「AIを導入したいけど、事業計画書にどう書けばいいか分からない」。補助金の申請支援をしていると、この相談が圧倒的に多い。
正直に言うと、AI導入の計画をうまく書けない企業の大半は、ツールの説明に終始している。「ChatGPTは高性能な生成AIで…」「AI-OCRは帳票を自動で読み取り…」。これでは審査員に響かない。審査員が見たいのは「なぜ、あなたの会社にそのAIが必要なのか」だ。
この記事では、100社以上のAI導入支援で培った知見をもとに、補助金4制度(デジタル化・AI導入補助金、ものづくり補助金、省力化投資補助金、新事業進出補助金)の審査項目に対応した事業計画書の書き方を、7つのステップに分けて解説する。
まずこれだけ確認 — 計画書を書く前の3つの前提
事業計画書を書き始める前に、そもそも「書ける状態」にあるかを確認しよう。次の3つが揃っていないと、書き始めても途中で手が止まる。
前提1: 自社の業務フローが棚卸しできているか
AI導入の計画書は、「現状の業務プロセス」を起点に書く。「誰が、何を、どの順番で、月に何回やっているか」が整理されていないと、課題も効果も定量化できない。
棚卸しの方法は単純だ。対象業務を担当している社員に30分ヒアリングして、スプレッドシートに「作業名・担当者・頻度・所要時間・使っているツール」を書き出す。これだけで十分。
前提2: GビズIDプライムを取得済みか
補助金の電子申請にはGビズIDプライムが必須(GビズID公式サイト)。取得には法人の場合、印鑑証明書を郵送してから1〜2週間かかる。2026年3月以降はアプリ認証に移行しており、スマートフォンでの二段階認証が必要になった。
まだ取得していない場合は、事業計画書の執筆と並行して今日中に申請を開始しよう。→ GビズID登録ガイド|オンライン申請で最短即日
前提3: どの補助金に申請するか決まっているか
事業計画書の書き方は、申請先の補助金制度によって異なる。制度ごとに審査項目が違うからだ。まだ制度を決めかねている場合は、以下の早見表を参考にしてほしい。
| やりたいこと | 最適な制度 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| AIソフトウェアの導入(SaaS・クラウド) | デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 1/2〜4/5 | 450万円 |
| AI搭載の設備・ハードウェア投資 | 省力化投資補助金(一般型) | 1/3〜2/3 | 1億円 |
| AI活用の新製品・新サービス開発 | ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠 等) | 1/2〜2/3 | 1,250万円 |
| AIで新規事業に進出 | 新事業進出補助金 | 1/2〜2/3 | 9,000万円 |
※ 上記は2026年5月時点の概要。補助率・上限額は類型・事業者規模により異なる。詳細は各制度の公募要領を必ず確認のこと。
→ 詳しい比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較をどうぞ。
Step 1: 「困っていること」を数字で言語化する
事業計画書の最初のパートは「現状の課題」だ。ここが最も重要で、ここが弱いと後続の全てが説得力を失う。
審査員が「課題」に求めるもの
審査員は年間で数百件の事業計画書を読む。その中で目に留まるのは、課題が数字で語られている計画書だ。
以下の2つを比べてほしい。
❌ NG例: 「顧客対応に時間がかかっており、業務効率が悪い。従業員の負担が大きく、残業が増えている。」
⭕ OK例: 「月間問い合わせ件数350件に対し、対応人員2名で平均初回回答まで4.2時間。2025年度の顧客満足度調査では『対応速度』が5段階中1.9と全項目で最低。残業時間は対応担当者1名あたり月平均38時間で、2024年度比+12時間。」
