人材開発支援助成金が2026年3月2日に改定された。支給対象訓練の拡充と分割支給申請の解禁という2つの変更が、AI研修・DXリスキリングを検討している中小企業にとって追い風になっている。
最大の変化は「事業展開等リスキリング支援コース」が対象を広げた点だ。従来はDX推進や新規事業展開が要件だったが、改定後は「人事配置計画に基づく職業訓練」も対象となり、事業転換を伴わない社内のAI人材育成でも助成を受けやすくなった。
令和8年3月改定の変更点まとめ
| 項目 | 改定前 | 改定後(令和8年3月2日〜) |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コースの対象 | DX推進・新規事業展開に伴う訓練のみ | +人事配置計画に基づく職業訓練を追加 |
| 助成率(新規追加対象) | — | 75%(中小企業)/ 60%(大企業) |
| 賃金助成(新規追加対象) | — | 1,000円/時(中小企業)/ 500円/時(大企業) |
| 分割支給申請 | 不可 | 可能に(複数回に分けた申請が可能) |
| 電子申請 | 一部対応 | 新対象訓練の計画届は当面紙申請 |
↑ 新たな対象訓練については、電子申請システムの対応準備中のため、2026年3月2日以降に計画届を出す場合は、厚生労働省HPからダウンロードした申請書類を使って管轄労働局へ紙申請(持参または郵送)が必要だ。
人材開発支援助成金の全コース一覧
| コース名 | AI研修への適合度 | 中小企業助成率 | 上限目安 |
|---|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | ★★★★★ | 経費75%+賃金1,000円/時 | 1億円/年度 |
| 人への投資促進コース | ★★★★☆ | 経費最大70% | 2,500万円/年度 |
| 人材育成支援コース(OFF-JT) | ★★★☆☆ | 経費45〜60% | — |
以下で、AI研修に実際に使えるコースを3つ詳しく解説する。
AI研修に最も使いやすいコース — 事業展開等リスキリング支援コース
令和8年3月改定で何が変わったか
旧来のこのコースは「新規事業展開やDX推進に伴う、新たな分野の知識・技能習得」という縛りがあった。つまり「うちは事業転換するわけじゃないけど、社員にAIを使えるようにしたい」というニーズには合わない面があった。
改定後は「3年以内の人事配置計画を作成し、その将来の職務に必要な知識・技能を習得する訓練」も対象になった。要するに、社内の人事計画を文書化すれば、通常のAI研修もこのコースで申請できるようになっている。
助成内容(令和8年度)
| 区分 | 経費助成率 | 賃金助成 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円/時 |
| 大企業 | 60% | 500円/時 |
「賃金助成」は研修中の人件費相当分の補填で、たとえば10名×8時間の研修なら80時間分 × 1,000円 = 8万円が別途助成される。
対象となるAI研修の例
- 生成AI(ChatGPT、Claude、Gemini等)の業務活用研修
- AI・機械学習の基礎知識習得プログラム
- データ分析・BI活用の実践研修
- DX推進担当者向け総合スキルアップ研修
- サブスクリプション型e-learningプラットフォームによるAIコース受講
ただし、研修内容が「将来の職務に関連している」ことを事業計画・人事配置計画に明記することが審査で求められる。「社員のスキルアップ全般」という曖昧な記載では不十分だ。
各補助金制度との使い分けはAI導入に使える補助金5選 徹底比較でまとめている。
「人への投資促進コース」— DXデジタル人材訓練の活用
事業展開等リスキリング支援コースとともに、AI研修に使いやすいもう1つの選択肢がこのコースだ。
特徴
デジタル人材・高度人材の育成訓練を中心に助成するコースで、令和8年度(2027年3月末)まで実施される時限制度だ。サブスクリプション型の研修サービスも対象になるという点が2022年度以降の特徴で、月額制のAI学習プラットフォームも申請できる場合がある。
助成内容
| 区分 | 成長分野等人材訓練 | その他の対象訓練 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 経費75% | 経費45〜70% |
| 上限 | 1,000万円/年度 | 2,500万円/年度(一部科目上限あり) |
「成長分野等人材訓練」とは、高度な情報通信技術(AI・データサイエンス・セキュリティ等)に関する訓練を指す。生成AI・機械学習の実践スキルが中心の研修はここに該当することが多い。
賃金助成
1人1時間あたり1,000円(中小企業)、500円(大企業)。
人材育成支援コース(OFF-JT)— 標準的な社員研修に
AIの基礎知識程度の社内研修から、外部の公開講座まで幅広く使えるのがこのコースだ。助成率は事業展開等リスキリング支援コースより低いが、要件が比較的シンプルなため、小規模な研修から試してみたい企業に向いている。
助成内容(中小企業)
| 対象 | 経費助成率 | 賃金助成 |
|---|---|---|
| 正規雇用者(一般訓練) | 45% | 960円/時 |
| 正規雇用者(特定訓練) | 60% | 960円/時 |
| 非正規労働者向け | 60〜75% | 960円/時 |
※特定訓練とはOJT付き訓練、外国語など特定のカテゴリを指す。
AI研修で助成金を活用するステップバイステップ
Step 1:コースを選択する(所要: 1〜2時間)
3コースの中から自社の状況に合うものを選ぶ。AI研修を幅広く活用したいなら事業展開等リスキリング支援コース、まず試してみたいなら人材育成支援コースから入るのが現実的だ。
Step 2:訓練計画を作成する(所要: 1〜2週間)
研修の目的・受講者・内容・時間数・期待効果を記載した訓練実施計画書を作成する。事業展開等リスキリング支援コース(新対象訓練)の場合は、人事配置計画も別途必要だ。
