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中退共の掛金助成金はいくら?新規加入で最大6万円【2026年9月】

中退共の掛金助成金はいくら?新規加入で最大6万円【2026年9月】

この記事の結論

中退共の掛金助成は新規加入掛金助成と掛金月額変更掛金助成の2種類。掛金月額の2分の1(1人上限5,000円)が加入4か月目から1年間、上限なら合計6万円。申請書は不要で追加加入は原則対象外。2026年9月時点の公式値。

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2026年9月時点で、中退共(中小企業退職金共済制度)の掛金助成は「新規加入掛金助成」と「掛金月額変更掛金助成」の2種類だけです。新規加入では掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)が加入後4か月目から1年間、掛金から控除されます。上限いっぱいの場合、従業員1人あたり合計6万円になります。

先に答え|いくら・いつから・誰が対象か(2026年9月24日に中退共・厚生労働省の公式ページで確認した値)

問い 答え
いくら 掛金月額の2分の1。従業員ごとに月5,000円が上限。上限いっぱいなら1人あたり合計6万円
いつから・いつまで 中退共制度に加入した4か月目から1年間(合計12か月)
誰が対象 初めて中退共制度に加入する中小事業主。同居の親族のみを雇用する事業主など6類型は対象外
申請書 不要。「別途、助成の申請手続きは必要ありません」(中退共Q&A 1-2-1-2)
受け取り方 現金の振込ではなく、掛金月額から助成額を控除した額が口座振替される方式
もう1つの助成 掛金月額18,000円以下からの増額なら、増額分の3分の1を増額月から1年間

つまずきやすいのは次の3点です。(1) すでに加入済みの会社が新しく採用した人を追加加入させても、その人に新規加入掛金助成は付きません。(2) 月額変更助成の「増額前の掛金月額」は、今の額ではなく過去に納付した最も高かった額で判定されます。(3) 20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象になりません。

退職金制度がない中小企業に勤める従業員は、大企業と比べて老後の備えで大きく差がつく。そこで国が用意したのが中小企業退職金共済制度(中退共)だ。運営しているのは独立行政法人 勤労者退職金共済機構で、掛金助成の根拠は中小企業退職金共済法にある。

対象は業種を問わずほぼすべての中小企業。掛金は全額事業主負担で、受け取るのは従業員という仕組みのため、人材定着の打ち手として検討したい制度だ。本記事では、助成の金額と期間、落とし穴になりやすい追加加入と月額変更、自治体の独自助成、会計処理までを公式資料の記載に沿って整理する。

中退共の掛金助成はいくらか|2種類の助成額と期間

国の掛金助成は次の2つだけだ。厚生労働省のリーフレットでは、それぞれ「新規加入掛金助成」「掛金月額変更掛金助成」という名称が使われている(中退共のサイトでは月額変更助成と略記されている)。

助成の種類 助成額 期間 対象となる措置
新規加入掛金助成 掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)。短時間労働者の特例掛金月額なら300〜500円を上乗せ 加入後4か月目から1年間 事業主が新たに中退共制度に加入し、掛金を納付すること
掛金月額変更掛金助成 増額分(増額前と増額後の差額)の3分の1。10円未満は切り捨て 増額した月から1年間 掛金月額を増額変更すること(増額前の掛金月額が18,000円以下の場合に限る)

出典:厚生労働省「一般の中小企業退職金共済制度に係る掛金助成」リーフレット(2024年3月版)および中退共「制度の特色」。

中退共の国の掛金助成2種類の比較。新規加入掛金助成は掛金月額の2分の1(上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、掛金月額変更掛金助成は増額分の3分の1を増額した月から1年間。どちらも掛金から助成額を控除した額が口座振替される
国の掛金助成は2種類だけ

受け取り方の理解を間違えると、経理の処理でつまずく。中退共のQ&Aはこう書いている。

掛金助成は、助成金を支給する方法でなく、掛金から助成金を免除する方法により行われます。その間は、掛金月額から助成額を控除した額が口座振替されることとなります。
—— 中退共Q&A 1-2-1