違いは明らかだろう。OK例では、件数・人数・時間・満足度スコア・残業時間と、5つの数字が入っている。審査員は「この会社は自社の課題を把握できている」と判断する。
課題の書き方テンプレート
以下の3要素を必ず含める。
- 業務量: 月間○件 / 月間○時間 / 年間○回
- ボトルネック: 何が原因で遅延・ミス・コスト増が発生しているか
- 経済的インパクト: そのボトルネックにより年間○万円の損失 / 機会損失が発生
制度ごとの「課題」の書き分け
| 制度 | 審査で重視される課題の切り口 |
|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 | 労働生産性の低さ(年平均成長率3%以上の改善見込み必須) |
| ものづくり補助金 | 革新性のある課題(技術面: 既存技術では解決できない課題) |
| 省力化投資補助金 | 人手不足・属人化(省力化効率指標の定量化が必須) |
| 新事業進出補助金 | 既存事業の成長限界・市場変化への対応必要性 |
Step 2: 「なぜAIなのか」を論理的に説明する
課題を書いた次は、「なぜその課題の解決にAIが最適なのか」を説明する。ここでやりがちな失敗が「AIツールのカタログ説明」を書くことだ。
ありがちなNG: ツール説明に終始する
❌ 「ChatGPTは大規模言語モデルを用いた生成AIであり、自然言語処理に優れ、多様なタスクに対応できる革新的なツールです。GPT-4oモデルは高い精度を誇り…」
これは事業計画書ではなく、製品カタログだ。審査員が知りたいのはAIの仕組みではない。
正しいアプローチ: 課題→解決策のマッチング
⭕ 「Step 1で述べた月350件の問い合わせのうち、定型的な質問(在庫確認・配送状況・返品方法)が67%を占める。これらはAIチャットボットで自動応答が可能であり、人的対応を114件/月に削減できる見込み。対応人員2名の業務時間を月160時間→月60時間に圧縮し、削減分のリソースを新規顧客開拓に振り向ける。」
ポイントは3つだ。
- 課題と解決策が直結している(月350件→定型67%→AIで自動化)
- AIを選ぶ合理的な理由がある(定型質問が多い→ルールベースではなくAIで柔軟に対応)
- 導入後の姿が具体的(160時間→60時間、削減分のリソース活用先まで明記)
「AI非搭載ツール」との組み合わせも有効
デジタル化・AI導入補助金では、AI搭載ツールの導入が加点要素になる。ただし、AI非搭載ツールとAIツールを組み合わせた提案も評価される(エービーケーエスエス「AI加点項目の評価ポイント」 2026年5月参照)。
たとえば「既存のCADシステム(非AI)+AI図面管理システム」のように、業務プロセス全体としてAIを活用する提案であれば、加点を狙える。
Step 3: Before/Afterを「表」で示す
事業計画書で審査員が最も注目するパートの一つが、導入効果の定量化だ。ここは表形式で、数字を1の位まで具体的に書く。
効果測定テーブルの書き方
| 指標 | Before(現状) | After(導入後) | 改善率 | 測定方法 |
|---|---|---|---|---|
| 問い合わせ対応時間 | 月160時間 | 月60時間 | 62.5%削減 | 勤怠管理ログ |
| 平均初回回答時間 | 4.2時間 | 0.5時間(AI自動) | 88.1%短縮 | チャットシステムログ |
| 顧客満足度(対応速度) | 1.9/5.0 | 3.5/5.0(目標) | 84.2%向上 | 年次顧客アンケート |
| 年間人件費(対応業務分) | 720万円 | 270万円 | 450万円削減 | 給与台帳 |
注意: 効果の算出根拠を必ず書く
数字を書くだけでは不十分で、「なぜその数字になるのか」の根拠を添える必要がある。
