業務改善助成金で車両購入費が助成対象になるのは、ナンバープレートの「車種を表す数字」が8で始まる特種用途自動車と、これに準ずると考えられる福祉車両等だけで、助成率は4/5または3/4、助成上限額は30万円〜600万円です(厚生労働省 令和8年度 交付要領 別紙3(注3))。2026年9月27日時点で、令和8年度の受付は9月1日に始まっており、Q&Aと申請マニュアルは令和8年9月8日更新版が最新です。
個人事業主でも結論は同じです。従業員を雇っている個人事業主も業務改善助成金を申請できますが、ハイエース・軽トラック・一般の乗用車は対象外で、対象になるのはナンバーが「8」で始まる特種用途自動車(例:リフト付きの福祉送迎車)だけです。しかも「使用の本拠」が申請事業場の住所であることと、その車両でどう生産性が上がるかを計画書で示すことが条件になります(厚生労働省 業務改善助成金Q&A 令和8年9月8日更新版 問39)。
期限の注意(2026年9月27日時点)
申請期間は令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日までです。地域別最低賃金が10月1日に発効する15都道府県(北海道・宮城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・富山・岐阜・愛知・三重・大阪・兵庫・香川)は、申請期限が令和8年9月30日(水)になります(厚生労働省 2026年9月24日の再周知)。都道府県別の期限は後述の一覧にまとめました。
制度全体(3コースの区分・助成上限・申請の流れ)は令和8年度 業務改善助成金 完全ガイドで解説しています。
一般的な乗用車、ハイエースのような貨物・乗用兼用車、軽トラックは、どれだけ生産性向上の効果を説明しても原則対象外という扱いになっています。以前は「自動車(特殊用途自動車を除く)」も助成対象経費の特例として認められていた時期がありましたが、この特例は廃止済みで、令和8年度もその扱いが続いています。
令和8年度に車両購入が助成対象になる範囲
判断のもとになる条文は1か所です。交付要領 別紙3の(注3)に、経費区分「機械装置等購入費」でいう特種用途自動車の定義が書かれています。原文はこうです。

「機械装置等購入費」の欄「特種用途自動車」とは、車両に対して付与されるナンバープレートの「車種を表す数字」が8で始まるもの及びこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)をいう。
— 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金 交付要領」別紙3(注3)
ここで見落とされやすいのが「及びこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)」の部分です。ネット上の解説は「8ナンバーだけ」で止まっているものが多いのですが、要領の文言は8ナンバーに準ずる福祉車両等も特種用途自動車として扱う書き方になっています。助手席リフトアップシート車のように、福祉車両でも8ナンバーで登録されない車があるため、この一文が置かれていると読めます。該当するかどうかの判断は所轄労働局が行うので、8ナンバーでない福祉車両を計画に入れるなら、申請前に管轄の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)へ車検証の写しを見せて確認するのが確実です。
令和8年9月8日に更新された申請マニュアルでも、助成対象経費の具体例に「リフト付き特種車両の導入による送迎時間の短縮(特種用途自動車及びこれに準ずると考えられるもの以外の自動車は助成対象外)」と書かれています。カッコの中が今のルールそのもので、ここに当てはまらない自動車は購入費を計上できません。
そのうえで、車両を計画に入れるときに満たすべき条件は3つです。
- 車両区分:分類番号が8で始まる特種用途自動車、またはこれに準ずると考えられる福祉車両等であること(交付要領 別紙3(注3))
- 使用の本拠の位置:車検証の「使用の本拠の位置」が申請事業場の住所であること(Q&A 問39)
- 生産性向上の説明:その車両で事業場の生産性向上・労働能率の増進がどう進むかを事業計画に数字で書けること。認められないと判断されれば不交付になります(交付要領 別紙3(注7)⑧)
