石川県の中小企業が2026年にDX・AI導入で活用できる補助金は、金沢市の独自制度から国の基幹補助金、能登半島地震の被災事業者向け制度まで、規模も目的も大きく違う選択肢が並びます。「金沢市AI・DX推進支援事業補助金」は補助率2/3で最大200万円、国の「デジタル化・AI導入補助金2026」は最大450万円、より大規模な省力化投資なら「中小企業省力化投資補助金(一般型)」で最大1億円、人材育成と組み合わせるなら「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」で助成率最大75%が狙えます。
石川県は加賀友禅・輪島塗・金沢箔といった伝統工芸、能登の水産業・農業、温泉旅館・観光業、北陸新幹線敦賀延伸(2024年3月開業)以降の需要拡大に応える物販・サービス業など、業種の幅が広い県です。さらに2024年元日の能登半島地震からの復興期にあり、被災事業者向けの上乗せ制度や創造的復興交付金も継続しています。本記事では、石川県内の事業者が「自社の規模・業種・所在地」に合わせてどの制度を選ぶべきか、5つの主要制度を整理して比較します。
石川県で使える5制度の早見表 — どこから着手するか
まず全体像を一覧で押さえます。下表は2026年6月時点で公募中または直近の公募実績がある制度をまとめたもので、補助率・上限額・対象経費・公募状況の概略を示しています。
| 制度名 | 補助率 | 上限額 | 主な対象経費 | 公募状況 |
|---|---|---|---|---|
| ①金沢市AI・DX推進支援事業補助金(金沢市) | 1年目2/3、2年目1/2(小規模事業者2/3) | 1年目150万円・2年目200万円 | 計画策定費、AI・DXシステム導入費 | 令和8年度公募:2026年3月16日〜5月22日 |
| ②デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金・国) | 1/2〜2/3 | 通常枠で最大450万円 | ITツール・AI搭載ソフト、クラウド利用料、導入関連費 | 2026年3月30日〜(複数回公募・第4次まで公表) |
| ③中小企業省力化投資補助金(一般型・国) | 中小企業1/2、小規模事業者2/3 | 従業員規模により最大1億円 | AI・IoT・ロボット等の省力化設備一式(オーダーメイド対応) | 第6回公募:2026年4月15日〜5月15日 受付完了、以降も継続予定 |
| ④人材開発支援助成金(人への投資促進コース・厚労省) | 高度デジタル人材訓練で最大75% | 1事業所・年度あたり2,500万円 | 研修受講料、教材費、賃金助成(高度デジタル・成長分野等) | 通年(ハローワーク経由・令和8年度が現行スキーム最終年度の見込み) |
| ⑤能登半島地震チャレンジ支援補助金/創造的復興支援交付金(県・国) | 事業ごとに別途設定 | 枠ごとに異なる(国の交付金は500億円規模) | 新たな業種・市場挑戦のシステム構築費、販促費、設備復旧費 等 | 被災事業者向けに継続中(県と中小機構の窓口経由) |
※ 補助率・上限額・公募期間は公募回や事業者属性によって変わります。申請前に必ず各事務局の最新版公募要領をご確認ください。
「自社にどれが合うか分からない」という方は、まずAI導入に使える補助金5選 徹底比較で国の主要制度の違いを把握してから、本記事で石川県固有の上乗せ・独自制度を組み合わせるのが効率的です。
制度①:金沢市AI・DX推進支援事業補助金 — 計画策定→導入の2年スキーム
金沢市内に主たる事業所または生産施設を1年以上有する中小企業・小規模企業が対象の、市独自のAI・DX伴走型補助金です。物価高騰の影響を受ける事業者の業務効率化・生産性向上を目的に、計画策定(1年目)と実装(2年目)の2フェーズで支援する点が大きな特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 金沢市AI・DX推進支援事業補助金(令和8年度) |
| 所管 | 金沢市 経済局 産業政策課(TEL:076-220-2204) |
| 1年目補助率/上限 | 2/3 / 150万円(AI・DX推進計画策定事業) |
| 2年目補助率/上限 | 1/2(小規模事業者は2/3)/ 200万円(AI・DX導入事業) |
| 対象者 | 申請日以前に引き続き1年以上、金沢市内に主たる事業所または生産施設を有する中小企業者・小規模企業者 |
