観光庁の2026年度補助金は、前年度比2.4倍の予算規模(令和8年度: 約1,383億円)を背景に、宿泊業・旅館・観光事業者が活用できる制度が5本立て以上で揃っています。人手不足解消から訪日外国人対応、地域全体のオーバーツーリズム対策まで、カバー範囲が一気に広がりました。
ただし、この5制度は申請主体・補助率・申請期間がそれぞれ異なります。「とにかく補助金を使いたい」と思っても、自社の規模や目的に合わない制度に申請すると採択されません。本記事では5制度の仕組みを横断的に整理し、どの事業者がどれを選ぶべきかを明確にします。
【2026年9月時点】5制度の公募状況早見表
まず結論から。2026年9月9日時点、5制度のうち新規に申請できるのは④のみです。①②③⑤はすでに一次・二次とも公募が終了し、採択結果も出そろっています。
| 制度名 | 2026年9月時点の状況 | 直近の動き |
|---|---|---|
| ①省力化投資補助事業 | 公募終了・追加公募の予定なし | 2026年6月30日に採択結果発表 |
| ②観光DX推進事業 | 公募終了 | 2026年6月30日に採択結果発表 |
| ③オーバーツーリズム対策事業 | 一次・二次とも公募終了 | 一次採択結果は2026年7月10日発表。二次公募(〜7月17日締切)の採択結果は2026年8月13日時点で確認できていません |
| ④観光産業効率化支援事業 | 三次公募が受付中 | 2026年8月27日10:00〜9月29日12:00締切。二次公募は8月18日12:00で受付終了・一次採択結果は7月16日発表済み |
| ⑤地域観光資源コンテンツ化促進事業 | 一次・二次とも公募終了 | 二次公募の採択結果が2026年8月10日に発表されたばかり |
つまり、二次公募は2026年8月18日12:00で受付を終了しており、これから動いて間に合うのは④観光産業効率化支援事業の三次公募(締切2026年9月29日(火)12:00)だけという状況です。①②③⑤の情報は、来年度以降の公募を見据えた予習として読み進めてください。
観光庁補助金の2026年度全体像
2026年度(令和8年度)は観光庁予算が過去最大規模に拡充されました。その背景には3つの政策課題があります。
1つ目は「人手不足」。旅館・ホテルの従業員不足は慢性化しており、自動チェックイン機や配膳ロボット導入への補助が強化されました。2つ目は「オーバーツーリズム」。京都・大阪などの混雑を地方へ分散させるコンテンツ整備への支援が新設・拡充されています。3つ目は「インバウンド対応」。訪日外国人数が過去最高を更新するなか、多言語化・安全対策・DX化を支援する制度が複数走っています。
これら3つの課題に対応する形で、2026年度は以下の5制度が主力となっています。
| 制度名 | 主な対象者 | 補助率 | 上限額 | 2026年度の公募(一次・二次) |
|---|---|---|---|---|
| ①省力化投資補助事業 | 旅館・ホテル(旅館業法許可) | 1/2 | 1,000万円 | 3月27日〜5月29日(終了・追加公募なし) |
| ②観光DX推進事業 | 宿泊事業者・DMO等 | 1/2 | 1,500万円 | 4月17日〜5月29日(終了) |
| ③オーバーツーリズム対策事業 | 地方公共団体・DMO主導 | 2/3・1/2 | 最大2億円 | 一次:〜5月29日/二次:6月1日〜7月17日(いずれも終了) |
| ④観光産業効率化支援事業 | 宿泊事業者の共同体・DMO等 | 1/2 | 5,000万円 | 一次:〜6月10日(終了)/二次:7月8日〜8月18日12:00(終了)/三次:8月27日〜9月29日12:00(受付中) |
| ⑤地域観光資源コンテンツ化促進事業 | DMO・地方公共団体・観光事業者 | 定額+1/2 | 最大1,650万円 | 一次:2月27日〜4月2日/二次:5月29日〜6月18日(いずれも終了) |
※上記は2026年8月13日時点の公式発表に基づく参考情報です。各制度の最新の公募状況は観光庁 公募情報ページでご確認ください。
なお、観光庁の制度と国の汎用補助金(省力化投資補助金・ものづくり補助金等)は併用可能なものがあります。詳細は記事後半の「国の制度との併用パターン」をご参照ください。
各補助金制度の比較については、省力化投資補助金の詳細解説も参考にしてください。
①観光地・観光産業における省力化投資補助事業|最大1,000万円
宿泊業の人手不足解消に特化した制度です。旅館業法の許可を受けた事業者(ホテル・旅館)が、省力化に資する設備・システムを導入する際の費用を補助します。
