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短時間労働者労働時間延長支援コース|要件と支給額【2026年9月】

短時間労働者労働時間延長支援コース|要件と支給額【2026年9月】

この記事の結論

短時間労働者労働時間延長支援コースは週所定労働時間を5時間以上延長し社会保険に加入させると1人50万円(小規模企業・1年目)。2年目25万円で最大75万円。令和8年4月8日版の要件・支給額・様式の記入例を解説。

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2026年9月27日時点の直答:キャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長支援コースは、パート・アルバイトの週所定労働時間を5時間以上延長して新たに社会保険に加入させると、1年目に1人あたり小規模企業50万円・中小企業40万円・大企業30万円、2年目の取組でさらに25万円・20万円・15万円が出ます。小規模企業なら2年で1人最大75万円、1事業主あたりの申請上限人数はありません。延長が5時間未満なら基本給の増額と組み合わせる4段階の要件表で判定します。根拠は厚生労働省「キャリアアップ助成金支給要領(令和8年4月8日付け)」6000節と、同コースのパンフレット(PL080401 No.13・令和8年4月1日版)です。

このコースで最初に決まるのは金額ではなく順番です。社会保険の加入日の前日までにキャリアアップ計画書が労働局に届いていなければ、要件をすべて満たしていても1円も出ません。逆に、順番と比較ルールを押さえておけば、パート5人に適用して小規模企業で1年目250万円という規模の申請も普通に成立します。

そして2026年9月時点で、この制度を読み解く前提が動いています。令和8年(2026年)10月に社会保険の賃金要件(いわゆる年収106万円の壁)が撤廃予定で、週20時間以上働く人は賃金額に関係なく社会保険の加入対象になります(厚生労働省リーフレット・令和8年1月作成)。つまり「時間を延ばす → 社会保険に入る → 助成金が出る」という本コースの対象になり得る従業員が、2026年10月以降に一気に増えます。

先に自社の対象者を絞り込むために、次の3点を確認してください。

  • 対象は「有期雇用労働者等」か:パート・アルバイト・派遣労働者など、期間の定めのある労働契約を結ぶ労働者と、通常の労働者の労働条件が適用されていない無期雇用労働者が対象です。正規雇用労働者は対象外です。
  • 社会保険加入日の6か月前の日以前から継続雇用しているか:起算日は「週所定労働時間を延長した日」または「新たに社会保険の被保険者とした日」のいずれか早い方の前日からさかのぼって6か月前の日です。
  • 過去2年以内に同じ事業所で社会保険に加入していないか:加えて、社会保険の適用日の前日から過去6か月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった人であることも必要です。

なお、同じキャリアアップ助成金の正社員化コースや情報公表加算との関係は、本記事の「切替と併給」の節でまとめています。制度全体の位置づけを先に見たい場合は中小企業向け補助金5制度の早見表もあわせてどうぞ。

キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コースの支給額と要件

1年目の支給額は一律ではなく、週所定労働時間を何時間延ばしたかと基本給を何%上げたかの組み合わせで判定されます。延長が5時間以上なら賃金の増額は不要、5時間未満なら延長時間に応じた増額率が別途必要です。ここを「5時間延ばすか、2時間+15%か」の2択だと思い込むと、4時間延長や3時間延長で使える枠を自分で捨てることになります。

1年目の要件(週所定労働時間の延長) 別途必要な基本給の増額率 小規模企業 中小企業 大企業
5時間以上 増額なし 50万円 40万円 30万円
4時間以上5時間未満 5%以上
3時間以上4時間未満 10%以上
2時間以上3時間未満 15%以上
1年目の要件を4段階で示した図。週所定労働時間の延長5時間以上は増額なし、4時間以上5時間未満は5%以上、3時間以上4時間未満は10%以上、2時間以上3時間未満は15%以上の基本給増額が必要で、いずれも小規模企業は1人50万円。
1年目の延長時間と基本給の増額率

2年目は、1年目の延長後から第2期支給対象期の開始日までに次のa〜cのいずれかを実施すれば、さらに1人あたりの額が出ます。

2年目の要件(いずれか1つ) 小規模企業 中小企業 大企業
a 週所定労働時間を更に2時間以上延長する 25万円 20万円 15万円
b 基本給を更に5%以上増額する
c 昇給、賞与または退職金制度のいずれかを新たに適用する

