判断の分かれ目は、「AIやソフトウェアを買う前に、経営力向上計画の認定まで到達できるか」に尽きます。中小企業経営強化税制は、認定を受けた経営力向上計画に基づいて取得した設備であれば、即時償却か取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除を選択適用できる制度です。逆に言えば、順番をひとつ間違えただけで、まったく同じ投資が対象外になります。
補助金に落ちた。補助対象経費から外れた。見積を取り直しているうちに締切を過ぎた。そういうAI投資こそ、この税制の出番です。補助金は「採択されるかどうか」が審査側の判断に委ねられますが、税制は要件を満たせば適用できる。ここが決定的に違います。
この記事は、デジタル化・AI導入補助金などで拾いきれなかったソフトウェア投資を、経営強化税制でどこまで取り返せるかという視点で整理します。制度の骨格だけでなく、A類型とB類型の選び分け、令和8年4月に変わった取得価額要件、そして補助金との併用可否まで踏み込みます。なお、個別の税務判断は必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。
補助金で拾えなかったAI投資を、どの制度に振り分けるか

最初に地図を出します。AI・ソフトウェア投資を支援する仕組みは「補助金」と「税制」の2系統があり、外れたときの受け皿が用意されています。
| 状況 | 優先して検討する制度 | 効果のイメージ |
|---|---|---|
| まだ設備を買っていない/これから計画を出せる | 中小企業経営強化税制(A類型・B類型) | 即時償却、または取得価額の10%(7%)を法人税から控除 |
| 補助金に不採択だった/補助対象外の経費だった | 中小企業経営強化税制 | 同上。補助金の可否とは無関係に要件で判定される |
| 証明書や確認書の取得が間に合わない | 中小企業投資促進税制 | 30%の特別償却、または7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人) |
| 1件40万円未満のソフトウェア・端末が中心 | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 | 年間300万円まで全額を取得時に損金算入 |
| 固定資産税の負担を軽くしたい | 先端設備等導入計画(市区町村の認定) | 償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例 |
この記事の主役は1行目と2行目です。デジタル化・AI導入補助金で落ちた場合の立て直し方そのものについては、デジタル化・AI導入補助金に不採択だったら|原因と再申請の立て直し方で別途整理しています。補助金の再申請と税制の適用は排他ではないので、両方を並行して走らせるのが現実的です。
即時償却と10%税額控除、適用条件を一枚に整理する

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業経営強化税制(租税特別措置法第42条の12の4【法人税】、第10条の5の3【所得税】) |
| 所管 | 中小企業庁・経済産業省(税務手続は国税庁) |
| 指定期間 | 平成29年4月1日から令和9年3月31日まで |
| 措置内容 | 即時償却、または取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超の法人は7%)の選択適用 |
| 対象者 | 青色申告書を提出する中小企業者等で、中小企業等経営強化法の「特定事業者等」に該当し、経営力向上計画の認定を受けた者 |
| 類型 | A類型(生産性向上設備)/B類型(収益力強化設備)/D類型(経営資源集約化に資する設備)/E類型(経営規模拡大設備等) |
| ソフトウェアの最低取得価額 | 一の取得価額70万円以上 |
| 税額控除の上限 | 中小企業投資促進税制との合計で、その事業年度の法人税額(所得税額)の20%。超過額は1年間繰越可 |
| 公式情報 | 中小企業庁「中小企業経営強化税制」 |
対象になる「中小企業者等」は、資本金または出資金1億円以下の法人、資本や出資を持たない法人で常時使用従業員1,000人以下、常時使用従業員1,000人以下の個人事業主、協同組合等です。ただし、同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人、2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人、前3事業年度の所得金額の平均額等が15億円を超える法人は、資本金1億円以下でも対象外になります。ここは資本政策の履歴を見ないと判定できません。
