東京都の中小企業がAI・DXに使える補助金は?
東京都は全国でもっともDX関連の支援制度が充実した自治体です。都独自の助成金だけで6つ以上の制度が走っていて、さらに国の補助金と併用できる組み合わせもあります。
ただし制度が多いぶん「結局どれを使えばいいの?」という声をよく聞きます。正直、制度ごとに対象経費も助成率もバラバラで、一覧表なしに理解するのはかなり厳しい。
この記事では、2026年度に東京都内の中小企業が使えるDX・AI関連の補助金6制度を横並びで比較し、投資規模・目的別におすすめの組み合わせを提案します。
あなたの会社に合う制度はどれか — 目的別早見表
| やりたいこと | おすすめ制度 | 助成率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| AIチャットボットやSaaSを導入したい | DX推進助成金(生産性向上コース) | 最大4/5 | 3,000万円 |
| AI搭載の設備・ロボットを入れたい | 躍進的事業推進のための設備投資支援事業 | 最大4/5 | 1億円 |
| 社員にAI研修を受けさせたい | DXリスキリング助成金 | 3/4 | 100万円/年 |
| DXで新規事業を始めたい | 経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業 | 最大4/5 | 800万円 |
| ITツール導入を手軽にやりたい(国制度) | デジタル化・AI導入補助金(国) | 最大4/5 | 450万円 |
| トータルでDX戦略を立てたい | DX推進トータルサポート事業 | — | —(支援事業) |
各制度の詳細と注意点を以下で解説していきます。各補助金制度の補助率・上限額の比較は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてください。
制度1: DX推進助成金 — AIシステム導入の本命
東京都中小企業振興公社が運営するDX支援の中核制度です。AI-OCR、チャットボット、生産管理AIなど、ソフトウェア中心のDX投資に幅広く使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | DX推進助成金(DX推進支援事業) |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成率 | 中小企業1/2、小規模企業者2/3(賃上げ計画策定で中小3/4、小規模4/5に拡充) |
| 助成上限額 | 3,000万円(下限30万円) |
| 対象経費 | 機器・ロボット導入費、システム構築費、ソフトウェア導入費、クラウド利用費、データ分析費 |
| 申請要件 | 公社派遣のDX推進アドバイザーによるトータル支援を受けること(必須) |
| 2026年度スケジュール | アドバイザー支援5月頃開始 → 助成金申請11月頃〜 |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社 |
注意: アドバイザー支援が「前提条件」
この助成金の最大の特徴は、いきなり申請できないことです。まず公社が派遣するDX推進アドバイザーの支援を3ヶ月以上受けて、アドバイザーが作成する提案書の内容に基づいて申請します。
「提案書ありき」なので自分で好きなツールを選んで申請するタイプではありません。逆に言えば、プロに相談しながら自社に合ったDX計画を作れるメリットがあります。急いでいる場合は他の制度を検討しましょう。
制度2: 躍進的事業推進のための設備投資支援事業 — 大型AI設備に
通称「躍進助成」。AI搭載の製造設備やロボットなど、1基50万円以上のハードウェア込みの投資に向いています。ソフトウェア単独でも対象になりますが、設備投資がメインの制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成率 | 1/2以内(賃上げ計画策定で中小企業3/4、小規模事業者4/5。ゼロエミッション対象はさらに優遇あり) |
| 助成上限額 | 1億円 |
| 対象経費 | 機械設備、器具備品、ソフトウェアの導入費(1基50万円以上) |
| 対象者 | 都内に登記上の本店または支店がある中小企業者(2年以上事業継続) |
| 2026年度スケジュール | 第1回(第12回):2026年3月16日募集開始、6月下旬採択予定 |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社 |
予算規模が191億円と東京都の支援制度では最大級。AI検品装置やAGV(無人搬送車)など数百万〜数千万円クラスの設備投資で威力を発揮します。
制度3: DXリスキリング助成金 — AI研修費を3/4カバー
ツールの導入ではなく「人への投資」に特化した助成金です。ChatGPTの業務活用研修、Python/AI基礎講座、データ分析研修など、DX関連の外部研修を従業員に受けさせるときに使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | DXリスキリング助成金 |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京しごと財団 |
| 助成率 | 3/4 |
| 助成上限額 | 1申請企業あたり年度100万円(1人1研修あたり75,000円が上限) |
| 対象経費 | 受講料、教科書代、ID登録料 |
| 2026年度受付期間 | 2026年3月1日〜2027年2月28日(研修開始1ヶ月前までに申請) |
| 公式サイト | 東京しごと財団 |
上限100万円と金額は大きくないものの、申請のハードルが低く、通年で何度でも申請可能なのが強み。たとえば10名にAI研修を受けさせて75万円の助成を受ける、といった使い方ができます。
