2026年4月8日に厚生労働省の人材開発支援助成金が更新され、人への投資促進コースには新規採用助成・職務代行助成が追加され、事業展開等リスキリング支援コースには設備投資加算が新設されました。AI研修で使うなら、全社のAIリテラシー底上げやサブスク研修を回したい企業は人への投資促進コース、新規事業やDXの実装に合わせて訓練と設備を一体で進めたい企業は事業展開等リスキリング支援コースが基本線です。
ただ、名前が似ていて迷いやすいんですよね。実際には、対象となる訓練、必要書類、助成の出方がかなり違います。AI導入に使える補助金全体像はAI導入に使える補助金5選の比較記事、人材開発支援助成金の申請実務はAI研修×人材開発支援助成金の申請ガイドもあわせて読むと整理しやすくなります。
結論から先に — どちらを選ぶべきか
2コースの基本スペック比較
まずは助成率・賃金助成・追加メリットなど、判断に直結する項目を一覧で押さえておきましょう。
| 比較項目 | 人への投資促進コース | 事業展開等リスキリング支援コース |
|---|---|---|
| 向いている会社 | 全社向けAI研修、定額制eラーニング、DX人材育成を幅広く進めたい | 新規事業、業務DX、サービス転換に合わせて実務直結の研修をしたい |
| 中小企業の経費助成 | 定額制訓練は60%、高度デジタル人材訓練は75% | 原則75% |
| 中小企業の賃金助成 | 高度デジタル人材訓練は1時間あたり1,000円、定額制訓練は対象外 | 1時間あたり1,000円(eラーニング・通信制・定額制は対象外) |
| 追加メリット | 2026年4月8日版で新規採用助成27万〜67.5万円、職務代行助成75%が追加 | 2026年4月8日版で設備投資加算50%が新設 |
| 計画提出の期限 | 訓練開始日の6か月前〜1か月前 | 訓練開始日の6か月前〜1か月前 |
| 申請方法 | 管轄労働局へ訓練計画の提出・支給申請 | 管轄労働局へ訓練計画の提出・事業展開等実施計画・支給申請 |
ざっくり言うと、AIを学ぶための制度として使いやすいのが人への投資促進コース、AIを使って事業や現場を変える制度として強いのが事業展開等リスキリング支援コースです。
具体的な助成額シミュレーション
金額のイメージを持つことで、どちらのコースが自社に有利かが明確になります。
たとえば従業員50名の製造業で、全社員に生成AIの基本操作を習得させたいケースを考えます。月額1人3,000円の定額制eラーニングを12か月契約した場合、年間の受講料は180万円。人への投資促進コースの定額制訓練枠なら経費助成60%で108万円が助成対象になり得ます。一方、同じ会社がAI検品システムの導入に合わせて選抜5名に80時間の実装研修を受けさせるなら、リスキリング支援コースで経費75%+賃金助成1,000円×80時間=1人あたり最大30万円+8万円のイメージです。目的と規模によって有利なコースがはっきり変わります。
コース選定チェックリスト
以下は、コース選定の判断材料を整理するためのチェックリストです。社内稟議や労働局への事前相談時にそのまま使えます。
【コース選定チェックリスト】
□ 研修の主目的は「AIリテラシーの全社底上げ」か「特定事業・業務のAI実装」か
□ 受講対象は全社員(または大多数)か、選抜メンバーか
□ 研修形態は定額制サブスク型か、カリキュラム固定のOFF-JT型か
□ 事業計画書に「新規事業」「DX」「業務転換」の記載があるか
□ 研修と連動して設備(GPU、クラウド環境等)の導入予定があるか
→ 上3つに「はい」が多い → 人への投資促進コース寄り
→ 下2つに「はい」がある → 事業展開等リスキリング支援コース寄り
人への投資促進コースの特徴
制度概要と助成率の全体像
人への投資促進コースの基本スペックを一覧で確認します。AI研修では「定額制訓練」と「高度デジタル人材訓練」の2つの枠が特に使いやすいです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 人への投資促進コース |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 最新版 | 令和8年度版(2026年4月8日版) |
| 主な対象 | 定額制訓練、高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練、自発的職業能力開発訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練など |