企業規模の判定は支給申請時点で行います。小規模企業事業主は「常時雇用する労働者の数が30人を常態として超えない事業主」で、このコースだけに置かれた区分です。中小企業事業主(小規模企業を除く)は資本金または常時雇用労働者数で判定します。

業種 資本金の額・出資の総額 常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

「または」判定なので、どちらか一方を満たせば中小企業事業主です。ここで使う「常時雇用する労働者」は、2か月を超えて使用される者で、かつ週当たりの所定労働時間が通常の労働者と概ね同等(通常の労働者が週40時間なら概ね40時間)の者を指します。パート・アルバイトは原則この人数には入りません。

項目 内容(2026年9月27日時点)
制度名 キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース
所管 厚生労働省(雇用保険二事業)
根拠 キャリアアップ助成金支給要領(令和8年4月8日付け)6000節
取組の開始時期 令和7年7月1日以降の取組が対象
支給額(1年目+2年目の合計) 小規模企業75万円/中小企業60万円/大企業45万円(1人あたり)
申請上限人数 なし
キャリアアップ計画書の期限 コース実施の前日まで(本コースは社会保険加入日の前日まで)
取組を行う期間 社会保険の適用日の前日から1か月前の日から、3か月が経過する日の前日までの間
支給申請期間 支給対象期分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内
申請先 事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(持参・郵送・電子申請)
電子申請 雇用関係助成金ポータル(GビズIDが必要)
時限措置か 当分の間の暫定措置。終期は2026年9月27日時点で公表されていません

この助成金は各コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画を出すことが共通の前提で、支給を受けられるのは労働者ではなく事業主です。要件を満たしていても支給を保証するものではなく、労働局の審査を経て支給決定されます。

公式様式のダウンロードと提出先(令和8年4月8日以降の取組)

様式は年度どころか「取組を行った日」で分岐します。令和8年4月8日以降の取組は下表の様式、令和8年4月1日〜4月7日の取組は1つ前の様式一覧を使います。古い年度の様式で出すと差し戻しになるので、ダウンロード元のページ名を毎回確認してください。

提出物 様式 公式ダウンロード
キャリアアップ計画書 様式第1号 Word(PDF)
キャリアアップ計画書(変更届) 様式第2号 Word
支給申請書 様式第3号 Excel(PDF)
短時間労働者労働時間延長支援コース内訳 様式第3号 別添様式6 Excel(PDF)
支給要件確認申立書 共通要領 様式第1号 Word(R8.4.1更新)
事業所確認票 様式第4号 Word
支払方法・受取人住所届 共通要領 様式第1号の別添 Excel(未登録・口座変更時のみ)
提出物の流れを示した図。様式第1号から、申請書類(様式第3号・別添様式6・支給要件確認申立書)、添付書類(雇用契約書・賃金台帳・様式第4号)を経て電子申請へ進む。
提出する様式と添付書類の並び

申請書類は様式第3号・別添様式6・支給要件確認申立書の3点で、添付書類は必須と該当時に分かれます。必須は対象労働者の雇用契約書または労働条件通知書等(写)と賃金台帳(写)の2点だけで、第1期は社会保険の適用または週所定労働時間延長の前後6か月分を出します。賃金台帳で出勤日数と労働時間数が読み取れない場合に限り、同じ期間の出勤簿またはタイムカード(写)を追加します。

該当がある場合の添付書類は、代理人なら委任状、常時雇用する労働者の数で小規模企業または中小企業であることを証明する場合は様式第4号の事業所確認票、特定適用事業所なら特定適用事業所該当通知書(写)、任意特定適用事業所なら任意特定適用事業所該当通知書(写)です。旧記事によくある「キャリアアップ計画書の写し」や「社会保険の資格取得確認書類」は、公式の添付書類一覧には載っていません。

