3: 計画の周知を行わないまま提出してしまう

❌ 計画は作ったが、社内に周知していない
⭕ 就業規則の周知と同様に、掲示・配布・説明会等で従業員に周知した記録(日付・方法)を残す

不備4: 訓練開始日の直前になって慌てて着手する

❌ 訓練実施計画届の提出期限(訓練開始日の原則1か月前)ぎりぎりに計画作成を始める
⭕ 提出期限から逆算して、遅くとも1.5〜2か月前には着手する

事業内職業能力開発計画は、研修会社の選定や研修日程の調整と並行して進める書類です。訓練内容が固まってから作り始めると、個票3の職能要件を書き直す手間が発生しやすくなります。

関連様式とのつながり|計画届から支給申請まで

事業内職業能力開発計画そのものは、労働局へ提出する様式(訓練様式第1号等)と一体で扱われます。実際にどの様式をいつ出せばいいのかは、様式ごとの早見表で確認するのが早道です。→ 人材開発支援助成金 様式一覧&つまずきチェックリスト

そもそも自社が申請要件を満たしているか、雇用保険適用の有無など前提条件から確認したい場合は、こちらもあわせてご覧ください。→ 人材開発支援助成金 申請前チェックリスト

AI人材育成に使える助成金・補助金は、人材開発支援助成金だけではありません。IT導入補助金など他制度との比較は、こちらで整理しています。→ AI人材育成に使える助成金・補助金マップ2026

よくある質問

事業内職業能力開発計画は必ず作成しないと助成金は使えませんか?

人材開発支援助成金の複数コース(人材育成支援コース、事業展開等リスキリング支援コース等)では、事業内職業能力開発計画の作成と職業能力開発推進者の選任が、支給要件の前提として位置づけられています。作成していない状態では計画届自体を受理してもらえない可能性があるため、訓練開始前に整えておく必要があります。

事業内職業能力開発計画はどのくらいの分量で作ればいいですか?

個票1〜3をそれぞれ1〜数ページ程度でまとめている企業が多く、経営理念・人材育成方針・配置方針・職能要件を簡潔に言語化する形が基本です。分量よりも、実際に実施するAI研修の内容と整合していることのほうが重要です。

職業能力開発推進者は誰を選べばいいですか?

人事・教育訓練を担当する部長・課長クラスなど、計画の作成・実施や従業員への相談・指導について一定の権限を持つ人が想定されています。専任の資格要件は定められていません。

一度作った事業内職業能力開発計画は毎年作り直す必要がありますか?

計画の内容が実態と大きくずれていなければ、毎年ゼロから作り直す必要はありません。ただし、AI研修など新しい訓練コースを追加する際は、計画の記載内容やそれに基づく訓練実施計画届を、最新の状況にあわせて見直すことが望ましいです。

この記事の記載例をそのまま使って申請できますか?

本記事の記載例は、AI人材育成を計画に盛り込む際の書き方をイメージしやすくするための編集部作成のイメージです。貴社の経営理念・人材育成方針に沿った内容に書き換える必要があります。提出前には、必ず最新の支給要領・様式で内容を確認してください。

まとめ:AI研修の計画届を出すまでにやること

  1. 今日やること:職業能力開発推進者の候補者(人事・教育訓練担当の部長・課長クラス等)を1人決める
  2. 今週中:個票1〜3の骨格を箇条書きで書き出す(経営理念→人材育成方針→配置方針→職能要件の順)
  3. 今月中:AI研修の具体的な訓練内容(誰に・何時間・何を学ばせるか)を固め、訓練実施計画届の提出スケジュールを逆算する

AI研修の計画策定や、事業内職業能力開発計画にAI人材育成をどう落とし込むか迷う場合は、お気軽にご相談ください。→ お問い合わせフォーム

この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。


免責事項
本記事の情報は2026年7月23日時点の厚生労働省の公表資料(人材開発支援助成金 支給要領 令和8年5月14日版を含む)に基づく参考情報です。制度内容・様式・提出タイミングは予告なく変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトおよび管轄労働局で最新の支給要領・様式をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

参考・出典

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