最初に — あなたの会社に合う制度は?
中小企業が2026年夏から秋にかけてAI導入を検討するとき、選択肢になる主要な補助金は大きく3つある。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)、省力化投資補助金(一般型)、ものづくり補助金だ。
正直、この3制度は制度設計も審査基準もぜんぜん違う。ソフトウェア導入だけならデジタル化・AI導入補助金、設備ごと自動化するなら省力化投資補助金、新製品開発を絡めるならものづくり補助金——というのがざっくりした棲み分けになる。
この記事では3制度の補助率・上限額・締切・対象経費・採択のコツを横断比較する。どの制度を選べば自社に合うか、読んだあと判断できるようにまとめた。
| 自社の状況 | おすすめ制度 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| AIツール・ソフトウェアだけ導入したい | デジタル化・AI導入補助金 | 1/2〜4/5 | 150万〜3,000万円 |
| ロボット・専用設備で自動化したい | 省力化投資補助金 | 1/2〜2/3 | 750万〜1億円 |
| AI活用の新製品・サービスを開発したい | ものづくり補助金 | 1/2〜2/3 | 最大4,000万円 |
| 小規模事業者でとにかく補助率がほしい | デジタル化・AI導入補助金(インボイス枠) | 最大4/5 | 350万円 |
| 人手不足が深刻で大型投資が必要 | 省力化投資補助金 | 1/2〜2/3 | 最大1億円 |
制度1:デジタル化・AI導入補助金 — ソフトウェア重視の入門編
2026年度から名称が「IT導入補助金」から変更され、AI導入が制度の柱に据えられた。生成AIツール、AIエージェント、RPA、クラウドサービスなど、ソフトウェア中心の導入に最も使いやすい。IT導入支援事業者(ベンダー)を通じて申請するのが前提。
基本データと対象枠
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | デジタル化・AI導入補助金 2026年度 |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 / 中小企業基盤整備機構(SMRJ) |
| 次回締切 | 第3次:2026年7月21日(第2次は6月15日締切済) |
| 今後の公募 | 第4次以降も年6〜7回実施予定 |
| 公式サイト | https://it-shien.smrj.go.jp/ |
| 申請枠 | 補助率 | 上限額 | こんな企業に |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2〜2/3 | 450万円 | AIツール・業務ソフト導入全般 |
| インボイス枠(対応類型) | 2/3〜4/5 | 350万円 | 会計・受発注・決済システム |
| インボイス枠(電子取引類型) | 1/2〜2/3 | 350万円 | 電子取引システム導入 |
| セキュリティ対策推進枠 | 1/2〜2/3 | 150万円 | サイバーセキュリティ対策 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 2/3〜4/5 | 3,000万円 | 複数社で連携したDX推進 |
ぶっちゃけ、ほとんどの中小企業は「通常枠」一択で考えればいい。AIチャットボット、AI-OCR、在庫管理の自動化、生成AIの業務活用ツール——これらすべて通常枠の対象だ。第3次からは「セカンドオピニオン」による事業計画確認が加点対象になるので、採択率を上げたいなら活用を検討しよう。
クラウド利用料は最大2年分が補助対象になるのも地味に大きい。月額課金のSaaS型AIツールを使う場合、導入初年度のハードルがぐっと下がる。
制度2:省力化投資補助金(一般型) — 設備・ロボット投資の本命
人手不足解消を目的に、オーダーメイドの省力化設備・ロボット・自動化システムを導入するための補助金。2026年度は複数回の公募が予定されており、現在第7回が進行中。上限額が3制度の中で最も高く、ガチで自動化したい企業向け。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業省力化投資補助事業(一般型)第7回 |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 / SMRJ |
| 公募開始 | 2026年6月5日 |
| 申請受付 | 2026年7月上旬〜7月下旬(予定) |
| 採択発表 | 2026年11月中旬(予定) |