支給要件確認申立書は問4〜16に「いいえ」が1つでもあると支給を受けられません。労働保険料の未納、申請日前日から過去1年間の労働関係法令違反、性風俗関連営業などが該当します。郵送で出す場合は簡易書留など配達記録が残る方法で、申請期間内に提出先の官署へ届いている必要があります。電子申請で支給申請をするには、先に電子申請でキャリアアップ計画書を出しておかなければなりません。GビズIDの取得から始める場合はGビズID取得ガイドを先に見てください。

2026年の雇用保険・社会保険の加入条件(厚生労働省の現行値)

本コースは「雇用保険に入っている人を、社会保険にも入れる」制度です。支給要領6008へでは対象労働者が雇用保険被保険者であることを雇用保険被保険者台帳で確認すると定めており、雇用保険に未加入のままでは申請できません。だから加入条件は2つ並べて押さえる必要があります。

加入条件のゲート図。雇用保険は1週間の所定労働時間が20時間以上と31日以上の雇用見込みの2要件、社会保険は週の所定労働時間、月額8.8万円以上、従業員数51人以上、学生ではないことの4要件を通って対象労働者になる。
雇用保険と社会保険の加入条件

雇用保険の加入条件(2026年9月27日時点)は、厚生労働省の事業主向けQ&Aで次の2つです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

パート・アルバイトなどの雇用形態や、事業主・労働者の加入希望の有無に関係なく、要件に該当すれば加入が必要です。なお、この週20時間という基準は2028(令和10)年10月1日から「10時間以上」に引き下げられます(雇用保険法等の一部を改正する法律・令和6年法律第26号、令和6年5月10日成立)。2026年9月時点ではまだ20時間です。

短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件は4つです。

要件 2026年9月27日時点の内容 今後の予定
週の所定労働時間 20時間以上 変更の予定は公表されていません
所定内賃金(賃金要件) 月額8.8万円以上 令和8年(2026年)10月に撤廃予定
企業規模要件 従業員数51人以上 2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に10人以下へ段階的に拡大
学生かどうか 学生ではないこと(休学中・定時制・通信制などは加入対象) 変更の予定は公表されていません

このほか、フルタイムの従業員と同じく2か月を超えて雇用される見込みであることが必要です。また、フルタイム従業員と比べて週の所定労働時間および月の所定労働日数が4分の3以上なら、上の4要件を待たずに被保険者になります。

賃金要件が撤廃されるのは、令和7年度の地域別最低賃金が全都道府県で時給1,016円を超えたためです。時給1,016円以上で週20時間働けば月額賃金は自動的に8.8万円以上になるので、要件としての意味がなくなったという説明です(令和7年年金制度改正法に基づく予定)。従業員50人以下の事業所でも、従業員の2分の1以上の同意があれば任意特定適用事業所になり、短時間労働者を社会保険に加入させられます。本コースはその任意加入のケースでも使えます(該当通知書の写しを添付)。

裏を返すと、事業主側の負担は増えます。社会保険料の事業主負担が新たに発生する分を、本コースの1人あたり支給額でどこまで受け止められるかを自社の賃金台帳で試算してから動くのが現実的です。

労働時間延長の測り方|延長前後6か月をどう比べるか

ここが審査で最も落ちやすい論点です。「契約書の数字を18時間から24時間に書き換えたから6時間延長」とは限りません。支給要領は延長前は「週当たりの平均実労働時間」、延長後は「週所定労働時間」で比べるのを原則にしています。シフトで実際は週20時間働いていたパートを、契約上18時間から24時間に変えても、実労働時間基準で見ると延長は4時間しかない、ということが起こります。

比較の型 延長前 延長後 判定
① 実労働時間 所定労働時間 差が基準を満たせば支給対象
② 所定労働時間 所定労働時間 実労働時間同士で比べても基準を満たす場合に限り支給対象
③ 所定労働時間 実労働時間 ①②のいずれにも当てはまらない場合は支給対象外
延長前後の比較方法を示した図。延長前は延長前6か月間の総労働時間から出す週当たりの平均実労働時間(所定時間外労働時間と有給休暇を含む)、延長後は週所定労働時間で比べ、基準を満たせば支給対象になる。
延長前後をどの基準で比べるか

