「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」が必要な理由
令和8年5月14日、厚生労働省は人材開発支援助成金の支給要領を改正し、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出を義務化しました。
この様式が導入された背景には、訓練費用の適正確認という行政ニーズがあります。人材開発支援助成金では、外部研修にかかる「受講料」の最大75%(中小企業の場合)を助成するため、受講料が市場相場と乖離していると助成金制度の適正な運用が損なわれるおそれがあります。そこで、訓練提供者が設定した受講料の根拠を申請事業主が書面で示すよう求めることで、適正価格による訓練の実施を担保するのがこの疎明書の役割です。
以前は書類を追加提出する必要はありませんでしたが、今後は支給申請のたびにこの疎明書を「その他管轄労働局長が必要と認める書類」として添付しなければなりません。
結論から先に — この記事でわかること
| 確認したいこと | 本記事の該当箇所 |
|---|---|
| 疎明書は何のための書類か | 上記「必要な理由」 / 「制度の位置づけ」 |
| いつ・誰が提出するのか | 「提出が必要なケース」 |
| 何を書くのか | 「記載事項と記入のポイント」 |
| 記入例を見たい | 「具体的な記入例(想定シナリオ)」 |
| よくある差し戻しパターン | 「よくある不備と回避策」 |
| 様式28号のダウンロード先 | 「ダウンロード・提出先」 |
制度の位置づけ ― 様式28号は「支給申請時」の添付書類
人材開発支援助成金の申請は大きく2段階に分かれます。
- 訓練計画届(訓練開始前に提出): 何の研修を、いつ、誰に実施するかを届け出る
- 支給申請(訓練終了後に提出): 実際に実施した訓練の成果と経費を申告し、助成金を請求する
様式第28号は「支給申請」のタイミングで提出する書類です。訓練計画届には不要です。支給申請書に様式28号を一式添付して、管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出します。
令和8年5月14日以前に届を出した案件も対象
訓練計画届の提出時期を問わず、令和8年5月14日時点で支給申請が完了していない案件(=支給決定または不支給決定が出ていない案件)はすべて対象となります。既に届は出していても、これから支給申請を行う場合は様式28号が必要です。
提出が必要なケース ― 対象コースと対象者
令和8年5月14日以降、様式第28号の提出が義務づけられているのは以下のコースです。
| コース名 | 主な対象訓練の例 | 経費助成率(中小企業) |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース | OFF-JT(社外研修・外部講師研修など) | 最大75% |
| 人への投資促進コース (長期教育訓練休暇等制度を除く) |
高度デジタル人材向けの専門訓練など | 最大75% |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新分野展開・DX・AI研修など | 最大75% |
様式28号は申請事業主(助成金を受け取る会社)が記入して提出します。訓練を実施した外部研修会社(訓練提供者)が書く書類ではありません。ただし、受講料の算定根拠を確認するために訓練提供者に資料提供を依頼する必要が出てくる場合があります。
何を書くのか ― 記載事項と記入のポイント
様式第28号の正式な書式と記載要領の詳細は、厚生労働省の公式申請書類ページからダウンロードして確認してください(後述の「ダウンロード・提出先」参照)。ここでは制度の趣旨から整理できる主な記載事項を解説します。
記載の核心は「価格の妥当性の説明」
この疎明書で求められているのは、一言でいえば「なぜその受講料が適正な価格なのか」を説明することです。特に以下の2点が重点的に問われます。
- 訓練内容に見合った価格かどうか: 研修時間・カリキュラムの水準と受講料が整合しているか
- 市場相場と比較して妥当かどうか: 同種・同程度の研修の一般的な市場価格と著しく乖離していないか
主な記載項目(制度趣旨から整理)
| 記載項目 | 書く内容の方向性 |
|---|---|
| 申請事業主名・事業所名 | 助成金申請をする会社の名称と事業所 |
| 訓練実施機関名(訓練提供者) | 研修を実施した外部の研修会社・機関の名称 |
| 訓練名称・実施期間 | 何の研修を、いつ行ったか |
| 受講料(1名あたり・合計) | 実際に支払った、または支払予定の受講料 |