前身となる令和6年度の制度では上限500万円でしたが、令和7年度補正予算で上限1,000万円に倍増されました。1軒の旅館でも単独申請が可能な、数少ない観光庁補助金のひとつです。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 観光地・観光産業における省力化投資補助事業(令和7年度補正) |
| 所管 | 観光庁 |
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限額 | 1,000万円 |
| 対象者 | 旅館業法第3条第1項の許可を受けた宿泊事業者(住宅宿泊事業は対象外) |
| 必須要件 | 地域(DMO・地方公共団体等)と連携した人手不足解消の取組 |
| 2026年度公募(一次) | 2026年3月27日〜5月29日(17:00締切)※終了 |
| 採択結果発表 | 2026年6月30日 |
| 事業実施期間 | 〜2027年1月8日 |
| 特設サイト | kanko-jinzai.go.jp |
補助対象となる設備・システムの例
- 自動チェックイン機・セルフチェックアウト端末
- 予約管理システム(PMS)・チャネルマネージャー
- 清掃ロボット・配膳ロボット
- シフト管理システム・勤怠管理ツール
- 客室内タブレット(サービスリクエスト自動化)
正直、この制度で最も引っかかりやすいのが「地域連携要件」です。単に設備を導入するだけでは採択されません。DMOや観光協会が主導する人手不足対策の枠組みに参加している、あるいは地域の宿泊事業者が連携して求人活動を行っているといった実態が必要です。自社だけで完結しようとすると落とされます。
よくある落とし穴
❌ 民泊(住宅宿泊事業法の届出のみ)で申請しようとする
⭕ 旅館業法の許可証番号を確認してから申請する
❌ 地域連携の実績が口頭の約束だけ
⭕ DMO・観光協会との覚書または連携協定書を用意する
❌ 交付決定前に業者と正式契約する
⭕ 採択通知ではなく交付決定通知を受けてから発注・契約する
②全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業|最大1,500万円
デジタルツールの導入・活用を通じて観光地全体の収益力と生産性を高める制度です。宿泊事業者単独でも申請できる「収益・生産性向上」類型があり、中小の旅館・ホテルが狙いやすい制度です。
3つの支援類型
| 類型 | 対象者 | 内容 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 販路拡大・マーケティング強化 | 地方公共団体・DMO・観光協会等 | データ分析・デジタルマーケティングツール導入 | 個別確認 |
| 収益・生産性向上 | 宿泊事業者 | 予約システム・動的料金設定・生産性向上ツール導入 | 1,500万円 |
| 伴走支援 | 上記全て | 専門人材によるDX計画策定・ツール導入支援 | 800万円 |
基本データ(収益・生産性向上類型)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限額 | 1,500万円 |
| 対象者 | 宿泊事業者 |
| 2026年度公募 | 2026年4月17日〜5月29日(17:00締切)※終了 |
| 採択結果発表 | 2026年6月30日 |
| 特設サイト | kanko-dx-hojo.go.jp |
AI・DXツールで補助対象になる経費の例
- レベニューマネジメントシステム(動的料金設定AI)
- AIを活用した多言語チャットボット(問い合わせ自動対応)
- 顧客データ分析・CRMツール
- デジタルサイネージ(多言語観光情報表示)
- 予約システムと会計システムの連携ツール
省力化投資補助事業との違いは「目的」です。省力化は人手不足の解消が主眼で「ロボット・自動化機器」が中心。DX推進は収益向上・マーケティング強化が主眼で「データ活用・予約管理・多言語対応」が中心。ただし、対象経費が重複するものもあるため、まず事務局に確認するのが現実的です。
採択のポイント
「DXを導入します」ではなく、「導入前の現状数値と導入後の目標値を具体的に示すこと」が評価されます。例えば「現在の客室稼働率62%を、レベニューマネジメント導入後12ヶ月で75%へ引き上げる」といった計画が求められます。数字のない申請書は採択率が著しく下がります。
③オーバーツーリズム対策・面的受入環境整備促進事業|最大2億円
単一の宿泊事業者ではなく、地域全体(自治体・DMO・観光事業者の連合)が申請する制度です。補助上限が最大2億円と圧倒的な規模ですが、申請主体・実施体制の要件が厳しい点に注意が必要です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業 |
| 補助率 | 地域一体型: 2/3、一般型(実証・個別型): 1/2 |