| 補助率 | 中小企業:1/2、小規模事業者等:2/3(賃上げ特例で引き上げあり) |
| 上限額 | 750万円〜1億円(従業員規模による) |
| 公式サイト | https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/ |
この制度の最大の特徴は「オーダーメイド設備」に特化している点。既製品のIoT機器やロボットだけでなく、自社工場のラインに合わせたカスタム自動化システムも補助対象になる。AI画像検査装置の専用ライン導入や、ピッキングロボットによる倉庫自動化といった大規模案件に向く。
第7回の注目点として、生産性向上支援センターの伴走支援を受けられるようになったことと、歯科医業を営む医療法人が対象に追加されたことがある。採択率は直近の第5回で約61.5%と比較的高めで推移している。
注意すべきは申請受付期間が約3週間と短いこと。公募要領が公開されてから締切までに事業計画をまとめる必要があるため、いまから準備しておかないと間に合わない。GビズIDプライムの取得に2週間程度かかるので、未取得なら今日中に申請を始めよう。
制度3:ものづくり補助金 — 新製品開発とAI活用の両輪
正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。3制度の中で最も自由度が高く、設備投資+システム開発+試作品費まで幅広くカバーする。AIを活用した新製品開発や、スマート工場化を目指す製造業に特に相性がいい。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 直近の状況 | 23次締切:2026年5月8日(採択発表:2026年8月上旬予定) |
| 次回公募 | 24次締切:2026年9月28日(予定) |
| 補助率 | 中小企業:1/2、小規模事業者等:2/3(賃上げ要件で2/3に引き上げ可能) |
| 上限額 | 最大4,000万円(枠により変動、最大1億円規模のケースも) |
| 公式サイト | https://portal.monodukuri-hojo.jp/ |
ものづくり補助金の強みは「新製品・新サービス開発」と「設備投資」を1つの事業計画でパッケージにできること。たとえば「AI外観検査装置を自社開発し、その装置を製品として販売する」といった事業も補助対象になる。デジタル化・AI導入補助金や省力化投資補助金ではカバーしきれない「開発費」「試作費」を補助対象に含められるのが最大の差別化ポイントだ。
ただし、審査のハードルは3制度の中で最も高いと言われている。事業計画書の質が採択を大きく左右し、単なる「設備更新」ではなく「革新的な取り組み」であることを示す必要がある。採択率も他の2制度より低めで推移しているため、しっかりした事業計画の作り込みが必須だ。
23次の採択結果は2026年8月上旬に発表予定。この結果を見てから24次の申請戦略を練るのも一手だ。特に23次の採択率や加点されたポイントは、24次の申請書作成に直接活きてくる。申請類型も通常枠に加え、成長・賃上げ枠、グリーン枠、グローバル展開型など多様な枠が用意されているため、自社の事業に合わせた選択が可能だ。
→ 各補助金制度の補助率・上限額の詳細比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてほしい。
申請のしやすさとスピード感で比べる
| 観点 | デジタル化・AI導入補助金 | 省力化投資補助金 | ものづくり補助金 |
|---|---|---|---|
| 申請の手軽さ | ★★★★★ IT導入支援事業者が申請をリード |
★★★☆☆ 事業計画の作り込みが必要 |
★★☆☆☆ 審査厳しめ、計画書の質が命 |
| 公募頻度 | ★★★★★ 年6〜7回(約1.5〜2ヶ月おき) |
★★★☆☆ 年4回程度 |
★★☆☆☆ 年2〜3回程度 |
| 採択率の目安 | ★★★★☆ 通常枠で60〜70%程度 |
★★★★☆ 直近で約60-70% |
★★★☆☆ やや低め(事業計画次第) |
| 申請から交付までの期間 | 約3〜4ヶ月 | 約4〜6ヶ月 | 約5〜7ヶ月 |
| AI導入との相性 | ★★★★★ AIソフトウェア導入に最適 |
★★★☆☆ AI搭載の設備投資向け |
★★★★☆ AI活用の新製品開発向け |
「とにかく早く、手軽にAIツールを入れたい」ならデジタル化・AI導入補助金が圧倒的に有利。IT導入支援事業者が申請手続きの多くをカバーしてくれるので、補助金申請が初めての企業でもハードルが低い。公募回も多く、次の第3次締切(7月21日)を逃しても、第4次がすぐに来る。
