東京都のDX推進助成金は、公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下、公社)のアドバイザーが作成した提案書に基づいて機器・システム等を導入する都内中小企業者等に対し、助成限度額3,000万円(申請できる助成金の下限額30万円)、助成率は申請区分に応じて2分の1以内〜5分の4以内で経費の一部を助成する制度です。対象経費は機器・ロボット導入費、システム構築費、ソフトウェア導入費、クラウド利用費、データ分析費の5区分に限られます。
2026年9月26日時点の状況: 令和8年度第1回は、事前予約(令和8年5月15日〜6月16日)と申請(同年6月9日〜6月23日・Jグランツ)がいずれも終了しています。交付決定は令和8年9月下旬の予定、助成対象期間は令和8年10月1日から令和9年9月30日までの1年間です。公社の助成金事業一覧には状態表示が「募集中」のまま残っていますが、事業ページ側は第1回の事前予約・申請とも終了と明記しています。第2回の予定は、2026年9月26日時点で公社ページに記載がありません。
なお、この記事は上限額の表記を現行の公社ページに合わせて3,000万円へ改めました。検索でよく見かける「最大5,000万円」は、同じ公社が令和8年度から別に始めたDX推進トータルサポート助成金の「DX推進コース」で、大幅賃上げ枠に該当した場合の数字です。名前がよく似ていて混同しやすいので、まずそこを分けます。
上限3,000万円はどの制度の数字か — 名前が似た3つを先に分ける
「東京都のDX助成金」と検索すると、次の3つが同時に出てきます。全部つながっていますが、別のものです。
| 名称 | 正体 | お金の話 | 2026年9月26日時点 |
|---|---|---|---|
| DX推進トータルサポート事業 | アドバイザー派遣(支援はすべて無料)。生産性向上・DXステップアップ・DXアドバンス・AI活用の4コース | 費用は発生しない | 4コースとも令和8年度の募集は終了。生産性向上コースの第2回は令和8年10月頃を予定 |
| DX推進助成金 | 令和6・7年度の「DX推進支援事業」で提案書を受け取った事業者向けの助成金。生産性向上コース/DX戦略策定支援コースの2区分 | 助成限度額3,000万円(下限額30万円) | 令和8年度第1回の事前予約・申請とも終了 |
| DX推進トータルサポート助成金 | 上のアドバイザー派遣を受けた事業者向けの新しい助成金。生産性向上コース/DX推進コース/AI活用コースの3区分 | コースごとに1,500万円・3,000万円・2,000万円(大幅賃上げ枠は2,000万円・5,000万円・3,000万円) | 募集開始時期は未定。募集要項も未公開 |
表の右端をもう一度見てください。5,000万円は大幅賃上げ枠に該当した場合の数字で、DX推進助成金の助成限度額ではありません。
読み方はシンプルです。無料のアドバイザー派遣が入口、助成金は出口。そして出口の助成金が、令和6・7年度に支援を受けた人向けの「DX推進助成金」と、令和8年度から支援を受ける人向けの「DX推進トータルサポート助成金」の2本立てになっている、という構造です。公社は「DX推進支援事業の新規採択は終了しています」と明記しており、これから入口に立つ人は後者のルートになります。

国の制度と並べて検討したい場合は、中小企業向け補助金5制度 早見表で助成率と上限額の桁を比べてから戻ってくると判断が早くなります。東京都内の他分野の制度もまとめて見たいなら東京都DX補助金まとめ|5制度を徹底比較が近いところです。
DX推進助成金の助成率は申請区分で7通りに分かれる
助成限度額は一律3,000万円ですが、助成率はコースと申請者区分の組み合わせで変わります。令和8年度第1回の募集要項に載っている表がこれです。
| コース | 申請者区分 | 助成率 |
|---|---|---|
| 生産性向上コース | A:中小企業者 | 2分の1以内 |
| B:小規模企業者 | 3分の2以内 | |
| C:賃金引上げ計画を掲げ申請する事業者(中小企業者) | 4分の3以内 | |
| D:賃金引上げ計画を掲げ申請する事業者(小規模企業者) | 5分の4以内 | |
| DX戦略策定支援コース | ①:中小企業者等 | 3分の2以内 |
| ②:賃金引上げ計画を掲げ申請する事業者(中小企業者) | 4分の3以内 | |
| ③:賃金引上げ計画を掲げ申請する事業者(小規模企業者) | 5分の4以内 |
