2026年3月19日、中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の制度が改定された。中小企業庁が「パワーアップ版」と銘打ったこの改定では、従業員20人以下の企業を対象に補助上限額が大幅に引き上げられている。
最大の変更点は、従業員5人以下の企業の補助上限額が200万円から500万円へと2.5倍になったこと。小規模事業者にとって、これはかなりインパクトのある変更だ。
改定前後の変更点まとめ — 何がどう変わったか
| 項目 | 改定前(~3/16) | 改定後(3/19~) |
|---|---|---|
| 補助上限額(5人以下) | 200万円 | 500万円 ↑ |
| 補助上限額(6~20人) | 500万円 | 750万円 ↑ |
| 補助上限額(21人以上) | 1,000万円 | 1,000万円(変更なし) |
| 賃上げ特例の要件 | 最低賃金+45円以上 | 最低賃金+3.0%以上 ↑ |
| 収益納付 | あり(利益が出たら返納) | 撤廃 ↑ |
| 公募期間 | 2026年9月末頃まで | 2027年3月末頃まで ↑ |
| リピート申請 | 制限なし | 省力化効果の報告+賃上げ実績が必要 |
| 補助率 | 1/2 | 1/2(変更なし) |
補助率自体は変わっていない。つまり、投資額の半分が補助される上限が引き上がったという整理だ。
補助上限額の引き上げ — 小規模事業者ほど恩恵が大きい
今回の改定で最も目を引くのは、従業員20人以下の企業に対する補助上限額の引き上げだ。
賃上げ特例を使った場合の上限額
| 従業員数 | 通常の上限額 | 賃上げ特例時の上限額 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 500万円 | 750万円 |
| 6~20人 | 750万円 | 1,000万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
たとえば従業員3人の小さな飲食店が、配膳ロボットやセルフオーダーシステムを導入するケースを考えてみる。改定前は200万円が上限だったため、1台の機器でほぼ予算を使い切ってしまう状況だった。500万円に引き上がったことで、複数の省力化機器を組み合わせた導入が現実的になる。
正直、従業員5人以下で200万円という旧制度の上限は、省力化を本気でやるには少なすぎた。
賃上げ特例の見直し — 「45円」から「3.0%」へ
補助上限額をさらに引き上げる「大幅な賃上げ特例」の要件も変わった。
これまでは事業場内最低賃金を45円以上引き上げることが条件だった。改定後は3.0%以上の引き上げ(日本銀行の物価安定目標+1.0%)に変更されている。
何が違うのか。金額ベースからパーセンテージベースになったことで、もともと賃金水準が高い地域の企業にとっては負担が軽くなる可能性がある。一方、最低賃金ギリギリで雇用している企業にとっては、45円と3.0%でほぼ同等か、地域によってはやや厳しくなるケースもある。
要するに、全国一律の金額基準から、各企業の賃金水準に連動する比率基準に切り替えたということだ。
収益納付の撤廃 — 補助金で導入した設備で利益が出ても返さなくていい
これは地味だが重要な変更だ。
旧制度では、補助事業によって顕著な収益が出た場合、受け取った補助金の一部を国に返納する「収益納付」の義務があった。省力化に成功して利益が上がったのに、その利益を返納しなければならないという、ある意味で矛盾した仕組みだった。
改定後はこの収益納付が完全に撤廃された。省力化で浮いた人件費や増えた売上は、そのまま次の投資や従業員の賃上げに回せる。
たとえば、500万円の補助金で導入した自動検品装置により年間300万円の人件費を削減できた場合、旧制度では利益の一部を返納する可能性があった。新制度ではその300万円をそのまま従業員の賃上げや追加設備に充てられる。
補助金を使うことへの心理的なハードルが一つ減ったと言える。
リピート申請の新ルール — 2回目以降は「成果報告」が必要に
今回の改定では、複数回申請(リピート申請)に関する新しいルールが設けられた。
リピート申請の追加要件
- 前回の補助事業で省力化効果が実際に得られたことを報告する必要がある
- 事業場内最低賃金を前回申請時と比較して3.5%以上引き上げていること
- 前回申請から2年以上経過している場合は7.0%以上、3年以上は10.5%以上の引き上げが必要
ハードルは上がった。しかし、その代わりに累計補助上限額が新設された。各従業員区分の補助上限額を2倍にした金額が、複数回申請の合計上限となる。
| 従業員数 | 1回あたりの上限 | 累計上限額 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 500万円 | 1,000万円 |
| 6~20人 | 750万円 | 1,500万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 2,000万円 |
つまり、1回目で500万円の補助を受けた従業員5人以下の企業は、2回目の申請で残りの500万円まで申請できる。賃上げと省力化効果の実績を示す必要はあるが、段階的に設備投資を進めたい企業にとっては使いやすい仕組みだろう。
申請スケジュール — 切り替えのタイムライン