指定事業も限定されています。製造業や小売業だけでなく情報通信業、専門・技術サービス業、教育・学習支援業、医療・福祉業なども含まれる一方で、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)は対象外です。中小企業庁のQ&A集では「業種問わず利用することはできません。本税制の対象業種は、中小企業投資促進税制における対象業種となります」と明記されています。
AI・ソフトウェアはどこまで対象になるのか

ここが本記事の核心です。ソフトウェアは確かに対象資産に入っていますが、3つの絞り込みが同時にかかります。
絞り込み1:金額のライン
ソフトウェアは一の取得価額70万円以上が最低ラインです。令和8年4月1日以後に取得等をする工具および器具備品の取得価額要件は30万円以上から40万円以上に引き上げられましたが(国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」)、ソフトウェアの70万円以上という水準はこの改正で動いていません。AI-OCRやチャットボットを月額サブスクリプションで契約している場合、そもそも固定資産計上されないため、この土俵には乗らない点も押さえておきたいところです。
絞り込み2:除かれるソフトウェアがある
中小企業庁の手引きでは、ソフトウェアについて「複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除きます」とされています。自社サービスとして販売するAIプロダクトのマスターや、研究開発専用に組んだモデルは、ここで落ちます。
絞り込み3:「生産等設備」であること
意外と見落とされるのがこれです。Q&A集では、生産等設備とは「その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を獲得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されるもの」と定義され、本店や寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は対象外とされています。
一方で、働き方改革に資する設備については別の説明があり、「工場、店舗、作業場等で行う生産等活動のために取得されるもので、その生産等活動の用に直接供される器具備品(テレワーク用電子計算機等)、ソフトウエア(テレビ会議システム、勤怠管理システム等)」は生産等設備に該当し得るとされています。つまり、同じ勤怠管理システムでも、本社の総務部門だけで使うのか、現場の稼働管理に直結しているのかで結論が変わり得るということです。
正直に言うと、この線引きは公表資料だけでは割り切れません。Q&A集自身が「個別ケースにおいて判断に迷われる場合は、所轄の税務署までご確認ください」と繰り返しています。導入目的と使用実態を、稟議段階で文章に残しておくのが最も安全です。
自社開発のAIシステムはどう扱うか
購入だけが対象ではありません。Q&A集は「取得(購入)するもの以外に、自ら製作するものも対象となります」とし、自社製作の場合の取得価額には「当該設備の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額、および当該設備を事業の用に供するために直接要した費用の額が含まれます」と説明しています。社内エンジニアの工数を含めて資産計上したAIシステムは、要件を満たせば射程に入ります。逆に、中古品は対象外、既存システムの修繕も対象外です。
A類型とB類型、どちらのルートで出すか

ソフトウェア投資で実務上の選択肢になるのはA類型とB類型です。D類型は事業承継等を前提とした類型、E類型は売上高100億円超を目指す企業向けの類型なので、多くの中小企業はまずこの2つを比べます。
| 比較軸 | A類型(生産性向上設備) | B類型(収益力強化設備) |
|---|---|---|
| 満たすべき要件 | 一定期間内に販売されたモデルであること、かつ経営力の向上に資する指標が旧モデル比で年平均1%以上向上 | 年平均の投資利益率が7%以上となる見込みであること |
| ソフトウェアの追加条件 | 設備の稼働状況等に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するもの(販売開始5年以内) | 用途・細目の限定なし(全て) |
| 誰から書類をもらうか | 設備メーカー経由で工業会等が発行する証明書 | 公認会計士または税理士の事前確認を経て、経済産業局が発行する確認書 |
| 標準的な所要期間 | メーカーと工業会のやり取り次第 | 経済産業局への説明後、おおむね1か月以内に確認書発行 |
| 認定後の報告 | 不要 | 投資計画に関する実施状況報告を所定期間提出 |