小規模企業者は、製造業・その他が常時使用する従業員20人以下、商業(卸売業・小売業)・サービス業が5人以下。中小企業団体の場合は構成員の内訳にかかわらず小規模企業者とはみなされません。
賃上げ要件を選ぶと、入金が2回に分かれる
ここが計画づくりで一番効くところです。賃金引上げ計画を掲げて申請した場合、助成金の交付は2回に分割されます。
- 1回目: 賃上げの優遇を受けない助成率(2分の1〜3分の2以内)で算出された金額
- 2回目: 賃金引上げ計画の達成確認後に、賃上げ要件の助成率(4分の3〜5分の4以内)で算出した助成金から1回目の交付額を差し引いた金額
募集要項の交付イメージがそのまま参考になります。生産性向上コース・中小企業者・賃上げ要件有りで対象経費4,000万円・助成金額3,000万円(助成率4分の3)なら、1回目は4,000万円×2分の1=2,000万円、2回目は3,000万円−2,000万円=1,000万円。DX戦略策定支援コース・小規模企業者・賃上げ要件有りで対象経費3,000万円・助成金額2,400万円(助成率5分の4)なら、1回目は3,000万円×3分の2=2,000万円、2回目は400万円です。
賃金引上げ計画の中身は2つ。①賃金引上げ計画期間に支払う給与支給総額を、基準日(募集開始日)が属する月の前月から遡る12か月間に全従業員(役員を除き非常勤を含む。個人事業主は代表者を除く)へ支払った給与等に1.02を乗じた額以上に増やすこと。②事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。申請時点で従業員がいない場合は申請できません。
計画または達成状況が確認できない場合、引き上げ後の助成率は適用されない場合があると要領に書かれています。資金計画を4分の3で組んでおいて2分の1しか入らない、という事故が一番痛いので、計画は保守的に置くのが無難です。
令和8年度第1回の日程と、2026年9月26日時点の受付状況
DX推進助成金は事前予約と本申請の両方が必要です。事前予約がされていないと申請そのものができません。令和8年度第1回の実際の日程は次のとおりでした。
| 手続き | 時期 | 備考 |
|---|---|---|
| 事前予約(必須) | 令和8年5月15日(金)〜6月16日(火) | 終了。予約者に申請URLと申請書様式がメールで届く |
| 申請書の提出 | 令和8年6月9日(火)〜6月23日(火) | 終了。Jグランツによる電子申請のみ |
| 一次審査 | 申請書の受領〜令和8年8月頃 | 資格審査・経理審査・事業計画審査。助成金申請額1千万円(税抜)以上は面接審査 |
| 審査会・交付決定 | 令和8年9月下旬 | 交付決定額は申請額から減額される場合がある |
| 事業の実施期間 | 令和8年10月1日〜令和9年9月30日(予定) | この期間内に発注・契約・納品・支払いまで完了したものだけが対象 |
| 実績報告〜完了検査 | 事業終了後、速やかに提出 | Jグランツ中心 |
| 助成金額の確定 | 完了検査から1か月程度 | — |
| 助成金の支払 | 請求書到着から1か月程度 | 後払い |
| 事業化状況報告 | 事業完了後、翌年度以降5年間 | Jグランツで実施 |

一覧の「募集中」表示だけで判断しない
2026年9月26日に公社の助成金事業一覧を確認すると、DX推進助成金(生産性向上コース/DX戦略策定支援コース)の状態表示は「募集中」で、助成限度額3,000万円(下限額:30万円)と出ています。一方で事業ページには「令和8年度第1回の事前予約は終了しました」「DX推進支援事業の新規採択は終了しています」と書かれており、募集要項の公開についても「しばらくお待ちください」の状態です。
転載型の補助金まとめサイトは一覧の表示だけを写すので、ここが古いまま残りがちです。都の助成金は必ず事業ページまで開いて、回次と受付期間の実物を見るのが安全です。
いま動かせるのはアドバイザー派遣の次回募集
これから入口に立つ場合、現実的な次の一手はDX推進トータルサポート事業(生産性向上コース)の第2回募集です。東京都の報道発表(2026年5月28日)と公社ページのいずれにも、第2回募集は令和8年10月頃を予定と書かれています。第1回は令和8年6月1日9時に受付を開始し、6月19日付の更新で「募集件数に達したため終了」と告知されました。第1回の支援規模は130社程度です。
