介護ロボット1機器あたり最大30万円(移乗・入浴支援型は100万円)、ICT導入は職員規模に応じて最大250万円——そんな補助が受けられる「介護テクノロジー導入支援事業」を、令和8年度時点でまだ申請していない介護事業所は少なくありません。制度の存在は知っていても「申請先が分からない」「補助額の計算が難しい」と感じて足踏みしているケースがほとんどです。
この記事では、補助額の早見表から申請の流れ、よくある誤解まで順を追って解説します。最初に押さえておくべき最重要ポイントは「申請先は厚生労働省ではなく都道府県」という点。この誤解が最も申請機会を逃させています。
介護テクノロジー導入支援事業 補助額早見表
制度の全体像を把握する前に、まず補助額の実数を確認しましょう。
介護ロボット 補助上限(1機器あたり)
| 機器区分 | 補助上限額 | 主な対象機器 |
|---|---|---|
| 移乗支援・入浴支援型 | 100万円 | 電動リフト、介護浴槽昇降装置、移乗アシストスーツ(重介護型) |
| その他の機器全般 | 30万円 | 見守りセンサー、コミュニケーションロボット、排泄支援機器 |
ICT導入 補助上限(職員規模別)
| 職員規模 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1〜10人 | 100万円 |
| 11〜20人 | 160万円 |
| 21〜30人 | 200万円 |
| 31人以上 | 250万円 |
※都道府県によって上限額・補助率が異なる場合があります。最終的な補助額は各都道府県の公募要領でご確認ください。
※本事業の補助率は原則として対象経費の3/4以内です(都道府県によって4/5に引き上げている地域あり)。
補助金制度の選択に迷う場合は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてください。
この制度の正体——「国→都道府県→事業所」の3層構造
介護テクノロジー導入支援事業の財源は地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)です。厚生労働省が都道府県に基金を交付し、都道府県が介護事業所に補助する、という3層構造になっています。
これが「申請先は都道府県」である理由です。jGrantsや中小企業庁には本事業の申請窓口はありません。
| レイヤー | 役割 | 補助負担割合 |
|---|---|---|
| 国(厚生労働省) | 基金を都道府県へ交付 | 基金の2/3を負担 |
| 都道府県 | 事業所への補助金を管理・執行 | 基金の1/3を負担 |
| 介護事業所 | 機器・ICTを導入し補助を受ける | 補助対象経費の1/4〜(自己負担分) |
この構造のため、公募時期・申請書類・選考方法はすべて都道府県が独自に決めています。東京都と大阪府では書類の様式から締切日まで異なります。まず自分の事業所がある都道府県の担当課へ問い合わせることが、最初のアクションです。
詳しい申請フロー全般はGビズID・jGrants申請フロー完全ガイドも合わせて参照ください(本事業はjGrants不要ですが、他の補助金との比較に役立ちます)。
対象機器の具体例——AI・IoTで現場が変わる
本事業では「介護テクノロジー」として、ロボットとICTの両方が補助対象です。
介護ロボット(主な対象機器)
厚生労働省が定める「重点分野」に含まれる機器が補助対象になります(介護ロボットの開発・普及の促進|厚生労働省参照)。
- 移乗支援:電動昇降リフト、パワーアシストスーツ(装着型)
- 移動支援:自動走行型の車いす・歩行アシスト機器
- 排泄支援:自動排泄処理装置、排泄予測センサー
- 入浴支援:昇降式浴槽、入浴ストレッチャー(電動型)
- 見守り・コミュニケーション:センサーマット、スマートスピーカー型ロボット、夜間見守りカメラ(AIによる異常検知付き)
- 介護業務支援:音声入力・バイタル自動記録機器
AI・IoT機能を内蔵した見守りセンサー(夜間の離床検知・呼吸数モニタリング等)も「見守り分野」として補助対象になります。DX文脈でのAI導入として活用できる有力な選択肢です。
ICT(介護ソフト・連携機器)
- 介護記録ソフト(クラウド型)
- ケアプラン作成システム
- シフト管理・請求業務ソフト
- インカム・タブレット等の通信機器(ソフト導入と連携する場合)
正直なところ、「どこまでが補助対象か」の判断は都道府県・機器メーカーの担当者でも迷うケースがあります。機器選定前に都道府県の担当課へ個別相談することを強くおすすめします。
申請の流れ——都道府県窓口が起点
Step 1: 都道府県の公募開始を確認(時期は都道府県次第)
公募時期は都道府県ごとに異なります。毎年4月〜6月頃に公募が始まる都道府県が多いですが、年度内に複数回募集する地域もあります。自事業所の所在地の都道府県の「介護保険課」や「高齢者対策課」のWebサイトを定期的に確認しましょう。
Step 2: 導入計画の策定(2〜4週間)
導入する機器・ソフトを選定し、費用見積もりを取ります。補助対象経費かどうかは、都道府県が指定している機器リストや補助金参考資料で確認します。
ポイント: まず「交付決定」を受けてから機器を発注・購入すること。交付決定前の購入は原則として補助対象外です。