8ナンバーという区分そのものは、道路運送車両法施行規則にもとづく国土交通省の「自動車の用途等の区分について(依命通達)」の細部取扱いで、車体の形状ごとに構造要件が決まっています。救急車・消防車・クレーン車・車いす移動車・患者輸送車など、通達の細部取扱いに載る車体の形状は合計60種類です。自社の用途がこの形状に当てはまるかどうかが、8ナンバー登録の出発点になります。
なぜ令和8年度から一般の自動車が外れたのか
厚生労働省の令和8年度業務改善助成金のご案内の最終ページ「令和7年度からの主な変更点」に、次の一文があります。「助成対象経費の特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)は、助成対象外となりました。」つまり、一般の自動車が買えたのは特例が生きていた期間だけで、令和7年度にその特例が外れ、令和8年度もその状態が続いているということです。

同じタイミングで、車両以外にも制度の骨格が変わっています。業務改善助成金の一部変更のお知らせに載っている変更点を並べると、古い記事との違いがはっきりします。
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 一般の自動車の購入費 | 助成対象経費の特例として認められる場合があった | 特種用途自動車およびこれに準ずるもの以外は対象外 |
| 助成率の区分 | 事業場内最低賃金1,000円未満:4/5 / 1,000円以上:3/4 | 1,050円未満:4/5 / 1,050円以上:3/4 |
| コース区分 | 30円・45円・60円・90円コース | 50円・70円・90円コース |
| 引き上げる対象労働者 | 雇用保険被保険者に限定されていなかった | 雇用保険被保険者が対象 |
| 物価高騰等要件の算定 | 最近3か月間のうち任意の1月 | 最近6か月間平均 |
「うちは去年は車が買えたのに」という相談が今も残るのは、この変更が案内リーフレットの最終ページに小さく書かれているためです。コース名も変わっているので、令和7年度以前の情報を前提に計画を立てると、申請直前に組み直しになります。変更点の全体像は令和8年度 業務改善助成金の変更点|3コース再編と申請9月開始でも整理しています。
申請期限は都道府県ごとに違う(2026年9月時点)
令和8年度の申請期間は令和8年9月1日からですが、終わりの日は全国一律ではありません。「申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日」または「令和8年11月30日」のいずれか早い日が期限です。厚生労働省も2026年9月24日に「都道府県によっては9月末が申請期限になりますのでご注意ください」と再周知しています。

令和8年度地域別最低賃金の答申状況(厚生労働省・全国加重平均1,177円/引上げ額56円)にある発効日の予定から、申請期限を都道府県別に並べると次のようになります。
| 地域別最低賃金の発効日(予定) | 申請期限 | 都道府県 |
|---|---|---|
| 令和8年10月1日 | 9月30日 | 北海道・宮城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・富山・岐阜・愛知・三重・大阪・兵庫・香川 |
| 令和8年10月2日 | 10月1日 | 長野・岡山 |
| 令和8年10月3日 | 10月2日 | 群馬・石川・滋賀・和歌山・鳥取 |
| 令和8年10月4日 | 10月3日 | 福井・奈良・福岡 |
| 令和8年10月8日 | 10月7日 | 山口 |
| 令和8年10月10日 | 10月9日 | 島根 |
| 令和8年10月11日 | 10月10日 | 広島 |
| 令和8年10月14日 | 10月13日 | 秋田 |
| 令和8年10月15日 | 10月14日 | 静岡 |
| 令和8年10月16日 | 10月15日 | 福島 |
| 令和8年10月18日 | 10月17日 | 茨城 |
| 令和8年10月24日 | 10月23日 | 宮崎 |
| 令和8年10月25日 | 10月24日 | 鹿児島 |
| 令和8年10月29日 | 10月28日 | 青森・高知 |
| 令和8年10月30日 | 10月29日 | 山形 |
| 令和8年11月1日 | 10月31日 | 山梨・徳島・愛媛・大分 |
| 令和8年11月2日 | 11月1日 | 長崎 |
| 令和8年11月15日 | 11月14日 | 佐賀 |