週平均実労働時間の出し方も公式に決まっています。通常は「延長前6か月間の総労働時間÷暦日×7日」または「延長前6か月間の総労働時間÷26週(52週÷2)」です。休業や欠勤があった場合は、その日を暦日から除いて計算します。所定時間外労働時間と有給休暇も総労働時間に含みます——残業が多いパートほど、延長前の実労働時間が大きく出て延長幅が縮む方向に働きます。

端数処理は様式側に指定があります。延長前の平均実労働時間は小数点以下を切り上げ、延長後の週所定労働時間は小数点第2位以下を切り上げ、昇給率は小数点第2位を切り捨て(5.882%→5.8%)です。

シフト制でも申請できます。雇用契約書等に「※平均の週所定労働時間が約●時間となるようシフトにより調整する。(延長日前日までの間は、平均の週所定労働時間が約▲時間となるようシフトにより調整。)」のような記載があれば、所定労働時間の明示要件を満たす扱いです。

2年目の比較は基準が変わります。1年目の延長後の雇用契約書・労働条件通知書等に書かれた週所定労働時間・基本給と、第2期支給対象期の週所定労働時間・基本給を比べます。ここは実労働時間ではなく所定ベースです。

記入例|別添様式6の全項目の書き方

本コース固有の様式は「様式第3号 別添様式6 短時間労働者労働時間延長支援コース内訳」で、第1面(申立事項と支給申請額)、第2面(第1期の対象労働者明細)、第3面(第2期の対象労働者明細)に分かれます。厚生労働省のパンフレット(PL080401 No.13)が全面の記入例を載せているので、以下は実物の欄に沿った書き方です。

別添様式6の構成を3段で示した図。第1面は申立事項・支給申請額・3親等以内親族、第2面は延長前の平均実労働時間・延長時間数・昇給率、第3面は延長前の所定労働時間。
別添様式6の3面と主な記入欄

第1面①〜⑦(申立事項)。①は特定適用事業所・任意特定適用事業所・いずれでもないの3択にチェックします。②は「本来は社会保険の加入要件を満たす条件で雇い入れる予定だったのに、この助成金を申請する目的で賃金または週所定労働時間を一定期間減じた者ではない」への回答です。③は「新たに社会保険の被保険者となる以前に、既に被保険者要件を満たしていた者ではない(資格取得の事務手続に遅滞があったわけではない)」。④は「新たに被保険者となる日の前日から2年前の日(当該日時点で雇用していない場合は雇い入れた日)から社会保険に加入していなかった」。⑤は事業主または取締役の3親等以内の親族が含まれるかで、含まれる場合は⑨欄の「3親等以内親族」列に「○」を入れます。⑥は社会保険適用に際して講じる措置を対象労働者に説明していること。⑦は旧コースからの切替申請のときだけ回答する欄で、2年目の取組を予定しているなら「はい」です。

第1面⑧(支給申請額)。1年目は〈1〉5時間以上、〈2〉4時間以上5時間未満、〈3〉3時間以上4時間未満、〈4〉2時間以上3時間未満の4区分、2年目は〈1〉2時間以上延長、〈2〉基本給5%以上増額、〈3〉昇給・賞与・退職金制度の適用の3区分に分かれています。該当区分に人数を入れて企業規模を選ぶと支給申請額が出ます。パンフレットの記入例は小規模企業で1年目5人・2年目5人を並べ、支給申請合計額を3,750,000円としています。1年目の支給単価は500,000円(小規模)、2年目は250,000円(同)で、これが表示される形です。

第2面⑨(第1期の対象労働者明細)。列は番号/氏名/雇用保険被保険者番号/a 延長前の平均実労働時間/b 延長後の所定労働時間/c 延長時間数(b−a)/d 延長前の基本給/e 延長後の基本給/f 昇給率((e−d)÷d)/切替申請の有無/複数年かけて社会保険に加入した者の有無/3親等以内親族です。d・e・fはcが5時間未満の場合のみ記入します。記入例の並びを見ると整合性がはっきりします。

記入例の行 a 延長前の平均実労働時間 b 延長後の所定労働時間 c 延長時間数 d→e 基本給 f 昇給率
1行目 18時間 24時間 6時間 記入なし(cが5時間以上) 記入なし
3行目 18時間 22時間 4時間 1,030円→1,090円 5.8%
5行目 18時間 21時間 3時間 1,040円→1,150円 10.5%