一方、省力化投資補助金とものづくり補助金は、申請準備に最低1〜2ヶ月を見込む必要がある。公募要領を熟読し、自社の事業計画を数字で固めてから臨むのが基本だ。特に事業計画書では「生産性向上率」や「投資回収期間」といった数値指標を具体的に示せることが、採択の分かれ目になる。
対象経費の範囲 — どこまで補助されるか
| 経費項目 | デジタル化・AI導入 | 省力化投資 | ものづくり |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア・クラウド利用料 | ◎(最大2年分) | ○(設備付帯のみ) | ○(開発費の一部) |
| 機械装置・ロボット | △(一部ハードのみ) | ◎(オーダーメイド含む) | ◎ |
| システム開発・カスタマイズ費 | ○ | ◎ | ◎ |
| 試作品・プロトタイプ開発費 | × | × | ◎ |
| PC・タブレット端末 | △(上限10万円/台) | ×(原則対象外) | △(事業に必須の場合) |
| 導入設定費・研修費 | ◎ | ○ | ○ |
| 専門家経費・コンサル費 | △(複数者連携枠のみ) | ○(伴走支援あり) | ○ |
このテーブルが端的に示しているが、「ソフトウェアだけ」か「設備も」かで、選ぶ制度はほぼ決まる。AIチャットボットやAI-OCRといった純粋なソフトウェア導入ならデジタル化・AI導入補助金。AI検査装置やAIピッキングロボットのようなハードウェア込みの案件なら、省力化投資補助金かものづくり補助金になる。
もうひとつ、補助金選びで意外と見落とされがちなのが「自社の社内リソース」。デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者が申請書作成から進捗管理まで伴走してくれるため、社内に専任の補助金担当がいなくても進めやすい。一方、省力化投資補助金とものづくり補助金は、事業計画書の大半を自社で書く必要がある。経営者自身が数字を整理し、事業の将来像を文章化できるか——ここが実は制度選びの隠れた分岐点になる。
選ぶときに見落としがちな3つのポイント
❌ 間違い1:上限額だけで選ぶ
省力化投資補助金の上限が1億円と聞くと「これ一択でしょ」と思いがち。だが、上限が高い=審査も厳しいし、申請書類のボリュームも段違い。正直、初めて補助金を申請する企業がいきなり1億円の省力化投資補助金から入るのはおすすめしない。まずはデジタル化・AI導入補助金の通常枠(上限450万円)で実績を作ってから、次の投資にステップアップするのが現実的だ。
❌ 間違い2:補助率だけで判断する
デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠は補助率4/5(80%)と確かに魅力的。でも対象は「会計・受発注・決済ソフト」だけ。AIチャットボットを入れたいのにインボイス枠を選ぶと、そもそも対象外で門前払いになる。補助率より先に「自分のやりたいことが対象経費に入るか」を確認しよう。
❌ 間違い3:公募スケジュールを後回しにする
補助金は「思いついたときに申請できる」ものではない。デジタル化・AI導入補助金の第3次は7月21日締切。省力化投資補助金第7回は7月下旬締切見込み。ものづくり補助金24次は9月28日締切予定だが、その前にGビズID取得と事業計画の策定で1〜2ヶ月はかかる。「締切2週間前に気づいた」ではまず間に合わない。
加えて、補助金の交付決定はあくまで「後」だという現実も忘れてはいけない。申請→審査→採択→交付決定→事業開始→実績報告→交付——この全工程を考えると、実際に補助金が口座に振り込まれるのは申請から半年〜1年後になる。資金繰りに余裕がない企業は、このタイムラグを織り込んで計画を立てる必要がある。つなぎ融資を検討するなら、金融機関への相談も早めに済ませておこう。また日本政策金融公庫の「補助金つなぎ融資」制度を知っておくと、いざというときに選択肢が広がる。
併用できる? — 3制度の組み合わせ戦略
| 組み合わせ | 可否 | 活用イメージ |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入 + 省力化投資 | ⭕ 時期をずらせば可 | まずソフト導入→次に設備自動化の2段階 |
| デジタル化・AI導入 + ものづくり | ⭕ 時期をずらせば可 | クラウドAI導入→AI製品開発へ発展 |
| 省力化投資 + ものづくり | ⚠ 同一事業は不可 | 似た設備投資だと二重申請扱いに注意 |
| 3制度すべて | ⭕ 事業を明確に分ければ可 | 3ヶ年計画で段階的に活用する企業も |
| 国の補助金 + 自治体独自助成金 | ⭕ 同一経費の二重計上NG | 国の補助金で設備、自治体助成金で研修費 |