生産性向上コースの申請手順は東京都DX推進トータルサポート事業|生産性向上コースの申請ガイド、AI活用コース側の条件は東京都DX推進トータルサポート事業とは|AI活用コースの募集状況にまとめています。都全体の下期スケジュールは2026年下期 東京都のDX・AI補助金まとめが早見表になります。
助成対象になる経費5区分と、AI導入で外れやすい経費
DX推進助成金の対象経費は次の5区分です。区分にない経費は原則すべて対象外、という建て方になっています。
(1)機器・ロボット導入費
DX推進の取組に直接必要なデジタル機器・ロボット等のハードウェアの購入、リース、改良の費用。外部事業者に依頼する設定・設置費も対象ですが、搬入・設定・設置は本体の購入先が行い、設置と一体で捉えられるものに限られます。既存機器の修繕・撤去・移設・処分、機器の設計費用は対象外です。
(2)システム構築費
新たなシステムの構築・改修(設計・開発)と、助成対象期間に実施する運用・保守。既存システムの改修はDX推進を目的とする部分だけが対象です。成果物が助成事業者に帰属しない場合、コンサルティングに要する経費、システムの設計のみの場合は対象になりません。
(3)ソフトウェア導入費
新たなソフトウェアの購入・利用、カスタマイズ・設定を外部に依頼する費用、助成対象期間の運用・保守・サポート。ライセンス利用は原則として助成対象期間の最後まで利用するものであることが必要で、期間使用料を途中で解約すると中止扱いになり助成金が交付できない場合があります。文書作成ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト等の汎用性の高いソフトウェアは対象外です。
(4)クラウド利用費
クラウドサービスの利用料と初期設定を外部に依頼する費用、助成対象期間の運用・サポート。主たる利用場所が申請者の事業実施場所であることが必要です。
(5)データ分析費
自社内のデータを分析してDX推進を図る取組を、外部事業者等に依頼する費用。成果物が助成事業者に帰属しない場合や、自社で実施できる場合は対象外です。

AI・デジタル関連でつまずきやすい対象外の線
公募要領の「助成対象にならない事業」と「助成対象外経費」から、AI導入の相談で実際によく引っかかるものを抜き出します。
- 社内の通信環境・テレワーク環境の整備や増強: LANの配線工事、ルーターの設置、パソコン・スマートフォン等の購入・リース、テレワーク用のシステム・機器の導入はいずれも対象外
- 既存ソフトの更新や増強: 既存のシステム・ソフトウェアについて、購入済みソフトの単なる増台やライセンスの追加購入、リビジョンアップは対象外
- 汎用性の高い機器: パソコン(キーボード・マウス等の周辺部品を含む)、スマートフォン、カメラ、コピー機、FAX、固定電話機
- 従量課金方式の経費: 申請時に利用金額等が定められないもの。生成AIのAPI利用料をそのまま積むと、ここで外れる可能性があります
- 通信費: 携帯電話通話料金、Wi-Fi月額料金、インターネット回線・プロバイダー料金
- 調査・提案・打ち合わせに係る費用およびコンサルタント的要素を含む経費
- 消費税、収入印紙、振込手数料、自社の旅費交通費、保険料、飲食費などの間接経費
- 単なるホームページ等の作成のみに係る経費、自社内製の機器・ソフトウェア、中古品
- 設置場所の整備工事・基礎工事・電気工事に係る経費
期間使用料(リース料、ソフトウェアライセンス料、クラウドサービス料等)は、助成対象期間内に契約・使用・支払いを完了した分に限られます。3年間のライセンス契約でも、助成対象期間に使用した分(最長1年分)だけが対象です。
申請できる会社の条件 — 見落としやすい5つ
申請要件は中小企業者・中小企業団体等であることに加えて9項目あります。要件を通しで読むのは前提として、相談でつまずく率が高いのはこの5つです。
- 提案書がなければ申請できない: 公社の「DX推進支援事業」でアドバイザー派遣の支援を受け、アドバイザーによる提案書の内容に基づく申請であることが必須です(公社が令和6年度に行った「デジタル技術活用推進緊急支援事業」を含む)。生産性向上コースはDX推進支援事業(生産性向上コース)または緊急支援事業、DX戦略策定支援コースはDX推進支援事業(DX戦略策定支援コース)の提案書が対応します