つまり、通帳に「助成金」という入金が立つことはない。引き落とされる額が減るだけだ。ここは後半の会計処理でもう一度触れる。


新規加入掛金助成|掛金月額別の助成額早見表

助成額は「掛金月額の2分の1、ただし5,000円まで」で決まる。掛金月額を10,000円以上に設定すれば、どの金額でも助成額は月5,000円で頭打ちになる。

掛金月額 月あたりの助成額 12か月の合計
5,000円 2,500円 30,000円
6,000円 3,000円 36,000円
7,000円 3,500円 42,000円
8,000円 4,000円 48,000円
9,000円 4,500円 54,000円
10,000円〜30,000円 5,000円(上限) 60,000円

たとえば掛金を月10,000円に設定した従業員なら、加入後4か月目から12回にわたって、口座振替される額は5,000円になる。「1人あたり最大6万円」という言い方は、この5,000円×12か月の合計を指している。

短時間労働者の特例掛金月額には上乗せがある

1週間の所定労働時間が、同じ事業所の通常の従業員より短く、かつ30時間未満の従業員は、通常の16種類に加えて2,000円・3,000円・4,000円の特例掛金月額を選べる。この特例掛金月額(4,000円以下)で加入させた場合、2分の1の助成に次の額が上乗せされる。

掛金月額 2分の1の助成 特例の上乗せ 月の合計 12か月の合計
2,000円 1,000円 300円 1,300円 15,600円
3,000円 1,500円 400円 1,900円 22,800円
4,000円 2,000円 500円 2,500円 30,000円

パートスタッフが多い飲食業・小売業では押さえておきたい特例だ。申込時に短時間労働者であることの証明書(「労働条件通知書(雇入通知書)」または「労働契約書」の写し)が必要になる。助成期間は通常の従業員と同じく加入後4か月目から1年間。

新規加入掛金助成の助成額。通常の掛金月額は5,000円から9,000円が2分の1、10,000円以上は月5,000円が上限。短時間労働者の特例掛金月額2,000円・3,000円・4,000円には300円・400円・500円が上乗せされ、助成は加入後4か月目から1年間
助成額は月5,000円で頭打ちになる

新規加入掛金助成の対象にならない事業主

中退共「制度の特色」には、次に該当する事業主は新規加入助成の対象にならないと明記されている。

  • 同居の親族のみを雇用する事業主
  • 社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主
  • 適格退職年金制度から移行してきた事業主
  • 解散存続厚生年金基金から資産移換の申出を希望する事業主
  • 特定退職金共済事業を廃止した団体から資産引渡の申出を行う事業主
  • 合併等に伴い企業年金から資産移換の申出を行う事業主
  • 合併等をした日以後に、企業年金への資産移換を目的として初めて退職金共済契約を締結し、被共済者全員が資産移換のための契約解除をする事業主

厚生労働省のリーフレットは、これに加えて対象事業主の要件として「初めて中退共制度に加入する事業主であること」を挙げている。ここが、次の「追加加入」の話につながる。

掛金月額変更掛金助成|18,000円以下からの増額が対象

勤続年数が長くなったタイミングで掛金を増額する際にも助成がある。ただし条件が細かい。

項目 内容
助成額 増額分(増額前と増額後の掛金月額の差額)の3分の1。10円未満の端数は切り捨て
助成期間 増額した月から1年間
対象 掛金月額18,000円以下からの増額
対象外 20,000円以上の掛金月額からの増額/同居の親族のみを雇用する事業主
打ち切り 助成期間内(12か月)に掛金月額を減額した場合
助成期間中の再増額 前の月額変更助成は中止され、新しい月額変更助成が対象になる

たとえば月10,000円から月16,000円へ増額した場合、増額分6,000円の3分の1にあたる2,000円が1年間、掛金から控除される。

掛金月額変更掛金助成の判定フロー。増額前の掛金月額が18,000円以下なら増額分の3分の1を1年間、20,000円以上からの増額は対象外。増額前の掛金月額は過去に納付した最も高かった額で判定する
月額変更助成は18,000円以下からの増額が対象

見落とされやすい「増額前の掛金月額」の定義

ここが実務で一番危ない。中退共Q&Aの注記には、こう書かれている。

増額前の掛金月額とは、過去に納付した最も高かった掛金月額です。
—— 中退共Q&A 1-2-1(注1)

