「東京都の補助金、多すぎてどれを使えばいいかわからない」——そう感じている経営者は多い。制度ごとに助成率も上限も違うし、申請条件もバラバラだ。
この記事では、東京都内の中小企業が2026年度にDX・AI導入で使える主要5制度を一枚の比較表にまとめ、目的別に「どれを選ぶべきか」を先に示す。制度の詳細は比較表のあとに順を追って解説する。
まず結論 — 目的別に選ぶとこうなる
| やりたいこと | 最適な制度 | 助成率(最大) | 上限額 | 2026年度の状況 |
|---|---|---|---|---|
| AIシステム・SaaSをまとめて導入したい | DX推進助成金 | 4/5(賃上げ計画+小規模) | 3,000万円 | 第1回申請期間終了・次回予定あり |
| AI搭載の大型設備・ロボットに投資したい | 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 | 4/5(賃上げ計画+小規模) | 1億円 | 令和8年度第1回(第12回)受付中 |
| 社員にDX・AI研修を受けさせたい | DXリスキリング助成金 | 3/4(全企業共通) | 100万円/年(1人1研修7.5万円) | 令和8年度通年受付中(〜2027年2月) |
| ITツール・クラウドを手軽に導入したい | 中小企業デジタル導入促進補助事業 | 2/3(小規模・環境負荷軽減) | 150万円 | 令和8年度申請受付中(〜7月3日) |
| サイバーセキュリティ対策機器を入れたい | サイバーセキュリティ対策促進助成金 | 1/2 | 500万円 | 第1回終了・第2回は今夏予定 |
| テレワーク環境を整備したい | テレワークトータルサポート助成金 | 2/3(29人以下企業) | 250万円(30人以上は150万円) | 令和8年度受付中(〜2027年2月) |
各制度は国の補助金と原則として併用可能(同一経費への二重計上はNG)。IT導入補助金との組み合わせなど、詳しくは記事後半の「国の補助金との併用」で解説する。
東京都以外の国の補助金と比較したい場合は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてほしい。
5つの制度を横並びで比べる
助成率・上限額・対象経費・対象者・向いている企業を一覧化した。申請を検討する際の出発点として使ってほしい。
| 制度名 | 上限額 | 助成率 | 対象経費(主なもの) | 対象者 | 向いている企業 | 募集状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| DX推進助成金 | 3,000万円(下限30万円) | 1/2〜4/5(企業規模・賃上げ計画による) | システム構築費・ソフトウェア・クラウド・データ分析費・機器導入費 | 都内中小企業(アドバイザー支援を受けた企業に限定) | 中〜大規模なDX投資を計画中、公社のアドバイザー支援を活用できる企業 | 令和8年度第1回申請期間(6月9〜23日)終了。次回予定あり |
| 躍進的設備投資支援事業 | 1億円(下限500万円) | 1/2〜4/5(賃上げ計画・小規模で拡大) | 機械設備・器具備品・ソフトウェア(1基50万円以上) | 都内登記の中小企業(2年以上事業継続) | AI搭載設備・ロボット等のハードウェア投資が主体の企業 | 令和8年度第1回(第12回)受付中(第2回以降も予定) |
| DXリスキリング助成金 | 100万円/年(1人1研修7.5万円上限) | 3/4 | 研修受講料・教科書代・ID登録料 | 都内事業所に常時勤務する従業員(代表者除く) | 社員のAI・DXスキル底上げを優先したい企業 | 令和8年度通年受付(2026年3月〜2027年2月) |
| デジタル導入促進補助事業 | 150万円(下限5万円) | 1/2(小規模・環境負荷軽減ツールは2/3) | ツール購入費・初期設定費・カスタマイズ費・運用保守費 | 都内中小企業者等(会社・個人事業主・団体) | まず手軽にITツール・SaaSを導入したい企業 | 令和8年度申請受付中(2026年6月11日〜7月3日) |
| サイバーセキュリティ助成金 | 500万円(下限10万円) | 1/2 | セキュリティ機器・ソフト・クラウド利用料・OS・標的型メール訓練費 | SECURITY ACTION二つ星宣言済みの都内中小企業・団体 | DX推進と並行してセキュリティ強化が必要な企業 | 第1回終了。第2回は今夏掲載予定(東京都中小企業振興公社) |
| テレワークトータルサポート助成金 | 150万円(2〜29人)または250万円(30〜999人) | 2/3(2〜29人)または1/2(30〜999人) | PC購入費・業務ソフト・委託費・賃借料・使用料等 | 都内事業所のある常時雇用2人以上999人以下の中堅・中小企業等 | リモート対応が遅れており、テレワーク環境を整備したい企業 | 令和8年度受付中(2026年5月29日〜2027年2月5日) |