⭕ 「問い合わせ対応時間の削減根拠: 現状月350件のうち定型質問67%(235件)をAIが対応。定型質問1件あたりの平均対応時間18分×235件=70.5時間を削減。残り115件は人的対応(1件あたり平均47分×115件=90.1時間)。合計160.6時間→90.1時間。」
この「積み上げ計算」は、ものづくり補助金の事業化面の審査(ミラサポplus「ものづくり補助金の書き方」 2026年5月参照)でも、省力化投資補助金の省力化効率指標(省力化投資補助金 一般型公式サイト 2026年5月参照)でも共通して求められる。
省力化投資補助金 固有の注意点
省力化投資補助金(一般型)では、「省力化効率指標」と「投資回収期間」の算出が必須だ。具体的には「月間○件 × 1件あたり○分の工数 = 月○時間を削減」のように、作業件数 × 単位時間の積み上げで省力化効果を示す(Planbase「省力化投資補助金 事業計画書の書き方」 2026年5月参照)。
「便利になる」ではなく「○時間減る」。「効率化」ではなく「○件×○分=○時間の削減」。この粒度が審査の合否を分ける。
Step 4: 実施体制を「役割分担表」で書く
AI導入の計画書で意外と落とされるのが、実施体制の記載だ。
「社長が全部やります」はNG
❌ 「代表取締役がプロジェクト責任者として全体を統括し、AI導入を推進します。」
これは審査員に「本当に実行できるの?」という疑念を持たれる。社長一人で日常業務を回しながらAI導入プロジェクトを管理するのは非現実的だからだ。
実施体制テーブルの書き方
| 役割 | 担当者 | 主な責務 | 週あたり工数 |
|---|---|---|---|
| プロジェクト責任者 | 代表取締役 ○○ | 意思決定・予算承認 | 2時間 |
| プロジェクトリーダー | 営業部長 ○○ | 要件定義・進捗管理・社内調整 | 8時間 |
| 実務担当 | 情報システム担当 ○○ | ベンダー連携・テスト・運用マニュアル作成 | 16時間 |
| 現場テスター | カスタマーサポート ○○、○○ | AI応答精度の検証・フィードバック | 4時間 |
| 外部パートナー | ITベンダー ○○社 | AIチャットボットの開発・導入・保守 | (契約ベース) |
重要なのは「週あたり工数」の列だ。これがあることで、審査員は「現実的に実行可能な体制だ」と判断できる。
IT導入支援事業者の記載(デジタル化・AI導入補助金の場合)
デジタル化・AI導入補助金では、登録済みのIT導入支援事業者と連携して申請する必要がある。事業者の選定基準として、AI導入支援の実績があるかどうかが2026年度から加点要素になっている(デジタル化・AI導入補助金2026事務局サイト 2026年5月参照)。
→ IT導入支援事業者の選び方はIT導入支援事業者の選び方5ステップで詳しく解説している。
Step 5: スケジュールを月単位のガントチャート形式で示す
AI導入のスケジュールを書く際は、「準備期間→開発・導入期間→テスト・運用期間」の3フェーズに分けて月単位で示す。
NG: 「半年で導入します」
❌ 「2026年7月から12月の6ヶ月間でAIシステムを導入し、運用を開始する予定です。」
これでは審査員に「何月に何をやるのか」が伝わらない。
OK: 月単位の工程表
| フェーズ | 期間 | 主な作業内容 | マイルストーン |
|---|---|---|---|
| 準備 | 2026年7月 | 要件定義、ベンダー選定・契約 | 契約締結 |
| 開発 | 2026年8〜9月 | AI学習データ整備、システム構築 | プロトタイプ完成 |
| テスト | 2026年10月 | 社内テスト、精度検証、チューニング | 精度80%以上達成 |
| 本番導入 | 2026年11月 | 本番環境リリース、社員研修 | 運用開始 |
| 効果測定 | 2026年12月〜2027年1月 | KPI計測、改善策の実施 | 実績報告書提出 |
マイルストーン列があることで、「計画性がある」ことを印象づけられる。
交付決定前の発注は絶対NG