| 令和8年11月16日 | 11月15日 | 京都 |
| 令和8年12月1日 | 11月30日 | 岩手・熊本 |
| 令和8年12月2日 | 11月30日 | 沖縄 |
※発効日は答申公示後の異議申出等の状況により変更となる可能性があります(厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」2026年9月27日参照)。
車両の場合、期限までにやることは申請だけではありません。8ナンバーで登録できるかの確認、2者以上(中古車なら3者以上)の見積取得、賃金引上げ計画の作成が先に来ます。予算の範囲内で交付するため申請期間内に募集を終了する場合があるとも案内されているので、期限だけを見て逆算すると間に合いません。期限の考え方は業務改善助成金はいつまで?申請期限は最短9月30日でも詳しく扱っています。
ハイエース・軽トラック・乗用車はどう扱われるか
検索で多いのが「ハイエースは買えるか」「軽トラックはどうか」という質問です。ナンバーの分類番号で機械的に切ると、次のようになります。
| 車両の例 | 登録区分 | 令和8年度の扱い |
|---|---|---|
| ハイエース(バン・ワゴン) | 貨物(1・4ナンバー)/乗用(3・5ナンバー) | 対象外 |
| 軽トラック・軽バン | 軽貨物(4ナンバー) | 対象外 |
| 営業用の乗用車・ワゴン車 | 乗用(3・5ナンバー) | 対象外 |
| 車いす移動車・患者輸送車などの福祉車両 | 特種用途(8ナンバー) | 対象になり得る |
| 8ナンバーにならない福祉車両(リフトアップシート車等) | 乗用等 | 「準ずると考えられるもの」に当たるか所轄労働局に確認 |
ハイエースをベースに架装して車いす移動車として8ナンバー登録した場合は、車両区分の条件は満たします。ただしそれで自動的に通るわけではなく、送迎にかかっていた時間・人員・回数がどう変わるかを事業計画で示す必要があります。ナンバーの数字は入口の条件で、審査の中身は生産性向上の説明です。
「ハイエースの購入費そのものを国の助成で賄いたい」という相談には、業務改善助成金では答えが出せません。運送業や病院などを対象にした令和8年度 働き方改革推進支援助成金のように、業種別の課題解消を支援する助成金は別に用意されていますが、対象になる経費はコースごとの交付要綱・支給要領で決まります。車両が入るかどうかは制度ごとに違うので、各コースの要領を必ず読んでください。
令和8年度の助成率と上限額(車両を入れる前に確認する数字)
助成される金額は「設備投資等にかかった費用×助成率」と「助成上限額」を比べて低い方です。先に上限額を見てから、車両の見積が上限を超えていないかを確認する順番になります。

助成率は申請時点の事業場内最低賃金で決まります。
| 引上げ前の事業場内最低賃金 | 助成率 |
|---|---|
| 1,050円未満 | 4/5 |
| 1,050円以上 | 3/4 |
助成上限額は、賃金の引上げ額(コース区分)と引き上げる労働者数の組み合わせで決まります。令和8年度のご案内に載っている全区分がこちらです。
| コース区分 | 引き上げる労働者数 | 上限額(30人未満の事業者) | 上限額(右記以外の事業者) |
|---|---|---|---|
| 50円コース | 1人 | 40万円 | 30万円 |
| 2〜3人 | 70万円 | 40万円 | |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 | |
| 10人以上(特例事業者のみ) | 130万円 | 130万円 | |
| 70円コース | 1人 | 50万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 100万円 | 50万円 | |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 | |
| 10人以上(特例事業者のみ) | 300万円 | 300万円 | |
| 90円コース | 1人 | 100万円 | 90万円 |
| 2〜3人 | 240万円 | 150万円 | |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 | |
| 10人以上(特例事業者のみ) | 600万円 | 600万円 |