読み飛ばしやすいが、意味は重い。たとえば一度20,000円まで上げた後、事情があって10,000円に減額し、あらためて16,000円へ増額したとする。現在の掛金月額だけを見れば「10,000円からの増額」なので対象に見える。しかし判定に使うのは過去の最高額である20,000円のほうなので、助成の対象にならない。「いったん下げて、また上げれば助成が付く」という運用はできない仕組みだ。

正直なところ、この注記は中退共のQ&Aと「制度の特色」ページの脚注にしか書かれていない。増額を検討する段階で、過去の納付履歴のうち最も高かった掛金月額を確認しておきたい。

追加加入した従業員に掛金助成は付くのか

「中退共 追加加入 助成金」で調べている方が多いので、ここは公式の原文をそのまま引く。答えは原則として付かないだ。

既に加入している企業が、新たに採用した従業員を追加して加入させた場合の掛金助成はありません。なお、新規加入による助成期間中に新たに従業員を追加加入された場合は、残っている助成期間については助成の対象となります。
—— 中退共Q&A 1-2-2

追加加入と新規加入掛金助成の関係。初めて加入し在籍者を加入させる場合は4か月目から12か月が対象、加入から3年後に採用した人の追加加入は対象外、加入して5か月目の追加加入は会社の助成期間の残りが対象
追加加入に新規加入助成は付かない

整理すると次のとおり。

状況 新規加入掛金助成
初めて中退共に加入し、そのとき在籍している従業員を加入させる 対象(4か月目から12か月)
加入から3年後に採用した人を追加加入させる 対象外
加入して5か月目に採用した人を追加加入させる 会社の助成期間の残り(この例では残り約8か月分)が対象

助成の起点は「会社が中退共に入った月」であって、「その従業員が加入した月」ではない、と理解しておくと間違えにくい。採用が続く見込みなら、加入のタイミングそのものを検討する価値がある。

「中退共 補助金」で調べている方へ|自治体・事業主団体の独自助成

国の掛金助成とは別に、中退共に加入している事業所へ独自の補助を出している自治体や事業主団体がある。中退共はこれを「掛金助成自治体等」と呼び、一覧を公開している。

国からの掛金助成制度のほかに、中退共加入企業に対し独自で掛金助成を行っている自治体や事業主団体(掛金助成自治体等)があります。
—— 中退共Q&A 1-2-3

2026年9月24日に一覧ページを確認したところ、掲載基準日は令和8年8月現在で、47都道府県あわせて254件が掲載されていた。件数には地域差が大きい。

掲載件数が多い都道府県 件数
長野県 38件
神奈川県 20件
埼玉県 19件
群馬県 18件
山口県 17件
愛知県 15件
静岡県 14件
宮崎県・千葉県 各13件

一方で、掲載が0件の府県も18ある(佐賀・熊本・鳥取・島根・岡山・広島・新潟・山梨・徳島・香川・愛媛・高知・京都・和歌山・青森・宮城・山形・福島)。なお中退共のページには「ホームページへ掲載することにご了承いただいた掛金助成自治体等のみ掲載しています」と注記があるため、0件イコール制度なしとは限らない。自社の市区町村の商工担当課に直接聞くのが確実だ。

補助の条件・金額・交付期間は実施先ごとに異なる。中退共も「各実施先の担当までお問い合わせください」と案内しているので、金額をこの記事で断定することはしない。倒産防止を目的とした別の共済制度については経営セーフティ共済の注意点をまとめた記事も参考にしてほしい。

掛金月額は16種類・上限30,000円|助成の上限5,000円との違い

「中退共 掛金 上限」という調べ方には2つの意味がある。混同されやすいので分けて書く。

何の上限か 金額
設定できる掛金月額の上限 30,000円(短時間労働者の特例を含めても、上限は同じ30,000円)
新規加入掛金助成の上限 従業員ごとに月5,000円

掛金月額の種類は次の16種類で、従業員ごとに任意に選べる。

5,000円/6,000円/7,000円/8,000円/9,000円/10,000円/12,000円/14,000円/16,000円/18,000円/20,000円/22,000円/24,000円/26,000円/28,000円/30,000円

短時間労働者は、これに加えて2,000円・3,000円・4,000円の特例掛金月額でも加入できる。掛金は毎月、事業主が指定した金融機関の口座から当月または翌月の18日(金融機関の休業日なら翌営業日)に振り替えられる。中退共は「掛金の一部でも従業員に負担させることはできません」と明記している。

