7月24日17時——これが事業承継・M&A補助金 第15次公募の申請締切だ。
後継者不在で廃業を検討しているオーナー経営者、M&Aを経て経営統合を進める中堅企業、親族内承継の準備を始めた中小製造業。それぞれが抱える課題は違う。事業承継・M&A補助金は「全員に同じ制度」ではなく、状況に応じて4つの枠を使い分ける仕組みになっている。
正直、制度の構造が複雑で「自社はどれを使えばいいのか」がわかりにくい。この記事では、枠ごとの補助率・上限額・対象経費を横並びで整理し、あなたの会社に合う枠を見つけるための比較ガイドを提供する。
まず結論:あなたの状況に合う枠はこれだ
| あなたの状況 | 使うべき枠 | 上限額 |
|---|---|---|
| M&Aで会社を売りたい(小規模事業者) | 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | 150万円 |
| M&Aで会社を売りたい(一般) | 専門家活用枠 売り手支援類型 | 600万円 |
| M&Aで会社を買いたい | 専門家活用枠 買い手支援類型 | 600万円〜2,000万円 |
| M&A後の経営統合(PMI)を進めたい | PMI推進枠 | 150万円〜1,000万円 |
| 5年以内に親族・従業員へ承継する予定 | 事業承継促進枠 | 800万円〜1,000万円 |
| 廃業して新たな事業に挑戦したい | 廃業・再チャレンジ枠 | 300万円(他枠との併用可) |
補助金比較の全体像は中小企業向け補助金5制度 早見表【2026年】もあわせて参照してほしい。
事業承継・M&A補助金 第15次の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金(15次公募) |
| 所管 | 中小企業庁(事務局:独立行政法人中小企業基盤整備機構) |
| 申請受付期間 | 2026年6月19日(金)〜 2026年7月24日(金)17:00 |
| 採択発表 | 2026年9月中旬以降(予定) |
| 交付申請受付 | 2026年9月中旬〜2027年7月下旬(予定) |
| 申請方法 | 電子申請(jGrants)※GビズIDプライム必須 |
| 対象者 | 中小企業者・小規模事業者・個人事業主 |
| 公式サイト | 令和7年度補正予算 事業承継・M&A補助金 |
※ 申請にはGビズIDプライムの取得が必須。発行に2〜3週間かかるため、まだ取得していない場合は今すぐ申請すること。
枠1:専門家活用枠 — M&A仲介費・デューデリジェンス費用を補助
専門家活用枠は、M&Aを実施する際の専門家費用(仲介手数料、FA費用、デューデリジェンス費用など)を補助する枠だ。「買い手」「売り手」「小規模売り手」の3類型に分かれている。
買い手支援類型
| 項目 | 通常 | 100億企業宣言特例 |
|---|---|---|
| 補助率 | 2/3以内 | 1,000万円以下:1/2、1,000万円超〜2,000万円:1/3 |
| 上限額 | 600万円(DD費用上乗せで最大800万円) | 最大2,000万円 |
| 対象経費 | 仲介・FA費用、デューデリジェンス費用、システム構築費、登記・登録費用など | |
ポイント:「100億企業宣言」は売上高100億円を目指す宣言をした企業向けの上乗せ特例。大型M&Aで費用が高額になる場合は検討する価値がある。
売り手支援類型
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(営業利益率が低下している場合または赤字の場合は2/3以内) |
| 上限額 | 600万円(廃業費用を併用する場合は最大900万円) |
| 対象経費 | 仲介・FA費用、DD費用(買収監査)、システム構築費、専門家相談費など |
小規模売り手支援類型(第15次より制度整備)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2/3以内 |
| 上限額 | 150万円(廃業費用併用時は加算) |
| 対象経費 | 仲介・FA費用、DD費用など(小規模な案件に特化) |
| 対象 | 小規模事業者(製造業等20名以下、商業・サービス業5名以下) |
ポイント:上限額が150万円と低いが、補助率2/3は高水準。小規模M&Aで仲介費用を実費100万円程度に抑えたい場合に有効だ。
枠2:PMI推進枠 — M&A後の経営統合コストを支援
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後に実施する経営統合プロセスのことだ。システム統合、組織再編、ブランド統一など、M&Aの成果を出すためのコストが意外と大きい。PMI推進枠はそのコストを支援する。