各制度の詳細と申請ポイント
DX推進助成金 — ソフトウェア中心のDX投資に
東京都中小企業振興公社が運営する制度で、AI-OCR・チャットボット・生産管理AI・クラウドERPなど、ソフトウェア中心のDX投資に幅広く使える。2026年度の令和8年度第1回は申請期間が6月9〜23日で終了しているが、次回公募が予定されている。
最大の特徴は、公社派遣のDX推進アドバイザーによる支援を受けることが申請の前提条件である点だ。アドバイザーと3ヶ月以上伴走してDX計画を作り、その提案書に基づいて申請する。急いで資金が必要な場合は次に紹介する制度を検討してほしい。
助成率は企業規模と賃上げ計画の有無で変わる。中小企業の標準は1/2だが、賃上げ計画を策定すれば3/4まで上がる。小規模企業者は1段上の率が適用され、最大4/5になる。
公式情報: DX推進助成金(東京都デジタル化推進ポータル)(参照日: 2026年6月18日)
生産性向上コースの詳細は 東京都DX推進助成金 生産性向上コース解説 で別途まとめている。
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 — 大型AI設備に
通称「躍進助成」。AI搭載の製造ロボット・AGV(無人搬送車)・AI検品装置など、1基50万円以上のハードウェア込みの投資に向いている制度だ。ソフトウェア単体でも対象になるが、純粋なSaaS導入ならDX推進助成金の方が相性がいい。
予算規模が大きく、上限1億円という都内最大級の助成金。令和8年度第1回(第12回)が現在受付中で、採択は6月下旬の予定。第2回以降も予定されている。
申請条件として「都内に登記上の本店または支店があること」「2年以上継続して事業を行っていること」が必要。
公式情報: 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
DXリスキリング助成金 — AI研修費の3/4を出してもらえる
東京しごと財団が運営する、「人への投資」に特化した助成金。ChatGPT業務活用・Python/AI基礎・データ分析など、DX関連の外部研修を従業員に受けさせるときに使える。
助成率は3/4(75%)で固定。1申請企業あたり年度100万円まで、1人1研修につき最大75,000円が助成される。1申請企業あたり100万円が上限であり、「1人あたり100万円」ではない点に注意。10名に各7.5万円の研修を受けさせれば最大75万円の助成になる計算だ。
令和8年度は2026年3月1日から通年受付中で、研修開始の1ヶ月前までに申請すればよい。代表者・個人事業主本人は対象外で、都内事業所に常時勤務する従業員に限定される。
公式情報: DXリスキリング助成金(東京しごと財団)(参照日: 2026年6月18日)
詳細な申請手順は 東京都DXリスキリング助成金 2026年度ガイド で解説している。
中小企業デジタル導入促進補助事業 — 手軽にITツールを入れたい企業向け
上限150万円・助成率1/2(小規模事業者または環境負荷軽減ツールは2/3)と、DX推進助成金に比べるとスケールは小さいが、アドバイザー支援なしで申請できるシンプルさが強み。令和8年度は2026年6月11日〜7月3日が申請期間で、現在受付中だ。予算達成時点で終了するため早めの申請を検討したい。
対象は自社のデジタル化のために新たに導入するツールの購入費と初期設定費。汎用PCやOSは対象外。
公式情報: 中小企業デジタル導入促進補助事業(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
デジタルツール導入全般のポイントは 東京都デジタルツール導入支援 2026年度ガイド も参考にしてほしい。
サイバーセキュリティ対策促進助成金 — DXと並行してセキュリティも強化
DX推進と同時にサイバーセキュリティ対策機器の導入を進める企業に向いた助成金。助成率1/2、上限500万円。申請条件としてIPA(情報処理推進機構)のSECURITY ACTION 二つ星を宣言済みであることが必要で、宣言はウェブ上で無料で行える。
令和8年度は第1回申請が終了しており、第2回は今夏掲載予定(東京都中小企業振興公社公式サイト)。
公式情報: サイバーセキュリティ対策促進助成金(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
詳細な申請方法は 東京都サイバーセキュリティ対策促進助成金ガイド で確認できる。
テレワークトータルサポート助成金 — テレワーク環境整備に
東京しごと財団が運営する、テレワーク環境の整備を支援する助成金。常時雇用2〜29人の企業は上限150万円・助成率2/3、30〜999人は上限250万円・助成率1/2となる。
令和8年度は2026年5月29日から2027年2月5日まで受付中。申請にあたって、東京都が実施する「テレワーク相談窓口」の利用が必須要件になっている。