| 対象経費 | 業務効率化・生産性向上を目的としたAI・DXシステム導入の計画策定経費、システム導入経費(外部専門家の伴走支援を含む) |
| 令和8年度公募期間 | 2026年3月16日〜2026年5月22日 |
どんな企業に向くか
「AIやDXに興味はあるが、何から始めればよいか分からない」という金沢市内の事業者にとって、計画策定段階から補助が出るのは大きな利点です。ハンズオン型に近い設計のため、外部コンサルや専門家を入れて自社の業務棚卸しから着手したいケースに向きます。1年目で計画を固め、2年目に実装するため、申請から成果実装までは2会計年度をまたぐ前提で考えておきましょう。
業種シナリオ:金沢箔工房
たとえば金沢市内の金沢箔(金箔)工房が、職人技と需要予測を組み合わせるためのAI在庫・受注予測システムを導入する場合、1年目に業務フローの可視化と要件定義(補助対象150万円枠)、2年目にシステム実装と従業員研修(補助対象200万円枠)に分けて活用できます。ECや海外向け販路を持つ工房なら、多言語対応の問い合わせAIと組み合わせると2年目の成果を出しやすくなります。
制度②:デジタル化・AI導入補助金2026 — 旧IT導入補助金の後継、AI実装を重視
国(中小企業庁)の基幹補助金で、令和7年度補正予算事業から「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」へ改称されました。中小企業・小規模事業者が労働生産性向上を目的にAI・ITツールを導入する際の代表的な選択肢です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | デジタル化・AI導入補助金2026(旧:IT導入補助金) |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁/事務局:(一社)サービスデザイン推進協議会 |
| 補助率 | 通常枠で1/2(賃上げ等の要件充足で2/3 等、枠により異なる) |
| 補助上限額 | 通常枠で最大450万円(4プロセス以上対応の場合)。複数者連携枠等は別建て |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者(業種別の資本金・従業員数要件あり) |
| 対象経費 | 登録ITツール(AI機能を含む)、クラウド利用料、導入関連費。ハードウェアは特定の枠でのみ対象 |
| 公募スケジュール | 2026年2月27日公募開始/交付申請は2026年3月30日〜(複数回・第4次締切は8月25日まで公表) |
| 公式 | https://it-shien.smrj.go.jp/ |
どんな企業に向くか
登録済みのITツール(補助対象として認定されたソフトウェア・SaaS)を導入したい場合に最も使いやすい制度です。AIチャットボット、AI-OCR、需要予測AI、画像認識AIなど、ベンダーが事務局に登録しているソリューションが選択肢に入ります。申請にはIT導入支援事業者(登録ベンダー)との連携が必須で、ベンダー側が申請手続きの大部分を伴走するのが慣行です。
業種シナリオ:加賀温泉郷の旅館
加賀温泉郷(山代・山中・片山津・粟津)の旅館が、多言語対応AIチャットボットによる予約問い合わせ自動化、AI需要予測による客室在庫最適化、AI-OCRによる経理処理省力化のセットを導入する場合、本制度の通常枠で複数プロセスを1申請にまとめると上限額450万円まで活用しやすくなります。北陸新幹線敦賀延伸後の需要変動に対応するうえで、需要予測AIは「補助対象として説明しやすい」典型例です。
制度③:中小企業省力化投資補助金(一般型) — 大規模設備投資の本命
人手不足対策として、AI・IoT・ロボット等を活用した省力化設備の導入を支援する国の補助金です。「カタログ注文型」と「一般型(オーダーメイド型)」があり、自社の業務フローに合わせた個別設計が必要な場合は一般型を選びます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業省力化投資補助金(一般型) |
| 所管 | 経済産業省・中小機構 |
| 補助率 | 中小企業1/2、小規模事業者・再生事業者は2/3 |