3行目は「4時間以上5時間未満なら5%以上」、5行目は「3時間以上4時間未満なら10%以上」にそれぞれ乗っています。1,030円→1,090円は5.825%で、小数点第2位を切り捨てて5.8%。この切り捨てのせいで、増額率を要件ぎりぎりの5.0%や10.0%に設定すると計算結果が基準を下回ることがあります。要件の境界を狙うなら余裕を持たせてください。あわせて「週所定労働時間を延長した日」と「本申請の支給対象期分の賃金を支給した日」を上部の日付欄に入れます。

第3面(第2期の対象労働者明細)。第1期と違い、a列が「延長前の所定労働時間」になります。2年目は所定ベースの比較だからです。基本給を5%以上増額した場合はd・e・f、昇給・賞与・退職金制度を適用した場合は「3 昇給・賞与・退職金制度の適用の有無」列に「○」を入れます。

キャリアアップ計画書は社会保険加入日の前日までに出す

キャリアアップ計画書(様式第1号)は、コース実施の前日までに管轄の都道府県労働局へ提出します。本コースでは社会保険加入日の前日までで、公式パンフレットは「令和8年10月1日加入の場合は同年9月30日まで」という例示を置いています。持参・郵送・電子申請のいずれでも提出できます。

計画書に書く主な内容は次のとおりです。

  • 事業所に関する情報:雇用保険適用事業所の名称・所在地、企業全体の労働者数(通常の労働者とおおむね同等の時間働く労働者数)、主たる事業(日本標準産業分類を参考に記入)
  • キャリアアップ管理者:①事業所の労働者・事業主・役員のいずれか、②他の事業所で既にキャリアアップ管理者になっていない、③労働組合等の労働者代表者ではない——の3つを満たす人を選任します
  • 計画期間:3年以上5年以内で設定し、始期は計画の届出日の翌日以降にします
  • 講じる措置:取り組む予定のあるコースに丸を付けます。丸を付けていないコースでは助成金を受けられません(変更届で追加できます)
  • 対象予定人数:計画作成時点の見込みで足ります。人数が増減しても変更届は不要で、見込みがない年度は「0名程度」と記載します

計画の作成にあたっては、対象となり得る労働者から意見を聴取して計画に反映させることが求められています。丸を付けたコースの取組を行えなかった場合の罰則はありません。つまり、迷っている段階でも該当コースに丸を付けて出しておく方が安全です。

旧「社会保険適用時処遇改善コース」のキャリアアップ計画書を既に提出している事業主は、本コースの計画届・変更届の提出は不要です。年収の壁対応として同趣旨の助成措置であることと、申請者の負担軽減の観点からの扱いです。

2年目の取組で1人25万円を上積みする3つの選択肢

第2期支給対象期は、第1期支給対象期間の末日の翌日から起算して7か月目から起算して6か月間です(勤務した日数が11日未満の月は除きます)。この第2期の開始日までに、a〜cのいずれかを講じておく必要があります。

  • a 週所定労働時間を更に2時間以上延長する:1年目の延長後の契約書に書かれた所定労働時間と、第2期支給対象期の所定労働時間を比べます。人手が足りていて本人も時間を増やしたいなら、これが最も判定が明快です。
  • b 基本給を更に5%以上増額する:ただし最低賃金の効力が生じた日以後に賃金規定等を増額した場合、最低賃金に達するまでの増額分は算入されません。最低賃金の改定が決定された日から発効日の前日までに賃金規定等を改定していれば、改定後の地域別最低賃金額に合わせた賃上げ分を含めてよい扱いです。
  • c 昇給、賞与または退職金制度のいずれかを新たに適用する:対象労働者が1年目の取組前はその制度の適用を受けておらず、1年目の取組後から第2期開始日までに新たに適用を受けることが必要です。制度が就業規則または賃金規定等に対象者の範囲とともに規定され、実際に運用されている(その制度に基づく賃金が支給されている)ことまで求められます。

cの「相当な水準」の目安として、公式Q&Aは同助成金の賞与・退職金制度導入コースの水準——6か月あたり5万円以上の賞与支給、1万8千円以上の退職金積立——を指標になり得ると書いています。昇給は原則として基本給の昇給かつ年1回以上の実施が予定される制度を指します。