AIソフトウェアの場合、A類型は条件がかなり厳しくなります。「設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの」という限定があるため、生産設備と連動するIoT/予知保全系のソフトウェアが中心になり、汎用的な業務支援AIは要件に届かないことが多い。加えてA類型は「メーカーの一代前モデルとの比較で年平均1%以上向上」を工業会が証明する仕組みなので、比較対象となる旧モデルが存在しないプロダクトは証明書の発行自体が難しくなります。
そのため、AI・ソフトウェア投資ではB類型のほうが現実的な選択肢になりやすいというのが実務上の感触です。B類型は投資利益率7%という数値ハードルこそありますが、対象ソフトウェアの用途に限定がなく、複数設備をまとめた「投資計画」単位で申請できます。Q&A集にも「収益力強化設備の中の個別設備については、生産性向上の要件はありません。あくまで投資利益率が7%以上となるかどうかのみで判断します」とあり、個別のソフトウェア単体で1%向上を示す必要がありません。
ただしB類型は、確認申請書について公認会計士または税理士の事前確認書が必要で、経済産業局への説明も発生します。手続きは重い。ここが「早く導入したい」というスピード要求とぶつかる最大の論点です。
令和8年4月に変わった点と、変わらなかった点

年度をまたぐ投資では、改正の適用時点を取り違えると計算が狂います。国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」で確認できる範囲を整理します。
| 項目 | 令和8年3月31日以前の取得等 | 令和8年4月1日以後の取得等 |
|---|---|---|
| 経営強化税制の工具・器具備品の取得価額要件 | 30万円以上 | 40万円以上 |
| 経営強化税制のソフトウェアの取得価額要件 | 70万円以上 | 70万円以上(変更なし) |
| 少額減価償却資産の特例の取得価額基準 | 30万円未満 | 40万円未満(適用期限を3年延長) |
| 少額減価償却資産の特例の対象法人 | 常時使用従業員500人超は対象外 | 常時使用従業員400人超は対象外 |
実務への影響はシンプルです。AIサーバーやエッジ端末など30万円台の器具備品を数多く入れる計画は、令和8年4月1日以後の取得だと経営強化税制の土俵から外れます。その代わり、少額減価償却資産の特例が40万円未満まで広がったため、同じ資産を年間300万円の枠内で全額損金算入するルートに振り替えられる場合があります。取得日で判定されるので、発注時期ではなく取得時期を基準に組み直してください。
もう一点、令和8年度に「特定生産性向上設備等投資促進税制」が創設されました。国税庁の資料では、この投資計画の確認を受けた法人は、その投資計画の期間内の日を含む各事業年度において中小企業経営強化税制(措法42の12の4第1項・第2項)を適用できないとされています(同税制の繰越税額控除は適用可)。大型投資を別制度で通す予定がある企業は、経営強化税制との時期の重なりを先に潰しておく必要があります。
補助金と税制は併用できるのか
ここが最も質問の多いところです。結論から言えば、制度としては原則併用できます。ただし条件が3段構えで付きます。
1. 取得価額は圧縮記帳後の金額になる
中小企業庁のQ&A集は、「設備取得の際に国又は地方公共団体から補助金を受けた場合でも、本税制の対象となるのか」という問いに対し、「はい、原則として対象になります。法人税法上の『圧縮記帳』の適用を受けた場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額となります」と回答しています。積立金方式を用いた場合も、税務上の取得価額は補助金額等を差し引いた価額になります。補助金の交付年度が翌事業年度になる場合は、予定交付額を差し引いた価額が税額控除対象金額です。
つまり、300万円のAIソフトウェアに150万円の補助金が入り圧縮記帳をすると、税額控除の計算基礎は150万円になります。二重取りにはなりません。圧縮記帳そのものの仕組みは補助金を受け取ったら税金はどうなる?圧縮記帳完全ガイドで詳しく扱っています。
2. 圧縮後に最低取得価額を下回ると、そこで対象から外れる
これが実務で最も痛い落とし穴です。Q&A集には「補助金を受けた設備であり、かつ圧縮記帳前は最低取得価額を上回っているが、圧縮記帳後は最低取得価額を下回ってしまう場合」について、「『圧縮記帳』の適用を受けた場合、取得価額の判定は圧縮後の金額でされるため、対象にはなりません」と明記されています。
100万円のソフトウェアに補助率2分の1の補助金が入ると、圧縮後は50万円。ソフトウェアの最低ラインである70万円を割り込み、経営強化税制は使えません。補助金と税制のどちらを取るかではなく、「両方取ろうとした結果、税制側が消える」ことがある。ここは事前に電卓を叩いてください。
