【2026年最新】雇用調整助成金とは?対象・助成率・申請フローを完全解説
「業況が急に悪化した。でも従業員を解雇したくない」——そんな局面で頼りになるのが雇用調整助成金です。経済的な理由で事業活動が縮小した事業主が、休業・教育訓練・出向によって従業員の雇用を維持した場合に、その費用の一部を国が助成する制度です。コロナ禍で一躍知られるようになりましたが、通常制度は景気変動・産業構造の転換といった平時の経営危機でも使えます。この記事では、2026年(令和8年)時点の通常制度の概要・対象・助成率・申請フロー・必要書類・注意点まで、経営者・労務担当が実務で使えるレベルで解説します。

まずここだけ確認——雇用調整助成金の対象になる?ならない?
申請を検討する前に、「うちは対象事業主なのか」を3つのポイントで確認してください。
- 雇用保険の適用事業主であること:事業主が雇用保険に加入していることが大前提です。
- 売上・生産量が前年同期比10%以上減少していること:最近3か月の月平均値で判定します。単月の数字ではなく、3か月の平均が必要です。
- 雇用量が一定基準を超えて増加していないこと:中小企業は前年同期比で10%超かつ4人以上、大企業は5%超かつ6人以上増加していないことが要件です。
この3点を満たしていれば、おおむね対象となる可能性があります。ただし、詳細な要件は厚生労働省の公式ページや最寄りの都道府県労働局・ハローワークで必ず確認してください。
雇用調整助成金の制度概要——目的と助成対象
雇用調整助成金は、「景気変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業・教育訓練・出向)を実施することによって、その雇用する労働者の雇用の維持を図る場合に、当該事業主に対して助成を行う」制度です(厚生労働省資料より)。
ざっくり言えば「業況が悪化しても解雇ではなく休ませる・学ばせる・出向させる選択を取った事業主を国が支援する」制度です。
助成の対象となる3つの措置
| 措置の種類 | 内容 | 助成の対象 |
|---|---|---|
| 休業 | 従業員を一時的に休業させる(所定労働日に休ませる) | 支払った休業手当の一部 |
| 教育訓練 | 休業に代えて、または休業中に教育訓練を実施する | 賃金(訓練中の賃金)の一部+加算 |
| 出向 | 在籍したまま他社に出向させる(在籍型出向) | 出向に要する賃金の一部 |
3つの措置のうち最もよく使われるのが「休業」です。繁忙期・閑散期の差が激しい業種や、一時的な受注減に直面した製造業などで活用されています。
なお、業務改善助成金(最低賃金引上げ+設備投資が条件)とは目的が根本的に異なります。業務改善助成金について知りたい方は業務改善助成金×AI活用ガイドもあわせてご覧ください。
Step 1: 支給要件を満たすか事前チェック(申請前の準備)
申請の第一歩は、制度の要件を詳細に確認することです。主な要件は以下の5点です。
1. 雇用保険の適用事業主
雇用保険の適用事業所として届け出ていることが必要です。従業員を1人でも雇用していれば通常は適用事業所になります。
2. 事業活動の縮小(売上等が前年同期比10%以上減少)
最近3か月の月平均値が前年同期比で10%以上減少していることが要件です。売上高だけでなく生産量・出荷量などの指標でも判定できます。前年同期のデータが手元にあるか確認しておきましょう。
3. 雇用量の基準
雇用量が過度に増えていないことが確認されます。事業縮小にもかかわらず雇用を大幅に増やしている場合は要件を満たしません。
4. 休業等の実施
実際に休業・教育訓練・出向を実施することが必要です。計画を立てるだけでは助成されません。
5. 前回の対象期間終了から1年以上経過
過去に利用した場合は、前回の対象期間が終了してから1年以上経過していないと再申請できません。
これら5つの要件を満たしているか不明な場合は、申請前に必ず都道府県労働局・ハローワーク(厚生労働省の窓口案内)に相談することをお勧めします。社会保険労務士への相談も有効です。
Step 2: 休業等実施計画届を提出する(計画届フェーズ)
要件を確認したら、実際に休業等を実施する前に「休業等実施計画届」を所轄の労働局またはハローワークに提出します。
正直、ここが最初のハードルです。書類を作るのが面倒に感じる方も多いですが、計画届なしに休業を実施しても助成の対象にはなりません。必ず先に届け出てください。
主な記載事項
- 休業・教育訓練・出向の実施予定期間
- 対象となる事業所・労働者の範囲
- 休業の場合は休業手当の支払率(労働基準法第26条の休業手当相当額以上が必要)
- 教育訓練の場合は訓練内容・時間数
様式は厚生労働省の様式ダウンロードページから入手できます(様式第1号(1)が休業等実施計画届に当たります)。
Step 3: 休業・教育訓練・出向を実施する
計画届が受理されたら、計画に沿って実際に措置を実施します。
- 休業の場合:労働協約または就業規則に基づき、対象労働者を計画した日に休業させ、休業手当を支払います。