- 都内の登記と実質的な事業活動の両方: 基準日(募集開始日)時点で東京都内に登記簿上の本店または支店があること。個人事業主は税務署提出済みの「個人事業の開業・廃業等届出書」の控えで都内所在地が確認できること。加えて、建物があるだけでなく客観的にみて都内に根付く形で事業活動が行われていることが必要で、申請書・ホームページ・名刺・看板や表札・電話連絡時の状況・従業員の雇用状況等から総合的に判断されます
- 過去に採択されている場合は「額の確定通知書」まで: 本助成事業や緊急デジタル技術活用推進助成金で過去に採択を受けた場合、基準日時点で助成金額が確定していることが必要です。交付決定通知書を受けているだけでは足りず、助成額の確定通知書を受けている必要があります
- 同一経費の二重取りと併願の禁止: 同一回の申請は一企業一申請。同一の内容(経費)で公社の他の助成事業に併願申請していないこと、国・都道府県・区市町村等から助成を受けていないこと。申請から交付決定までの間に他の補助金と両方で交付決定を受けた場合は、いずれか一方を取り下げることになります
- 実施場所の範囲: 基準日時点で都内に登記簿上の本店がある場合は、都内および神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城・山梨に所在する場所。都内に支店がある場合は都内のみです。機器・ロボットは、他社(関連会社を含む)の従業員が混在する共用スペース等を実施場所にできません
このほか、東京都に納税し法人事業税・法人都民税の滞納がないこと、過去5年間に助成事業等で不正の事故を起こしていないこと、事業の継続性について不確実な状況がないこと、東京都暴力団排除条例に規定する暴力団関係者でないこと、風俗関連業・ギャンブル業等ではないことが要件に含まれます。
提案書ができるまで最低3か月 — 申し込みから入金までの順番
この制度で一番読み違えやすいのは、申請期間の長さではなく前提手続きの長さです。公社は「助成金申請に必要な『アドバイザーによる提案書』の作成には最低3ヶ月程度のお時間をいただきます」と明記しています。
Step 1: アドバイザー派遣に申し込む
公社のデジタル化推進ポータル(iot-robot.jp)の利用申込フォームから申し込みます。令和8年度は、DXステップアップ・DXアドバンス・AI活用の3コースが令和8年4月6日〜5月8日、生産性向上コースが第1回6月1日開始(6月19日付の更新で募集件数に達し終了)、第2回は令和8年10月頃を予定です。応募内容に基づく審査を経て採択される必要があります。
Step 2: 現地調査・診断を受ける
アドバイザーが現地訪問を行い、現状の課題を明確化した上で支援方針を決めます。DXステップアップ・DXアドバンスコースは社員がDX推進プロジェクトへ参画することが前提で、生産性向上コースとの同時利用はできません。
Step 3: 提案書を受け取る(ここに3か月)
提案書はアドバイザーが作成する最大10ページの書面で、(1)経営方針(2)課題・解決策(3)導入計画(4)検討した製品・サービス(5)社内体制等が書かれます。デジタル技術の導入段階か活用段階のいずれかで渡されます。DX戦略策定支援を受ける場合は、これとは別に企業側が「DX戦略書」を作成し、支援終了時(12回目)を目安に公社事務局へ提出します。
Step 4: GビズIDプライムを用意する
申請はJグランツ(デジタル庁が運営する電子申請システム)のみで、GビズIDプライムが必要です。募集要項には「GビズIDプライム取得には原則2週間程度、書類不備がある場合にはそれ以上時間がかかる場合があります」と書かれています。取得手順はGビズIDプライムの登録手順とログイン、Jグランツ側の入力はJグランツ入力ガイド|項目別の書き方を参照してください。
Step 5: 事前予約を出す
事前予約は必須で、予約がなければ申請を受け付けてもらえません。予約が済んだ人だけに、申請URLと申請書様式のデータがメールで届きます。ここで初めて申請書の実物が手に入る設計なので、事前予約の締切を逃すと回次ごと見送りになります。
Step 6: 書類をそろえてJグランツで提出する
公社指定様式の申請書・申請前確認書(Excel形式)とDXチェックシート、見積書と製品の最新カタログ、履歴事項全部証明書(発行後3か月以内)または開業・廃業等届出書、事業税・住民税の納税証明書、直近2期分の確定申告書、アドバイザーによる提案書などを提出します。ソフトウェア等1つの金額が税抜100万円以上の場合は2社以上の見積書が必要で、類似品の見積書では代用できません。入手できない場合は、オーダーメイド・メーカー直販・特定代理店販売のいずれかを理由に見積限定理由書を出します。