厚生労働省の計算例はこうです。事業場内最低賃金が1,040円(助成率4/5)の事業場が、8人の労働者を1,130円まで引き上げ(90円コース)、設備投資などの額が600万円だった場合、600万円×4/5=480万円と上限額450万円を比べて、支給されるのは450万円になります。
「10人以上」の区分は特例事業者だけが使えます。特例事業者になるのは、①申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満(賃金要件)、②原材料費の高騰など外的要因により、申請前最近6か月間平均の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期に比べ3%ポイント以上低下している(物価高騰等要件)のいずれかです。②に当たる場合は、通常は対象外のパソコン・スマートフォン・タブレット等の端末と周辺機器の新規導入も助成対象に加わります。
期限の側もそろえておきます。事業完了期限は交付決定の属する年度の1月31日で、①導入機器等の納品日、②助成対象経費の支払完了日、③賃金引上げ日(就業規則等の改正日)のいずれか遅い日が事業完了日です。やむを得ない理由がある場合は、あらかじめ理由書を出して所轄労働局が認めれば3月31日まで延長される場合があります。車両は納車待ちが読みにくいので、見積の段階で納車時期を書面で確認しておくと安全です。
車両本体以外の費用はどこまで助成対象か
8ナンバーの車両を入れる場合でも、支払う費用の全部が対象になるわけではありません。Q&A 問34の回答をそのまま整理します。
| 区分 | 費用の例 |
|---|---|
| 対象になる | 通常装備、検査登録(届出)手続の代行費、車庫証明手続の代行費、納車費用 等 |
| 対象外 | 検査登録(届出)手続の預かり法定費用、車庫証明手続の預かり法定費用、販売車両リサイクル料金、自動車取得税、自動車重量税、自動車賠償責任保険等、希望ナンバー交付手数料、オーディオ等のオプション装備 |
加えて押さえておきたい線が3つあります。自動車のリース契約・ローン契約・保守契約等は助成対象外です(Q&A 問38)。車検費用は交付要領 別紙3(注7)④の「移動に要する費用」として対象外に挙げられています。振込手数料も対象外で、相手方が負担した場合は値引きがあったものとして扱われ、支給額が交付決定額より減ることがあります(Q&A 問41)。要領(注1)等にある助成対象経費の上限は、原則として消費税を除いた額で判断します(Q&A 問54)。
中古の8ナンバー車を買うときの見積ルール
予算を抑えるために中古の福祉車両を探す事業場は多いのですが、見積の要件が新車より重くなります。
- 新車・中古を問わず:契約予定額が10万円未満の場合を除き、原則として同一条件の仕様による2者以上の見積もりが必要(10万円は税抜価格で判断)。交付決定されたら最低価格を提示した者と契約します(Q&A 問52)
- 中古車の場合:価格設定の適正性が明確でない中古品は、古物商の許可を得ている3者以上の中古品流通業者から、型式や年式が記載された見積書を提出する必要があります。販売実績や事業実績の確認が取れない場合は適切な見積書として認められません(Q&A 問52・交付要領)
- 使えない見積書:自社・親会社・子会社・グループ企業等の関連会社(資本関係のある会社、役員を兼任している会社、代表者の3親等以内の親族、同一事業主、自社社員が経営する会社 等)や、代表者の親族が作成した見積書は認められません
- 見積が取れない場合:知的財産権等により販売元が限られ、同様に生産性向上が図られる機器がなく比較できないときは、特許(登録)証等で販売元が限られていることがわかる資料を提出します
正直なところ、8ナンバーの福祉車両で「同一条件の仕様」を3者そろえるのは手間がかかります。架装のメーカーと仕様(リフトの形式、乗車定員、車いす固定装置)をそろえた見積依頼書を1枚作り、それを同じ内容で3社に渡す進め方が現実的です。
助成金で買った車を売る・貸すときの制限
車両は動かせる資産なので、買った後の制限も確認しておきます。業務改善助成金で取得した設備投資等を処分制限期間内に財産処分する場合は、交付要綱第18条第1項により、事前に都道府県労働局長の承認が必要です。承認を経ずに処分すると、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にもとづく交付決定の取消しや、加算金を含めた返還を求められる場合があります(Q&A 問62)。