労働者が10人未満で就業規則の作成義務がない事業所でも、cを選ぶなら就業規則または労働協約を作成して規定を整備し、労働者に明示する必要があります。その場合は事業所内周知を取組日までに済ませ、①支給申請前に所轄の労働基準監督署長に届け出るか、②周知の実施について事業主と労働者代表者の氏名等を記載した申立書を添付します。

複数年かけて徐々に労働時間を延ばして社会保険適用に至るパターンも対象です。ただし社会保険が適用された時点で延長または賃上げの要件を満たしていない場合は対象外です。公式Q&Aは「1年目に2時間延長+5%賃上げで社会保険適用、2・3年目にそれぞれ5%賃上げ」で3年かけて「2時間以上延長かつ15%以上」を満たしたケースを、支給対象外の例として挙げています。また、令和7年7月1日より前に行った延長の取組は算入されません。

旧 社会保険適用時処遇改善コースからの切替と、併給できるコース

旧「社会保険適用時処遇改善コース」の各メニュー(①手当等支給メニュー、②労働時間延長メニュー、③併用メニュー)は、令和7年度(2025年度)末で終了しました。令和7年度末までに対象労働者に社会保険の適用を行った場合が支援対象で、令和8年度以降に社会保険を適用した場合は対象になりません。令和8年度版のパンフレットでも、取り扱うコースは正社員化/障害者正社員化/賃金規定等改定/賃金規定等共通化/賞与・退職金制度導入/短時間労働者労働時間延長支援の6つになっています。

本コースが旧コースの「労働時間延長メニュー」からどう変わったのかは、公式Q&Aが経緯まで書いています。原文を引くと、次のとおりです。

現行の「週所定労働時間4時間以上延長」の要件を「5時間以上」(又は「4時間以上かつ5%以上の賃上げ」等)とするなど、労働者の収入をより増加させる取組を要件とするとともに、「130万円の壁」は、「106万円の壁」に比べて、壁を越えるに当たっての保険料負担が増加することから、1人当たりの助成額を、中小企業については「30万円」から「40万円」に引き上げ、また、取組を行うに当たってより負担感の大きい小規模企業については「50万円」とし、更に、長期の職場定着と更なるキャリアアップを促す観点から、新たに2年目の取組についても支援する(厚生労働省「短時間労働者労働時間延長支援コース 事業主の方向けQ&A」問2-2)

つまり、金額は上がったが時間延長の要件は4時間以上から5時間以上へ厳しくなっています。「使いやすく緩和された」という要約は正確ではありません。狙いは「130万円の壁」を越える人の保険料負担増を助成額で受け止めることです。令和7年2月25日の自民・公明・維新の三党合意に基づく、労働保険特別会計における臨時の時限的措置と位置づけられています。

切替は、旧コースの併用メニュー(3期目)または労働時間延長メニューの対象労働者で、本コースの1年目の要件を満たす場合に限り可能です。条件はその対象労働者に係る旧メニューの支給申請が提出されていないこと。既に旧コースで支給申請してしまった場合は、原則いったん取り下げて再申請します。ただし旧コースの支給申請期間の終期が令和7年7月1日より後で、既の申請が同時に本コースの支給要件を満たし、かつ支給決定前であれば、労働局・ハローワークへの申出と申請書等の差替えで特例的に切り替えられる場合があります。

相手のコース 併給の可否 理由
正社員化コース 同時には不可 本コースの対象労働者要件が「有期雇用労働者等」のため。取組期間中に正社員転換するなら正社員化コースを使う
賃金規定等改定コース 不可 助成内容が重なるため
賞与・退職金制度導入コース 場合により可 対象者およびその他の有期雇用労働者等に制度を同時に適用する場合など、その他要件を満たせば併給可能な場合がある

賃金規定等改定コースの申請書の書き方は賃金規定等改定コース 支給申請書の書き方にまとめています。複数コースを併用する場合は、厚生労働省の「併給調整早見ツール」で基本的な可否を確認したうえで、申請前に管轄労働局へ相談してください。

