「補助金は既存企業しか使えない」と思っていないだろうか。実は創業直後の事業者に特化した制度が複数存在する。しかも、それぞれ申請タイミングが異なり、創業前・創業後・創業3年以内など「いつ使えるか」が制度ごとにはっきり決まっている。
このガイドでは、2026年度に活用できる7制度を「創業前から使えるもの」「創業直後から使えるもの」「創業後3〜5年以内対象のもの」に分けて整理する。日本政策金融公庫の融資との組み合わせも含めて解説する。
まずこれだけ確認:申請前の前提条件
- GビズIDプライムの取得:ほぼすべての補助金申請に必要(取得に1〜2週間かかる)
- 確定申告・法人税申告の有無:創業直後は申告実績がないため、一部制度は要件から外れることがある
- 「特定創業支援等事業」の受講歴:持続化補助金(創業型)などで必要。市区町村が主催するセミナー・相談が対象
- 従業員規模:小規模事業者の定義(製造業20名以下、商業・サービス業5名以下)に当てはまるか確認
Step 1: 創業前〜創業直後に使える制度を確認する
制度1:東京都創業助成事業(都内限定・創業5年以内)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 東京都中小企業振興公社 |
| 補助率 | 2/3以内 |
| 上限額 | 400万円(下限100万円) |
| 対象経費 | 賃借料・広告費・器具備品・専門家指導費・従業員人件費 |
| 対象要件 | 都内創業予定者または創業後5年未満の事業者 |
| 2026年公募 | 第1回:2026年4月7日〜4月16日(予定) |
| 公式サイト | TOKYO創業ステーション |
東京都の創業助成は、賃借料(家賃)と人件費が補助対象になる点が他の補助金にない特徴だ。申請前に「TOKYO創業ステーション」か「商工会議所」の特定創業支援等事業を受講することが条件となる。年2回公募があり、採択倍率は例年2〜3倍程度。
制度2:持続化補助金(創業型)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 |
| 補助率 | 2/3 |
| 上限額 | 200万円(インボイス特例適用で250万円) |
| 対象経費 | 広告費・設備費・展示会出展費・外注費等 |
| 対象要件 | 創業後1年以内の小規模事業者(特定創業支援等事業の受講証明が必要) |
| 2026年公募 | 令和7年度補正予算での公募開始を準備中(詳細は公式サイトで確認) |
| 公式サイト | 中小企業庁 持続化補助金 |
持続化補助金の「創業型」は、一般型(通常は直近1〜2期の申告書が必要)とは別枠で創業直後の企業でも申請できる。ただし創業後1年以内という縛りがあるため、タイミングを逃すと一般型での申請になる。「一般型でも申請できる」と思って後回しにしているうちに創業型の受付が終わるケースが非常に多い。
Step 2: 創業後の事業成長フェーズで使える制度を確認する
制度3:デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 経済産業省 |
| 補助率 | 1/2〜4/5(枠・類型による) |
| 上限額 | 150万円〜450万円 |
| 受付開始 | 2026年3月30日(第1次締切:2026年5月12日) |
| 対象経費 | ソフトウェア・クラウド・AIツール |
| 公式サイト | ミラサポplus デジタル化AI補助金 |
2026年度からIT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に改名。補助率の上限が引き上げられ、小規模事業者で賃上げ要件を満たせば4/5まで補助を受けられる。創業間もない企業でも申告実績が1期あれば申請可能。業務管理ソフト・AI顧客対応ツール・会計クラウドなど幅広く対象となる。
制度4:人材開発支援助成金(人への投資促進コース)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省 |
| 補助率 | 45〜75%(企業規模・訓練種別による) |
| 対象経費 | 研修受講費・OFF-JT期間中の賃金 |
| 対象要件 | 雇用保険の適用事業主(創業直後でも可) |
| 公式サイト | 厚生労働省 人材開発支援助成金 |
補助金ではなく「助成金」のため、採択審査がなく要件を満たせばほぼ受給できる。AI研修・DXスキル向上訓練を対象とする「人への投資促進コース」は、中小企業なら訓練経費の75%が助成される。スタートアップでも従業員を雇用した段階から活用できる。
制度5:ものづくり補助金(第23次以降)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2〜2/3(小規模・賃上げ要件で2/3) |
| 上限額 | 750万円〜1,250万円(グリーン枠等は4,000万円) |
| 対象経費 | 機械装置・システム開発費・技術導入費・外注費等 |
| 申請要件 | 付加価値額年率3%以上向上の計画が必要 |
| 公式サイト | ものづくり補助金 総合サイト |
設備投資・システム開発が伴うスタートアップに向いている。事業計画書の作成ハードルが高いが、採択されれば補助額が大きい。税務申告実績が1期以上あることが一般的な要件となる。創業前後すぐの段階では申請しにくく、1〜2年後のタイミングが現実的だ。
制度6:新事業進出補助金(旧事業再構築補助金後継)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 上限額 | 2,000万円〜9,000万円 |
| 対象 | 新市場・新製品への進出(既存事業からの転換含む) |
| 申請要件 | 売上高10%以上減少等の業況要件あり(確認が必要) |
| 公式サイト | 中小企業庁 新事業進出補助金 |
補助額は大きいが、申請書類が多く審査も厳格だ。新事業に必要な設備・システム投資に対応できる。税務申告実績が必要なため、創業直後には申請できないが、2〜3年経過後に新展開を図る際の有力候補となる。
