2026年4月7日、厚生労働省は人材開発支援助成金「教育訓練休暇等付与コース」の支給申請ルールを改正しました。これまでは有給の教育訓練休暇制度を導入してから丸3年が経過しないと助成金の申請ができませんでしたが、改正後は制度導入から6か月が経過していれば、3年を待たずに30万円の助成申請ができるようになっています。
社員に生成AIやデータ分析の外部講座を受けさせたいが、業務時間中に休ませる制度がなく踏み出せない――。そんな中小企業にとって、この改正は「休暇制度を作ってから助成金が振り込まれるまでの待ち時間」を大幅に縮める内容です。本記事では、何がどう変わったのか、AI・DX研修に使う場合の設計のコツ、そして見落としがちな注意点を整理します。
教育訓練休暇等付与コースとは何が変わったのか
教育訓練休暇等付与コースは、人材開発支援助成金の7つのコースのうちの1つで、「3年間に5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度」を新たに導入し、労働者が実際にその休暇を取得して訓練を受けた場合に、事業主へ30万円(賃金要件または資格等手当要件を満たす場合は36万円)を助成する制度です。人材育成支援コースや事業展開等リスキリング支援コースのような期限付きメニューではなく、常設のコースとして運用されています。
今回の改正は、この教育訓練休暇制度そのものの「支給申請ができるタイミング」に関するものです。厚生労働省の案内資料には次のように明記されています。
「これまで、支給申請期間については、制度導入・適用計画期間終了日(制度導入日から3年)の翌日から起算して2か月以内としていましたが、制度導入・適用計画期間中に支給要件を満たした場合には、制度導入日から3年を経る前であっても支給申請を行うことができることとしました。ただし、教育訓練休暇制度の定着及び活用を図る観点から、制度導入日から3年を経る前の支給申請については、制度導入日から起算して6か月を経過した日の翌日から行うことができるものとします」(厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース)のご案内(詳細版)」より)
つまり、「3年待ってから2か月以内に申請」という一本道だったルールに、「6か月経過後なら要件を満たした時点で申請できる」という選択肢が加わった形です。この案内資料は令和8年4月8日時点の内容として公表されています。
変更点まとめ|申請できる時期が「3年後」から「6か月後」に前倒し
| 項目 | 改正前(令和8年4月6日以前提出分) | 改正後(令和8年4月7日以降提出分) |
|---|---|---|
| 支給申請が可能になる時期 | 制度導入日から3年経過後、2か月以内のみ | 制度導入日から6か月経過後であれば、要件を満たした時点で申請可能 |
| 助成額 | 30万円(36万円) | 変更なし |
| 対象となる休暇制度 | 3年間で5日以上の有給教育訓練休暇制度 | 変更なし |
| 1事業主あたりの支給回数 | 1回限り | 変更なし |
| 適用対象 | ― | 令和8年4月7日以降に提出された制度導入・適用計画届 |
ポイントは、助成額や対象要件そのものは変わっていないという点です。変わったのは「いつ申請できるか」だけですが、実務上のインパクトは小さくありません。従来は3年間、休暇取得の実績を積み上げてから初めて助成金が入金される仕組みだったため、資金繰りの見通しが立てにくいという声が中小企業から上がっていました。今回の改正で、最短半年強で助成金を受け取れる可能性が出てきたことになります。
電子申請での手続きの流れは、様式一覧を先に押さえておくと迷いません。あわせて人材開発支援助成金 様式一覧&つまずきチェックリストも参考にしてください。
教育訓練休暇等付与コースの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 教育訓練休暇等付与コース(教育訓練休暇制度) |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 助成額 | 30万円(賃金要件または資格等手当要件を満たす場合は36万円) |
| 支給回数 | 1事業主につき1回限り |
| 対象事業主 | 雇用保険適用事業所の事業主(企業規模を問わず助成額は同一) |
| 主な要件 | 3年間で5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度を新たに導入し、労働者が実際に取得すること |
| 年度限度額 | 設定なし(人への投資促進コースの年間2,500万円上限とは別枠) |
| 申請方法 | 労働局への持参・郵送、または雇用関係助成金ポータルでの電子申請(要GビズID) |
| 直近の変更 | 令和8年4月7日、支給申請できる時期を短縮する改正を実施 |