PMI専門家活用類型
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2/3以内 |
| 上限額 | 150万円 |
| 対象経費 | PMIに係る専門家費用(コンサルタント費、社労士費用など) |
事業統合投資類型
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 小規模事業者:2/3以内、その他:1/2以内 |
| 上限額 | 800万円(賃上げ要件達成時:1,000万円) |
| 対象経費 | 設備投資費、システム構築費、店舗改装費、販路開拓費用など |
PMI推進枠で審査員が重視するのは「M&Aの効果をどう最大化するか」という視点だ。「買収したが統合が進んでいない」「旧来のシステムが2系統並立している」といった課題と、投資によってどう解決するかを具体的な数値目標で示すと評価が高まる。
枠3:事業承継促進枠 — 親族内承継・従業員承継の設備投資を支援
M&Aではなく、5年以内に子ども・親族・従業員へ承継する予定の事業者向けの枠だ。承継後の成長投資(設備導入・デジタル化・販路拡大など)を補助する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 小規模事業者:2/3以内、その他:1/2以内 |
| 上限額 | 800万円(賃上げ要件達成時:1,000万円) |
| 対象経費 | 設備投資費、建物改築費、デジタルツール導入費、販路開拓費、専門家費用など |
| 対象者 | 5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している中小企業・小規模事業者 |
「承継後にAIやDXツールを導入して生産性を上げたい」という計画は、この枠の申請書に書きやすい内容だ。デジタル化・AI導入補助金と比べると審査基準が異なるため、両方を検討する価値がある(ただし同一経費の二重計上は不可)。
枠4:廃業・再チャレンジ枠 — 廃業コストを補助して新事業への挑戦を後押し
後継者が見つからず、事業承継もM&Aも難しい——そういうケースで廃業を選ぶ経営者も少なくない。廃業・再チャレンジ枠は、既存事業を整理して新しい事業に挑戦する際の廃業コストを補助する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2/3以内 |
| 上限額 | 300万円(他の枠と併用する場合は各枠の上限に300万円を加算) |
| 対象経費 | 廃業支援費(弁護士・司法書士費用)、在庫処分費、建物解体費、原状回復費、リース解約違約金 |
廃業・再チャレンジ枠の特徴は「他の枠との併用ができる」点だ。例えば「M&Aで会社の一部事業を売却し(専門家活用枠)、残りの不採算部門を廃業する(廃業・再チャレンジ枠)」という組み合わせが可能で、その場合は合計上限額が加算される。
4枠を横断比較する
| 枠・類型 | 補助率 | 上限額 | 主な対象経費 | 使うべき場面 |
|---|---|---|---|---|
| 専門家活用枠 買い手支援(通常) | 2/3 | 600〜800万円 | 仲介・FA費用、DD費用 | M&Aで企業を買収する |
| 専門家活用枠 買い手支援(100億特例) | 1/2〜1/3 | 最大2,000万円 | 同上 | 大型M&A(100億企業宣言) |
| 専門家活用枠 売り手支援 | 1/2〜2/3 | 600万円 | 仲介・FA費用、DD費用 | M&Aで会社を売る |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援 | 2/3 | 150万円 | 仲介・FA費用 | 小規模事業者がM&Aで売る |
| PMI推進枠 専門家活用類型 | 2/3 | 150万円 | PMI専門家費用 | M&A後の統合で専門家を使う |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 1/2〜2/3 | 800〜1,000万円 | 設備投資、システム構築 | M&A後の設備・システム統合 |
| 事業承継促進枠 | 1/2〜2/3 | 800〜1,000万円 | 設備投資、DXツール導入 | 親族・従業員へ承継後の成長投資 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2/3 | 300万円(他枠に加算) | 廃業コスト全般 | 廃業して新事業へ |
申請で落とされやすい3つのパターン
事業承継・M&A補助金は、書類ミスよりも「計画の説得力不足」で落とされるケースが多い。