全ての補助金に共通する最重要ルールとして、交付決定通知を受け取る前に発注・契約した経費は、一切補助対象にならない。「採択された!」と喜んですぐにベンダーに発注してしまうケースが後を絶たないが、「採択≠交付決定」だ。必ずスケジュールには交付決定後に発注する旨を明記しよう。
Step 6: 費用の内訳を項目別に積算する
事業計画書の「経費明細」は、項目ごとに積算根拠を示す。「一式○○万円」は審査員に最も嫌われる書き方だ。
費用内訳テーブルの例
| 経費区分 | 内容 | 数量 | 単価(税抜) | 金額 | 補助対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトウェア費 | AIチャットボットライセンス(12ヶ月) | 1式 | 120万円 | 120万円 | ⭕ |
| 導入関連費 | 初期設定・カスタマイズ費 | 1式 | 80万円 | 80万円 | ⭕ |
| 導入関連費 | FAQ学習データ整備(500件) | 500件 | 800円/件 | 40万円 | ⭕ |
| クラウド利用料 | AIサーバー月額(12ヶ月) | 12ヶ月 | 5万円/月 | 60万円 | ⭕ |
| ❌ 原則対象外 |
※ 補助対象外の経費を含めて記載する場合は、自己負担分として明示すること。
対象経費の境界線 — AI導入で間違いやすいポイント
AI導入の経費で最も間違いやすいのが以下の3つだ。
- 汎用PC・タブレット: デジタル化・AI導入補助金では原則対象外。ただしものづくり補助金ではAI専用ハードウェアの一部として認められる場合がある
- 月額サブスクリプション: デジタル化・AI導入補助金では最大2年分のクラウド利用料が対象。省力化投資補助金(一般型)では原則対象外
- 社員研修費: ものづくり補助金では原則対象外だが、人材開発支援助成金を別途申請すれば研修費用の最大75%が助成される(厚生労働省「人材開発支援助成金」 2026年5月参照)
投資回収期間の書き方
省力化投資補助金やものづくり補助金では、投資回収期間の算出が求められる。
⭕ 「総投資額300万円(うち補助金200万円、自己負担100万円)。年間コスト削減効果450万円。投資回収期間 = 自己負担100万円 ÷ 年間効果450万円 = 0.22年(約3ヶ月)。補助金を含めた総投資額ベースでも300万円 ÷ 450万円 = 0.67年(約8ヶ月)。」
Step 7: 補助事業終了後の展望を書く
事業計画書で見落とされがちだが重要なのが、「補助事業が終わった後、どうするのか」だ。審査員は「補助金をもらって終わり」の企業には高い評価をつけない。
展望の書き方3要素
- 事業継続性: 補助事業終了後もAIツールの利用を継続する計画(ランニングコストの見通し)
- 横展開: 今回のAI導入の知見を他の業務・部署に展開する計画
- 5カ年の付加価値額目標: ものづくり補助金では付加価値額の年平均成長率3%以上が必須。新事業進出補助金でも同様の要件がある
5カ年事業計画の書き方(ものづくり補助金・新事業進出補助金)
| 年度 | 売上高(万円) | 営業利益(万円) | 付加価値額(万円) | 成長率 |
|---|---|---|---|---|
| 基準年(2025年度) | 8,000 | 400 | 2,000 | — |
| 1年目(2026年度) | 8,300 | 480 | 2,100 | +5.0% |
| 2年目(2027年度) | 8,700 | 560 | 2,230 | +6.2% |
| 3年目(2028年度) | 9,100 | 640 | 2,370 | +6.3% |
| 4年目(2029年度) | 9,500 | 720 | 2,520 | +6.3% |
| 5年目(2030年度) | 10,000 | 800 | 2,680 | +6.3% |