公式情報: テレワークトータルサポート助成金(東京しごと財団)(参照日: 2026年6月18日)
テレワーク関連の補助金詳細は テレワーク・AI補助金 東京都・国の制度ガイド も参照してほしい。
国の補助金との併用パターン
東京都の制度は国のIT導入補助金・ものづくり補助金と同一経費への二重計上をしない限り原則として併用可能だ。よくある組み合わせを紹介する。
| 東京都の制度 | 国の補助金 | 組み合わせのポイント |
|---|---|---|
| DXリスキリング助成金 | IT導入補助金(ソフトウェア導入) | 「ソフト導入費」をIT導入補助金で、「研修費」をリスキリング助成金でそれぞれ申請。同一経費の二重計上はNG |
| DX推進助成金 | 人材開発支援助成金(厚生労働省) | システム導入費を都の助成金で、社内人材育成費を厚労省の助成金でカバー |
| サイバーセキュリティ助成金 | IT導入補助金(セキュリティ対策類型) | 同一機器への二重申請は不可。機器によってどちらが有利か試算を |
申請で失敗する3つのパターン
❌ DX推進助成金でアドバイザー支援なしに申請しようとする
⭕ アドバイザー支援を受けてから申請フローに入る
アドバイザー支援が前提条件なので「いきなり申請」はできない。まず公社に問い合わせてアドバイザー派遣を申し込み、支援開始後に申請フローが始まる。焦っている場合はデジタル導入促進補助事業など他制度を先に使う方が早い。
❌ 交付決定前に機器を発注してしまう
⭕ 必ず交付決定通知を受け取ってから発注・契約する
採択=交付決定ではない。採択通知後も交付申請・交付決定という手順がある。交付決定前に発注した経費は補助対象外となる。この失敗は非常に多い。
❌ 募集状況を確認せずに申請準備を進める
⭕ 申請前に公式サイトで最新の公募情報を確認する
各制度は公募期間が決まっており、次回公募の時期は変わる場合がある。記事の内容は2026年6月18日時点の情報だが、最新の締切・受付期間は必ず各制度の公式サイトで確認してほしい。
よくある質問
Q. 東京都のDX助成金は同じ企業が複数同時に申請できますか?
A. 制度によって異なります。DXリスキリング助成金とDX推進助成金は原則として同時申請可能ですが、同一経費への二重申請はいずれの組み合わせでも禁止されています。各制度の公募要領で「他の助成制度との関係」を必ず確認してください。
Q. 東京都DX推進助成金の「賃上げ計画」とは何ですか?
A. 申請企業が一定の賃金引上げを計画することを宣言することで、助成率が上がる仕組みです。具体的な要件は各公募回の募集要項に記載されています。公社担当者への事前相談をお勧めします。
Q. DXリスキリング助成金の「1申請企業あたり100万円上限」は年度ごとにリセットされますか?
A. はい。年度ごとに100万円の上限がリセットされます。令和8年度(2026年度)は2026年3月から2027年2月が対象期間です。
Q. サイバーセキュリティ対策促進助成金のSECURITY ACTION宣言はどこで行いますか?
A. IPAのSECURITY ACTION公式サイト(https://www.ipa.go.jp/security/security-action/)から無料で申請できます。二つ星の宣言後にIDが発行され、助成金申請時の書類として使用します。
申請の第一歩: GビズID登録
都の助成金の多くは電子申請(jGrants経由)が必要で、jGrantsにはGビズIDが必要だ。GビズIDの取得には1〜2週間かかるため、申請を検討し始めた段階で並行して手続きを進めておくといい。
GビズIDの取得手順は GビズID登録ガイド で詳しく解説している。
参考・出典
- DX推進助成金(東京都デジタル化推進ポータル) — 公益財団法人東京都中小企業振興公社(参照日: 2026年6月18日)
- 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
- DXリスキリング助成金(東京しごと財団)(参照日: 2026年6月18日)
- 中小企業デジタル導入促進補助事業(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
- サイバーセキュリティ対策促進助成金(東京都中小企業振興公社)(参照日: 2026年6月18日)
- テレワークトータルサポート助成金(東京しごと財団)(参照日: 2026年6月18日)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年6月18日時点の各機関の公表資料に基づく参考情報です。各制度の内容・公募期間・助成率は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
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