落とされるパターン1:承継後の事業計画が抽象的
「承継後に生産性を向上させる」という計画では、審査委員は評価できない。「現状の受注処理時間は月80時間→AIツール導入で月25時間に削減」「新規取引先を2年以内に3社以上開拓する」のように、Before/Afterを数字で示す必要がある。
落とされるパターン2:廃業・再チャレンジ枠で「廃業の理由」が曖昧
廃業・再チャレンジ枠では「なぜ事業を廃業するのか」「廃業後に何をするのか」が審査のポイントになる。「後継者がいない」だけでは弱い。廃業に至る経緯、廃業後の新事業計画、新事業が採算性を持つ根拠まで一連のストーリーが必要だ。
落とされるパターン3:PMI計画が「買収しました」で終わっている
PMI推進枠の審査で最もよく見る失敗は、「M&Aは完了しているが統合計画が存在しない」というケースだ。PMIは「いつまでに」「どのシステムを」「どう統合するか」を具体的なロードマップとして記載する。6ヶ月先・1年先のマイルストーンが書かれていると採択率が上がる。
申請から採択までの流れ
第15次の申請スケジュールは以下のとおりだ。
| フェーズ | 時期 | やること |
|---|---|---|
| 今すぐ | 〜7月上旬 | GビズIDプライムの取得確認(未取得は発行に2〜3週間) |
| 申請書作成 | 〜7月23日 | 事業計画書・経費明細の作成、専門家費用の見積書取得 |
| 申請 | 7月24日17:00まで | jGrantsから電子申請 |
| 審査 | 8月〜9月 | 書類審査(必要に応じてヒアリングあり) |
| 採択発表 | 2026年9月中旬以降 | 採択通知の受領 |
| 交付申請 | 2026年9月中旬〜2027年7月下旬 | 交付申請書の提出・交付決定後に事業開始 |
重要:交付決定前に対象経費の発注・契約・支払いを行うと補助対象外になる。採択通知≠交付決定なので、交付決定の通知を受けてから事業を開始すること。
GビズID未取得なら今日から動く
7月24日まで残り約4週間だが、GビズIDプライムを持っていない場合は今すぐ申請を開始すること。GビズIDは印鑑証明書が必要で、発行まで通常2〜3週間かかる。GビズIDがなければjGrantsでの申請自体ができない。
GビズID取得の手順は登録ガイドで詳しく解説しているので、未取得の場合はまず確認してほしい。
よくある質問
Q1: 複数の枠に同時申請できますか?
専門家活用枠と廃業・再チャレンジ枠の併用など、一部の組み合わせは可能だ。ただし同一経費に対して複数の枠から重複補助を受けることはできない。詳細は各枠の公募要領で確認すること。
Q2: 採択率はどのくらいですか?
第15次の採択率は現時点で未公表(2026年6月時点)。参考として、前回第14次の採択状況は事務局による審査結果の公表後に確認できる。公式サイトで採択結果の公表を確認すること。
Q3: M&Aはまだ成立していないが申請できますか?
専門家活用枠はM&A成立前の手続き費用も対象になるケースがある。ただし枠ごとに対象となるフェーズが異なるため、公募要領の「事業の実施期間」を必ず確認すること。
Q4: 個人事業主も申請できますか?
対象者に「個人事業主」が含まれている枠もある。ただし法人と個人事業主では必要書類が異なる。詳細は各枠の公募要領を参照のこと。
Q5: 廃業・再チャレンジ枠は廃業後に申請するのですか?
採択前に廃業を完了させる必要はない。採択→交付決定→廃業手続き→補助金交付という流れが基本。ただし廃業の「意思確認書」などが申請時点で必要になる場合があるため、公募要領で確認すること。
参考・出典
- 中小企業生産性革命推進事業「事業承継・M&A補助金」(十五次公募)の公募要領を公表します | 中小企業庁(参照日:2026-06-29)
- 令和7年度補正予算 事業承継・M&A補助金 公式サイト(参照日:2026-06-29)
- 「事業承継・M&A補助金」(15次公募)の公募要領公開について | 中小企業基盤整備機構(参照日:2026-06-29)
- 事業承継・M&A補助金のご案内 | 補助金活用ナビ(中小機構)(参照日:2026-06-29)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
どの枠が自社に合うか判断に迷う場合は、お問い合わせフォームからご質問ください。AI導入・DX計画の策定から補助金活用の方向性まで、具体的なご相談に対応しています。
免責事項
本記事の情報は2026年6月29日時点で中小企業庁・中小企業基盤整備機構が公表している資料をもとにした参考情報です。制度の詳細・補助率・上限額・対象経費は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