※ 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費。年平均成長率3%以上が必須要件(ものづくり補助金公募要領に明記。ものづくり補助金公式サイト 2026年5月参照)。
4大補助金の審査項目 — 制度ごとの評価軸一覧
事業計画書を書く際、各制度の審査項目を理解しておくと「何を重点的に書くべきか」が明確になる。
デジタル化・AI導入補助金の審査ポイント
デジタル化・AI導入補助金2026では、以下の観点から申請内容が評価される(デジタル化・AI導入補助金2026公募要領(通常枠)PDF 2026年5月参照)。
- 事業面: 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な導入効果が見込まれるか
- 計画目標の妥当性: 労働生産性の年平均成長率3%以上の伸びが見込まれるか
- 加点項目: 賃上げ計画の策定、SECURITY ACTION宣言(★★二つ星)、IT戦略ナビwithの実施、AI搭載ツールの導入、省力化ナビの活用
ものづくり補助金の3つの審査観点
ものづくり補助金は、技術面・事業化面・政策面の3つの観点で審査される(ミラサポplus「ものづくり補助金の書き方」 2026年5月参照)。
| 審査観点 | 主な評価ポイント | AI導入で書くべきこと |
|---|---|---|
| 技術面 | 革新性、課題解決の明確さ | AIによる検査精度向上、既存技術との差異 |
| 事業化面 | 市場性、収益性、スケジュール | Before/After数値、投資回収期間、5カ年計画 |
| 政策面 | 賃上げ、地域経済貢献 | AI導入による従業員の業務高度化、賃上げ計画 |
省力化投資補助金(一般型)の審査4軸
省力化投資補助金は、適格性・技術面・計画面・政策面の4つの軸で審査される(省力化投資補助金 一般型 公募要領 2026年5月参照)。
- 適格性: 補助事業の目的・要件への適合
- 技術面: 省力化効率指標、投資回収期間、付加価値額の妥当性
- 計画面: 実施体制・スケジュールの現実性
- 政策面: 賃上げ、地域経済貢献、社会的意義
AI導入の計画では特に「技術面」で、省力化の根拠を積み上げ計算で示すことが採択の鍵だ。「月間○件 × 1件あたり○分 = 月○時間の削減」のように、省力化効果をボトムアップで算出する。
新事業進出補助金の特有要件
新事業進出補助金(旧・事業再構築補助金の後継)は、口頭審査があることが他の制度との最大の違いだ。事業計画書の内容を10分で説明し、5分間の質疑応答を受ける。
AI導入の計画では、「なぜAIを使った新事業に進出するのか」「既存事業とのシナジーは何か」を、口頭でも明確に説明できるよう準備しておくこと。
書類作成で審査員を困らせるミス5選
ミス1: 交付決定前に発注してしまう
❌ 採択通知が来たので、翌日にベンダーへ発注書を送った
⭕ 交付決定通知を受け取り、内容を確認してから発注・契約を行う
なぜ致命的か: 交付決定前に発注した経費は1円も補助されない。「採択」と「交付決定」は別のプロセスだ。この違いを理解していないと、数百万円を自腹で払うことになる。
ミス2: 数値目標があいまい
❌ 「AIを導入して業務効率を改善し、生産性を向上させる」
⭕ 「受発注業務の処理時間を月42時間→月16時間に削減(61.9%減)。注文処理1件あたりの所要時間を18分→7分に短縮」
なぜ致命的か: 審査員は「どのくらい良くなるのか」を数字で判断する。抽象的な改善表現では点数がつけられない。
ミス3: 自社の課題を書かずにAIの説明だけ
❌ 「GPT-4oは1750億パラメータの大規模言語モデルで、マルチモーダルに対応し…」
⭕ 「当社の月間見積作成業務(120件/月)は担当者2名に属人化しており、繁忙期は平均回答日数が5.2営業日に達している。AI見積ツールで過去データから自動見積を生成し、回答日数を1.5営業日に短縮する」
なぜ致命的か: 審査員が知りたいのは「AIの仕組み」ではなく「あなたの会社の課題がどう解決されるか」だ。