Step 7: 交付決定を待ってから発注する
審査会・交付決定は令和8年度第1回では令和8年9月下旬。交付決定通知はJグランツ上で通知されます。発注・契約・納品・支払いはすべて助成対象期間(令和8年10月1日〜令和9年9月30日)に収める必要があります。
Step 8: 実績報告と後払いの入金
事業完了後に実績報告を提出し、完了検査を経て助成金額が確定します。確定から請求、請求書到着から1か月程度で支払い。助成金は後払いなので、導入費用の立替が前提です。賃上げ要件有りの場合は、賃金引上げ計画期間の終了後にもう一度、額の確定・請求・支払の3手続きが走ります。事業化状況報告は事業完了後、翌年度以降5年間続きます。
よくある不備で採択を逃すケース
アドバイザーの提案書と申請内容がずれている
❌ 提案書は「在庫管理システムの導入」なのに、申請書では別のAIチャットボット導入を申請する
⭕ 提案書に記載のある課題と導入機器の範囲で申請する
必要書類一覧の「アドバイザーによる提案書」の欄に、「申請内容(課題・導入機器)は、提案書に沿ったものであることが必要です」と明記されています。提案書の範囲を超えた申請は通りません。ここがこの制度の一番の特徴です。
交付決定前に発注してしまう
❌ 採択の連絡が来たので業者と契約してしまう
⭕ 交付決定通知を受け取ってから発注・契約する
助成対象経費は、発注または契約・取得・実施・支払いまでの一連の手続きが助成対象期間内に行われたものだけです。クレジットカード払いの場合は銀行口座からの引き落としまで含みます。詳しい根拠は補助金の交付決定前の発注はなぜ対象外かで整理しています。
賃上げ要件の助成率で資金計画を組む
❌ 4分の3で入金される前提で自己資金の手当てを組む
⭕ 1回目は2分の1〜3分の2で入ると考えて資金計画を立てる
賃上げ要件有りは2回分割交付です。しかも計画または達成状況が確認できない場合は引き上げ後の助成率が適用されない場合があります。楽観的な計画は、達成できなければ助成率が下がり、達成できても入金が2回に割れます。
「一式」の見積書で出す
❌ 見積書に「システム構築一式」とだけ書いてある
⭕ 工程・項目ごとの作業内容、工数、時間、単価が入った内訳つきの見積書にする
募集要項には「見積書は『一式』等の詳細が不明の場合、助成対象外となります」とあります。大項目のみの記載ではなく、総額の算出根拠が分かる形にすること。ライセンスやクラウド利用など期間利用料がある場合は、1年間の利用料金等が明記されている必要があります。
関連会社や顧問先に発注する
❌ グループ企業や、代表者の親族が経営する会社にシステム開発を委託する
⭕ 資本関係・役員兼任・三親等以内の親族・顧問契約のない第三者に委託する
親会社・子会社・グループ企業、役員や社員を兼任している会社、代表者の三親等以内の親族が経営する会社、顧問・コンサルタント・技術指導等の契約を締結している会社との取引は、助成対象経費であっても対象になりません。
令和8年度から始まったDX推進トータルサポート助成金の位置づけ
東京都と公社は2026年3月30日の報道発表で、令和8年度の新規事業として「DX推進トータルサポート事業」を開始すると発表しました。アドバイザーによるDX戦略やAI活用計画等の策定支援、デジタル技術の導入から活用までのサポート、機器・システム等の導入経費の助成を1つの事業として組んだものです。
助成金側(DX推進トータルサポート助成金)の助成限度額と助成率は、報道発表の表がそのまま一次情報です。
| コース名 | 助成限度額(通常) | 助成限度額(大幅賃上げ枠) | 助成率(通常) | 助成率(賃上げ計画策定) |
|---|---|---|---|---|
| DX推進コース | 3,000万円 | 5,000万円 | — | 4分の3以内(小規模5分の4以内) |
| AI活用コース | 2,000万円 | 3,000万円 | 3分の2以内 | 4分の3以内(小規模5分の4以内) |
| 生産性向上コース | 1,500万円 | 2,000万円 | 2分の1以内(小規模3分の2以内) | 4分の3以内(小規模5分の4以内) |
助成期間は2年間、下限額は各コース30万円です。DX推進コースは賃金引上げ計画の策定が申請に際しての基本要件で、計画を達成できなかった場合の助成率は3分の2以内。AI活用コースも、達成できなかった場合は3分の2になります。