- 教育訓練の場合:訓練計画書に基づき、OFF-JT(職場外訓練)やOJTに準じた形で訓練を実施します。訓練の実施記録を残すことが重要です。
- 出向の場合:出向元・出向先の協定(三者協定)を締結し、在籍型出向として実施します。
この期間を「判定基礎期間」と呼びます。判定基礎期間ごとに実績を集計し、次のステップで支給申請を行います。
Step 4: 支給申請を行う
判定基礎期間(原則として賃金締切期間)が終わったら、期間の末日の翌日から2か月以内に支給申請を行います。この期限を逃すと受給できなくなるので注意してください。
申請方法
- 電子申請:雇用関係助成金ポータル(esop.mhlw.go.jp)からオンラインで申請できます。マイナンバーカードまたはGビズIDが必要です。
- 窓口・郵送申請:所轄の都道府県労働局またはハローワークに書類を持参または郵送します。
電子申請は24時間受付可能で、窓口まで出向く手間が省けます。今後の申請もあることを考えると、電子申請の準備を早めに整えておくのが得策です。
Step 5: 審査・支給決定・入金
申請書類が受理されると、労働局による審査が行われます。審査期間は申請の時期や混雑状況によって異なりますが、数週間から数か月かかることがあります。
審査が通ると「支給決定通知書」が届き、指定口座に助成金が振り込まれます。助成金はあくまでも後払いです。先に休業手当等を支払ってから申請する流れになるため、当面の資金繰りは別途手当てが必要な点を念頭においてください。
助成率と上限額の考え方(2026年度時点の通常制度)
助成率と上限額は年度・情勢によって変動します。以下は2026年(令和8年)4月時点の通常制度の概要です。必ず最新の公式情報を確認してください。
| 事業主区分 | 助成率(休業・教育訓練) | 1人1日あたり上限額(目安) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3(約66.7%) | 8,870円(2026年4月時点・要確認) |
| 大企業 | 1/2(50%) | 8,870円(同上) |
教育訓練を実施した場合は、休業に比べて加算額が上乗せされます(中小企業は1人1日あたり1,200円加算が設定されています)。また、教育訓練実施率が上がるほど助成率が段階的に変動する仕組みも存在します。
支給日数の上限は1年間で最大100日分、3年間で最大150日分です(出向は最長1年間の出向期間中ずっと対象)。
なお、「中小企業」の定義は資本金・出資額または常時雇用する労働者数で判断します。業種によって基準が異なるため、自社がどちらに当たるかは事前に確認が必要です。
上限額・助成率は改定されることがあります。申請前には必ず厚生労働省の雇用調整助成金ページで最新値を確認してください。
必要書類チェックリスト
申請の際には多くの書類が必要です。準備不足で申請が遅れると、支給申請の2か月期限に引っかかることもあります。早めに確認しておきましょう。
計画届提出時
- 休業等実施計画届(様式第1号(1))
- 労働組合または労働者代表との休業協定書(休業の場合)
- 教育訓練計画書(教育訓練の場合)
- 事業の縮小を証明する書類(売上帳票・生産量記録など)
支給申請時
- 雇用調整(休業等)支給申請書(様式第5号(1)・(2))
- 休業・教育訓練実績一覧表(様式第5号(3))
- 賃金台帳(判定基礎期間分)
- 出勤簿・タイムカード等の勤怠記録
- 休業手当の支払証明書類(振込明細等)
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(初回申請時)
様式はすべて厚生労働省の様式ダウンロードページから取得できます。ExcelとPDF両形式が用意されています。
「書類が多くてどこから手をつければ」という場合は、社会保険労務士(社労士)への相談を強くお勧めします。申請書類の確認・助言を受けることで見落としを防ぎやすくなります。
不正受給は絶対NG——リスクとペナルティの実態
コロナ禍での特例措置の際、不正受給が社会問題となりました。厚生労働省の公表資料によると、令和7年12月末時点で支給決定取消件数は4,557件、取消金額は約1,139億円にのぼります。
不正受給が発覚した場合のペナルティは極めて重大です。
不正受給時のペナルティ(厚生労働省公式情報)
- 返還請求:不正発生日を含む判定基礎期間以降の受給額全額
- 違約金:不正受給額の2割相当額を追加で徴収
- 延滞金:年3分の延滞金
- 受給制限:不正受給日から5年間、雇用関係助成金が一切受給できない
- 事業主名の公表:100万円以上の場合は原則として公表(社労士等が関与した場合は金額を問わず公表対象)
- 刑事告発:悪質な場合は詐欺罪等での刑事告発に至ることもある
「知らなかった」「担当者が勝手にやった」は通用しません。申請前に制度内容をよく理解し、事実に基づいた申請を心がけることが重要です。詳細は厚生労働省の不正受給ページをご確認ください。
他の助成金との違い——どれを使えばいい?