掛金の目安は「勤続年数ごとに退職金をいくら積み立てたいか」から逆算するのが現実的だ。中退共の公式サイトには退職金試算(シミュレーター)があり、掛金月額と納付月数から受取額を試算できる。

中退共に加入できる企業と従業員(包括加入の原則)

加入できるのは、次の規模基準のいずれかを満たす中小企業だ。個人企業や公益法人等の場合は、常時雇用する従業員数で判定する。

業種 常時雇用する従業員数 資本金・出資金
一般業種(製造業・建設業等) 300人以下 または 3億円以下
卸売業 100人以下 または 1億円以下
サービス業 100人以下 または 5,000万円以下
小売業 50人以下 または 5,000万円以下

「常時雇用する従業員」とは、1週間の所定労働時間が同じ企業の通常の従業員とおおむね同等である者で、雇用期間の定めのない者、または雇用期間が2か月を超えて使用される者を含む。

新規加入の際、常時雇用する従業員数が一般業種250人・卸売業およびサービス業90人・小売業40人以上の場合は「中小企業者であることの証明」が必要になる。会社法に基づき設立された営利法人は、資本金等の額が中小企業の範囲内であることを証する登記簿謄本等で代えられる。

従業員は原則として全員加入(包括加入の原則)

中退共は「加入する場合は、その事業主が雇用する従業員全員を加入させることが原則」としている。これを包括加入の原則という。ただし次の従業員は原則から除外される。

  • 期間を定めて雇用される従業員
  • 季節的業務に雇用される従業員
  • 試用期間中の従業員
  • 短時間労働者
  • 休職期間中の者およびこれに準ずる従業員
  • 相当の期間内に雇用関係の終了することが明らかな従業員
  • 加入することに反対の意思を表明した従業員

「気に入った従業員だけを加入させる」という運用はできない。なお、中退共制度に加入している方、特定業種(建設業・清酒製造業・林業)退職金共済制度に加入している方、小規模企業共済制度に加入している方は加入できない。

申請から助成開始まで|助成の申請書は無い

ここまで読んで「で、助成金の申請書はどこからダウンロードするのか」と探している方がいるかもしれない。答えは、そういう書類は無い。

掛金助成は、加入申込後に掛金月額から助成額を控除した額が口座振替されますので、別途、助成の申請手続きは必要ありません。
—— 中退共Q&A 1-2-1-2

やることは中退共への加入手続きそのものだ。掛金月額変更掛金助成のほうも同様で、厚生労働省のリーフレットの「受給手続」には「(独)勤労者退職金共済機構に掛金月額を増額する申出を行ってください」とあるだけだ。手順は次のとおり。

中退共の加入から助成開始までの5段の流れ。退職金共済契約申込書を入手、従業員の同意と掛金月額の決定、申込書と預金口座振替依頼書を提出、共済手帳の交付、4か月目から助成額を控除した額が振替。助成の申請書は無い
やることは加入手続きだけ

ステップ1: 退職金共済契約申込書を入手する(所要:1〜3日)

申込書は、金融機関(ゆうちょ銀行・農協・漁協・ネット銀行・外資系銀行を除く)または委託事業主団体(商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、青色申告会、労働保険事務組合、労働基準協会、税理士協同組合など)の窓口にある。中退共本部・相談センター室(東京・池袋)の窓口、郵送での取り寄せ、公式サイトのPDF書式のダウンロードでも入手できる。

中退共は最新の様式(表紙の右下に「様式1-○(2026.04)」とあるもの)の使用を求めている。2011年1月以降の旧様式も使えるが、不足事項を補うために追加の書類を求められることがある。

ステップ2: 従業員の同意を取り、掛金月額を決める

加入させる従業員の同意を取る。包括加入の原則があるため、除外要件に当たらない従業員は全員が対象になる。そのうえで従業員ごとの掛金月額を16種類(短時間労働者は特例3種類を含む)から決める。