申請でつまずきやすい6か所

1. 計画書より先に社会保険の手続きを進めた

❌ 社会保険の資格取得手続きを終えてからキャリアアップ計画書を出す
⭕ 社会保険加入日の前日までに計画書を労働局へ届けてから加入手続きに入る

この順番だけは後から直せません。郵送なら「申請期間内に提出先の官署へ届いている」ことが必要なので、配達日数も逆算してください。

2. 延長幅を所定労働時間だけで数えた

❌ 契約書の18時間→24時間を見て「6時間延長だから5時間以上」と判断する
⭕ 延長前6か月の週平均実労働時間を計算して、延長後の週所定労働時間との差を確認する

残業や有給休暇も総労働時間に含むため、実労働時間で見ると延長幅が小さくなりがちです。

3. 5時間未満の延長で基本給の増額率が足りなかった

❌ 3時間延長して基本給を5%上げた
⭕ 3時間以上4時間未満の延長なら基本給10%以上(2時間以上3時間未満なら15%以上)を確保する

昇給率は小数点第2位を切り捨てて判定されるので、境界ぎりぎりの設定は避けます。

4. 支給申請期限を「取組から6か月後」と数えた

❌ 労働時間を延長した日から6か月後を締切としてカレンダーに入れる
⭕ 支給対象期分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内で管理する

賃金締切日と支給対象期の開始日がずれている場合は、その日以降の最初の賃金締切日後6か月分の賃金を支給した日が起点です。時間外手当を翌月に別途支給している事業所では、その時間外手当が支給される日が「支給対象期分の賃金を支給した日」になります。

5. 延長と同時に諸手当を下げた

❌ 所定労働時間を増やす代わりに固定の役職手当を削る
⭕ 基本給と定額で支給されている諸手当は、延長等の前後6か月で減額しない

合理的な理由のない減額があると、他の要件を満たしても支給されません。

6. 週18時間契約だが実態は20時間以上だった

❌ 契約は18時間なので社会保険は未加入、として本コースを申請する
⭕ 遡及加入が必要と判断される状態なら助成対象外。加入の要否は最寄りの年金事務所に相談する

公式Q&Aが明示している論点です。「契約だけ短くしてある」状態は助成金申請以前の問題になります。

申請の準備をどこから始めるか

  1. 対象者リストを賃金台帳から作る:「有期雇用労働者等」「社会保険加入日の6か月前の日以前から継続雇用」「過去2年以内に同事業所で社会保険未加入」「適用日の前日から過去6か月間は適用要件を満たしていない」「事業主・取締役の3親等以内の親族でない」の5点で絞り込みます。
  2. 延長前6か月の週平均実労働時間を計算する:総労働時間÷26週で出し、延長後に何時間の所定労働時間を設定すれば5時間以上になるかを先に決めます。5時間に届かない人は、必要な基本給の増額率を4段階表で確認します。
  3. キャリアアップ計画書を先に出す:社会保険加入日を決める前に計画書の提出日を確定させます。旧コースの計画書を出している場合は不要です。電子申請を使うなら、GビズIDの取得と電子申請での計画書提出を先に済ませます。
  4. 管轄の労働局またはハローワークに1度確認する:シフト制の記載方法、遡及加入の懸念、併給調整は窓口で確認できます。各都道府県の働き方改革推進支援センターや、年収の壁突破・総合相談窓口(0120-030-045/平日8:30〜18:15)でも無料相談を受け付けています。

なお、厚生労働省はパンフレット冒頭で「助成対象の診断や受給額の無料査定をするといった書面を一方的に送付する、または電話で執拗に勧誘する業者」への注意を呼びかけています。「100%助成金が受けられます」といった謳い文句の勧誘もあるとのことです。支給申請事務を代理人に委ねていても、事業主名で申請する以上、内容が不正受給に該当すれば事業主も不正処分の対象になります。

パート・アルバイトの働き方の見直しとあわせて業務側のAI活用も検討したい場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。助成金の申請手続きそのものは、社会保険労務士や管轄労働局にご相談ください。


この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。


よくある質問

Q1. このコースはいつから申請できますか?