ミス4: 実施体制が「社長一人」
❌ 「代表取締役が責任者として全てを推進します」
⭕ 「プロジェクト責任者: 代表取締役、PL: 営業部長、実務担当: 情報システム担当、外部支援: ○○社(IT導入支援事業者登録済み)」
なぜ致命的か: 一人で日常業務とAI導入プロジェクトを並行するのは非現実的。審査員は「この計画は実行できるのか?」を見ている。
ミス5: 補助事業の終了後の計画がない
❌ (補助事業期間中のことしか書かれていない)
⭕ 「補助事業終了後もAIツールの利用を継続。月額利用料○万円は対応人員削減による人件費削減分(年450万円)で十分に賄える。2年目以降は社内の他部門(経理・人事)への横展開を計画」
なぜ致命的か: 審査員は「補助金をもらって終わりの企業」には採択を出さない。ものづくり補助金では5カ年の事業計画が必須であり、補助事業後の展望は配点に直結する。
制度別 加点項目の取りこぼし防止リスト
せっかく事業計画書を丁寧に書いても、加点項目を取りこぼすと採択率が大きく下がる。制度ごとの主な加点項目を整理した。
デジタル化・AI導入補助金の加点項目
- ✅ 賃上げ計画の策定と従業員への表明
- ✅ SECURITY ACTION 二つ星(★★)の宣言
- ✅ IT戦略ナビwithの実施
- ✅ AI搭載ツールの導入(AI加点)
- ✅ 省力化ナビの活用(2026年度新設)
- ✅ 地域未来牽引企業の認定
(デジタル化・AI導入補助金2026事務局サイト 2026年5月参照)
ものづくり補助金の加点項目
- ✅ 賃上げ加点(事業計画期間で給与支給総額を年平均3.5%以上増加)
- ✅ 被用者保険の適用拡大
- ✅ 経営革新計画の認定
- ✅ 事業継続力強化計画の認定
- ✅ デジタル技術の活用(DX推進指標の自己診断実施)
(ものづくり補助金公式サイト 2026年5月参照)
省力化投資補助金の加点項目
- ✅ 賃上げ加点
- ✅ 省力化ナビでの計画策定
- ✅ 事業継続力強化計画の認定
- ✅ パートナーシップ構築宣言
(省力化投資補助金 一般型公式サイト 2026年5月参照)
ぶっちゃけ、加点項目を全て満たすのは難しい。だが「賃上げ」と「SECURITY ACTION」は準備すればほぼ確実に取れる加点なので、最低限この2つは押さえておくべきだ。
AIプロセス設計の書き方 — 単品ツール導入から脱却する
事業計画書でAI導入を書く際に、もう一歩踏み込むなら「AIプロセス設計」の視点を入れたい。
単品のAIツールを導入するだけでなく、AIを組み込んだ業務プロセス全体を設計することで、審査員に「この企業は本気でDXに取り組んでいる」と印象づけられる。
例: AI-OCR導入のプロセス設計
❌ 単品ツール型の書き方: 「AI-OCRを導入して帳票を自動読み取りする」
⭕ プロセス設計型の書き方:
- 受領: 請求書をスキャン(複合機の自動PDF化機能を活用)
- 読取: AI-OCRが請求書の金額・日付・取引先名を自動抽出(精度目標: 98%以上)
- 照合: 会計ソフトの仕入データとAPI連携で自動照合
- 承認: 差異がなければ自動承認フロー、差異があれば経理担当に通知
- 保管: 電子帳簿保存法に対応した形式で自動アーカイブ
この書き方なら「受領→読取→照合→承認→保管」の全工程でデジタル化されていることが一目で分かる。省力化投資補助金の審査でも、「単品IT」より「プロセス省力化」の方が高く評価される傾向がある。
よくある質問(FAQ)
Q1: 事業計画書は自社で書かないとダメですか?
補助金の事業計画書は、原則として申請する事業者自身の責任で作成する必要がある。外部のコンサルタントに丸投げすることは推奨されておらず、ものづくり補助金の公募要領にも「事業計画は応募者が策定すること」と明記されている。ただし、認定支援機関やIT導入支援事業者からアドバイスを受けることは問題ない。
Q2: ChatGPTで事業計画書を書いてもいいですか?