| AI研修で使いやすい枠 | 定額制訓練、高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練 |
| 中小企業の助成率 | 定額制訓練60%、高度デジタル人材訓練75% |
| 賃金助成 | 高度デジタル人材訓練は1時間あたり1,000円、定額制訓練は対象外 |
| 申請受付 | 通年型(訓練開始日の6か月前〜1か月前に計画提出) |
| 公式情報 | 厚生労働省 人材開発支援助成金 |
AI研修との相性がいいのは、定額制の生成AI研修サービスと高度デジタル人材向けの実践研修を分けて設計できる点です。全社員にChatGPTやClaudeの使い方を学ばせる段階なら定額制訓練、データ分析・機械学習・AIプロダクト企画まで踏み込むなら高度デジタル人材訓練のほうがフィットしやすいです。
2026年4月改正で追加された新規採用助成・職務代行助成
2026年4月8日の改正内容は、すべてのAI研修に自動適用されるわけではありません。適用範囲を正しく理解しておく必要があります。
2026年4月8日の改正で追加された新規採用助成と職務代行助成は、長期教育訓練休暇等制度を使う企業向けの変更です。AI人材を採りながら育成したい企業には追い風ですが、短期の生成AI研修だけで自動的に使えるわけではありません。ここ、誤解しやすいので注意です。
助成額の試算例と訓練目的の書き方
実際の申請では、訓練目的の記載が審査通過のカギを握ります。金額試算とあわせて確認しておきましょう。
具体的な数字で見てみます。従業員30名の小売業が、全社員向けに月額2,500円の生成AIオンライン研修を年間契約した場合、受講料は年間90万円。定額制訓練の経費助成率60%を適用すると54万円が助成対象です。さらに、情報システム部門の3名に120時間のAIデータ分析研修(受講料1人40万円)を受けさせると、高度デジタル人材訓練として経費75%=1人あたり30万円+賃金助成1,000円×120時間=12万円、3名合計で最大126万円が見込めます。全社教育と選抜教育を1つのコースでまとめて申請できるのがこのコースの強みです。
訓練計画の「訓練の目的」欄は、労働局の担当者が最初に目を通す部分です。以下のような書き方が通りやすい傾向があります。
【訓練目的の記載例(定額制訓練)】
当社は小売業を営む中小企業であり、業務効率化と顧客対応品質の
向上を経営課題としている。全従業員を対象に、生成AIツールを
活用した業務文書作成・データ整理・顧客応対補助のスキルを習得
させることで、1人あたりの事務処理時間を現状比30%削減し、
接客時間の確保による売上向上を図る。定額制のオンライン研修
サービスを活用し、各自の業務スケジュールに合わせて段階的に
受講を進める計画である。
事業展開等リスキリング支援コースの特徴
制度概要と訓練要件
リスキリング支援コースは「10時間以上のOFF-JT」が必須要件です。制度の基本スペックを確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 最新版 | 令和8年度版(2026年4月8日版) |
| 訓練要件 | 10時間以上のOFF-JTで、事業展開・DX・GX・将来業務に必要な専門訓練であること |
| 中小企業の経費助成 | 75% |
| 中小企業の賃金助成 | 1時間あたり1,000円 |
| 受講者1人あたりの経費助成限度額 | 10時間以上100時間未満30万円、100時間以上200時間未満40万円、200時間以上50万円 |
| 設備投資加算 | 中小企業は50%、1人あたり上限15万円、10人以上は総額上限150万円 |
| 申請受付 | 通年型(訓練開始日の6か月前〜1か月前に計画提出) |
| 公式情報 | 厚生労働省 人材開発支援助成金 |
こちらは、AI研修そのものよりもAIを使った事業変革とセットで考える制度です。たとえば、営業チームに生成AI提案書作成研修を受けさせるだけなら人への投資促進コースでも足ります。一方で、AIチャットボット事業を立ち上げる、製造現場で画像認識を使う、コールセンターをAI前提で再設計する、といった文脈ならリスキリング支援コースのほうが制度趣旨に乗せやすいです。
設備投資加算の活用ポイントと助成額シミュレーション
2026年4月8日版で新設された設備投資加算は、研修と実装を同時に進める企業にとって大きなメリットです。
しかも2026年4月8日版では設備投資加算が新設されました。訓練だけで終わらず、AI導入に必要な対象機器まで視野に入るのが大きい。ぶっちゃけ、研修と実装が同時に動く会社にはこちらのほうが説得力を作りやすいです。