| 補助上限額 | 従業員規模により異なり、最大1億円(賃上げ要件達成で上乗せ枠あり) |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者(人手不足解消・省力化を目的とする事業) |
| 対象経費 | 機械装置・システム構築費、外注費、専門家経費 等。AI・IoT・ロボット等の省力化技術を含むこと |
| 公募スケジュール | 第6回公募:2026年4月15日〜5月15日 受付済。以降も継続予定(公式サイト要確認) |
| 公式 | https://shoryokuka.smrj.go.jp/ |
どんな企業に向くか
製造業・建設業・物流業・水産加工業など、現場のハードウェア投資を伴うDXに最適です。AI画像検査装置、自動仕分けロボット、IoTセンサーによる遠隔監視システム、AIによる需要予測連動の自動発注機器など、「設備+ソフトウェア+AIモデル」を一体で導入したい大規模案件向き。事業計画書の審査が厳しく、数値根拠(省力化時間・人員削減効果)の明示が採択の鍵となります。
業種シナリオ:能登の水産加工業
能登地区の水産加工業者が、AI画像認識による魚種選別・サイズ判定システム、IoTセンサーによる冷蔵・冷凍庫の温度管理自動化、自動箱詰めロボットを組み合わせて導入する場合、設備一式が数千万円規模になるため、本補助金の一般型が現実的な選択肢になります。能登半島地震からの設備刷新ニーズと組み合わせる場合は、後述の復興支援制度との関係を必ず公募事務局へ直接お問い合わせください。
制度④:人材開発支援助成金(人への投資促進コース) — AI研修・リスキリングの本命
「設備よりも先に、社員のAIリテラシーを上げたい」という場合に最も使いやすい厚生労働省の助成金です。AI・DX分野は「高度デジタル人材訓練」や「成長分野等人材訓練」として高い助成率が設定されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金(人への投資促進コース) |
| 所管 | 厚生労働省/申請窓口:管轄ハローワーク・労働局 |
| 助成率(経費) | 高度デジタル人材訓練75%/成長分野等人材訓練60%/情報技術分野認定実習併用職業訓練45%/定額制訓練60%/自発的職業能力開発訓練45% |
| 賃金助成 | 研修受講中の賃金の一部も助成対象(コース・企業規模で単価が異なる) |
| 年度上限 | 1事業所・1年度あたり2,500万円(自発的職業能力開発訓練は300万円) |
| 対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主 |
| 対象経費 | 外部講師による研修・eラーニング受講料、教材費、施設使用料 等 |
| 公募期間 | 通年受付。令和8年度が現行の「人への投資促進コース」スキームの最終年度となる見込み。令和9年度以降の制度設計は最新情報を確認 |
| 公式 | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html |
どんな企業に向くか
「補助金は後払いで使いにくい」というイメージがある中で、本助成金は「すでに雇用している従業員のAI・DXスキルアップ」に使えるため、初期投資を抑えてDXを始めたい事業者に向きます。生成AI実務研修、データサイエンス研修、Pythonプログラミング研修、RPA研修などは「高度デジタル人材訓練」または「成長分野等人材訓練」に分類されることが多く、助成率60〜75%が狙えます。
業種シナリオ:加賀友禅工房 + 観光業の連携
加賀友禅の工房と地元観光業者が連携し、AIを活用したオンラインショップ運営・SNSマーケティング・多言語化対応の研修を社員に受講させる場合、本助成金の「成長分野等人材訓練」枠(助成率60%)が想定されます。設備投資と異なり「人」への投資は売上拡大の効果が出るまで時間がかかる一方、退職率の低下・採用力の向上といった副次効果も見込めるのが特徴です。
制度⑤:能登半島地震 復興系の支援 — 被災事業者は必ず確認
2024年元日の能登半島地震、2024年9月の能登豪雨により被災した事業者向けには、通常の補助金とは別建てで上乗せ・特例の支援が継続しています。石川県(特に輪島市・珠洲市・能登町・穴水町・志賀町・七尾市・羽咋市など)の被災事業者は、必ずこちらの制度群を最初に確認してください。
| 制度(主なもの) | 概要 |
|---|---|