制度7:キャリアアップ助成金(正社員化コース)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省 |
| 助成額 | 1人あたり最大80万円(大企業は60万円) |
| 対象 | 非正規雇用から正社員に転換した場合 |
| 申請要件 | 雇用保険適用事業主、就業規則の整備等 |
| 公式サイト | 厚生労働省 キャリアアップ助成金 |
パートや契約社員を正社員化する際に活用できる。スタートアップが初めて採用を行い、試用期間後に正社員化するケースで使いやすい。
7制度の比較早見表
| 制度名 | 使えるタイミング | 上限額 | 審査型 | AI・DX向き度 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都創業助成事業 | 創業前〜5年以内 | 400万円 | あり | ★★★☆☆ |
| 持続化補助金(創業型) | 創業後1年以内 | 200万円 | あり | ★★★☆☆ |
| デジタル化AI補助金 | 申告1期以上 | 450万円 | あり | ★★★★★ |
| 人材開発支援助成金 | 雇用保険加入後 | 経費×補助率 | なし | ★★★★☆ |
| ものづくり補助金 | 申告1期以上 | 1,250万円〜 | あり | ★★★★☆ |
| 新事業進出補助金 | 申告1期以上 | 9,000万円 | あり | ★★★★☆ |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化後 | 80万円/人 | なし | ★★☆☆☆ |
日本政策金融公庫の創業融資との組み合わせ方
補助金と融資は別物だが、組み合わせることで資金調達の総量を大きくできる。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」(旧・新創業融資制度)は、2024年に制度が刷新され、2026年時点で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで借入可能だ。金利は2026年1月時点で基準利率2.45〜4.05%(無担保・無保証人の場合)となっている。
創業期の典型的な資金調達の組み合わせ例:
- 日本政策金融公庫の融資(元本返済が必要):店舗設備・在庫など長期資産
- 東京都創業助成事業(返済不要):初期の賃借料・人件費
- デジタル化AI補助金(返済不要、採択後):業務系ソフトウェアの導入
注意点として、補助金は後払い(実績報告後に振り込まれる)のため、つなぎ資金として融資を先に確保しておく必要がある。補助金が採択されたからといって事業開始前に仕入れを行うと、補助対象外になるリスクがある(交付決定前の発注は絶対NG)。
創業前・創業後でのタイムライン
| 時期 | やること | 使える制度 |
|---|---|---|
| 創業前 | 特定創業支援等事業に申込(市区町村の窓口) | (受講実績として後に活用) |
| 創業前 | GビズIDプライムの取得申請 | — |
| 創業後 〜3ヶ月 | 雇用保険・労災保険の加入手続き | キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金の前提条件 |
| 創業後 〜6ヶ月 | 東京都創業助成事業の申請(年2回) | 東京都創業助成事業(〜5年以内) |
| 創業後 〜1年 | 持続化補助金(創業型)の申請タイミングを逃さない | 持続化補助金(創業型) |
| 創業後 1〜2年(申告1期後) | AI・DX投資の計画を策定 | デジタル化AI補助金・ものづくり補助金 |
よくある失敗と対策
失敗1:GビズIDの取得が間に合わなかった
❌ 公募締切1週間前に取得を始めてしまう
⭕ 創業と同時にGビズIDプライムの取得申請を行う(取得まで1〜2週間)
2026年からGビズIDの認証方法がアプリ認証に変更。マイナンバーカードとスマートフォンが必要なため、早めの準備が必要だ。
失敗2:持続化補助金の「創業型」の締切を見逃した
❌ 「一般型もあるから急がなくていい」と先送りにする
⭕ 創業後すぐに次の公募スケジュールを確認し、必要な受講証明の取得を優先する
失敗3:補助金を生活費・運転資金に使おうとする
❌ 補助金で当面の人件費や家賃を全部カバーしようとする
⭕ 補助金はあくまで「事業拡大・設備投資・研修」のための資金。運転資金は融資で確保する
東京都創業助成事業は人件費も補助対象だが、従業員の採用拡大を前提とした事業計画が必要だ。創業者本人の役員報酬には使えない。
今日から始める3つのアクション
- 今日やること:GビズIDプライムの取得を今すぐ開始する(申請から取得まで最長2週間)
- 今週中:自社の創業時期と居住地から、対象となる制度を上記の表で絞り込む
- 今月中:弊社お問い合わせフォームから、AI導入計画と補助金活用についての相談を行う
あわせて読みたい:
– AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — 各制度を横断的に比較
– GビズID登録の完全ガイド — 補助金申請の第一歩
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
参考・出典
- 創業助成事業 — TOKYO創業ステーション(参照日: 2026-03-24)
- 持続化補助金(創業型)令和7年度補正予算版 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-24)
- 創業融資のご案内 — 日本政策金融公庫(参照日: 2026-03-24)
- 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照日: 2026-03-24)
- デジタル化・AI導入補助金 — ミラサポplus(参照日: 2026-03-24)
免責事項
本記事の情報は2026年3月24日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。