ここでいう財産処分は、転用(所有者の変更を伴わない目的外使用)・譲渡(所有者の変更)・交換・貸付(使用者の変更)・取壊し・廃棄・抵当権の設定です。社用車を他部門に回す、グループ会社に貸す、下取りに出すといった動きも含まれます。
処分制限期間は、厚生労働省告示「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分制限期間」(平成20年7月11日 厚生労働省告示第384号、令和8年3月9日 厚生労働省告示第81号による改正まで)の別表で資産の種類ごとに定められています。「車両及び運搬具」の区分では、特殊車体を架装したもの(寝台車・レッカー等)が小型車3年・その他4年、消防車・救急車・レントゲン車・放送宣伝車等が5年、これら以外の自動車は4年〜6年です。中古品もこの告示によることになっており、告示は毎年改正される可能性があるため、最新のものを確認するようQ&A 問63で案内されています。自社の車両がどの区分に当たるかは、車検証を持って所轄労働局に確認するのが確実です。
公式事例集の送迎車2台の事例は、今のルールでは同じ買い方ができない
事例区分: 公開事例(厚生労働省「働き方改革推進支援助成金・業務改善助成金活用のてびき 生産性向上のヒント集」令和6年3月・令和5年度分の事例)
厚生労働省のヒント集には、業務改善助成金で送迎用車両を導入した事例が載っています。大分県の社会保険・社会福祉・介護事業(従業員7人)の事例で、就労支援の利用者を農作業のハウスまで送る車両が小さく、1回で送れる人数に限りがあって複数回に分けていた、という課題からの申請です。
- 利用したコース:90円コース/引き上げた労働者数:4人/事業場内最低賃金:822円から918円へ引上げ
- 導入内容:7人以上乗車可能な大型の送迎専用車両を2台導入
- 成果:1日あたりの送迎回数が0.5回分削減、送迎業務に必要な人員が4名から3名に減少、送迎希望者を新たに2名受け入れ可能になり売上高が向上
注意したいのは、この事例が自動車が助成対象経費の特例として認められていた年度のものだという点です。令和8年度は、同じように「大型の送迎専用車両を2台」という買い方はできません。それでも参考になるのは効果の書き方です。送迎回数、送迎に必要な人員、受け入れ可能人数という3つの数字で前後を示す組み立ては、8ナンバーの福祉車両で申請する場合にもそのまま使えます。
車両で申請するときに落ちやすい4点
失敗1: 8ナンバーかどうかを確認せずに計画へ入れる
❌ 「業務で使うから対象になるはず」とハイエースや軽トラックを設備投資費として計上する
⭕ 車検証の分類番号と「使用の本拠の位置」を先に確認し、8ナンバーで登録できるかを販売店・運輸支局に確かめてから計画に入れる
失敗2: 交付決定前に発注・契約してしまう
❌ 「どうせ通るだろう」と見込みで先に発注する
⭕ 交付決定の通知を受け取ってから発注・契約する。交付決定前に発生した費用は対象外で、いかなる理由でも事前着手(発注を含む)は認められません(申請マニュアル)
失敗3: リースやローンで初期費用を抑えようとする
❌ 「一括は資金繰りが厳しいから」とリース契約やローン契約を申請書に書く
⭕ 車両は一括購入を前提に計画する。自動車のリース・ローン契約・保守契約等は対象外です(Q&A 問38)
失敗4: 賃金引上げの順番と回数を間違える
❌ 先に事業場内最低賃金を上げてから申請する、または資金繰りの都合で2回に分けて引き上げる
⭕ 賃金引上げは申請より後に行い、発効日の前日までに1回で完了させる。引上げ後の事業場内最低賃金と同額を就業規則等に定めます。複数回に分けての引上げは認められていません
個人事業主・小規模な事業場が車両で申請するときの条件
個人事業主でも申請できますが、労働者を雇っていることが前提です。公式ページの留意事項にも「労働者(従業員)の事業場内最低賃金を引き上げるための支援制度であるため、労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません」と書かれています。加えて次の条件を満たす必要があります。
- 中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する、いわゆるみなし大企業は除く)
- 事業場内最低賃金が、令和8年度の改定後の地域別最低賃金額未満であること(改定後の額と同額の場合は対象外)