3. 補助金側のルールで併用が制限されることがある
Q&A集は「なお、補助金側に併用を制限する場合がありますのでご注意ください」と付言しています。税制側が認めていても、補助金の交付規程や公募要領で制限がかかるパターンです。同一経費の重複NGルールを含む考え方は、補助金は併用できる?同一経費NGルールと組み合わせ5例にまとめています。
そのほか、税制どうしの重複ルール
- 同じ資産で2つの特別償却・税額控除は使えない:Q&A集は「同じ減価償却資産で2以上の特別償却・税額控除に係る税制の適用を受けることはできません」としています。経営強化税制と投資促進税制を同一資産に重ねることはできません。
- 資産ごとの使い分けは可能:「X機械については特別償却、Y機械については税額控除と、同じ資産分類内であっても、設備単位で使い分けができます」とされています。
- 税額控除の上限は合算:他の税制の適用を受ける場合、本税制の税額控除上限は「その他の税制を適用する前の法人税額の20%」が限度で、経営強化税制と投資促進税制を併用するときは2つの措置の合計で上限を計算します。
- 所有権移転外リースは税額控除のみ:ファイナンス・リース取引で取得した設備は対象になりますが、所有権移転外リース取引の場合は税額控除のみで特別償却は使えません。オペレーティング・リースは対象外です。
手続きで落ちる典型パターン
失敗1:先に発注してしまい、60日の窓を外す
❌ 現場が急いでいるからと、先にAIシステムを発注・納品まで済ませてから計画づくりを始める
⭕ 工業会証明書(A類型)または経済産業局の確認書(B・D・E類型)を取得し、経営力向上計画の認定を受けてから取得する
なぜ重要か:Q&A集によれば、計画認定後に取得するのが原則ですが、申請前に設備を取得する場合は「申請書到達日から遡って60日以内に設備を取得する必要があります」。しかもこの場合、遅くとも当該設備を取得し事業の用に供した事業年度内に認定を受けなければ適用を受けられません。さらにD類型・E類型は計画認定後に取得する必要があり、認定前に取得した設備は対象外です。60日は「余裕」ではなく最後の逃げ道です。
失敗2:証明書・確認書の日付が計画申請日より後になる
❌ 計画を先に出し、証明書は後から追加で差し込めばよいと考える
⭕ 証明書・確認書の日付が計画申請日以前であることを、提出前に目視で突き合わせる
なぜ重要か:手引きには「証明書の日付は計画申請日以前である必要があります」「確認書の日付は計画申請日以前である必要があります」と、A類型・B類型・E類型それぞれに同じ注意書きが置かれています。日付が1日でも逆転すると、書類が揃っていても要件を満たしません。
失敗3:計画認定後に設備の中身が変わったまま放置する
❌ 選定していたAIツールをベンダー変更したが、認定済みの計画はそのままにしておく
⭕ 経営力向上計画の変更認定を受け、新しい証明書または変更確認書の写しを添付する
なぜ重要か:Q&A集は、計画認定後に追加・変更で設備を取得する場合、法第18条第1項に基づき計画を変更して変更認定を受けることで本税制の適用を受けられると説明しています。裏を返せば、変更認定を経なければ、認定計画に載っていない設備として扱われます。AI導入はPoCの結果で構成が変わりやすいので、変更手続きの前提でスケジュールを組んでください。
失敗4:資産区分の判定を後回しにする
❌ 「ソフトウェアだから対象」と決め打ちして、勘定科目の検討を決算期まで先送りする
⭕ 導入前に経理担当・顧問税理士と資産区分を確認し、判断が割れる場合は所轄税務署に照会する
なぜ重要か:Q&A集は「個々の設備の使用目的等に応じて適切な資産に計上してください」とし、使用目的や使用状況によって想定と異なる資産区分になり、適用が受けられない例を挙げています。ハードウェアとソフトウェアが一体で見積もられているAIソリューションは、内訳の切り方で最低取得価額の判定が変わります。
認定から適用までの実務ステップ
- 投資内容と資産区分を固める(目安:2〜4週間)
導入するAI・ソフトウェアの機能、使用部門、使用実態を文書化します。同時に、取得価額がソフトウェア70万円以上、器具備品40万円以上(令和8年4月1日以後の取得)といったラインを超えるかを確認します。補助金を併用する場合は、圧縮記帳後の金額でも最低取得価額を上回るかをここで計算しておきます。 - 類型を選び、証明書または確認書を取りにいく(目安:A類型はメーカー次第、B類型は1か月前後)
A類型は設備メーカーに証明書の発行を依頼し、メーカーが工業会等の確認を受けます。B類型は確認申請書を作成し、公認会計士または税理士の事前確認書を添えて、本社所在地を管轄する経済産業局に事前予約のうえ提出・説明します。経済産業局は説明を受けてからおおむね1か月以内に確認書を発行します。 - 経営力向上計画を作成し、主務大臣に申請する(目安:認定まで1か月以内が目途)