| 令和6年能登半島地震等チャレンジ支援補助金(石川県) | 経営環境が変化した被災事業者が、新たな業種・事業・市場に挑戦する際のシステム構築費、広告宣伝・販売促進費等のソフト事業経費を支援。DX関連経費(ECサイト構築、業務システム導入 等)も対象に含まれる。 |
| 小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)(国・中小企業庁) | 能登半島地震・能登豪雨で被害を受けた小規模事業者向け。販路開拓・業務効率化の経費を補助。県の上乗せ補助と組み合わせ可能。 |
| 能登創造的復興支援交付金(国) | 2026年2月、政府が500億円規模で措置。柔軟・機動的な対応のため、特例的に補助率を引き上げた自由度の高い交付金。地域の復興プロジェクトに広く活用される設計。 |
| 小規模事業者事業継続支援補助金(ISICO) | 国の持続化補助金の交付を受けた小規模事業者向けの上乗せ。上限額100万円(国と合わせて最大300万円)。 |
| 復旧・復興マッチングサイト(県・中小機構) | 被災企業と地元以外の工事事業者をマッチングする仕組み。デジタル化投資の前段として、施設・設備の復旧を進めるための支援。 |
業種シナリオ:輪島塗工房の事業再建+EC構築
輪島塗の工房が被災後の事業再建にあたり、職人作業場の復旧(施設復旧)と並行して、ECサイト構築・SNSマーケティング・顧客管理(CRM)システムを導入する場合、能登半島地震チャレンジ支援補助金のソフト事業枠と、国のデジタル化・AI導入補助金2026の併用余地があります。ただし「同一経費への二重補助は不可」が原則のため、経費の切り分けと申請順序の設計は必須です。詳細は石川県(商工労働部)または最寄りの商工会議所・商工会へ事前相談してください。
業種別:石川県の主要産業ごとの「使いどころ」シナリオ
石川県は産業構成のバリエーションが豊かで、業種ごとに「最初に検討すべき制度」が違ってきます。代表的な5業種について、典型的な活用パターンを整理します。
シナリオ1:加賀友禅・染色工房(小松市・金沢市)
染色・型紙設計・縫製といった伝統工程は、職人の感覚知に依存する部分が大きく、いきなり「全工程をAI化」とはなりません。現実的な第一歩は、(1)顧客管理・受注管理のクラウド化、(2)SNS・EC運用の効率化、(3)多言語化対応による海外向け販路拡大の3点に絞るのが効果的です。金沢市内の工房なら「金沢市AI・DX推進支援事業補助金(1年目150万円枠)」で計画策定費を確保し、2年目で実装。並行して「人材開発支援助成金」で職人+若手スタッフのデジタルスキル研修を進めると、補助対象がきれいに分離します。県外向け販路を意識する場合は、ECサイト構築やAI翻訳ツール導入を「国のデジタル化・AI導入補助金2026」と組み合わせる設計が現実的です。
シナリオ2:輪島塗・漆器工房(輪島市・能登地域)
能登半島地震で甚大な被害を受けた地域のため、まず「能登半島地震チャレンジ支援補助金」「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」「ISICO小規模事業者事業継続支援補助金(上乗せ)」「能登創造的復興支援交付金」などの復興系制度の対象要件を石川県商工労働部・ISICO・地元商工会に確認するのが最優先です。事業再開後の販路拡大としてEC構築・SNSマーケティング・顧客管理(CRM)システムを導入する場合、復興系制度と国の通常制度の経費仕分けを慎重に設計します。職人技そのものは代替不可能でも、見積発行・在庫管理・顧客対応の事務作業はAIで省力化することで、職人が制作に専念できる時間を増やせるという発想で計画を組み立てると、審査でも説明しやすくなります。
シナリオ3:金沢箔・金箔関連製造(金沢市)
金沢箔は全国生産量の99%以上を金沢市が占める特産品です。需要予測の難しさ(インバウンド・国内ギフト需要・建築需要の3軸)が経営上の課題になりやすく、AI需要予測システムや在庫管理AIとの相性が良い領域です。金沢市内事業者なら金沢市AI・DX推進支援事業補助金が第一候補。製造工程の自動化を含む大規模設備投資なら「中小企業省力化投資補助金(一般型)」で機械装置・AI画像認識装置・IoTセンサーの一式導入を検討します。海外富裕層向けの直販ECや工房見学の予約管理を組み合わせるなら、人材開発支援助成金で多言語対応・DX人材を社内に育てておくと持続性が高まります。
シナリオ4:能登水産・漁業関連加工業(七尾市・志賀町・能登町・珠洲市など)