電子申請にはGビズIDの取得が前提になります。まだ取得していない場合はGビズID取得ガイドを先に確認しておくとスムーズです。
対象となる有給休暇制度の要件
この助成金の対象になるには、次の条件を満たす有給教育訓練休暇制度を、就業規則または労働協約に新たに規定する必要があります。
- 3年間の間に、合計5日以上の休暇取得が可能な制度であること
- 取得した休暇が有給であること(無給の休暇制度は対象外)
- 労働者が実際にその休暇を取得し、教育訓練を受けたことが確認できること
- 制度導入・適用計画届を、休暇制度の運用開始前に管轄の労働局へ提出していること
ここで注意したいのが、「すでに教育訓練休暇制度(長期教育訓練休暇制度を含む)を導入済みの事業主は対象外」という点です。過去にキャリア形成促進助成金や人材開発支援助成金の教育訓練休暇制度・長期教育訓練休暇制度の助成を受けたことがある場合、同じ内容の制度を再度「新規導入」として申請することはできません。あくまで「これから初めて有給の教育訓練休暇制度を作る」企業向けの助成という位置づけです。
見落としがちな「長期教育訓練休暇制度」側の新設加算
今回の令和8年4月7日改正では、教育訓練休暇等付与コースとは別に、人への投資促進コースに位置づけられている「長期教育訓練休暇制度」(30日以上の長期休暇を対象とするメニュー)にも変更が加わっています。両者は名前が似ているため混同しやすいのですが、制度上は別物です。
長期教育訓練休暇制度は、有給の長期教育訓練休暇(30日以上)取得者の代替要員として新規採用や派遣受入を行った場合、または周囲の労働者に業務を代替させて職務代行手当を支払った場合の助成が新設されました(中小企業事業主のみが対象です)。
| 休暇の長さ | 新規採用・派遣受入の助成額 |
|---|---|
| 30日以上90日未満 | 27万円 |
| 90日以上180日未満 | 45万円 |
| 180日以上 | 67万5千円 |
職務代行手当を支払った場合は、その手当額の75%(月16万円が上限)が助成されます。ただし、長期教育訓練休暇制度は人への投資促進コースの枠組みに位置づけられており、人への投資促進コース自体は令和4年度から令和8年度までの期間限定措置とされています。令和9年度以降にこのメニューがどう扱われるかは、本稿執筆時点(2026年7月)では厚生労働省から明示されていません。長期休暇制度の活用を検討している場合は、早めに労働局へ相談しておくのが無難です。
AI・DX研修の活用事例をもう少し具体的に知りたい方は、人材開発支援助成金「人への投資促進コース」AI・DX研修 活用事例3選もあわせてご覧ください。
AI・DX研修に使うなら|有給教育訓練休暇をこう設計する
教育訓練休暇等付与コースは「休暇制度を作ること」自体が助成対象であり、特定の研修費用を助成するわけではありません。そのため、休暇中にどんな訓練を受けさせるかは会社の裁量に委ねられています。AI活用を社内に広げたい会社であれば、次のような組み合わせが考えられます。
- 生成AI活用実践講座――外部研修機関が提供する業務プロンプト設計やAIツール活用のeラーニングを、休暇中に受講させる
- G検定・E資格などのAI関連資格取得講座――資格取得を目標にした通信講座を、有給休暇を使って計画的に受講させる
- DX推進リーダー育成セミナー――外部の社外セミナーやワークショップに、業務を離れて参加させる
正直なところ、この助成金だけでAI研修費用そのものが戻ってくるわけではありません。研修費用の助成を狙うなら、別枠の人材育成支援コースや人への投資促進コースと組み合わせる必要があります。教育訓練休暇等付与コースは、あくまで「学ぶための時間を業務扱いで確保する」ための制度だと理解しておくと使い方を誤りません。
申請から支給までの流れ(改正後版)
- Step 1: 職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定――研修・人事担当の課長級を推進者に選び、社内の能力開発計画を策定・周知します。
- Step 2: 有給教育訓練休暇制度の規定――就業規則または労働協約に、3年間で5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度を新たに定めます。
- Step 3: 制度導入・適用計画届の提出――休暇制度の運用を始める前に、管轄の労働局へ計画届を提出します。
- Step 4: 休暇取得と訓練の実施――労働者が実際に休暇を取得し、外部の教育訓練を受講します。取得記録や受講証明は必ず残しておきます。
- Step 5: 6か月経過後の支給申請――制度導入日から6か月が経過し、支給要件を満たしていれば、3年を待たずに支給申請書を提出できます(改正前は3年経過後のみ)。
- Step 6: 審査・支給決定――労働局による書類審査を経て、要件を満たしていれば30万円(該当条件を満たせば36万円)が支給されます。
【要注意】よくある不備と対策
不備1: 既に休暇制度がある会社が「新規導入」で申請してしまう