代表者・個人事業主本人は対象外です。また常時勤務する事業所が都内にある従業員に限定されます。
制度4: 経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業 — 新制度に注目
2026年度の新規事業として103億円の予算が組まれた注目制度です。DX専門ではありませんが、AIを使った業務改善や新市場進出であれば対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業 |
| 実施機関 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| 助成率 | 2/3以内(賃上げ計画策定で中小企業3/4、小規模事業者4/5に拡充) |
| 助成上限額 | 800万円 |
| 対象経費 | 設備導入費、システム導入費、展示会出展費、市場調査費、外注加工費、専門家指導費ほか |
| 主なコース | ①設備導入等による業務改善、②新市場・新分野進出、③賃上げ促進 |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社 |
DX推進助成金のようなアドバイザー支援が前提ではないため、自社でAI導入計画を立てて直接申請できます。「DX推進助成金だとアドバイザーとのやり取りに時間がかかりすぎる」という企業にとって有力な選択肢です。
制度5: DX推進トータルサポート事業 — まずは相談から
2026年度に31億円の予算で新設されたDX支援の入口です。これ自体は「助成金」ではなく、デジタル技術の導入を通じた生産性向上・賃上げを包括的にサポートする事業です。
「自社にAIが必要かどうかすらわからない」「何から始めればいいかわからない」という段階の企業は、まずここから相談を始めるのが効率的です。ここでのアドバイスがDX推進助成金の申請にもつながります。
問い合わせは東京都 中小企業デジタルコンシェルジュから。
制度6: デジタル化・AI導入補助金(国)— 都制度と併用可能
旧「IT導入補助金」が2026年度から名称変更。都の制度ではありませんが、都内企業でも申請でき、都独自制度との併用が可能なケースがあるため比較に含めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2〜4/5(枠による) |
| 補助上限額 | 最大450万円 |
| 対象経費 | ソフトウェア費、クラウド利用料、導入関連費 |
| 申請受付 | 2026年3月30日〜(枠により5月12日または6月15日締切) |
| 公式サイト | デジタル化・AI導入補助金 事務局 |
IT導入支援事業者を経由する必要がありますが、アドバイザー支援に3ヶ月かかるDX推進助成金と違い、比較的短期間で申請できます。
6制度を一覧で比較する
| 制度 | 助成率 | 上限額 | 対象 | 申請しやすさ | AI導入向き度 |
|---|---|---|---|---|---|
| DX推進助成金 | 1/2〜4/5 | 3,000万円 | ソフト・システム中心 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
| 躍進助成 | 1/2〜4/5 | 1億円 | 設備+ソフト | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
| DXリスキリング助成金 | 3/4 | 100万円/年 | 研修費 | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| 創意工夫チャレンジ | 2/3〜4/5 | 800万円 | 設備・システム・外注 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| DX推進トータルサポート | — | — | 相談・支援事業 | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| デジタル化・AI導入補助金(国) | 1/2〜4/5 | 450万円 | ソフト・SaaS | ★★★★☆ | ★★★★★ |
都の制度と国の制度、併用できる組み合わせは?
補助金は「同じ経費の二重計上」がNGなだけで、異なる経費に充てるなら併用可能なケースがあります。たとえば以下の組み合わせが実務的に有効です。
| 組み合わせ | 可否 | 使い分け |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(国)+ DXリスキリング助成金(都) | ⭕ 可能 | 国の補助金でAIツール導入 → 都の助成金で社員研修 |
| 躍進助成(都)+ 人材開発支援助成金(国) | ⭕ 可能 | 都の助成で設備導入 → 国の助成金で操作研修 |
| DX推進助成金(都)+ デジタル化・AI導入補助金(国) | ❌ 原則不可 | 対象経費が重複しやすいため併用は困難 |
| 創意工夫チャレンジ(都)+ DXリスキリング助成金(都) | ⭕ 可能 | 設備・システム費 → チャレンジ、研修費 → リスキリング |
併用を検討する際は、必ず各制度の事務局に事前確認してください。公募要領の「他制度との併用」セクションに詳細が記載されています。
投資額別に見るおすすめの選び方
100万円以下のAI導入(SaaS・クラウドツール)
→ デジタル化・AI導入補助金(国)が最適。申請から採択まで比較的短く、IT導入支援事業者のサポートも受けられます。同時にDXリスキリング助成金で研修費もカバーすると効率的。
100万〜1,000万円のAI投資(システム構築・カスタマイズ)
→ DX推進助成金か創意工夫チャレンジ。時間に余裕があればDX推進助成金(アドバイザー支援付きで計画の精度が上がる)。急ぎなら創意工夫チャレンジのほうが申請フローがシンプル。
1,000万円以上の大型AI投資(設備+システム)