| 補助上限額 | 地域一体型: 最大2億円、一般型: 最大5,000万円 |
| 対象者 | 地方公共団体・登録DMO・観光関連事業者(地域一体での取組が必要) |
| 2026年度公募(一次) | 3月23日開始〜(一次採択結果は7月10日発表)※終了 |
| 2026年度公募(二次) | 6月1日〜7月17日12:00締切 ※終了 |
| 特設サイト | ot-kankoseibi.go.jp |
補助対象となる取組の例
- 観光客の分散誘導・時間帯平準化のための情報発信システム
- 二次交通の整備(シャトルバス・電動アシスト自転車シェアリング等)
- 混雑可視化センサーの設置・データ活用
- マナー啓発・多言語サイン整備
- 入域料・協力金の徴収システム構築
地方の観光地でDMOや市町村と連携して動いている観光協会の方は、この制度を見落とさないでください。補助上限2億円はインパクトが大きく、複数事業者でコンソーシアムを組めば受け皿も広がります。一方で個人経営の旅館が単独で申請できる制度ではないため、混同に注意が必要です。次回公募が実施される場合に備えて、地域連携体制を今のうちに整えておく価値があります。
④地域一体となった観光産業の効率化支援事業|最大5,000万円
複数の宿泊事業者が連携して共同設備を導入する「連合型」の補助制度です。1軒ずつ別々に省力化機器を導入するより、共同で大型の施設・システムを整備するほうが効率的な場合に有効です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 地域一体となった観光産業の効率化支援事業(令和7年度補正) |
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限額 | 5,000万円 |
| 対象者 | 地域内で連携した宿泊事業者等の共同事業体・観光協会・DMO等 |
| 対象経費 | 複数の宿泊施設が共同利用できる設備の導入・改修 |
| 一次公募 | 2026年4月24日〜6月10日(12:00締切)※終了・7月16日採択結果発表 |
| 二次公募 | 2026年7月8日10:00〜8月18日12:00締切 ※終了 |
| 三次公募(受付中) | 2026年8月27日10:00〜9月29日12:00締切 |
| 特設サイト | kouritsukashien-r8.go.jp |
想定される活用シナリオ
例えば、温泉地の旅館10軒が共同事業体を設立し、チェックイン・チェックアウトのクラウド管理システムを共同導入するケースです。各旅館が個別に導入すれば1軒あたり200〜500万円かかるシステムも、共同調達で大幅なコスト削減が可能です。補助上限5,000万円を活用すれば、1億円規模の共同プロジェクトも現実的になります。
観光協会やDMOが旗振り役を担えるかどうかが、この制度の活用の鍵です。行政や観光組合のつながりを持つ事業者は、三次公募の締切(9月29日12:00)まで時間が限られているため、今すぐ地域の連携先に声をかけることをお勧めします。
採択に向けた準備チェック
❌ 宿泊事業者が1社だけで申請
⭕ 複数の宿泊施設による共同事業体(または観光協会等との連携)を形成する
❌ 「将来的に使う可能性がある設備」を計上
⭕ 事業終了までに確実に導入・稼働できる設備のみ計上する
❌ 一次公募時の登録情報が二次公募でも使えると思い込む
⭕ 二次公募では新規に事業者登録をやり直す(特設サイトで要確認)
⑤観光需要分散のための地域観光資源コンテンツ化促進事業|最大1,650万円
インバウンド旅行者を地方へ誘導するための体験型コンテンツ造成・高単価化を支援する制度です。
基本データ(2026年度実績)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業 |
| 補助率 | 定額(400万〜800万円)+超過分の1/2 |
| 補助上限額(新創出型) | 定額400万円+事業費2,100万円までの1/2=最大1,250万円 |
| 補助上限額(品質向上型) | 定額800万円+事業費4,200万円までの1/2=最大1,650万円 ※最低事業費1,200万円 |
| 対象者 | DMO・地方公共団体・観光協会・民間事業者等 |
| 一次公募 | 2026年2月27日〜4月2日(終了・5月28日採択結果発表) |
| 二次公募 | 2026年5月29日〜6月18日正午(終了・8月10日採択結果発表) |
| 特設サイト | juyobunsan.go.jp |
補助対象となる取組の例
- 外国人向け農業・漁業体験コンテンツの造成
- 伝統工芸・文化体験のインバウンド対応(多言語ガイド育成含む)
- ガストロノミーツーリズム(食文化体験)の高単価商品開発
- コンテンツのOTA・旅行会社向け販路開拓支援