水産加工業は、原料の魚種・サイズ・鮮度のばらつきが大きく、検査・選別工程の人手依存が特に強い業種です。AI画像認識による魚種選別・サイズ判定、IoTセンサーによる冷蔵庫・冷凍庫の温度自動管理、自動箱詰め・パッキングロボットといった「現場のハードウェア型DX」が中核となるため、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」が最有力候補です。設備一式で数千万円〜1億円規模になるケースも珍しくなく、補助率1/2(小規模事業者は2/3)で大きな投資効果が出ます。能登地域の被災事業者の場合は、設備復旧費そのものを復興系制度で賄い、その上での省力化投資を国制度で重ねる「2段階設計」が機能します。事業計画書には「省力化時間(人時)」「人員再配置の見通し」「投資回収年数」を必ず数値で示してください。
シナリオ5:温泉旅館・観光宿泊業(加賀温泉郷・和倉温泉ほか)
北陸新幹線敦賀延伸(2024年3月開業)以降、首都圏・関西圏からのアクセスが大幅に改善され、需要変動の予測がますます重要になっています。客室稼働率の最適化(ダイナミックプライシング)、多言語AIチャットボットによる予約問い合わせ自動化、AI需要予測連動の食材発注、AI-OCRによる経理省力化など、活用シーンが豊富です。複数プロセスを束ねて1申請にまとめると、国の「デジタル化・AI導入補助金2026」の通常枠(最大450万円)で大きな成果を出せます。和倉温泉エリアなど能登地域の被災旅館は、まず能登半島地震関連の復興系制度を最優先で確認し、再建フェーズ・通常運営フェーズで使い分けます。スタッフのDXリテラシー強化は「人材開発支援助成金」を併用し、設備・システムが「使われない」リスクを下げる構成が王道です。
あなたの会社はどの組み合わせを選ぶべきか
5制度の使い分けを、企業規模・所在地・目的の3軸で整理します。
パターンA:金沢市内の小規模事業者・初めてのDX
推奨:金沢市AI・DX推進支援事業補助金 + 人材開発支援助成金
金沢市の伴走型制度で計画策定から始め、並行して人材開発支援助成金で社員のAIリテラシーを底上げするのが王道です。1年目の計画策定費(150万円枠)と研修費(年度上限2,500万円枠の一部)はカテゴリが違うため、適切に経費を分ければ併用余地が広いと考えられます。
パターンB:県内中堅企業・本格的なAIシステム導入
推奨:デジタル化・AI導入補助金2026 + 人材開発支援助成金
登録済みITツールを使うなら国のデジタル化・AI導入補助金2026が中心。導入後の運用定着には人材開発支援助成金でセット研修を組むと、システムが「使われない」リスクを下げられます。
パターンC:製造業・物流業の大規模省力化投資
推奨:中小企業省力化投資補助金(一般型)
設備+AI+IoTを統合した大規模投資なら、本制度1本に集中投資する方が事業計画書を書きやすくなります。事業計画書には「省力化時間」「人員削減(または再配置)人数」「投資回収年数」を必ず数値で示すこと。
パターンD:能登地域の被災事業者
推奨:能登半島地震関連の復興系制度を最優先、その上で国制度を補完的に
被災状況・自治体・業種により使える制度が大きく異なるため、まず石川県商工労働部、ISICO、または最寄りの商工会議所・商工会に「自社の状況で使える制度の組み合わせ」を相談するのが最短経路です。チャレンジ支援補助金や創造的復興支援交付金のように、被災事業者にしか使えない制度を取り逃がさないことが最重要です。
パターンE:県外本社・石川県内に拠点ありの企業
推奨:拠点所在地の自治体制度+国制度を確認
金沢市以外(小松市・白山市・能美市・加賀市・野々市市・かほく市・羽咋市・七尾市・輪島市・珠洲市・能登町・穴水町・志賀町・宝達志水町・中能登町・津幡町・内灘町・川北町)の事業所が補助対象になるかは、各自治体の制度設計で個別に異なります。事業所所在地の市町産業政策担当課に直接確認するのが確実です。
申請でつまずきやすい失敗パターン
失敗1:交付決定前に発注してしまう
❌ 採択通知が届いた瞬間にベンダーへ発注書を出してしまう。
⭕ 交付決定通知を受け取ってから契約・発注する。
採択 ≠ 交付決定です。多くの補助金制度では、交付決定前に契約・発注・支払いをした経費は補助対象外になります。「採択おめでとうございます」のメールを受け取って数日以内に動きたくなりますが、交付決定通知が別途届くまで待ちましょう。
失敗2:数値目標が曖昧
