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キャリアアップ助成金 正社員化コースの就業規則転換規定の書き方【2026】

キャリアアップ助成金 正社員化コースの就業規則転換規定の書き方【2026】

この記事の結論

キャリアアップ助成金 正社員化コースは就業規則の転換規定がないと不支給。規定に必須の3要素(手続き・要件・時期)、厚労省の規定文言例、労基署届出の期限、審査で落ちる不備5つを令和8年度パンフレット準拠で解説。

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キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請で、就業規則に規定しておくべき要素は3つです。①転換の手続き(面接試験・筆記試験等)、②対象者の要件(勤続年数・人事評価結果・所属長の推薦等)、③転換の実施時期。この3つが就業規則等に明示されていない状態で正社員転換を実施すると、他の要件をすべて満たしていても不支給になります。厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)」のフローチャートでも、転換規定がない場合の「就業規則等の改定」は正社員転換のに置かれています。順番を間違えた時点でアウト、というのがこの助成金の一番の落とし穴です。

ここでは、規定に盛り込む3要素の具体的な書き方、厚生労働省パンフレットに掲載されている規定文言例、労働基準監督署への届出との関係、そして審査で実際に落ちる不備のパターンまでを順に確認していきます。支給額や対象労働者の全体像はキャリアアップ助成金 正社員化コースの制度ガイドで解説しているので、制度自体が初めての方はそちらを先に読むと理解が早いはずです。

手順の最初は転換ではなく「規定の整備」——申請フローの正しい順番

令和8年度のキャリアアップ助成金パンフレットに示されている正社員化コースの流れは、次の順番です。

  1. キャリアアップ計画書の作成・提出(コース実施日の前日までに管轄労働局へ)
  2. 就業規則等の改定(転換規定がない場合等)
  3. 就業規則等に基づく正社員転換
  4. 転換後6か月分の賃金の支払い(転換前6か月と比較して3%以上の賃金増額が必要)
  5. 支給申請(転換後6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内

ポイントは、就業規則等の改定が転換の前工程として明記されていることです。「うちは前から正社員登用をやっているから大丈夫」と考えて規定なしで転換してしまうケースが、実務では一番多い失敗です。口頭で運用してきた登用慣行があっても、就業規則等への明示がなければ制度として認められません。パンフレットにも「口頭による明示では認められません」とはっきり書かれています。

なお、規定を置く場所は就業規則本体に限りません。労働協約のほか、転換規則や人事課通知などの社内規定に転換の手続き等を定めても対象になり得ます。ただしその場合、当該社内規定が労働者に周知されていることが条件です。周知されていない社内規定は、無いのと同じ扱いになります。

転換規定に最低限入れる3要素

厚生労働省の令和8年度版パンフレット(詳細版)では、転換制度の規定について「転換の手続き、要件、転換または採用時期を必ず規定する必要があります」と明記されています。3要素をそれぞれ分解すると次のとおりです。

要素 規定する内容 具体例
①手続き 転換の選考プロセス 面接試験、筆記試験 等の適切な手続き
②要件 誰が対象になれるかの基準 勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦 等の客観的に確認可能な要件・基準
③時期 いつ転換するか 「転換時期は原則毎月1日」「毎年4月1日」等

②の要件で重要なのは「客観的に確認可能」という点です。「会社が認めた者」だけでは基準が曖昧で、審査で説明を求められる可能性があります。勤続年数や評価ランクのように、書類で裏付けられる基準を軸にしましょう。

一方で、要件の設定には禁止パターンもあります。年齢制限や勤続年数の上限(例えば「○歳未満」「勤続○年未満」)によって転換対象となる有期雇用労働者等を限定している規定は、支給対象から除外されます。「勤続○か月以上」という下限の設定は問題ありませんが、「勤続5年未満の者に限る」のような上限を切る書き方はNGです。長く働いた人ほど転換の道が閉ざされる制度設計は、助成金の趣旨に反するためです。

厚労省パンフレット掲載の規定文言例

ゼロから条文を起草する必要はありません。令和8年度版パンフレットに規定例がそのまま掲載されています。まず有期雇用労働者から正規雇用への転換規定の例です。

第○条(正規雇用への転換)
勤続○ヶ月以上の者または有期実習型訓練修了者で、本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある。
2 転換時期は、原則毎月1日とする。ただし、所属長が許可した場合はこの限りではない。
3 人事評価結果としてc以上の評価を得ている者または所属長の推薦がある者に対し、面接および筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。