令和7年7月1日以降に労働時間を延長して新たに社会保険の適用となった労働者、または社会保険適用後に労働時間を延長した労働者が対象です。令和8年度(2026年度)も申請できます。支給申請は労働時間延長等の取組から6か月経過後に行います。

Q2. いつまで使えますか?期限はありますか?

当分の間の暫定措置とされており、終期は2026年9月27日時点で公表されていません(厚生労働省Q&A問2-7)。労働保険特別会計において臨時に行う時限的措置という位置づけで、第三号被保険者制度のあり方を含めた「年収130万円の壁」への制度的対応が今後検討されるとされています。最新の状況は厚生労働省のキャリアアップ助成金ページで確認してください。

Q3. 1事業主で何人まで申請できますか?

支給申請の上限人数はありません。要件を満たす労働者の人数分だけ申請できます。ただし各労働者について個別に要件を満たしているかを確認してください。パンフレットの記入例でも、1年目5人・2年目5人をまとめて申請する形が示されています。

Q4. キャリアアップ計画書や支給申請書の様式はどこで入手できますか?

厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。令和8年4月8日以降の取組は令和8年度申請様式(令和8年4月8日以降の取組に係る様式)のページ、支給要件確認申立書は雇用関係助成金の申請にあたってのページです。都道府県労働局およびハローワークの助成金担当窓口でも直接配布されています。

Q5. 旧コースのキャリアアップ計画書を出しています。変更届は必要ですか?

不要です。旧「社会保険適用時処遇改善コース」のキャリアアップ計画書を提出済みなら、本コースの計画届・変更届の提出は必要ありません。ただし切替を行って2年目の取組を予定している場合は、様式第3号 別添様式6の「2年目の取組を予定しているか」欄に「はい」と回答してください。

Q6. シフト制ですが申請できますか?

できます。労働時間延長時に交付する雇用契約書等に「※平均の週所定労働時間が約●時間となるようシフトにより調整する。(延長日前日までの間は、平均の週所定労働時間が約▲時間となるようシフトにより調整。)」といった記載があれば、所定労働時間の明示要件を満たす扱いとされています。

Q7. 従業員が10人未満で就業規則がありません。2年目の取組はできますか?

できますが、2年目に「昇給、賞与または退職金制度のいずれかの適用」を選ぶ場合は、企業規模に関わらず就業規則または労働協約を作成して規定を整備し、労働者に明示する必要があります。10人未満の事業所が就業規則を作成する場合は、事業所内周知を取組日までに実施のうえ、支給申請前に所轄の労働基準監督署長に届け出るか、周知の実施について事業主と労働者代表者の氏名等を記載した申立書を添付します。なお、パート・アルバイトや1〜2時間程度の勤務者も含めて常時10人以上を使用する場合は、就業規則の作成・届出義務が生じます。

Q8. 取組後6か月の間に対象者が休職しました。申請はいつになりますか?

休職や育児・介護休業、事業主都合の休業(出勤なし)の月は「勤務をした日」に含まれないため、取組後、勤務をした日が11日以上ある月の6か月分の賃金を支給するまで申請できません。ただし勤務していない月でも給与が満額(通常の出勤日と同様の金額)支払われている場合は、勤務をした日に含まれます。有給休暇を取得した日も「勤務した日」に含みます。

Q9. 正社員化コースや賃金規定等改定コースと併用できますか?

正社員化コースとの同時の助成は受けられません。本コースの対象労働者要件が「有期雇用労働者等」であるためです。取組期間中に正社員転換する場合は正社員化コースを活用してください。賃金規定等改定コースとは助成内容が重なるため併給できません。賞与・退職金制度導入コースは、対象者およびその他の有期雇用労働者等に制度を同時に適用する場合など、その他の要件を満たせば併給可能な場合があります。

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参考・出典

免責事項
本記事の情報は2026年9月27日時点の厚生労働省の公表資料(支給要領は令和8年4月8日付け、コースのパンフレットは令和8年4月1日版)に基づく参考情報です。助成金の制度内容・要件・様式は予告なく変更される場合があり、支給要件を満たすかどうかの最終的な判断は都道府県労働局が行います。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトで最新の支給要領をご確認いただき、個別の要件判断は管轄の都道府県労働局・ハローワークまたは社会保険労務士にご相談ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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