ポイント: 計画書には「この研修を受けることで、受講者が将来どの職務に従事するか」を具体的に書く。「AIを活用できる社員を育成する」ではなく「○○部門のルーティン業務自動化担当として配置予定」のように職務と結びつける。
Step 3:計画届を労働局に提出する(訓練開始の1ヶ月前まで)
管轄の都道府県労働局に計画届を提出する。令和8年3月改定の新対象訓練については、電子申請対応が準備中のため、現在は紙申請(窓口持参または郵送)が必要だ。
重要: 計画届の受理前に訓練を開始すると、助成金の対象外になる。必ず受理確認後に研修を始めること。
Step 4:訓練を実施する
計画に沿って研修を実施する。出席状況・受講記録を正確に残しておく(支給申請時に証拠書類として必要)。
Step 5:支給申請を行う(訓練終了後2ヶ月以内)
訓練終了後2ヶ月以内に、管轄労働局に支給申請書を提出する。出席簿・研修記録・賃金台帳・受講費用の領収書等を添付する。
分割支給申請が解禁されたため、長期研修(年度をまたぐ場合等)は途中の段階で部分的に申請することも可能になった。
Step 6:助成金の受給
審査完了後、指定口座に助成金が振り込まれる。通常、支給申請から審査完了まで2〜4ヶ月かかる。
申請で見落とされやすい3つのポイント
落とし穴1:計画届の提出前に研修を始めてしまう
❌ 「早く研修を始めたいから計画届と並行して進める」
⭕ 計画届が受理されてから研修を開始する
計画届の提出≠受理ではない。提出後に内容確認・修正依頼が来る場合もあるため、受理確認のメールや書面を受け取ってから研修日程を組むこと。
落とし穴2:研修記録が不十分で証拠書類を揃えられない
❌ 出席を口頭で確認するだけで記録を残さない
⭕ 受講者全員の出席簿・修了証・研修内容の記録を必ず保管する
オンライン研修の場合は受講ログ(ログイン・ログアウト時刻・受講完了証明)を保存しておく。「受講した」という事実を書面で証明できなければ、支給申請が通らない。
落とし穴3:研修費用を先払いした領収書が助成対象期間外
❌ 助成金の計画届前に研修料を全額前払いする
⭕ 計画届受理後に支払うか、計画届受理後の研修期間に対応する費用分のみ申請する
研修費用を一括前払いしていても、計画届受理前に発生した費用は対象外になる。分割払いや後払い可能な研修プログラムを選ぶと手続きがシンプルになる。
AI研修と補助金の組み合わせ方
人材開発支援助成金は「人件費(研修中の賃金補助)」と「研修費用」の両方を助成できる点が特徴だ。一方、デジタル化・AI導入補助金はITツールの導入費用を補助するが人件費・研修費は対象外だ。
この2制度を組み合わせると、AIツール導入(デジタル化AI補助金)+そのツールの活用研修(人材開発支援助成金)で投資負担を大幅に下げられる。同一経費の二重申請は禁止されているが、ツール費用と研修費用は別経費なので並行活用は可能だ。
株式会社Uravationでは、AI研修の計画策定からカリキュラム設計まで支援しており、助成金申請に必要な訓練実施計画書の作成についてもご相談に応じている。AI研修の費用負担をどう下げるか悩んでいる場合は、お問い合わせフォームからご連絡いただきたい。
基本データ(事業展開等リスキリング支援コース)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース |
| 所管省庁 | 厚生労働省 |
| 中小企業の経費助成率 | 75% |
| 賃金助成(中小企業) | 1,000円/時 |
| 1事業所の年度上限 | 1億円 |
| 対象者 | 雇用保険適用事業所の事業主(雇用保険に加入している企業) |
| 対象訓練 | DX推進・新規事業に伴う訓練 + 人事配置計画に基づく訓練(令和8年3月〜) |
| 実施期限 | 令和8年度まで(2027年3月末) |
| 申請窓口 | 管轄の都道府県労働局(一部紙申請のみ) |
| 公式サイト | [厚生労働省 人材開発支援助成金](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html) |
※上記は令和8年度の情報です。制度内容は年度末(2027年3月)に変更・終了となる場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。
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参考・出典
- 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照日: 2026-03-27)
- 令和8年3月 人材開発支援助成金 改正のご案内 — 社会保険労務士事務所リッシュ(参照日: 2026-03-27)
- 人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」が拡張される見通し — SATO PORTAL(参照日: 2026-03-27)
- 企業内の人材育成を応援! 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」 — 政府広報オンライン(参照日: 2026-03-27)
執筆: 株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修: 佐藤 傑(株式会社Uravation 代表取締役)
100社以上のAI研修・導入支援実績をもとに、中小企業のAI活用×補助金申請をサポートしています。AI研修の計画策定やコスト最適化についてのご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
免責事項
本記事の情報は2026年3月27日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトで最新の情報をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。