❌ 「業務効率を向上させる」「生産性を改善する」。
⭕ 「受発注処理時間を月120時間→月45時間に削減(62.5%減)。年間人件費換算で約240万円の余力創出」。
審査委員は数百件の事業計画を読みます。「向上する」では評価軸を持てません。Before/After を時間・件数・金額で示し、測定方法(業務管理システムのログ、伝票枚数、勤怠データ等)まで書くことが採択率向上の近道です。
失敗3:自社課題よりツール紹介が長い
❌ 「ChatGPTは高性能な生成AIで、世界中で利用されており…」とツールカタログが半分。
⭕ 「当社の経理担当は月200時間を仕訳入力に費やしており、月次決算が翌月15日にずれ込むことで経営判断が遅延している。AI-OCRと自動仕訳によりこれを月70時間まで圧縮する」。
審査委員が見たいのは「なぜ貴社にそのツールが必要か」です。ツール礼賛ではなく、自社の課題を最初に置きましょう。
失敗4:県・市・国の制度を併用する際の経費仕分けが甘い
❌ 同じ150万円のシステム導入費を、金沢市の補助金と国のデジタル化・AI導入補助金の両方に計上する。
⭕ 計画策定費は金沢市の1年目枠に、実装費は国のデジタル化・AI導入補助金に、というように経費区分を明確に切り分ける。
「同一経費への二重補助は不可」は補助金制度の鉄則です。併用設計時は、見積書段階から経費の塊を分け、どの制度に申請するか明示しておくと、後の実績報告で苦労しません。判断に迷う組み合わせは公募事務局へ直接お問い合わせください。
申請から交付までの基本フロー
制度によって細部は異なりますが、おおむね以下の流れが共通しています。
Step 1:GビズIDプライムの取得(所要:1〜2週間)
国の補助金(デジタル化・AI導入補助金、中小企業省力化投資補助金、新事業進出補助金など)の電子申請にはGビズIDプライムが必須です。法人は印鑑証明書の準備が必要で、申請から発行まで1〜2週間かかります。「制度を見つけてから取り始める」では公募締切に間に合わないことがあるため、未取得の事業者は今日のうちに申請しておくことをお勧めします。
→ GビズID登録の完全ガイド
Step 2:事業計画書の策定(所要:2〜4週間)
AI導入の目的、現状の業務課題(数字で)、導入するシステム、期待される効果(KPI)、実施体制、スケジュール、投資回収見通しをまとめます。県・市の制度では、外部専門家の伴走支援が補助対象に含まれることもあるため、自社単独で書ききれない場合は積極的に活用しましょう。
Step 3:ITベンダー・専門家の選定
デジタル化・AI導入補助金2026では、IT導入支援事業者(登録ベンダー)との連携が必須です。中小企業省力化投資補助金(一般型)でも、機械装置メーカー・SIerとの事前打ち合わせが事業計画書の質を左右します。
Step 4:申請書類の作成・提出
jGrants(国の電子申請ポータル)または各事務局の電子申請システムから提出します。添付書類(決算書、見積書、組織図、賃金台帳など)の不備による差戻しが多いため、提出前に第三者にチェックを依頼するのが安全です。
Step 5:採択通知 → 交付申請 → 交付決定
採択通知を受け取ったら、改めて交付申請を提出します。交付決定通知が届いてから、初めて契約・発注・支払いが補助対象として認められます。
Step 6:事業実施・実績報告
事業期間内に計画通りに実施し、実績報告書(成果・経費・写真等)を提出します。実績報告の審査が通って、はじめて補助金の振込が行われます(後払い)。
Step 7:補助金の交付(後払い)
多くの制度が後払い方式のため、事業実施期間中のキャッシュフローは自社で準備する必要があります。日本政策金融公庫や信用保証協会の「補助金つなぎ融資」も並行検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 石川県内なら金沢市以外でもAI・DX補助金は使えますか?
金沢市AI・DX推進支援事業補助金は金沢市内に主たる事業所がある事業者が対象です。それ以外の市町(小松市・白山市・加賀市・能美市・七尾市・輪島市・珠洲市・能登町など)にお住まいの場合は、国のデジタル化・AI導入補助金2026や中小企業省力化投資補助金、人材開発支援助成金など全国対応の制度が中心になります。各市町独自のDX関連制度の有無は、お住まいの自治体の産業政策担当課へ直接お問い合わせください。
Q2. 補助金は「もらえる」お金ですか?