→ 躍進助成が第一候補。上限1億円・助成率最大3/4は東京都の制度で最強クラス。ただしハードウェア込みの投資が前提です。ソフトウェアだけならDX推進助成金のほうが使いやすいでしょう。
申請前に共通して必要な準備
どの制度を使うにしても、以下の準備は共通です。後からバタバタしないために、早めに動きましょう。
Step 1: GビズIDプライムを取得する(所要1〜2週間)
jGrants(電子申請)を利用する制度では必須。法人は印鑑証明書が必要なので早めに。→ GビズID登録ガイド
Step 2: 直近2期分の決算書を用意する
ほぼすべての制度で提出を求められます。損益計算書と貸借対照表は手元に揃えておきましょう。
Step 3: 自社の課題を数字で整理する
「業務に何時間かかっているか」「エラー率は何%か」「顧客対応の平均所要時間は」——こうした数字が申請書の説得力を大きく左右します。
Step 4: 導入したいAIツール・ベンダーの候補を決める
デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者を通す必要があります。DX推進助成金はアドバイザーの提案に基づきます。自社で候補を持っておくとスムーズです。
Step 5: 申請スケジュールを逆算する
DX推進助成金はアドバイザー支援開始(5月)から最低3ヶ月。躍進助成は第1回が3月募集開始で6月採択予定。国の補助金は3月30日から受付開始。交付決定前に発注・契約すると補助対象外になるので、スケジュール管理は必須です。
都の制度で「落ちやすい」失敗パターン
失敗1: DX推進助成金でアドバイザー支援を受けずに申請しようとする
❌ 「公社のアドバイザーなしで、自分で計画を作って申請する」
⭕ 「まずDX推進支援事業に申し込み、アドバイザーの提案書を受けてから助成金を申請する」
なぜ重要か: DX推進助成金は提案書なしでは申請自体ができません。制度の仕組みを理解せずに動くと数ヶ月無駄にします。
失敗2: 躍進助成で50万円未満の設備を申請対象に入れる
❌ 「AIソフト30万円 + タブレット15万円で合計45万円を申請」
⭕ 「1基あたり50万円以上の設備・ソフトウェアを対象に計画を組む」
なぜ重要か: 躍進助成は1基50万円(税抜)以上が最低ライン。小額のSaaS導入には向きません。
失敗3: DXリスキリング助成金で代表者本人の研修を申請する
❌ 「社長自身がAI研修を受けて助成金を申請」
⭕ 「従業員(雇用保険加入者)にAI研修を受けさせて申請。社長は自費で受講」
なぜ重要か: 代表者・個人事業主本人は助成対象外です。役員は雇用保険に加入している場合のみ対象になります。
失敗4: 交付決定前に発注・契約してしまう
❌ 「採択通知が来たので早速ベンダーに発注」
⭕ 「交付決定通知を受け取ってから発注・契約する」
なぜ重要か: これは国の制度でも都の制度でも共通のルール。採択≠交付決定。交付決定前の支出は一切補助対象になりません。
2026年度の申請スケジュールまとめ
| 制度 | 公募開始 | 申請締切 | 採択時期(予定) |
|---|---|---|---|
| 躍進助成(第1回/第12回) | 2026年3月16日 | 申請予約制 | 2026年6月下旬 |
| デジタル化・AI導入補助金(国) | 2026年3月30日 | 枠により5月12日 or 6月15日 | 順次 |
| DXリスキリング助成金 | 2026年3月1日 | 2027年2月28日(通年) | 随時 |
| DX推進助成金 | アドバイザー支援5月頃〜 | 助成金申請11月頃〜 | 2027年初頃 |
| 創意工夫チャレンジ | 受付中 | 公社サイトで確認 | — |
今すぐ申請できるのはDXリスキリング助成金(通年受付)とデジタル化・AI導入補助金(3月30日〜)。大型投資を考えている場合は躍進助成の第1回に間に合うよう準備を進めましょう。
東京都の中小企業が今日やるべき3つのこと
- GビズIDプライムを未取得なら今日中に申請する(取得まで1〜2週間。→ GビズID登録ガイド)
- 上の早見表で「やりたいこと」に合う制度を1つ選び、公式サイトで公募要領をダウンロードする
- 自社の業務課題を数字で3つ書き出す(月の作業時間、エラー率、対応件数など)——これが申請書の土台になる
どの補助金が自社に合うか迷ったら、東京都 中小企業デジタルコンシェルジュ(無料)や、お問い合わせフォームから気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:
- GビズID登録の完全ガイド — 申請の第一歩を画像付きで解説
- AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — 国の主要補助金を横並びで比較
- 補助金の採択後にやるべき手続き6ステップ — 交付決定から実績報告まで
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定や、どの補助金が自社に合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
免責事項
本記事の情報は2026年3月21日時点の各機関の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- DX推進助成金 — 東京都中小企業振興公社(参照日: 2026-03-21)
- 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 — 東京都中小企業振興公社(参照日: 2026-03-21)
- DXリスキリング助成金 令和8年度 — 東京しごと財団(参照日: 2026-03-21)
- デジタル化・AI導入補助金 — 経済産業省(参照日: 2026-03-21)
- 中小企業デジタルコンシェルジュ — 東京都(参照日: 2026-03-21)