この条文には、3要素がすべて入っています。手続き=面接および筆記試験(第3項)、要件=勤続○ヶ月以上・人事評価c以上または所属長の推薦(第1項・第3項)、時期=原則毎月1日(第2項)。自社で作る場合も、この骨格を保ったまま数字と基準を実態に合わせるのが安全です。

派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合の規定例も掲載されています。

第○条(派遣社員からの採用)
会社は、派遣社員を、本人が希望する場合は、正規雇用として採用することがある。
2 採用時期は、毎年原則4月1日とする。ただし、所属長が許可した場合はこの限りではない。
3 所属長の推薦のある者に対し、面接および筆記試験を実施し、合格した場合について採用することとする。

勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員といった「多様な正社員」への転換を規定する場合は、転換規定だけでは足りません。その雇用区分自体の労働条件(勤務地の範囲、所定労働時間等)を就業規則または労働協約に明記したうえで、転換規定を置く必要があります。パンフレットの例では「勤続○年以上で、所属長が推薦し、本人が転換を希望する正社員以外の者については、面接および筆記試験を実施し、合格した場合について勤務地限定正社員に転換することができる」という条文が示されています。

もうひとつ見落としやすいのが、転換の待遇の規定です。就業規則等において、正社員の区分や職種、賃金の算定方法および支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給、所定労働時間等の明記がない、または曖昧な場合、「正社員待遇」が確認できないとして支給対象とならないことがあります。要するに、転換の入口だけ規定しても、転換先の正社員の労働条件が就業規則上ぼんやりしていれば審査は通らない、ということです。

労働基準監督署への届出はいつまでに必要か

就業規則を改定したら、次は効力の発生と届出の話になります。ここも助成金の審査で確認される部分です。

まず前提として、キャリアアップ助成金で「就業規則」として認められるものは事業場の規模で異なります。

  • 常時10人以上の労働者を使用する事業場:管轄の労働基準監督署に届け出た就業規則(受理印があるもの
  • 常時10人未満の事業場:労働基準監督署に届け出た就業規則、または就業規則の実施について事業主の氏名等と労働者代表(有期雇用労働者等を含む全労働者の代表者)の氏名等を記載した申立書が添付されている就業規則

10人未満の事業場は労働基準法上の作成・届出義務がないため、届出の代わりに申立書方式が認められています。逆に言えば、10人未満でも「規定を作っただけで周知も申立書もない」状態では書類がそろいません。支給申請時のチェック項目にも「就業規則に労働基準監督署の受理印があるか(労働者が10人未満の場合、労働者代表と事業主の氏名等を記載した申立書があるか)」が入っています。

タイミングについては、パンフレットの留意事項に重要な記載が2つあります。

  1. 就業規則は従業員に周知した日付で効力を持つため、原則、発効日と施行日は同日付けとすること(作成義務のない10人未満の事業所も同様)
  2. 監督署への届出は発効後速やかに行い、少なくとも支給申請までの間に届け出ること。届出義務のある変更があったにもかかわらず申請日までに届出がなされていない場合、原則不支給

つまり「改定→周知(発効・施行)→転換→届出は遅くとも支給申請まで」が時系列の下限ラインです。とはいえ、届出を後回しにするメリットは何もないので、実務では改定後すぐに届け出てしまうのが確実です。就業規則の作り方自体に不安がある場合は、厚生労働省の「モデル就業規則」に規程例と解説があるので土台に使えます。転換制度の規定にあたっては、労働局の事業主支援アドバイザーのサポートも受けられます。

キャリアアップ計画書と規定改定の段取り

就業規則の改定と並走で押さえておきたいのが、キャリアアップ計画書の要件です。計画書は今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標達成のために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するもので、雇用保険適用事業所単位で作成します。労働者ごとの作成は不要です。