雇用関係の助成金は複数あり、「どれを選べばいいか」と迷う経営者・担当者は少なくありません。主な制度との違いを整理します。
| 制度名 | 主な目的 | 助成対象 | こんな時に使う |
|---|---|---|---|
| 雇用調整助成金 | 業況悪化時の雇用維持 | 休業手当・訓練賃金・出向賃金 | 売上が落ちて休業を実施する時 |
| 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース) | 在籍型出向でのスキルアップ | 出向中の賃金(復帰後の賃上げが条件) | スキルアップ目的の出向を行う時 |
| 人材開発支援助成金 | 従業員の能力開発・リスキリング | 訓練費用・賃金の一部 | AI・DX研修など能力開発を行う時 |
| 業務改善助成金 | 最低賃金引上げ+生産性向上 | 設備・機器・ソフトウェア等の導入費 | 賃上げと設備投資を同時に行う時 |
雇用調整助成金は「業況が悪化してやむを得ず休業させる」状況で使うものです。AI・DX研修といった能力開発が目的なら人材開発支援助成金のほうが適しています。申請ガイドの詳細は補助金申請書の書き方ガイドも参考にしてください。
AI・Claudeを活用した申請準備の効率化——補助的な使い方
雇用調整助成金の申請には多くの書類作成と情報整理が伴います。こういった準備作業に、AIツールを補助的に活用する企業が増えています。
AIが役立つ場面(あくまで補助)
- 書類の項目整理:「休業協定書に盛り込む項目は?」「様式第5号には何を書くのか」といった確認をClaude等のAIに問い合わせると、大まかな構成や記載例を素早く把握できます。
- 事業縮小の状況を文章化:売上減少の経緯・背景をAIに整理させることで、計画届の「事業の縮小内容」欄の下書きを効率的に作れます。
- スケジュール管理:計画届の提出期限・支給申請の2か月以内期限をAIのカレンダー連携で管理する活用例もあります。
- 要件の確認補助:「売上が前年比10%減未満だが対象になるか」「教育訓練の内容に制限はあるか」など疑問点の整理に使えます。ただし最終確認は公式サイト・専門家で行うことが必須です。
AIを使う際の大前提
AIが出力した情報はあくまでも参考情報です。助成金の可否・金額はAIが決めるものではありません。書類の最終確認・申請判断は、社会保険労務士等の専門家や労働局・ハローワークに必ず相談してください。AIは「調べ物の効率化」に使うものとお考えください。
AI研修・DX推進に活用できる他の助成金についてはGビズID・jGrants申請フロー完全解説もあわせてご参照ください。
よくある失敗パターン——実務でつまずきやすい4つのポイント
失敗1: 計画届を出す前に休業を実施してしまう
❌ 「とりあえず来週から休ませて、後で申請すればいいや」
⭕ 計画届を先に労働局・ハローワークに提出し、受理されてから休業を実施する
計画届なし・事後届は助成対象外です。「休業させてから気付いた」という事例が後を絶ちません。
失敗2: 休業手当の支払率が労基法の水準を下回っている
❌ 休業手当を「一律30%支払い」にしている
⭕ 労働基準法第26条の規定(平均賃金の60%以上)を満たす水準で支払う
法定水準を下回る休業手当は助成対象になりません。労使協定の内容も事前に確認が必要です。
失敗3: 賃金台帳・出勤簿の記録が不正確
❌ エクセルの手入力で日々更新しておらず、後からまとめて記入している
⭕ 休業させた日・実際に出勤した日を日次でリアルタイムに記録する
審査時に記録の信憑性を問われることがあります。タイムカードや打刻システムを活用してください。
失敗4: 支給申請の期限(2か月)を見落とす
❌ 「申請はいつでもできる」と思って後回しにし、期限超過する
⭕ 判定基礎期間が終わった翌日から2か月以内にカレンダーでリマインドを設定する
期限を過ぎると受給できません。多忙な中小企業では見落としが起きやすいので、スケジュール管理を徹底してください。
申請前に社労士への相談を検討してください