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月16日(月)17:00 | 旧制度での申請受付を締め切り |
| 3月17日(火)~18日(水) | システムメンテナンス(申請不可) |
| 3月19日(木) | 新制度(パワーアップ版)での申請受付開始 |
| 3月26日(木)20:00~25:00頃 | GビズIDシステムメンテナンス |
| 2027年3月末頃 | カタログ注文型の公募期間終了(予定) |
旧制度と新制度の間に2日間の空白期間がある。3月16日の17時を過ぎたら、19日まで申請ができないので注意が必要だ。
一般型のスケジュール(参考)
カタログ注文型とは別に、オーダーメイドで省力化設備を導入する「一般型」も並行して公募が行われている。一般型の第6回公募は2026年3月上旬に開始され、申請締切は5月中旬の予定だ。一般型は補助上限額が最大1億円(従業員101人以上・賃上げ特例時)と規模が大きく、IoTシステムやロボットの独自開発も対象になる。
カタログ注文型と一般型、どちらを選ぶべきか
省力化投資補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2種類がある。今回の改定はカタログ注文型が対象だが、どちらを使うか迷っている企業も多いはずだ。
| 比較項目 | カタログ注文型 | 一般型 |
|---|---|---|
| 補助上限額 | 最大1,500万円 | 最大1億円 |
| 補助率 | 1/2 | 1/2~2/3 |
| 対象製品 | カタログ登録済みの製品のみ | 自由に設計・選定可能 |
| 審査の難易度 | 比較的簡易 | 事業計画書の審査あり |
| 申請タイミング | 随時(公募期間内) | 公募回ごとに締切あり |
| 向いている企業 | 既製品で省力化したい企業 | 独自のシステム開発が必要な企業 |
「カタログに載っている製品で十分」という場合は、審査が比較的シンプルなカタログ注文型が手早い。一方、自社の業務に合わせたカスタムシステムを構築したいなら、一般型を検討すべきだ。なお、主要補助金5制度の比較記事で、他の補助金との違いも整理しているので参考にしてほしい。
今すぐやるべきこと — 3つのアクション
1. GビズIDプライムアカウントを取得する
申請にはGビズIDプライムアカウントが必須だ。取得には通常1~2週間かかるため、まだ持っていない企業は今日中に申請を始めてほしい。詳しい手順はGビズID取得完全ガイドにまとめている。
2. カタログから導入製品を選定する
カタログ注文型は、公式サイトの製品カタログに登録されている製品しか申請できない。自社の業種・業務プロセスに合った製品があるか、早めに確認しておくべきだ。販売事業者との共同申請が必要なので、製品が決まったら販売店への連絡も忘れずに。
3. 賃上げ特例の適用を検討する
通常の補助上限額だけでは足りない場合、賃上げ特例の活用を検討する。事業場内最低賃金を3.0%以上引き上げる計画を策定できるなら、上限額がさらに引き上がる。ただし、事業終了時に給与支給総額+6%以上かつ最低賃金の引き上げ実績が求められるため、無理のない範囲で計画を立てることが重要だ。
注意点 — 申請前に確認しておきたいこと
- 3月16日17時以前に旧制度で申請済みの案件は、旧制度の条件が適用される。新制度の上限額は適用されないので注意
- 補助率は1/2のまま。上限額500万円で申請するなら、自己負担分も含めて1,000万円の投資が必要になる
- カタログ注文型は常勤従業員がいない事業者も申請可能(2025年4月24日以降、所定の証憑提出で対応)
- 省力化製品の導入後、労働生産性の年平均成長率3%向上を目指す事業計画の策定が必要
第6回公募(一般型)では、ロボットやAI自動化設備で最大1億円の補助が受けられます。詳しくは省力化投資補助金 第6回公募の解説記事をご覧ください。
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- 省力化投資補助金 一般型|補助上限1億円・申請要件を徹底解説 — 一般型の補助上限1億円・申請要件の全体像
参考・出典
- 2026年3月19日制度改定のご案内|中小企業省力化投資補助金 公式サイト
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)公式ポータル
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)公式ポータル
- 中小企業庁担当者に聞く「令和7年中小企業省力化投資補助金のポイント」|ミラサポplus
- 省力化投資補助金|経済産業省 中小企業庁
制度の詳細や最新の公募要領は、必ず公式サイトで確認してほしい。補助金の制度設計は予算消化の状況によって変更される可能性がある。
省力化投資補助金以外にも、IT導入やDXに活用できる補助金は複数ある。IT導入補助金の完全ガイドや、2026年の補助金申請スケジュール一覧もあわせて確認しておくと、自社に最適な制度が見つかるはずだ。
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省力化投資補助金と他制度の比較は主要補助金5制度を徹底比較でご確認ください。
省力化投資補助金の基本制度は省力化投資補助金の詳細ガイドで解説しています。
最新の第6回公募の詳細は省力化投資補助金 第6回公募ガイドをご覧ください。