| 受講料の算定根拠 | カリキュラム作成費・講師費用・教材費・会場費などの内訳。または一般販売価格の設定根拠 |
| 市場価格との比較 | 類似研修の相場(他の研修会社・公開講座の価格)を調べ、設定価格との比較・関係を説明 |
| 特別な関係の有無 | 申請事業主と訓練提供者の間に親子関係・グループ会社・資本関係等があるかどうか |
「特別な関係」の確認は重要なチェックポイントです。 例えば、親会社や関連会社が提供する研修を受講する場合は、その関係性を明記したうえで、受講料が一般向けの販売価格と同水準であることを示す必要があります。
具体的な記入例(想定シナリオ)
以下は記入イメージを理解するための参考例です。実際の記載内容は様式の記入欄に従い、管轄の労働局の指導をもとに作成してください。
パターンA: 一般の研修会社(特別な関係なし)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 訓練実施機関名 | 〇〇株式会社(一般の外部研修会社) |
| 受講料(1名) | 150,000円(税別) |
| 算定根拠 | 同社の一般向け公開価格と同額。ウェブサイト掲載価格を参照 |
| 市場比較 | 同種研修(AI活用 × 2日間)の相場: A社 130,000円/B社 160,000円/C社 145,000円 → 設定価格は相場範囲内 |
| 特別な関係 | なし |
パターンB: グループ会社が研修を提供するケース
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 訓練実施機関名 | 〇〇株式会社(申請事業主の子会社) |
| 受講料(1名) | 180,000円(税別) |
| 算定根拠 | 社外一般向け公開講座の設定価格と同額。カリキュラム設計費・専任講師費・教材開発費・システム利用料の合計から積算(資料別添) |
| 市場比較 | 同等カリキュラム(DXリスキリング × 3日間): D社 175,000円/E社 190,000円 → 相場範囲内 |
| 特別な関係 | あり(申請事業主の完全子会社)。一般顧客向けと同一価格での提供であることを証明する公開資料(ウェブページ印刷/見積書)を別途添付 |
グループ会社が訓練提供者になる場合は、一般向けの販売価格と同じ価格で提供していることを示す証拠書類(公開価格が確認できるウェブページのスクリーンショット・パンフレットなど)を別紙で添付することで、価格の独立性を示す必要があります。
「市場相場との比較」の書き方 ― どこを調べればいいか
疎明書で求められる市場比較は、あくまで「同種・同程度の研修の一般的な市場価格」の調査です。必ずしも厳密な統計調査は必要なく、比較対象となる情報源として以下が考えられます。
- 競合研修会社のウェブサイトに掲載されている公開講座の価格
- 民間の研修プラットフォームに掲載されている類似講座の受講料
- 業界団体が提供する同種研修の価格レンジ
- ハローワーク・キャリアセンターが案内している公的訓練の参考価格(任意参考)
比較の際は訓練の内容・時間数・実施形式(集合研修・eラーニング等)が近いものを選ぶのが基本です。全く異なる種類の研修を比較対象にすると「根拠が不適切」として差し戻される可能性があります。
よくある不備と回避策 ― 差し戻しを防ぐポイント
❌ よくある不備1: 比較対象が「同種でない」研修
AIツール研修(1日間)の価格根拠として、全く異なる分野の長期資格取得講座(3か月コース)を比較対象にしてしまうケース。比較は「同等の内容・期間・形式」の研修に絞ります。
❌ よくある不備2: 算定根拠がない(「会社の一般価格です」だけ)
「当社が一般向けに提供する通常価格と同額です」とだけ書いて、なぜその価格なのかの説明がないケース。受講料の構成要素(講師費・教材費・場所代など)や、公開されている価格資料への言及が必要です。
❌ よくある不備3: 特別な関係があるのに「なし」にしてしまう
グループ会社・親子会社・業務上の取引関係がある会社からの研修を「特別な関係なし」で提出するケース。労働局の審査時に関係性が確認されると、差し戻しだけでなく不支給・返還を求められるリスクがあります。関係性がある場合は必ず「あり」として記載し、価格の独立性を示す資料を添付します。
❌ よくある不備4: 比較先企業名や比較価格の記載漏れ
「市場価格と比較して妥当です」と書くだけで、具体的な比較先(企業名・コース名・価格)を記載しないケース。比較根拠を第三者が検証できる形で記載することが必要です。
✅ 差し戻しを防ぐための確認チェックリスト
- 訓練提供者との特別な関係(親子・グループ・取引先等)の有無を正確に記載したか