雇用調整助成金の申請手続きは、計画届の作成・賃金台帳の整備・支給申請書の記入と、多くの書類・手続きが絡み合います。初めて申請する企業にとっては負担が大きく、記載ミス・漏れによる不支給リスクもあります。
社会保険労務士(社労士)は雇用関係助成金の手続き全般についての専門家です。書類確認や手続きの流れの助言を得ることで、申請の精度を高めることができます。顧問社労士がいる場合は早めに相談し、いない場合は都道府県社会保険労務士会(各都道府県に設置)に問い合わせるとよいでしょう。
雇用調整助成金の活用シナリオ——業種別の考え方
実際にどのような場面で雇用調整助成金が活用されているのか、業種別の典型的なシナリオを見ておきましょう。
製造業:受注減・工場稼働率低下
自動車・電機などのサプライチェーンに組み込まれた中小製造業では、取引先の発注量が急減した場合に工場の稼働率が大幅に下がることがあります。そのような局面で、ラインを一時停止して従業員を休業させ、休業手当を支払う際に雇用調整助成金を活用する例があります。
休業中に品質管理・安全管理に関する社内研修を実施し、教育訓練加算を受けるケースも見られます。ただし、具体的な成果は事業主・従業員の状況によって異なります。
観光・宿泊業:繁閑差・外的ショック
旅館・ホテル・旅行代理店などの観光関連業では、大型連休と閑散期の差が大きい業種です。想定外の外的ショック(感染症の拡大、自然災害など)が発生した場合、急激な予約キャンセルで事業活動が大幅に縮小することがあります。
そのような場面で、接客スタッフを休業させながら接客マナー・外国語対応などの教育訓練を実施し、繁忙期に向けてスキルアップを図る活用法が考えられます。
小売業:消費動向の急変
店舗型の小売業では、近隣の大型施設閉鎖・競合の出店・経済的な景気後退などによって客数・売上が急減することがあります。売上が3か月連続で前年同期比10%以上減少した場合は要件に該当する可能性があります。
いずれの業種でも、「売上が下がったから使える」と安易に考えるのではなく、要件を正確に確認したうえで活用することが重要です。
まとめ——今日から取り組む3つのアクション
雇用調整助成金は、業況悪化時に従業員の雇用を守るための重要な制度です。使い方を間違えれば返還・ペナルティというリスクもありますが、要件を正確に理解して適切に申請すれば、経営の危機を乗り越える強力な支援になります。
- 今すぐ確認:厚生労働省の公式ページを開き、最新の要件・助成率・上限額を確認する。
- 今週中:直近3か月の売上・生産量データを前年同期と比較し、10%以上の減少があるか確認する。
- 今月中:顧問社労士または最寄りの都道府県労働局・ハローワークに相談し、申請の可否・手続きの流れを把握する。
雇用調整助成金以外の補助金・助成金の活用について相談したい場合は、お問い合わせフォーム(株式会社Uravation)からお気軽にどうぞ。AI研修・DX推進に絡んだ助成金活用のご相談も受け付けています。
参考・出典
- 雇用調整助成金|厚生労働省(参照日: 2026-06-08)
- 雇用調整助成金 様式ダウンロード|厚生労働省(参照日: 2026-06-08)
- 雇用調整助成金 不正受給|厚生労働省(参照日: 2026-06-08)
- 雇用関係助成金ポータル(電子申請)(参照日: 2026-06-08)
- 雇用関係助成金の申請にあたって|厚生労働省(参照日: 2026-06-08)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年6月8日時点の厚生労働省・各機関の公表資料に基づく参考情報です。雇用調整助成金の制度内容(助成率・上限額・対象要件等)は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式ページおよび最寄りの都道府県労働局・ハローワーク、社会保険労務士等の専門家で最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