アドバイザー派遣側の募集社数は、DXステップアップコース20社、DXアドバンスコース10社、AI活用コース10社。生産性向上コースは6月と10月頃の2回募集を予定という設計です。DXアドバンスコースはDX戦略等が策定されている企業(DX認定取得企業等)が対象で、DX実現に向けた支援という位置づけになっています。
2026年9月26日時点で、DX推進トータルサポート助成金の募集開始時期は未定、募集要項も公開されていません。金額表だけが先に出ている状態なので、申請要件・対象経費・対象外経費は募集要項の公開を待って確認するのが正しい向き合い方です。DX推進助成金と同じ建て方なら、対象経費は5区分で汎用機器やテレワーク環境は外れる可能性が高いですが、これは要領が出るまで断定できません。
研修費は別制度 — DXリスキリング助成金との使い分け
「DX推進助成金で社員のAI研修費を出せますか」という質問が多いのですが、出せません。研修費は東京しごと財団のDXリスキリング助成金が担当です。この2つは運営団体も対象経費も別です。
| 比べる点 | DX推進助成金 | DXリスキリング助成金 |
|---|---|---|
| 運営 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 | 公益財団法人東京しごと財団 |
| 何に使うか | 機器・システム・ソフトウェア・クラウド・データ分析の導入費 | 従業員向けDX研修の受講料・教材代等 |
| 金額 | 助成限度額3,000万円(下限額30万円) | 1申請企業等あたり100万円が上限 |
| 助成率 | 2分の1以内〜5分の4以内(申請区分による) | 助成対象経費の4分の3(上限75,000円/受講者1人1研修) |
| 前提 | 公社のアドバイザーによる提案書 | 研修開始日の1か月前までに交付申請 |
| 令和8年度の受付 | 第1回は終了(2026年9月26日時点) | 交付申請書受付は令和8年3月1日〜令和9年2月28日 |
DXリスキリング助成金で通しにくい点も押さえておきます。1研修あたりの総研修時間数は3時間以上10時間未満で、8割以上の受講が必要。研修は令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始し、令和9年8月31日までに終了するものが対象です。サブスクリプション形式で提供される研修(定額制の研修)は助成対象外で、国または地方公共団体が主催・委託しているもの、申請企業と資本関係等のある教育機関が提供するものも対象になりません。趣味・教養、経営理念の浸透、意識改革、マニュアル作成のような「通常の業務に付随する内容」も外れます。
制度の詳細は東京都DXリスキリング助成金|研修費の3/4・上限100万円にまとめています。設備導入はDX推進助成金、人の育成はDXリスキリング助成金、と経費を分けて同じ年度に使うことは可能です(同一の経費に二重で助成を受けることはできません)。
無料で使える相談・診断の入口
「助成金の要件が厳しそう」「そもそも何から手をつけるか分からない」という段階なら、先に無料の相談窓口を使うのが早道です。
公社のデジタル化推進ポータルでは、デジタル推進巡回員による相談サポート(無料)を随時受け付けています。公社の支援への申し込みを検討している事業者や、まだ課題が明確でない事業者向けに、デジタル関連事業全般の紹介と活用方法の相談に応じる窓口です。アドバイザー派遣の募集が閉まっている時期でも、ここは開いています。
アドバイザー派遣(DX推進トータルサポート事業)そのものも支援はすべて無料で、ICT・IoT・AI・ロボットなどの技術を使って企業変革や生産性向上に取り組む中小企業へアドバイザーを派遣し、課題抽出から身の丈に合う取組内容の検討、導入計画の策定、導入後のフォローまで支援します。そしてこの派遣で受け取る提案書が、そのまま助成金の申請条件になります。
順番にすると、こうなります。
- デジタル推進巡回員に相談する(無料・随時)
- アドバイザー派遣の募集に応募し、審査を経て採択される
- 現地調査・診断を受け、提案書を受け取る(最低3か月程度)
- GビズIDプライムを用意し、助成金の事前予約を出す
- Jグランツで申請し、交付決定を待ってから発注する
この順番を飛ばして助成金だけを狙うと、提案書がないため申請そのものができません。都内のデジタルツール導入で先に小さく始めたい場合は、上限150万円の東京都の中小企業デジタル導入促進補助事業が別の入口になります。