ChatGPT等の生成AIを事業計画書の作成補助に使うこと自体は禁止されていない。ただし、最終的な内容は申請者が責任を持つ必要がある。AI生成の文章をそのまま使うと、自社固有の数字や課題が抜け落ちた汎用的な文章になりがちなので、骨子作成の補助として使い、数字と事実は自社の実データで埋めるのが現実的だ。
Q3: 複数の補助金に同時に申請できますか?
同一の経費について複数の補助金を重複して申請することはできない。ただし、異なる経費について別々の補助金を申請する(併用)のは可能な場合がある。たとえば「AI設備をものづくり補助金で導入し、社員のAI研修を人材開発支援助成金で補助してもらう」という組み合わせは認められることが多い。
Q4: 補助金の採択率はどのくらいですか?
制度や公募回によって大きく異なる。2026年度の主要制度では、ものづくり補助金は近年30%〜40%台で推移(第22次は約34%)、省力化投資補助金(一般型)は60%〜70%台(第4回69.3%、1,456/2,100件)、デジタル化・AI導入補助金は公募開始が2026年3月のため参考データが限定的だ。採択率は時期・制度・枠によって変動するため、必ず公式の採択結果を確認してほしい。
Q5: 小規模事業者・個人事業主でも申請できますか?
いずれの制度も中小企業・小規模事業者を対象としており、個人事業主も申請可能だ。デジタル化・AI導入補助金では、小規模事業者は賃上げ等の要件を満たすことで補助率が最大4/5に引き上げられる。ただし従業員数・資本金の要件は制度ごとに異なるため、公募要領で確認が必要。
事業計画書を書くときにやるべきこと — 制度を横断した実践チェック
全制度共通: 賃上げ計画は必ず盛り込む
2026年度の主要補助金はいずれも「賃上げ」を加点項目または必須要件としている。
- ものづくり補助金: 給与支給総額の年平均3.5%以上の増加が基本要件
- 省力化投資補助金: 賃上げ計画が加点項目
- デジタル化・AI導入補助金: 賃上げ計画の策定・表明が加点項目
- 新事業進出補助金: 付加価値額の年平均成長率3%以上が基本要件
AI導入と賃上げの関連は「AI導入で省力化 → 従業員は付加価値の高い業務にシフト → 生産性向上分を賃上げに反映」というストーリーで書く。「AIで人を減らして賃上げする」ではなく、「AIで業務を効率化し、人は高度な仕事に集中することで賃上げの原資を作る」。この表現の違いは審査で大きな差になる。
セキュリティの記載 — 見落とされがちな加点
AI導入の計画書では、セキュリティ対策の記載が甘くなりがちだ。特にデジタル化・AI導入補助金では、SECURITY ACTION二つ星の宣言が加点項目になっている。これはIPA(情報処理推進機構)のサイトで無料で宣言できるので、まだ未実施なら今日中に済ませよう。
認定支援機関の確認書を早めに手配
ものづくり補助金と新事業進出補助金では、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認書が必要だ。確認書の発行には通常1〜2週間かかるため、事業計画書と並行して依頼しておくこと。
→ 認定支援機関の探し方は補助金申請書の書き方完全ガイドでも解説している。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠) — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照日: 2026-05-18)
- ものづくり補助金 公募要領 — ものづくり補助金事務局(参照日: 2026-05-18)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)公式サイト — 中小機構(参照日: 2026-05-18)
- ものづくり補助金の書き方 — ミラサポplus・経済産業省 中小企業庁(参照日: 2026-05-18)
- 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照日: 2026-05-18)
- デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026-05-18)
- 2026年デジタル化・AI導入補助金の加点項目|AI加点項目の評価ポイント — エービーケーエスエス(参照日: 2026-05-18)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定や、どの補助金が自社に合うか分からない場合は、お気軽にご質問ください。→ お問い合わせフォーム
免責事項
本記事の情報は2026年5月18日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