要するに、同じ事業の同じ経費を複数の補助金で二重取りしなければ、併用は可能。実際、弊社がAI導入を支援した企業の中にも「1年目はIT導入補助金でAIチャットボット導入、2年目は省力化投資補助金で倉庫自動化」と段階的に進めた事例がある。3年程度のロードマップを描いておくと、補助金の活用効率が格段に上がる。
特に業績が伸びている中小企業におすすめなのが「3ヵ年AI投資計画」だ。1年目にデジタル化・AI導入補助金で基盤となるAIツール群を導入し、業務効率化の効果を数字で示す。2年目にその実績をもとに省力化投資補助金へステップアップし、より大型の設備自動化に着手する。3年目にはものづくり補助金で自社開発のAIプロダクトを市場投入——という流れだ。各段階で前の補助金の実績報告が評価材料になり、申請の説得力が積み上がっていく。
いまから準備すべき3つのこと
1. 今日中にGビズIDプライムを取得する
どの補助金制度を使うにしても、GビズIDプライムは絶対に必要。発行まで1〜2週間かかるため、未取得なら即日申請を。特に初めて取得する場合は、印鑑証明書など必要書類の準備も含めて2週間は見ておきたい。→ GビズID登録の完全ガイド
2. 自社の「やりたいこと」を具体的に書き出す
「AIを導入したい」ではなく「月間300件の問い合わせ対応をAIチャットボットで自動化し、対応時間を月80時間→20時間に削減したい」というレベルまで具体化する。この具体性が、制度選びと事業計画書の質を決める。
3. 締切から逆算してスケジュールを立てる
デジタル化・AI導入補助金第3次(7月21日)を狙うなら、6月中にIT導入支援事業者を選定。省力化投資補助金第7回を狙うなら、6月中に事業計画の骨子を完成させる。ものづくり補助金24次(9月28日)なら、7月中に計画策定を開始するのが目安だ。
→ 補助金申請書の書き方については補助金申請書の書き方7つのコツで詳しく解説している。
最後に、制度選びで悩んだときの鉄則をひとつ。迷ったら「デジタル化・AI導入補助金の通常枠」から始めるのが、2026年時点でもっとも現実的な選択だ。理由はシンプルで、申請の難易度が低く、IT導入支援事業者が伴走してくれるため、はじめての補助金申請でも躓きにくい。AIツール導入で成果を出せれば、その実績を引っ提げて次回は省力化投資補助金——この積み上げパターンが最も成功率が高い。まずは一歩、動き出してみよう。
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執筆: 株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定や補助金活用についてのご質問は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
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免責事項
本記事の情報は2026年6月15日時点の各省庁・事務局の公表資料および公式サイトの情報に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。補助金の行政手続きそのものは必要に応じて行政書士・社労士などの専門家に確認し、当社はAI導入・DX投資計画の整理をサポートします。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金 公式サイト — SMRJ(参照日: 2026-06-15)
URL: https://it-shien.smrj.go.jp/ - 省力化投資補助金(一般型)第7回 公式サイト — SMRJ(参照日: 2026-06-15)
URL: https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/ - ものづくり補助金 総合サイト — 中小企業庁(参照日: 2026-06-15)
URL: https://portal.monodukuri-hojo.jp/ - 中小企業施策利用ガイドブック2026 — 中小企業庁(参照日: 2026-06-15)
URL: https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2026/download/2026gbookall.pdf - Jグランツ(電子申請ポータル) — デジタル庁(参照日: 2026-06-15)
URL: https://www.jgrants-portal.go.jp/ - 中小企業庁(参照日: 2026-06-15)
URL: https://www.chusho.meti.go.jp/