この制度は「体験コンテンツを作って終わり」ではなく、「販路開拓まで含めた一連の事業計画」が求められます。インバウンド客の誘致実績があるDMOや、すでに外国語対応のガイドを持つ観光事業者が有利です。次年度の公募に向けて、今から体験コンテンツの設計と販路の準備を進めておく価値があります。
宿泊業・観光事業者タイプ別の制度選択ガイド
5制度の申請主体と目的が異なるため、自社の状況に応じた選択が必要です。2026年9月9日時点で新規申請できるのは④のみである点を踏まえてご覧ください。
| 状況 | 最適な制度 | 補助上限 | 2026年9月時点 |
|---|---|---|---|
| 旅館・ホテル1軒で省力化機器を導入したい | ①省力化投資補助事業 | 1,000万円 | 公募終了(来年度待ち) |
| 1軒でDXツール・予約システムを導入したい | ②観光DX推進事業(収益・生産性向上) | 1,500万円 | 公募終了(来年度待ち) |
| 複数の旅館が連携して共同設備を整備したい | ④観光産業効率化支援事業 | 5,000万円 | 三次公募受付中(〜9/29 12:00) |
| DMO・自治体主導でオーバーツーリズム対策 | ③オーバーツーリズム対策事業 | 2億円 | 公募終了(二次採択発表待ち) |
| インバウンド向け体験コンテンツを開発したい | ⑤コンテンツ化促進事業 | 最大1,650万円 | 公募終了(次年度公募待ち) |
| DX化の計画策定から支援してほしい | ②観光DX推進事業(伴走支援類型) | 800万円 | 公募終了(来年度待ち) |
国の補助金との組み合わせパターン
観光庁の制度は、経済産業省・厚生労働省の汎用補助金と補完的に使えるケースがあります。ただし同一経費への重複受給は禁止されているため、経費区分を明確に分ける必要があります。
パターン1: 省力化投資補助事業 + 省力化投資補助金(経産省)
観光庁の制度は「宿泊業全般の省力化設備」が対象。経産省の省力化投資補助金はカタログ登録製品に限定されますが、補助上限が最大1億円と大きい。観光庁制度でシステム系(PMS・チャネルマネージャー)を補助し、経産省制度でハードウェア(ロボット・自動機)を補助するという分け方が現実的です。
パターン2: 観光DX推進事業 + IT導入補助金
IT導入補助金はITツール費用の最大3/4を補助しますが、インバウンド対応ツールは対象外になる場合があります。観光DX推進事業は「観光特化型DX」を幅広くカバーするため、IT導入補助金で対応しきれない部分を補完できます。
パターン3: コンテンツ化促進事業 + 人材開発支援助成金
インバウンド向けコンテンツ造成の際、多言語ガイドや通訳スタッフのOJT研修費用を人材開発支援助成金(厚生労働省)でカバーする組み合わせです。研修計画を事業計画と同時に設計しておくと、両方の申請がスムーズです。
業種特化の補助金活用については、飲食・小売業向け補助金ガイドも参考になります。
今すぐ動けるのは④だけ|三次公募締切までの優先アクション
2026年9月8日時点で、本記事の5制度のうち新規申請を受け付けているのは④観光産業効率化支援事業の三次公募で、締切は9月29日12:00です。残り日数が限られているため、今すぐ動き始める必要があります。
④の三次公募に間に合わせるための優先アクション(2026年9月8日時点)
| タイミング | やること |
|---|---|
| 今日中 | 複数の宿泊施設で共同事業体を組めるか、観光協会・DMOに連絡して確認する |
| 1〜2日以内 | 特設サイトで三次公募用の事業者登録(過去の公募の情報は引き継がれない) |
| 1週間以内 | 共同利用設備の見積書を取得し、事業計画書のドラフトを作成する |
| 9月29日12:00まで | 計画申請を提出(締切厳守・時間ぴったりでの駆け込みは避ける) |
①②③⑤については2026年度の新規申請枠がすでに閉じているため、次にやるべきは「来年度公募に向けた準備」です。具体的には、GビズIDプライムの取得(未取得の場合は印鑑証明書の取得から含めて2〜3週間かかります)、DMO・観光協会との連携関係の構築、過去の課題を数値で棚卸ししておくことが挙げられます。公募が始まってから準備を始めると、①②③のような1〜2ヶ月の短い公募期間では間に合わないケースが多いため、今のうちに土台を作っておく価値があります。
観光庁補助金の採択を左右する3つのポイント
観光庁の補助金審査は「観光地全体へのプラスの波及効果」を重視します。自社の利益だけを前面に出した申請は評価されにくい傾向があります。
ポイント1: 地域全体への貢献を明示する
「自社の旅館の売上が上がる」ではなく、「地域の観光消費額が増加する」「オーバーツーリズムが緩和される」「地域全体の雇用が維持される」といった視点で事業計画を記述します。審査員は「この事業が観光地全体にどう寄与するか」を見ています。