作成にあたっての留意点は4つあります。

  • キャリアアップ管理者を決める。雇用保険適用事業所ごとに、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者(必要な知識・経験を有する者)を置きます。複数事業所の兼任や労働者代表との兼任はできません
  • 計画期間は3年以上5年以内で定める。5年の計画期間満了後も続ける場合は、変更届ではなく新たな計画書の提出が必要です
  • 全ての労働者の代表から意見を聴く。有期雇用労働者等を含む「全ての労働者の代表」からの意見聴取が求められます。就業規則改定時の意見聴取とは別の手続きなので、まとめて段取りしておくと二度手間になりません
  • 内容が変わったら変更届を出す。表紙・共通事項・キャリアアップ管理者情報・計画のいずれかに変更が生じた場合は「キャリアアップ計画書(変更届)」の提出が必要です。変更届が未提出だと受給できない場合があります

実施するコースの取り組みを計画書に記載していない場合は助成金を受給できません。就業規則の転換規定を整備するタイミングで、計画書の記載内容と齟齬がないかも同時に見直しておきましょう。

転換後6か月の賃金3%増額と賃金規程の関係

就業規則の転換規定と並ぶもうひとつの数字要件が、賃金の増額です。正社員転換後6か月の賃金を、転換前6か月の賃金と比較して3%以上増額させている必要があります。ここでいう賃金には時間外手当等を含み、勤務した日数が11日未満の月は比較の対象から除かれます(有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日とみなされます)。

実務上の注意は、転換規定と賃金規程の整合です。転換先の正社員区分の基本給テーブルや手当が就業規則・賃金規程上で確認できないと、3%増額の裏付けそのものが取れません。前述の「正社員待遇が確認できない場合は支給対象とならないことがある」という論点は、この賃金比較とも直結しています。転換規定を新設する際は、正社員区分の賃金の算定方法・支給形態まで含めて就業規則等を点検してください。

支給申請の期限は、転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内です。郵送申請の場合は申請先への到着日が期間内である必要があるため、締切ぎりぎりの発送は避けましょう。

審査で落ちる規定まわりの不備5つ

転換規定に関して実際に支給対象外となるパターンを、パンフレットの記載に沿って整理します。

不備1:規定の施行日より前に転換手続きを実施していた

❌ 4月1日施行の転換規定に基づく転換のつもりが、面接試験を3月に実施していた
⭕ 規定の発効・施行後に、規定どおりの手続き(面接・筆記試験等)を実施する

パンフレットには「転換の手続き等が就業規則の施行日より前に実施されている場合には支給対象外となります」と明記されています。規定を作った日ではなく、手続きの実施日が施行日以降かが見られます。

不備2:規定と異なる手続き・要件・時期で転換した

❌ 規定では「面接および筆記試験」なのに、実際は面接のみで転換した
⭕ 規定した選考プロセスをそのまま実施し、記録(試験結果・評価書類)を残す

「転換制度に規定したものと異なる手続き、要件、実施時期等で転換した場合」は支給対象外です。規定内容と運用実態のズレは、支給申請時の添付書類で照合されます。

不備3:年齢や勤続年数の上限で対象者を絞っている

❌ 「35歳未満の者に限り転換できる」「勤続3年未満の者を対象とする」
⭕ 「勤続6か月以上の者」のように下限のみ設定する

不備4:転換先の正社員待遇が就業規則で確認できない

❌ 転換規定はあるが、正社員の賃金の算定方法・賞与・退職金・昇給・所定労働時間が就業規則に書かれていない
⭕ 転換規定とセットで、正社員区分の労働条件を就業規則上で明確にしておく

不備5:周知・届出が抜けている

❌ 改定した就業規則を事務所の棚にしまい込み、従業員が閲覧できない。届出も申請日までにしていない
⭕ 改定と同時に周知(掲示・イントラ掲載等)し、監督署への届出(10人未満は申立書の整備)を済ませる

正直、どの不備も「規定を作る段階で1回チェックすれば防げる」ものばかりです。逆に、転換を実施した後から遡って直せるものはほぼありません。転換前の1〜2週間を規定整備に充てるかどうかで、1人あたり最大80万円の受給可否が分かれます。

新たに規定するなら加算もセットで検討する

就業規則にこれから転換規定を入れる事業主には、むしろ追い風になる加算があります。令和8年度の正社員化コースでは、キャリアアップ計画期間中に制度を新たに規定し、その制度で実際に転換した場合の事業所単位の加算が用意されています。