❌ 数年前から無給の教育訓練休暇制度を運用しているが、有給に変えただけで「新規導入」として申請する
⭕ 過去に教育訓練休暇制度(有給・無給問わず)を導入済みの場合は原則対象外。申請前に労働局へ該当性を確認する
不備2: 計画届の提出が休暇取得より後になる
❌ 社員に休暇を取得させてから、事後的に制度導入・適用計画届を提出する
⭕ 休暇制度の運用開始前に計画届を提出することが大前提。順序を間違えると不支給の対象になる
不備3: 改正後のルールを、旧ルール適用の計画届に当てはめてしまう
❌ 令和8年4月7日より前に提出した計画届について、6か月経過時点で早期申請しようとする
⭕ 今回の改正は令和8年4月7日以降に提出された計画届が対象。それより前に提出済みの場合は、従来どおり3年経過後の申請になる
不備4: 6か月経過前に支給申請してしまう
❌ 制度導入からまだ3か月しか経っていない段階で、要件を満たしたからと支給申請を出す
⭕ 改正後も「制度導入日から6か月経過した日の翌日」以降でなければ申請できない。休暇取得の実績づくりと並行してスケジュールを管理する
よくある質問(FAQ)
Q1. 教育訓練休暇等付与コースとは何ですか?
有給の教育訓練休暇制度(3年間で5日以上取得可能)を新たに導入し、労働者が実際に休暇を取得して訓練を受けた場合に、事業主へ30万円(条件を満たせば36万円)が支給される人材開発支援助成金のコースです。1事業主につき1回限りの支給になります。
Q2. いつから新しいルールが適用されますか?
令和8年4月7日に厚生労働省が改正を行いました。同日以降に提出された制度導入・適用計画届が対象です。それより前に計画届を提出している場合は、従来どおり制度導入日から3年経過後の申請になります。
Q3. すでに教育訓練休暇制度を導入している会社は対象になりますか?
原則として対象外です。この助成金は「新たに」有給の教育訓練休暇制度を導入する事業主を対象としているため、既に同種の制度(長期教育訓練休暇制度を含む)を導入済みの場合は申請できません。
Q4. AI研修にも使えますか?
この助成金自体は休暇制度の導入に対する助成であり、研修費用そのものを助成するものではありません。ただし、確保した休暇時間を使って生成AI活用講座や資格取得講座を受講させることは可能です。研修費用の助成を併せて受けたい場合は、人材育成支援コースなど別のコースの活用を検討してください。
Q5. 電子申請はできますか?
可能です。人材開発支援助成金は2023年6月から雇用関係助成金ポータルでの電子申請に対応しています。電子申請にはGビズIDの取得が必要で、社会保険労務士や代理人による代行申請にも対応しています。紙の申請も引き続き利用できます。
Q6. 「人への投資促進コース」の長期教育訓練休暇制度とは何が違いますか?
教育訓練休暇等付与コースは3年間で5日以上の短期の休暇制度が対象で、常設のコースです。一方、長期教育訓練休暇制度は30日以上の長期休暇が対象で、人への投資促進コース(令和4〜8年度の期間限定措置)に位置づけられています。名称が似ていますが、対象となる休暇の長さも、コースの位置づけも異なります。
まとめ|今すぐ確認しておきたいこと
- 今日やること:自社に有給の教育訓練休暇制度がすでにあるかどうかを確認する。なければ、対象になる可能性がある
- 今週中:就業規則の改定案を作り、3年間で5日以上取得できる有給教育訓練休暇制度の条文を検討する
- 今月中:管轄の労働局または社会保険労務士に相談し、制度導入・適用計画届の提出スケジュールを組む
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
参考・出典
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース)のご案内(詳細版)」(令和8年4月8日現在、参照日: 2026-07-08)
- 厚生労働省 人材開発支援助成金(制度一覧トップページ)(参照日: 2026-07-08)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)」(令和8年5月14日版、参照日: 2026-07-08)
- 雇用関係助成金ポータル(電子申請)(参照日: 2026-07-08)
免責事項
本記事の情報は2026年7月8日時点の厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。助成金・補助金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトおよび管轄の労働局で最新の支給要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。AI導入の計画策定でお悩みの場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