ステップ3: 申込書と預金口座振替依頼書を記入・提出する

新規加入で必要な書類は「退職金共済契約申込書(新規用)」と「預金口座振替依頼書」。短時間労働者の特例掛金月額を使う場合は、労働条件通知書または労働契約書の写しを添える。規模が大きい場合は「中小企業者であることの証明」も必要だ。

ステップ4: 共済手帳の交付を受ける

書類の確認が済むと、従業員ごとの共済手帳が事業主に届く。この時点で正式な加入となる。

ステップ5: 口座振替が始まり、4か月目から助成分が控除される

登録した口座から毎月、当月または翌月の18日に掛金が振り替えられる。加入後4か月目からは、助成額を控除した額が振り替えられる。控除は自動で、事業主側の手続きは無い。

ステップ6: 12か月後に助成期間が終わる

1年間の助成期間が終わると、設定した掛金月額がそのまま振り替えられるようになる。金額が変わるタイミングなので、資金繰りの予定表に入れておきたい。

掛金助成の会計処理|仕訳と税法上の取扱い

「中退共 助成金 仕訳」「勘定科目」で調べる方が多いので、公式に書かれている範囲を整理する。

まず前提として、掛金助成は入金ではなく控除だ。中退共Q&A 1-2-1が「助成金を支給する方法でなく、掛金から助成金を免除する方法により行われます」と明記しているとおり、助成期間中は減額された額だけが口座から引き落とされる。したがって、雑収入として別立てで受け取る現金は発生しない。会計処理の対象になるのは、実際に振り替えられた金額である。

掛金そのものの税法上の扱いは、中退共Q&A 9-2-1に根拠条文まで書かれている。

中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金(法人税法施行令第135条第1号)、個人企業の場合は必要経費(所得税法施行令第64条第2項)として全額が非課税扱いとなります。また、従業員の給与所得にもなりません。
—— 中退共Q&A 9-2-1

損金に算入する時期については、国税庁の法人税基本通達9-3-1が退職金共済掛金等の取扱いを定めている。なお、資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税には外形標準課税が適用される点も、中退共が注意喚起している。

消費税の区分など、ここで挙げた公式Q&Aに記載のない論点は、顧問税理士に確認したうえで自社の会計方針を決めてほしい。

キャリアアップ助成金の「賞与・退職金制度導入コース」と中退共

「キャリアアップ助成金 退職金共済制度導入コース」という調べ方をされることがあるが、厚生労働省のキャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)に載っている正式な名称は「賞与・退職金制度導入コース」だ。退職金共済制度という名前のコースは無い。

関係があるのは中身のほうで、中退共はこのコースの要件を満たす手段になり得る。同パンフレット(令和8年4月8日版)と厚生労働省のQ&Aから、中退共に関係する部分だけを抜くと次のようになる。

項目 公式の記載
コースの正式名称 賞与・退職金制度導入コース
支給額(中小企業・1事業所あたり) 賞与または退職金制度のいずれかを導入:40万円/賞与および退職金制度を同時に導入:56万8,000円(1事業所あたり1回のみ)
退職金の積立要件 対象労働者1人につき、1か月分相当として3,000円以上を6か月分、または6か月分相当として18,000円以上を積立て
社外積立型の可否 「退職金制度は、社外積立型の退職金制度を導入する場合でも、支給対象となり得ます」(Q&A ④ Q-1)
添付書類(中退共の場合) 退職金規程、加入証明書、実際の掛金が納付されていることが分かるもの(Q&A ④ Q-5)

つまり、有期雇用労働者等を対象に退職金制度を新設する手段として中退共を使い、就業規則にその旨を規定して積立てを実施すれば、賞与・退職金制度導入コースの支給対象になり得る、という関係だ。ただし要件は細かく、「合理的な理由なく一部の労働者のみを対象とする」制度設計は対象外になる。コース側の要件・申請期間の詳細は賞与・退職金制度導入コースの記事にまとめてあるので、申請を検討する場合はそちらを読んでほしい。

なお、キャリアアップ助成金の支給可否は労働局の審査で決まる。要件を満たすかどうかは、管轄の労働局またはハローワークで確認してほしい。

退職金が掛金納付総額を上回るのは43か月目から

助成の話とは別に、加入前に必ず確認しておきたいのが「短期で辞めた場合に退職金がどうなるか」だ。中退共の退職金は基本退職金と付加退職金の合計で、基本退職金は予定運用利回りを1.0%として定められている。納付月数によって次のように変わる。