補助金は後払いが原則で、「自社が一旦経費を支払い、実績報告審査後に補助対象分が振り込まれる」仕組みです。「先にもらってから使う」ものではないため、事業実施期間中のキャッシュフローは自社で確保しておく必要があります。資金繰りに不安がある場合は、日本政策金融公庫等の補助金つなぎ融資を並行して検討してください。
Q3. 能登半島地震で被災した工房ですが、復興系の制度と国の補助金は併用できますか?
制度によって併用可否が異なります。多くの場合「同一経費への二重補助は不可」ですが、経費区分を分ければ複数制度の併用余地はあります。被災事業者向け制度は通常制度より補助率や対象経費が拡張されていることが多いため、まず復興系制度の活用余地を最大化した上で、国の通常制度を補完的に使う設計が有利です。具体的な組み合わせは石川県商工労働部・ISICO・最寄りの商工会議所へ事前相談してください。
Q4. 自社単独で申請書を書く自信がないのですが、誰に相談すればよいですか?
商工会議所・商工会・ISICO(公益財団法人石川県産業創出支援機構)・よろず支援拠点が公的な相談窓口です。費用は無料(または極めて低額)で、補助金申請の相談に応じてくれます。民間の補助金支援事業者を使う場合は、成功報酬の有無・料率・契約解除条件を事前に確認してください。なお、補助金申請書の作成代行は行政書士の独占業務であり、行政書士資格を持たない事業者による代行は法令違反のリスクがあります。
Q5. 採択率を高めるコツはありますか?
制度ごとに評価軸が異なるため一概には言えませんが、共通して効果的なのは(1)現状課題を「数値」で示す、(2)導入後のBefore/Afterを「数値」で示す、(3)実施体制を役割分担まで明記する、(4)投資回収見通しを合理的に説明する、の4点です。採択を保証する申請手法は存在しません。「100%採択」を謳う業者には注意してください。
今日から始める3つのアクション
- 今日: 自社の業務で「月何時間/何件/何円」が「どの工程」にかかっているかを書き出す。これが事業計画書の出発点になります。
- 今週中: GビズIDプライムが未取得なら申請を始める(発行に1〜2週間)。あわせて、最寄りの商工会議所・商工会・ISICOに「使える補助金の相談予約」を入れる。
- 今月中: 金沢市内事業者は金沢市AI・DX推進支援事業補助金の次回公募スケジュール、それ以外の事業者は国のデジタル化・AI導入補助金2026・中小企業省力化投資補助金の次回締切を、各公式サイトで確認する。能登地域の被災事業者は復興系制度の対象要件をまず確認する。
あわせて読みたい:
- AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — 国の主要制度の違いを横断把握
- GビズID登録の完全ガイド — 国の電子申請に必須の第一歩を画像付きで解説
執筆:株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修:佐藤 傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。AI導入×補助金活用の実務経験をもとに、中小企業のDX推進をサポートしています。
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本記事の情報は2026年6月時点の各省庁・自治体・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があり、公募回ごとに補助率・上限額・対象要件・締切日が変動します。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイト・最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。具体的な申請判断・複数制度の併用設計については、商工会議所・商工会・ISICO・行政書士・社会保険労務士などの専門機関にご相談ください。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 事務局サイト — 中小機構(参照日:2026年6月6日)
- 事業スケジュール|デジタル化・AI導入補助金2026 — 中小機構(参照日:2026年6月6日)
- デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日:2026年6月6日)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型) — 中小機構(参照日:2026年6月6日)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)第6回の申請受付を開始しました — 中小企業庁(参照日:2026年6月6日)
- 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照日:2026年6月6日)
- 金沢市AI・DX推進支援事業補助金(金沢市 締切:R8.5.22) — ISICO DGnet(参照日:2026年6月6日)
- 自社変革モデル創出支援事業(DX/GX) — ISICO(参照日:2026年6月6日)
- 公益財団法人石川県産業創出支援機構(ISICO) — 補助金・公募情報の一次ソース(参照日:2026年6月6日)
- 令和6年(2024年)能登半島地震等に係る事業者支援施策について — 石川県(参照日:2026年6月6日)
- 令和6年能登半島地震等チャレンジ支援補助金 — 石川県(参照日:2026年6月6日)