よくある質問
東京都のDX推進助成金とは何ですか
公益財団法人東京都中小企業振興公社が実施する「DX推進支援事業」でアドバイザー派遣の支援を受け、アドバイザーが作成した提案書の内容に基づいて機器・システム等を導入する都内中小企業者等に対し、その経費の一部を助成する制度です。助成限度額は3,000万円(申請できる助成金の下限額30万円)、助成率は申請区分に応じて2分の1以内から5分の4以内です。
上限は3,000万円ですか、5,000万円ですか
「DX推進助成金」の助成限度額は3,000万円(下限額30万円)です。5,000万円は、令和8年度から始まった別の助成金「DX推進トータルサポート助成金」のDX推進コースについて、大幅賃上げ枠に該当した場合の助成限度額です。同じ公社の制度ですが別建てなので、どちらの数字かを必ず確認してください。
アドバイザー派遣を受けていなくても申請できますか
できません。DX推進助成金は、公社の「DX推進支援事業」におけるアドバイザー派遣の支援を受け、提案書の内容に基づく申請であることが申請要件です(公社が令和6年度に行った「デジタル技術活用推進緊急支援事業」を含みます)。なお公社は「DX推進支援事業の新規採択は終了しています」と案内しているため、これから入口に立つ場合はDX推進トータルサポート事業のアドバイザー派遣に応募することになります。
次の募集はいつですか
DX推進助成金の第2回については、2026年9月26日時点で公社ページに記載がありません。アドバイザー派遣側は、DX推進トータルサポート事業(生産性向上コース)の第2回募集が令和8年10月頃を予定と東京都の報道発表および公社ページに記載されています。DX推進トータルサポート助成金は募集開始時期が未定で、募集要項も公開されていません。
パソコンやスマートフォンの購入費は対象になりますか
対象になりません。パソコン(キーボード・マウス等の周辺部品を含む)、スマートフォン、カメラ、コピー機、FAX、固定電話機等の汎用性の高い機器は助成対象外経費に明記されています。社内の通信環境やテレワーク環境の整備・増強(LANの配線工事、ルーターの設置、テレワーク用のシステム・機器の導入)も助成対象外事業です。
生成AIのAPI利用料やSaaSの月額費用は使えますか
従量課金方式のように申請時に利用金額等が定められないものは、助成対象外経費に挙げられています。ソフトウェア導入費やクラウド利用費として計上する場合は、見積書で1年間の利用料金等が明記されていることが必要で、原則として助成対象期間の最後まで利用するものであることが求められます。期間使用料を途中で解約すると中止扱いとなり、助成金が交付できない場合があります。個別の判断は事務局(公社 生産性向上支援課 DX助成担当)に確認してください。
助成金はいつ振り込まれますか
後払いです。事業完了後に実績報告を提出し、完了検査を経て助成金額が確定します(完了検査から1か月程度)。確定後に請求し、請求書到着から1か月程度で支払われます。賃上げ要件有りで申請した場合は2回に分割して交付され、2回目は賃金引上げ計画期間の終了後に達成を確認してからの支払いになります。導入費用は一度立て替える前提で資金計画を立ててください。
国の補助金と併用できますか
同一の内容(経費)で国・都道府県・区市町村等から助成を受けていないことが申請要件です。申請時点から交付決定までの間に同一経費で他の補助金に併願し、両方で交付決定を受けた場合は、いずれか一方を取り下げることになります。設備導入は都の助成金、研修は別の制度のように経費を分けて使うのが原則です。国の制度との比較は中小企業向け補助金5制度 早見表を参照してください。
申請書の作成を代行してもらえますか
Jグランツ上の当初申請手続きに限り、代理申請機能を使って第三者(行政書士等)が申請を作成できますが、申請の確認および提出は申請者自身が行い、申請受付以降の手続きも申請者自身が行います。助成対象経費に関与する事業者(発注先・委託先)およびその従業員、本助成事業の運営・審査に関わる者は代理申請を請け負えません。なお補助金・助成金の申請書類の作成代行は行政書士の独占業務(行政書士法第1条の2)です。当社が提供しているのはAI導入の計画策定や社内活用のコンサルティング・研修で、申請代行は行いません。
運営元 Uravation より助成金を使ってAI研修を進める場合に、対象者の選び方・カリキュラム・効果測定・申請準備で確認しておく項目を、無料のチェックリストにまとめています。 AI研修導入40項目チェックリストを受け取る(無料)