掛金納付月数 退職金
11月以下 支給されない(通算制度や他制度からの引継ぎを行っている場合は支給されることがある)
12月以上23月以下 掛金納付総額を下回る額
24月以上42月以下 掛金相当額
43月以上 運用利息と付加退職金が加算され、長期加入者ほど有利になる

中退共はこの設計について「長期加入者の退職金を手厚くするため」と説明している。試用期間中の従業員が包括加入の原則から除外されているのも、この仕組みと無関係ではない。短期離職が多い職種では、加入のタイミングを検討する材料になる。

よくある手続きミスと注意点

ミス1: すでに加入済みなのに、新入社員の分にも助成が付くと考えてしまう

❌ 毎年の採用に合わせて助成が付くと見込み、人件費の計画に入れてしまう
⭕ 助成は「会社が初めて加入したとき」が起点。追加加入は原則対象外と理解する

なぜ重要か: 中退共Q&A 1-2-2が明確に「追加して加入させた場合の掛金助成はありません」と書いている。例外は会社の助成期間(12か月)が残っている間の追加加入だけだ。

ミス2: 申込前から掛金月額を高く設定しすぎる

❌ 最初から20,000円に設定する
⭕ 無理のない額から始め、必要に応じて増額変更する

なぜ重要か: 掛金月額の減額は、従業員が同意した場合か、現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めた場合に限られる。さらに20,000円以上からの増額は月額変更助成の対象外なので、いきなり上限近くに設定すると増額時の助成を受けられる区間が無くなる。

ミス3: 助成期間中に減額してしまう

❌ 増額した直後に資金繰りが苦しくなり、助成期間中に掛金を下げる
⭕ 増額は12か月続けられる水準で決める

なぜ重要か: 中退共は「掛金月額の増額による助成期間内(12か月)に掛金月額を減額した場合、月額変更助成は打ち切りとなります」と明記している。

ミス4: 短時間労働者の証明書を添付し忘れる

❌ 特例掛金月額(2,000円・3,000円・4,000円)を選んだのに証明書を出さない
⭕ 申込時に労働条件通知書(雇入通知書)または労働契約書の写しを添える

なぜ重要か: 特例掛金月額は、1週間の所定労働時間が通常の従業員より短くかつ30時間未満であることが前提だ。証明書が無いと特例の適用そのものが進まず、上乗せ助成にも届かない。

人材定着に活かす:中退共を使った制度整備の考え方

退職金制度がないことは、求人票の段階で不利に働きやすい。中退共を導入すれば「退職金あり」と記載できるようになり、採用面での説明材料が増える。掛金が全額損金(個人企業は必要経費)になることも、制度を整える後押しになる。

さらに、従業員のスキルアップ支援と組み合わせると定着の効果が見込みやすい。AI活用研修や職業訓練の費用には人材開発支援助成金の対象となる場合がある(要件審査あり・支給を保証するものではありません)。コースの選び方は人材開発支援助成金のコース一覧に、非正規雇用から正規雇用への転換を進める場合はキャリアアップ助成金の正社員化コースにまとめてある。申請様式の一覧はキャリアアップ助成金の様式一覧が参考になる。