- 引き上げる対象労働者は、週所定労働時間が20時間以上の雇用保険被保険者であること
- 雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げること
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
- 申請は事業場(工場・事務所など労働者がいる単位)ごとに行い、同一事業場の申請は年度内1回まで
申請書の作成そのものについては、業務改善助成金の申請書の書き方|事業計画書と賃上げ計画のコツで詳しく解説しています。あわせて必要書類の準備は必要書類チェックリストを確認しておくと、都道府県ごとの期限に向けた準備がスムーズになります。
8ナンバーにできないときの組み立て直し
車両が対象外だと分かった時点で申請そのものをやめてしまう事業場がありますが、送迎や配送の非効率は車両以外の投資でも縮められます。公式の対象経費の例に挙がっているのは、POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化、国家資格者による経営コンサルティング(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し)です。経営コンサルティングは、中小企業診断士・社会保険労務士・ファイナンシャル・プランニング技能士(1級または2級)等の国家資格を持ち、常態として経営コンサルティングを業とする者、または金融機関が行う経営相談に限られます(交付要領 別紙3(注5))。
送迎そのものを効率化したいなら、車を増やす前に配車・送迎管理の仕組みを見直す選択肢があります。配車システムに使える制度は配車システムの補助金3選|IT導入・ものづくり・持続化を比較で比較しました。各制度の補助率・上限額の比較は中小企業向け補助金5制度 早見表でも整理しています。業務改善助成金は他の設備投資系補助金と違い、審査で優劣を競う「採択」ではなく、要件を満たしていれば予算の範囲内で交付が決まる仕組みである点も押さえておきたいところです。
申請前に手を動かす順番
- 今日:導入したい車両の車検証(または見積書の車両情報)で分類番号と使用の本拠の位置を確認する。8ナンバーでない福祉車両なら、管轄の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に「準ずると考えられるもの」に当たるか相談する
- 今週:自社の都道府県の地域別最低賃金の発効日から申請期限を確定させ、同一条件の見積依頼書(中古なら古物商の許可がある3者分)を出す
- 申請まで:送迎回数・所要時間・必要人員の現状値を測り、導入後の目標値とセットで事業計画に書く。賃金引上げは申請後、発効日の前日までに1回で実施する
よくある質問
業務改善助成金でハイエースは対象になりますか?
一般的な貨物・乗用登録のハイエースは対象外です。架装によって車いす移動車などの特種用途自動車(8ナンバー)として登録され、使用の本拠の位置が申請事業場で、生産性向上の効果を事業計画で説明できる場合に限り対象になり得ます。移動手段としての用途にとどまる場合は認められません。
軽トラックや軽バンは購入できますか?
軽貨物(4ナンバー)に分類される軽トラック・軽バンは対象外です。軽自動車でも車いす移動車のように特種用途自動車として8ナンバー登録される車であれば、対象になり得ます。
8ナンバーでない福祉車両は対象外ですか?
交付要領 別紙3(注3)は、8で始まる分類番号の車両「及びこれに準ずると考えられるもの(福祉車両等)」を特種用途自動車と定義しています。該当するかどうかは所轄労働局長の判断になるため、車検証の写しを用意して管轄の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)へ事前に確認してください。
中古の福祉車両でも申請できますか?
できますが、見積の要件が重くなります。価格設定の適正性が明確でない中古品は、古物商の許可を得ている3者以上の中古品流通業者から、型式や年式が記載された見積書を提出する必要があります(Q&A 問52)。販売実績や事業実績が確認できない業者の見積書は認められません。
車両のリース契約やローンは対象になりますか?
対象外です。Q&Aでは自動車のリース・ローン契約・保守契約等は助成対象外と明記されています(問38)。車両は一括の設備投資としての導入が前提です。
自動車税や車検費用、保険料は助成対象ですか?