参考・出典
- DX推進助成金 — 公益財団法人東京都中小企業振興公社 デジタル化推進ポータル(参照日: 2026-09-26)
- 令和8年度第1回 DX推進助成金(生産性向上コース/DX戦略策定支援コース)募集要項(PDF) — 同公社(参照日: 2026-09-26)
- DX推進トータルサポート助成金 — 同公社(参照日: 2026-09-26)
- DX推進トータルサポート事業 現地調査・診断〜アドバイザーによるトータル支援 — 同公社(参照日: 2026-09-26)
- DX推進トータルサポート事業【生産性向上コース】アドバイザー派遣 — 同公社(参照日: 2026-09-26)
- 助成金事業一覧 — 同公社(参照日: 2026-09-26)
- 令和8年度新規事業 DX推進トータルサポート事業(報道発表資料 2026年3月30日) — 東京都産業労働局・東京都中小企業振興公社(参照日: 2026-09-26)
- 令和8年度都内中小企業のDX推進と生産性向上を支援(報道発表資料 2026年5月28日) — 東京都産業労働局・東京都中小企業振興公社(参照日: 2026-09-26)
- 令和8年度DXリスキリング助成金 募集要項(2026年7月29日更新) — 公益財団法人東京しごと財団(参照日: 2026-09-26)
- Jグランツ(補助金電子申請システム) — デジタル庁(参照日: 2026-09-26)
- GビズID — デジタル庁(参照日: 2026-09-26)
- 中小企業支援 — 東京都産業労働局(参照日: 2026-09-26)
令和8年度の東京都DX支援をどう組み立てるか
東京都のDX支援は、無料のアドバイザー派遣と、その提案書を条件にした助成金の二段構えです。助成率も上限額も国の制度より手厚い一方、提案書を持っていない会社はそもそも申請の列に並べないという独特の設計になっています。
2026年9月26日時点で整理すると、こうなります。
- DX推進助成金(上限3,000万円)は令和8年度第1回の受付が終了。令和6・7年度のDX推進支援事業で提案書を持っている事業者向けの制度で、DX推進支援事業の新規採択は終了しています
- 次に動くのはアドバイザー派遣。DX推進トータルサポート事業(生産性向上コース)の第2回募集が令和8年10月頃を予定。第1回は募集件数に達して6月19日付で終了が告知されたので、募集開始の告知を見たら即応できる状態を作っておくこと
- その先の助成金はDX推進トータルサポート助成金(生産性向上1,500万円/DX推進3,000万円/AI活用2,000万円・いずれも大幅賃上げ枠で増額・助成期間2年間)。募集要項は未公開なので、要件と対象経費は公開後に確認する
- 研修費は別枠で確保できる。DXリスキリング助成金は令和9年2月28日まで交付申請を受け付けており、研修開始日の1か月前までに申請すれば年間100万円を上限に使えます
いま手を動かすなら、①デジタル推進巡回員の無料相談で自社の課題を言語化する、②GビズIDプライムを取得しておく(原則2週間程度)、③助成対象外の線(汎用パソコン、テレワーク環境、既存ソフトの更新、従量課金)を先に理解して導入候補を組み替える、の3つです。提案書に3か月かかる制度なので、募集開始を待ってから動くと1回次分まるごと遅れます。
あわせて読みたい:
- 東京都DX推進トータルサポート事業|生産性向上コースの申請ガイド — 次回募集で使うアドバイザー派遣の申込手順
- 東京都DXリスキリング助成金|研修費の3/4・上限100万円 — 従業員研修費の助成制度
- 中小企業向け補助金5制度 早見表 — 国の補助金との組み合わせ
自社のAI導入計画をどう組み立てるか、どの経費がどの制度に乗るかで迷っている場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年9月26日時点の東京都・公益財団法人東京都中小企業振興公社・公益財団法人東京しごと財団の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公益財団法人東京都中小企業振興公社公式サイトで最新の募集要項をご確認ください。個別の要件判断や税務・労務の取扱いについては、事務局および顧問税理士・社会保険労務士にご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