取得した証明書・確認書の写しを添付して申請します。計画そのものの位置づけや、先端設備等導入計画との使い分けは経営力向上計画とは?先端設備等導入計画との違いと使い分けで解説しています。 - 認定を受けてから設備を取得し、事業の用に供する
「事業の用に供した」といえるのは、据付・試運転を終えて実際に稼働を開始した時点です。ソフトウェアであれば、本番環境での運用開始日が目安になります。取得時期は令和9年3月31日まで、かつ計画の実施期間内である必要があります。 - 税務申告で即時償却か税額控除を選ぶ
申告時には、中小企業等経営強化法の認定書および認定の申請書、A類型は工業会証明書、B・D類型は経済産業局の確認書、E類型は確認書および給与増加割合に関する報告書の写しを添付します。即時償却は当期の課税所得を圧縮し、税額控除は法人税額から直接差し引く。どちらが有利かは、当期の所得水準と今後の資金繰りで変わります。 - 認定後の報告義務を果たす
B類型は投資計画に関する実施状況報告、D類型は事業の承継報告および事業承継等に関する状況報告を、所定の期間に提出する必要があります。
E類型を検討する前に知っておきたい制約
売上高100億円超を目指す企業向けのE類型は、建物およびその附属設備まで対象に入る点が強力です。措置内容は、建物およびその附属設備について特別償却15%(または25%)、もしくは取得価額の1%(または2%)の税額控除。率が上振れするのは、その建物等を事業の用に供する事業年度の雇用者給与等支給額が前年度と比較して2.5%以上(または5%以上)増加し、かつ投資計画に記載した目標値以上である場合です。
ただし条件は重く、対象は売上高10億円超90億円未満の法人に限られ、個人事業主は利用できません。事前に100億宣言を行う必要があり、確認申請書の申請日と経営力向上計画の申請日が同一事業年度でなければ認定を受けられません。さらに、経営力向上計画申請書にE類型の設備等を記載した企業は、中小企業投資促進税制および少額減価償却資産の特例を受けられなくなります。AIソフトウェア単体の投資でE類型を選ぶ場面は限られますが、生産拠点の新増設とセットで検討する場合は選択肢に入ります。
経営強化税制が使えないときの受け皿
手続きが間に合わない、証明書が出ない、圧縮記帳で金額が割れた。そうした場合でも、打ち手はまだあります。
- 中小企業投資促進税制:指定期間は令和9年3月31日まで。ソフトウェアは一の取得価額70万円以上が対象で、基準取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除を選べます。ただし税額控除を使えるのは資本金3,000万円以下の法人に限られます。中小企業庁のQ&A集も「本税制が使えない場合でも、中小企業投資促進税制が適用できる場合もございます」と案内しています。計画認定が不要なぶん、時間の制約に強いのが利点です。
- 少額減価償却資産の特例:令和8年4月1日以後の取得等は40万円未満まで拡大され、年間合計300万円を限度に全額損金算入できます。適用期限は3年延長されました。小口のAIツールや端末をまとめて入れる場合に効きます。
- 先端設備等導入計画:法人税ではなく、償却資産に係る固定資産税の負担を軽くする仕組みです。詳細は先端設備等導入計画|AI設備投資の固定資産税特例で扱っています。経営力向上計画とは認定先も効果も異なるため、両にらみで設計できます。
よくある質問
Q1. 補助金に不採択でも、中小企業経営強化税制は使えますか。
補助金の採否と本税制の適用要件は連動していません。青色申告書を提出する中小企業者等であること、経営力向上計画の認定を受けていること、指定事業の用に供することなど、税制側の要件を満たせば適用を検討できます。補助金の再申請と並行して進めても差し支えありません。
Q2. 月額課金のAIサービスは対象になりますか。
本税制の対象は減価償却資産としてのソフトウェア等です。費用処理されるサブスクリプション利用料は減価償却資産にあたらないため、この税制の土俵には乗りません。クラウド利用料は、デジタル化・AI導入補助金など補助金側で対象になる枠があるため、そちらとの役割分担で考えるのが現実的です。
Q3. 即時償却と税額控除は、どちらを選ぶべきですか。
一般論として、当期の課税所得が大きく資金繰りを早く楽にしたい場合は即時償却、長期で税負担の総額を抑えたい場合は税額控除が検討対象になります。ただし税額控除には法人税額の20%という上限があり、繰越は1年間に限られます。どちらが有利かは決算見込みによって変わるため、顧問税理士とシミュレーションしたうえで判断してください。
Q4. 設備を先に買ってしまった場合、もう手はありませんか。