対象外です。自動車取得税・自動車重量税・自動車賠償責任保険等・販売車両リサイクル料金・希望ナンバー交付手数料・オーディオ等のオプション装備は対象外で(Q&A 問34)、車検費用も交付要領 別紙3(注7)④の「移動に要する費用」として対象から除かれています。
個人事業主でも車両で申請できますか?
週所定労働時間20時間以上の雇用保険被保険者を雇用し、中小企業・小規模事業者の要件を満たしていれば個人事業主も対象です。労働者がいない場合は対象になりません。車両の条件は法人と同じで、8ナンバーの特種用途自動車およびこれに準ずると考えられる福祉車両等に限られます。
申請はいつまでにすればよいですか?
令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日までです。地域別最低賃金が10月1日に発効する15都道府県では令和8年9月30日が期限になります。予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があると案内されています。
助成金で買った車はすぐに売却できますか?
処分制限期間内の譲渡・貸付・交換・廃棄・抵当権の設定などは、事前に都道府県労働局長の承認が必要です(交付要綱第18条第1項)。承認なしに処分すると交付決定の取消しや加算金を含む返還を求められる場合があります。処分制限期間は厚生労働省告示第384号の別表で資産の種類ごとに定められています。
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参考・出典
- 業務改善助成金(厚生労働省 公式ページ・2026年9月24日のお知らせを含む、参照日: 2026-09-27)
- 令和8年度業務改善助成金 交付要領(厚生労働省・PDF、別紙3(注3)(注7)、参照日: 2026-09-27)
- 令和8年度業務改善助成金 交付要綱(厚生労働省・PDF、第18条 財産の処分の制限、参照日: 2026-09-27)
- 業務改善助成金Q&A(厚生労働省・PDF、令和8年9月8日更新版、問34・38・39・41・52・54・62・63、参照日: 2026-09-27)
- 業務改善助成金 申請マニュアル(厚生労働省・PDF、令和8年9月8日更新版、参照日: 2026-09-27)
- 令和8年度業務改善助成金のご案内(厚生労働省・PDF、助成上限額・助成率・令和7年度からの主な変更点、参照日: 2026-09-27)
- 令和8年度業務改善助成金の一部変更のお知らせ(厚生労働省・PDF、参照日: 2026-09-27)
- 令和8年度地域別最低賃金額答申状況(厚生労働省・PDF、発効日の予定、参照日: 2026-09-27)
- 働き方改革推進支援助成金・業務改善助成金活用のてびき 生産性向上のヒント集(厚生労働省・PDF、令和6年3月、参照日: 2026-09-27)
- 補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分制限期間(平成20年7月11日 厚生労働省告示第384号・令和8年3月9日改正まで、参照日: 2026-09-27)
- 「自動車の用途等の区分について(依命通達)」の細部取扱いについて(国土交通省、参照日: 2026-09-27)
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執筆: 株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修: 佐藤 傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。AI導入×補助金活用の実務経験をもとに、中小企業のDX推進をサポートしています。
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免責事項
本記事の情報は2026年9月27日時点の厚生労働省・国土交通省の公表資料に基づく参考情報です。業務改善助成金の制度内容・対象経費・上限額・申請期限は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省公式サイトで最新の交付要綱・要領・Q&Aをご確認ください。個別の要件判断は管轄の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)または社会保険労務士にご相談ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
【2026年9月6日更新】 令和8年度の地域別最低賃金は47都道府県すべてで改定額が答申され(厚生労働省 2026年9月3日発表)、全国加重平均1,177円(引き上げ56円・目安を1円上回る)となりました。発効日は最も早い都道府県で令和8年10月1日、最も遅い沖縄県で12月2日の予定です(答申公示後の異議申出等で変わる可能性あり)。業務改善助成金への影響は【速報】最低賃金2026目安55円・1176円|業務改善助成金の変更点で解説しています。