ポイント2: KPIを数値で設定する
「インバウンド対応が改善する」という記述は審査員には響きません。「外国語対応可能な問い合わせ件数を月50件→月200件に増加(4倍)」「繁忙期の客室稼働率を78%→85%に向上」のように、Before/Afterを具体的な数値で示します。
ポイント3: 実施体制の信頼性を示す
「代表が一人でやる」という申請は信頼性に欠けます。観光協会・DMOとの連携、ITベンダーとの協力関係、社内の担当者の役割分担を明確に示しましょう。外部の専門家(ITコンサルタント、観光DXの専門人材等)を活用する計画があれば加点要素になります。
採択後の「後払い」を乗り切る資金繰りの考え方
観光庁系の補助金は、多くが事業完了後に実績報告を行い、審査を経てから入金される精算払い(後払い)方式を採っている場合があります。つまり、設備の購入費やシステムの導入費は、いったん自社で全額を立て替えるのが基本です。「採択された=すぐに資金が入る」と誤解したまま発注を進めると、入金までの数か月間で資金が一時的に不足する事態が起こり得ます。観光業は季節変動が大きく、繁忙期と閑散期でキャッシュフローが大きく振れるため、特に注意したいポイントです。
後払いを前提に、申請前の段階で「立替期間の資金をどう手当てするか」を具体的に描いておくと、採択後の動きがスムーズになります。考え方の整理として、以下のような選択肢を比較検討するケースがあります。なお、利用可否や条件は金融機関・制度ごとに異なるため、必ず取引先の金融機関や公式窓口で確認してください。
| 立替資金の手当て方法 | 主な特徴 | 検討時の留意点 |
|---|---|---|
| 自己資金で立替 | 金利負担がなく手続きも簡潔 | 繁忙期前の手元資金を圧迫しないか、季節変動を踏まえて確認する |
| 金融機関のつなぎ融資 | 入金までの期間を借入でつなぐ想定 | 金利・保証料・返済時期が補助金入金時期と合うかを事前に相談する場合がある |
| 分割発注・段階導入 | 立替額を平準化しやすい | 補助対象経費の区分や公募要領上の取扱いに合致するか要確認 |
あわせて押さえておきたいのが、原則として交付決定の前に発注・契約・支払いをした経費は補助対象外になる場合があるという点です。良かれと思って早めに設備を発注した結果、その費用が補助の対象から外れてしまう、という取り違えは実務でよく起こります。発注のタイミングと交付決定のタイミングの関係は、年度・公募回によって取扱いが変わることがあるため、最新の公募要領で必ず確認してください。資金繰り計画は「いつ立て替え、いつ入金され、その間をどう埋めるか」を時系列で書き出しておくと、社内でも金融機関でも共有しやすくなります。
不採択だった場合の立て直しと、二重計上を避ける経費設計
補助金は申請すれば必ず採択されるものではなく、公募回によっては競争率が高くなる場合があります。一度不採択になっても、次回以降の公募で再挑戦できるケースは少なくありません。大切なのは、不採択を「終わり」ではなく「事業計画を磨き直す機会」として扱うことです。可能であれば、不採択の理由や審査の観点に関する情報が公開・通知されていないかを確認し、次回の計画に反映させる流れを想定しておくとよいでしょう。
再挑戦にあたって見直したい主なポイントを整理しました。いずれも一般的な傾向であり、実際の評価基準は制度・年度ごとに異なります。詳細は各制度の公式情報で確認してください。
- 地域への波及効果の具体化:自社の利益だけでなく、地域の観光客数・滞在時間・周辺事業者への効果など、面的な広がりを言葉と数字で示せているか。
- KPIの妥当性:掲げた数値目標が、過去実績や根拠と結びついた現実的なものになっているか。背伸びしすぎても、控えめすぎても評価しづらくなる場合がある。
- 実施体制の説明:誰が・どの役割で・どのスケジュールで進めるのかが具体的に描けているか。外部事業者を使う場合は、その妥当性も含めて説明できると安心。
- 経費の妥当性と根拠資料:見積の取り方や経費区分が公募要領に沿っているか。金額の根拠が曖昧だと審査で不利になることがある。
再申請や複数制度の併用を検討する際に、特に正確に理解しておきたいのが同一経費への二重計上の禁止です。観光庁系の補助金と他制度(デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)や省力化投資補助金など)を組み合わせること自体は可能な場合がありますが、まったく同じ経費に対して複数の補助金・助成金を重ねて受け取ることは、原則として認められていません。仮に二重で受給した場合、後の検査で返還を求められたり、不正受給とみなされたりするリスクがあります。併用を考えるときは、「どの経費を、どの制度で申請するのか」を1円単位で切り分け、経費区分を明確に分けることが前提になります。判断に迷う場合は、各制度の公式窓口に事前相談するのが安全です。観光庁の制度概要は観光庁の公式サイト、デジタル化・AI導入補助金はデジタル化・AI導入補助金の公式サイト、省力化投資補助金は省力化投資補助金の公式サイトで、それぞれ最新の公募要領を確認してください。