Step 3: 申請書類の準備・提出
都道府県所定の様式で申請します。主な書類は以下の通りです。
- 介護サービス事業所・施設の指定通知書の写し
- 導入計画書(導入目的・課題・期待効果)
- 経費内訳・見積書
- 法人の登記事項証明書・印鑑証明書(法人の場合)
Step 4: 審査・採択通知
都道府県による書類審査を経て、採択・不採択が通知されます。採択されても「交付決定通知」が来るまで発注してはいけない点に注意してください。
Step 5: 機器購入・導入実施
交付決定通知を受け取ったら、機器の発注・契約・導入を進めます。実施期間は都道府県の定める期間内に完了させる必要があります。
Step 6: 実績報告・補助金受取
事業完了後に実績報告書を提出します。審査を経て補助金が交付されます(後払い)。
Step 7: 効果測定・報告(場合により)
一部の都道府県では、導入後の効果測定報告を求めるケースがあります。職員の業務時間削減や介護負担軽減の数値を記録しておくとよいでしょう。
AI研修との組み合わせ——ICT導入後の活用力が差を生む
ICTを導入しても「使いこなせていない」という悩みは介護現場でよく聞きます。介護ソフトの機能を使い切れず、紙記録と並行して作業している事業所も少なくありません。
こうした課題には、厚生労働省の人材開発支援助成金(人への投資促進コース)を活用して、職員へのICT・AI活用研修を実施することが有効です。介護ソフトの操作研修から、AIを使った業務改善まで、幅広い研修が補助対象になります。
→ 人材開発支援助成金×AI研修 申請ガイド2026年度版で詳しく解説しています。
よくある失敗——この3パターンで補助金を逃す
失敗1: 交付決定前に機器を購入してしまう
❌ 採択通知が届いた当日に業者へ発注する
⭕ 「交付決定通知書」が届いてから初めて発注・契約する
採択通知と交付決定通知は別物です。「採択されたからもう大丈夫」と判断して購入すると、補助対象外になる可能性があります。書類の文言を必ず確認してください。
失敗2: 都道府県の公募期間を見逃す
❌ 年に1回しか確認しない
⭕ 担当課のWebページをブックマークして月1回確認する、または担当者に名刺を渡して案内メールを依頼する
公募期間が2〜3週間と短い都道府県もあります。気づいた時には締切済みというケースが多発しています。
失敗3: 補助対象外の機器を前提に計画する
❌ 汎用タブレット(介護ソフトと連携しない単独利用)を補助対象として計算する
⭕ 都道府県の担当課に事前相談して補助対象か確認してから計画を立てる
厚労省が示す「重点分野」の定義は令和7年4月以降に改訂されています(介護テクノロジーの利用促進|厚生労働省)。新しい機器・新しい機能については、事前確認が必須です。
本事業とIT導入補助金の使い分け
「IT導入補助金(中小企業庁)と何が違うの?」という質問をよく受けます。大きな違いは以下の通りです。
| 比較項目 | 介護テクノロジー導入支援事業 | IT導入補助金 |
|---|---|---|
| 対象事業者 | 介護サービス事業所・施設 | 中小企業全般(介護も含む) |
| 補助対象 | 介護ロボット・介護ICT | ITツール全般(業種不問) |
| 申請窓口 | 都道府県 | IT導入補助金事務局(全国共通) |
| 最大補助額 | ICTで最大250万円、ロボットは100万円/台 | 450万円(デジタル化基盤導入類型) |
| 補助率 | 最大3/4〜4/5 | 最大2/3〜3/4 |
| GビズID | 不要(都道府県独自様式) | 必要(jGrants経由) |
介護事業所の場合、ICTソフト導入は「介護テクノロジー導入支援事業」が補助率・手続きの手軽さともに有利なケースが多いです。ただし都道府県の公募が終わっている場合は、IT導入補助金での申請も検討してください。
参考・出典
- 介護テクノロジーの利用促進|厚生労働省(参照日: 2026-06-13)
- 介護ロボットの開発・普及の促進|厚生労働省(参照日: 2026-06-13)
- 介護テクノロジー導入支援事業の概要(PDF)|厚生労働省(参照日: 2026-06-13)
AI導入の計画策定や、どの補助金が自社に合うか分からない場合は、お気軽にご相談ください。
→ お問い合わせフォーム(株式会社Uravation)
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著者・監修情報
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
監修: 佐藤 傑(株式会社Uravation 代表取締役)
100社以上のAI研修・導入支援実績をもとに、中小企業・介護事業所のAI活用×補助金申請をサポートしています。
免責事項
本記事の情報は2026年6月13日時点の厚生労働省・各都道府県の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。都道府県によって補助率・上限額・公募時期が異なります。申請にあたっては、必ず各都道府県の担当窓口および厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