A類型・B類型については、経営力向上計画の申請書が行政庁に到達した日から遡って60日以内に取得した設備であれば対象になり得ます。加えて、その設備を取得し事業の用に供した事業年度内に認定を受ける必要があります。D類型・E類型は計画認定後の取得が必須で、認定前に取得した設備は対象外です。
Q5. 自社のエンジニアが開発したAIシステムも対象になりますか。
自ら製作するものも対象とされており、取得価額には原材料費、労務費および経費の額と、事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。ただし、複写して販売するための原本や開発研究用のものは除かれます。資産計上の範囲は会計処理の方針にも左右されるため、経理担当と早めにすり合わせてください。
Q6. 令和9年3月31日を過ぎたらどうなりますか。
現行の指定期間は平成29年4月1日から令和9年3月31日までです。その後の取扱いは今後の税制改正の議論に委ねられており、現時点で公表されている情報の範囲では確定していません。期限内に適用を受けたい場合は、証明書・確認書の取得と計画認定に要する期間を逆算し、事業年度末との関係も含めて計画してください。
参考・出典
- 中小企業経営強化税制 — 中小企業庁(参照日: 2026-09-01)
- 中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和8年度税制改正対応版・令和8年4月1日版) — 中小企業庁(参照日: 2026-09-01)。制度概要、類型別要件、対象設備の最低取得価額、適用手続きを確認。
- 中小企業経営強化税制 Q&A集(ABDE類型共通) — 中小企業庁(参照日: 2026-09-01)。補助金との関係、圧縮記帳、60日ルール、重複適用の可否を確認。
- No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除) — 国税庁(参照日: 2026-09-01)
- No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除) — 国税庁(参照日: 2026-09-01)
- 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要 — 国税庁(参照日: 2026-09-01)。工具・器具備品の取得価額要件の引上げ、少額減価償却資産の特例の見直し、特定生産性向上設備等投資促進税制との適用関係を確認。
- 『デジタル化・AI導入補助金2026』の概要(令和8年4月) — 中小企業庁(参照日: 2026-09-01)
結論と次の一歩
冒頭の軸に戻ります。この制度で成否を分けるのは補助率でも上限額でもなく、「取得の前に、証明書または確認書と計画認定を通せるか」という一点です。AI投資は現場の要望が先行して発注が走りやすく、気づいたら60日の窓しか残っていない、ということが起こります。
補助金に落ちたAI・ソフトウェア投資でも、要件を満たせば即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除という受け皿があります。補助金を受けた設備でも原則として対象になりますが、圧縮記帳後の金額が最低取得価額を下回ると適用できなくなる。この計算だけは、発注前に必ず済ませてください。
次にやることを3つに絞ります。
- 導入予定のAI・ソフトウェアについて、取得価額と資産区分、そして補助金を受ける場合の圧縮記帳後の金額を1枚に書き出す。
- A類型で工業会証明書が取れるかをベンダーに確認し、難しければB類型の投資利益率7%を試算する。
- 事業年度末から逆算し、確認書取得(B類型はおおむね1か月)と計画認定(1か月以内が目途)の期間を差し引いて、発注可能な最終日を決める。
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どのAI投資をどの制度に振り分けるべきか整理がつかない場合は、導入計画の作り方の段階からご相談いただけます。なお、税額控除や圧縮記帳の適用可否といった税務判断については、顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。AI導入の計画策定に関するご質問はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年9月1日時点で中小企業庁・国税庁が公表している資料に基づく参考情報です。税制の内容および取扱いは改正等により変更される場合があります。適用にあたっては、必ず中小企業庁の公式サイトおよび国税庁のタックスアンサーで最新の情報をご確認いただき、個別の判断は税理士等の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づく判断の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