加算の種類 中小企業 大企業
正社員転換制度を新たに規定し転換 20万円/事業所 15万円/事業所
多様な正社員制度(勤務地限定・職務限定・短時間正社員のいずれか1つ以上)を新たに規定し転換 40万円/事業所 30万円/事業所
正社員転換等に係る所定の情報をウェブサイト等で公表(情報公表加算) 20万円/事業所 15万円/事業所

注意点として、新規規定加算は「既に同じ転換規定が存在し、対象労働者より前に制度の利用者がいる場合」は対象になりません。あくまで初めて制度を整備する事業所向けの上乗せです。情報公表加算の要件と公表項目の詳細は情報公表加算の解説記事を参照してください。

基本の支給額もあわせて確認しておくと、有期雇用から正規雇用への転換は中小企業で1人あたり80万円(重点支援対象者)または40万円(それ以外)、無期雇用から正規雇用への転換は40万円(重点支援対象者)または20万円です。大企業はそれぞれ60万円/30万円、30万円/15万円になります。重点支援対象者とは、雇入れから3年以上の有期雇用労働者や、派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定訓練修了者などを指します。助成額が支給対象期間の対象労働者への賃金総額を超える場合は、賃金総額が上限です。

よくある質問

Q. 就業規則の改定はキャリアアップ計画書の提出より前でもいいですか?

A. キャリアアップ計画書は「コース実施日の前日まで」に管轄労働局へ提出する必要があります。フローチャート上、就業規則等の改定は計画提出の後に位置づけられています。計画書の提出は窓口持参・郵送・電子申請のいずれでも可能で、実施日の1か月前など余裕を持った提出が推奨されています。順番に迷ったら、まず計画書の提出から着手してください。

Q. 就業規則ではなく賃金規程や人事通知に転換規定を書いても認められますか?

A. 労働協約のほか、転換規則や人事課通知などの社内規定に転換の手続き等を規定しても対象になり得ます。ただし、その社内規定が労働者に周知されていることが必要です。周知の実態がなければ認められません。

Q. 転換の選考書類は何を残しておくべきですか?

A. 規定した手続き・要件を実施した証拠になるもの、つまり面接や筆記試験の実施記録、人事評価の結果、所属長の推薦書などです。支給申請では就業規則(受理印または申立書付き)に加え、規定どおりの運用が行われたかが書類で確認されます。申請書類の全体像はキャリアアップ助成金の様式一覧にまとめています。

Q. 常時10人未満の事業場です。申立書には何を書けばいいですか?

A. 就業規則の実施について、事業主の氏名等と、労働者代表の氏名等を記載します。ここでいう労働者代表は、有期雇用労働者等を含むその事業所の全ての労働者の代表者です。正社員だけの代表では要件を満たしません。申立書を添付した就業規則(原本または写し)が、届出済み就業規則と同等に扱われます。

ここまでの要点

  • 転換規定は①手続き・②要件・③時期の3要素を就業規則等に明示する。口頭運用は不可
  • 規定の施行日より前に転換手続きを実施すると支給対象外。順番は「計画提出→規定整備→転換→6か月賃金→申請」
  • 年齢・勤続年数の上限で対象者を限定する規定はNG。下限設定は可
  • 10人以上の事業場は労基署の受理印のある就業規則、10人未満は届出済みまたは労働者代表の申立書付き就業規則が必要。届出は遅くとも支給申請までに
  • これから規定を作る事業所は、新規規定加算(中小20万円)や多様な正社員制度加算(中小40万円)も同じ計画期間で狙える

就業規則の転換規定は、社労士に依頼するほどの分量ではない一方、書き方を1か所間違えるだけで不支給に直結します。AI活用人材の育成や社内のリスキリングと組み合わせて正社員化を進めたい、どの助成金をどの順番で使うべきか迷っている——そんな場合は、お気軽にご質問ください。→ お問い合わせフォーム

参考・出典

【免責事項】本記事は2026年8月13日時点の公表情報(令和8年度版パンフレット等)に基づいています。支給要件・支給額は年度途中で変更される場合があり、個別案件の支給を保証するものではありません。申請にあたっては必ず厚生労働省・都道府県労働局の最新情報をご確認ください。なお、申請書類の作成代行は行政書士・社会保険労務士の業務であり、当社は行いません。

この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。

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