よくある質問
Q. 旅館業法の許可を取っているが、個人事業主でも申請できますか?
A. 省力化投資補助事業は法人・個人事業主を問わず、旅館業法の許可を受けた事業者であれば申請可能です。ただし地域連携要件は法人・個人問わず満たす必要があります。他の制度も同様に、事業者の法人格よりも許可・登録の種別と地域連携の有無が重要です。
Q. 複数の観光庁補助金に同時に申請できますか?
A. 申請主体・補助対象経費が重複しない範囲であれば、同一年度内の複数申請は可能です。ただし、①省力化投資補助事業と②観光DX推進事業は対象経費が重複しやすいため、事前に事務局に確認することをお勧めします。
Q. 採択後に計画変更はできますか?
A. 軽微な変更は事務局への届出で対応できる場合があります。ただし、補助対象経費の大幅な変更(20%以上の増減)や事業内容の本質的な変更は認められないケースが多いです。計画変更が生じそうな場合は、採択後すぐに事務局に相談することが重要です。
Q. 補助金はいつ受け取れますか?
A. 観光庁の補助金は後払い(精算払い)です。事業完了後に実績報告書を提出し、審査を経て交付されます。省力化投資補助事業の場合、事業実施期間終了(2027年1月8日)後の実績報告・審査を経て交付となります。資金繰りの計画を事前に立てておく必要があります。
Q. 2026年度の公募がすべて終わってしまいましたが、今から準備できることはありますか?
A. あります。④の二次公募(8月18日締切)以外は新規申請できませんが、来年度公募に向けてGビズIDの取得、DMO・観光協会との連携関係の構築、過去の業務課題の数値化を進めておくと、公募開始直後にスムーズに動けます。次回公募の情報は観光庁の公募情報ページで定期的に確認してください。
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参考・出典
- 2026年 公募情報一覧 — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- 観光地・観光産業における省力化投資補助事業 採択結果のお知らせ — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- 全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業 採択結果のお知らせ — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の面的受入環境整備促進事業 一次公募採択結果のお知らせ — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- 地域一体となった観光産業の効率化支援事業(一次公募)採択結果のお知らせ — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- 地域一体となった観光産業の効率化支援事業 特設サイト(二次公募受付中) — 観光庁委託事務局(参照日: 2026-08-13)
- 観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業(二次公募)採択結果のお知らせ — 観光庁(参照日: 2026-08-13)
- 令和8年度オーバーツーリズム受入環境整備促進事業 特設ウェブサイト — 観光庁委託事務局(参照日: 2026-08-13)
観光庁の5制度を活用する具体的な計画策定でお悩みの場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。Uravationでは、AI導入を軸にした事業計画の策定支援を行っています。補助金申請書の作成代行ではなく、「どの補助金で何をどう導入するか」という計画段階からご一緒できます。
あわせて読みたい:
・省力化投資補助金 一般型・カタログ型の違い|採択率・申請手順
・【2026年最新】観光業向け補助金まとめ
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年9月9日時点の観光庁・各事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
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