よくある質問

Q. 中退共の掛金助成はいくらもらえますか。
A. 新規加入掛金助成は掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)が加入後4か月目から1年間です。上限いっぱいの場合、1人あたり合計6万円になります。短時間労働者の特例掛金月額(2,000円・3,000円・4,000円)なら、それぞれ300円・400円・500円が上乗せされます。
Q. 掛金助成を受けるための申請書はありますか。
A. ありません。中退共Q&A 1-2-1-2は「別途、助成の申請手続きは必要ありません」としています。加入申込後、掛金月額から助成額を控除した額が口座振替される形で自動的に適用されます。
Q. 助成金はいつから始まりますか。
A. 中退共制度に加入した後、4か月目から1年間(合計12か月)です。1か月目から3か月目は設定した掛金月額がそのまま口座振替されます。
Q. 追加加入した従業員にも掛金助成は付きますか。
A. 原則として付きません。中退共Q&A 1-2-2は「既に加入している企業が、新たに採用した従業員を追加して加入させた場合の掛金助成はありません」としています。ただし、新規加入による助成期間中の追加加入であれば、残っている助成期間については対象になります。
Q. 掛金を増額したときも助成はありますか。
A. 掛金月額18,000円以下からの増額であれば、増額分の3分の1が増額月から1年間助成されます(10円未満は切り捨て)。20,000円以上の掛金月額からの増額は対象外です。判定に使う「増額前の掛金月額」は、過去に納付した最も高かった掛金月額です。
Q. 掛金月額の上限はいくらですか。
A. 設定できる掛金月額は5,000円から30,000円までの16種類で、上限は30,000円です。短時間労働者は特例として2,000円・3,000円・4,000円でも加入できます。なお新規加入掛金助成の上限は、従業員ごとに月5,000円です。
Q. 掛金助成の仕訳はどうなりますか。
A. 掛金助成は現金の支給ではなく掛金からの控除として行われるため、助成分の入金は発生しません。中退共Q&A 9-2-1によれば、掛金は法人企業では損金(法人税法施行令第135条第1号)、個人企業では必要経費(所得税法施行令第64条第2項)として全額が非課税扱いとなります。消費税の区分など公式Q&Aに記載のない論点は顧問税理士にご確認ください。
Q. 自治体の補助金と国の掛金助成は別のものですか。
A. 別です。国の掛金助成のほかに、中退共加入企業へ独自の補助を行っている自治体・事業主団体(掛金助成自治体等)があります。中退共の一覧では令和8年8月現在、47都道府県で254件が掲載されています。条件・金額・交付期間は実施先ごとに異なるため、各実施先の担当窓口にお問い合わせください。
Q. 役員も中退共に加入できますか。
A. 原則として加入できません。中退共は従業員(労働者)を対象とする制度です。役員の退職慰労金は別の方法で準備する必要があります。
Q. 従業員を一部だけ加入させることはできますか。
A. 包括加入の原則があり、原則として雇用する従業員全員を加入させます。期間を定めて雇用される従業員、季節的業務に雇用される従業員、試用期間中の従業員、短時間労働者、休職期間中の者およびこれに準ずる従業員、相当の期間内に雇用関係の終了することが明らかな従業員、加入することに反対の意思を表明した従業員は原則から除外されます。
Q. 短期間で退職した場合、退職金は出ますか。
A. 掛金納付月数が11月以下の場合は支給されません(通算制度や他制度からの引継ぎがある場合は支給されることがあります)。12月以上23月以下は掛金納付総額を下回る額、24月以上42月以下は掛金相当額、43月以上で運用利息と付加退職金が加算されます。
Q. 企業規模が拡大して中小企業でなくなった場合はどうなりますか。
A. 被共済者の同意や、一定の要件を備えた確定給付企業年金制度・企業型確定拠出年金制度・特定退職金共済制度への資産移換の申出など、要件を満たしていれば、解約手当金相当額の範囲内の金額をその制度を実施する団体へ引き渡すことができます。詳細は中退共本部(電話 03-6907-1234)にご確認ください。

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参考・出典


まとめ:中退共の掛金助成で押さえる3点

  1. 金額と期間:新規加入は掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から12か月。上限いっぱいで1人6万円。申請書は不要で、掛金から控除される形で適用される
  2. 追加加入は原則対象外:助成の起点は「会社が初めて加入した月」。すでに加入済みの会社が新しく採用した人を追加加入させても助成は付かない(助成期間の残りがある場合を除く)
  3. 増額の判定は過去の最高額:月額変更助成は18,000円以下からの増額が対象。判定に使う「増額前の掛金月額」は過去に納付した最も高かった額であり、20,000円以上からの増額は対象外

手続きは近くの金融機関窓口または商工会議所で完結する。退職金制度の整備を検討しているなら、まず取扱金融機関か委託事業主団体に相談し、自社の市区町村に掛金助成自治体等の制度があるかもあわせて確認したい。


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この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。

本記事の情報は2026年9月24日時点の中小企業退職金共済事業本部および厚生労働省の公表資料に基づく参考情報です。制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず中退共公式サイトおよび厚生労働省の最新情報をご確認ください。キャリアアップ助成金の支給可否は管轄の労働局の審査により決定されます。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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