数字で見ると違いが明確になります。従業員20名の建設会社が、現場監督5名にAI画像認識による安全点検研修(60時間・受講料1人25万円)を受けさせ、同時にAI点検用カメラとクラウド環境を導入するケースを想定します。経費助成75%=1人あたり18.75万円、賃金助成1,000円×60時間=6万円、設備投資加算として機器費用の50%(1人あたり上限15万円)。5名合計で経費・賃金だけで約124万円、設備投資加算を含めると最大199万円の助成が見込めます。研修費だけでなく設備費まで一体でカバーできるのは、このコースならではの強みです。
事業展開等実施計画の記載例
事業展開等実施計画の記載では、「なぜ今この訓練が必要か」を事業戦略と紐づけることが審査のポイントになります。
【事業展開等実施計画の記載例】
1. 事業展開の概要
当社は建設業を営む中小企業である。2026年度より、AI画像認識
技術を活用した建設現場の安全点検サービスを新規事業として
開始する計画である。
2. 訓練の必要性
現場監督5名が、AI画像認識モデルの運用・判定結果の解釈・
異常検知時の対応フローを習得する必要がある。現状の目視点検
では1現場あたり平均45分を要しているが、AI導入後は15分への
短縮を目標とする。
3. 設備投資の内容(加算申請の場合)
訓練と一体的に導入する設備:AI点検用カメラ5台、クラウド
推論環境(月額利用料12か月分)。訓練修了後、直ちに現場
運用を開始する。
AI研修で補助対象になりやすい経費・訓練例
対象になりやすいAI研修テーマ
両コースとも、単なる福利厚生的な講座ではなく、職務に必要な訓練であることが前提です。AI/DX文脈で現実的に通しやすい例を並べると次のようになります。
- 生成AI業務活用研修:プロンプト設計、議事録要約、社内文書作成、営業提案書ドラフト化
- AIデータ分析研修:Python、BI、需要予測、顧客分析、在庫最適化
- AIプロダクト実装研修:RAG、API連携、チャットボット設計、AI-OCR運用
- 現場DX研修:画像認識、点検自動化、音声入力、バックオフィス自動化
関連経費としては、受講料、講師料、定額制の研修サービス利用料などが中心です。リスキリング支援コースでは、要件を満たせば設備投資加算の対象になり得る場面もあります。ただし、eラーニング・通信制・定額制サービスは経費助成のみで賃金助成は対象外という点は、事業展開等リスキリング支援コースの案内で明記されています。
研修テーマ別の助成額早見表
現実的に多い申請パターンを、金額感つきで整理します。
| 研修テーマ | 想定受講料(1人) | 時間数 | 適合しやすいコース | 中小企業の助成目安(1人) |
|---|---|---|---|---|
| 生成AIプロンプト活用(サブスク型) | 月額3,000円×12か月=3.6万円 | — | 人への投資促進(定額制) | 経費 約2.2万円 |
| AI×データ分析実践(集合研修) | 35万円 | 80時間 | どちらも可 | 経費 約22〜26万円+賃金8万円 |
| RAG・チャットボット構築(実装研修) | 45万円 | 120時間 | リスキリング支援 | 経費 最大40万円+賃金12万円 |
| AI画像認識×現場DX(設備連動型) | 25万円+設備30万円 | 60時間 | リスキリング支援 | 経費 約18.75万円+賃金6万円+設備15万円 |
研修会社への事前確認テンプレート
研修会社から見積書を取る段階で、以下のような情報を確認しておくと、労働局への提出書類がスムーズに作成できます。
【研修会社への確認事項テンプレート】
1. カリキュラムの総時間数(OFF-JTに該当する時間)
2. 受講修了の基準(テスト合格、課題提出、出席率など)
3. 受講者ごとの出席・進捗記録の提供可否
4. 見積書の内訳(受講料、教材費、システム利用料の区分)
5. 定額制サービスの場合:契約期間と1人あたりの月額単価
6. eラーニングの場合:受講時間の自動記録機能の有無
7. 受講修了証または修了報告書の発行可否
⚠️ 経費申請で要注意な項目
助成対象外になりやすい経費を事前に把握しておくことが重要です。以下は実務で見落としが多い項目です。
- 交通費・宿泊費:人材開発支援助成金では原則として助成対象外です。遠方の研修会場への出張費を助成額に含めて試算してしまうケースが散見されます。
- PC・タブレットの購入費:受講用端末は経費助成の対象外です。リスキリング支援コースの設備投資加算も、訓練に直接必要なAI関連設備が対象であり、汎用PC