- 受講料の算定根拠を具体的に記載したか(内訳または公開価格の根拠)
- 市場比較の対象は「同種・同程度」の研修か
- 比較先の企業名・コース名・価格を具体的に記載したか
- 特別な関係「あり」の場合、価格の独立性を示す添付資料(ウェブ印刷・パンフ・見積書等)を用意したか
- 様式は令和8年5月14日以降対応の最新版を使っているか
関連書類(様式28号と一緒に提出する書類)
様式28号は、支給申請書類のセットの中の1枚として提出します。主な関連書類との関係は以下のとおりです。
| 書類 | 提出タイミング | 備考 |
|---|---|---|
| 職業訓練実施計画届 | 訓練開始前 | 様式28号は不要(支給申請時のみ) |
| 人材開発支援助成金支給申請書 | 訓練終了後・支給申請時 | 様式28号とセットで提出 |
| 経費助成の内訳(領収書等) | 支給申請時 | 受講料の実支払を証明する |
| 様式第28号(疎明書) | 支給申請時(令和8年5月14日以降) | 受講料価格の妥当性を説明する |
| 価格の独立性を示す資料(必要な場合) | 支給申請時 | グループ会社等からの研修の場合に別添 |
様式28号のダウンロード・提出先
様式第28号(受講料等の価格設定に関する疎明書)は、厚生労働省の公式申請書類ページからダウンロードできます。
- 公式ダウンロードページ: 人材開発支援助成金 申請書類(令和8年5月14日〜)(厚生労働省)
- 申請書類一覧: 人材開発支援助成金の申請書類一覧(厚生労働省)
- 制度全体の公式トップページ: 人材開発支援助成金(厚生労働省)
提出先は、申請事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。電子申請システムを利用する場合は、システム上の「その他管轄労働局長が必要と認める書類」の添付欄に様式28号をアップロードします。電子申請の対応状況については最新の案内をご確認ください。
記載内容の詳細・解釈については、管轄の都道府県労働局またはハローワークに事前に確認することを強く推奨します。 記載方法の運用は管轄局により指導内容が異なる場合があります。
電子申請での様式28号の添付方法
人材開発支援助成金の電子申請は雇用関係助成金ポータル(e-Gov経由)を通じて行いますが、令和8年5月14日の改正に伴い、電子申請画面での様式28号の添付対応は準備中となっている場合があります。
電子申請を行う場合は以下の手順が基本です。
- 申請画面を開き、「その他管轄労働局長が必要と認める書類」の添付欄を探す
- 様式28号(Word/PDFファイル)をアップロードする
- 電子申請画面が様式28号に対応していない場合は、管轄の労働局に書面での別途提出が必要か確認する
電子申請への対応状況は更新されることがあるため、申請時点での最新情報を厚生労働省の公式ページまたは管轄の労働局に確認してください。
人材開発支援助成金の助成率・上限額と経費申告の流れ
様式28号が適用される助成金の基本的な助成内容を整理します。令和8年度現在の主な経費助成率は以下のとおりです(最新の公式値は厚生労働省パンフレットで確認してください)。
| 企業規模 | OFF-JT経費助成率 | 上限額(1人あたり・訓練時間別) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 最大75% | 訓練時間・コースにより異なる(公式要領参照) |
| 中小企業以外 | 最大60% | 同上 |
経費助成を受けるための大まかな流れは次のとおりです。
- 研修開始前: 職業訓練実施計画届を管轄の労働局に提出
- 研修実施中: 出勤簿・訓練日誌などを記録・保管
- 研修終了後(支給申請): 支給申請書・受講料の領収書・様式28号(疎明書)等を提出
- 労働局による審査・支給決定
- 助成金の振込
このうち、様式28号はステップ3「支給申請」のタイミングで添付します。研修実施前に提出する必要はありませんが、記載内容(市場比較・算定根拠)の準備は研修を依頼する段階から進めておくのが効率的です。
AI研修・DXリスキリングで様式28号を活用するケース
近年、人材開発支援助成金でとくに活用が増えているのがAI・DXリスキリング関連の研修です。生成AIやデータ分析ツールの活用研修は、新しい分野であるため市場価格のばらつきが大きく、様式28号の「市場比較」欄の記載には特に注意が必要です。
AI研修の場合の市場比較のポイント
- 同じAIツールの研修を比較する: 「生成AI全般」ではなく、ChatGPTビジネス活用・Claude活用・Copilot活用など、より具体的に絞って比較する
- 形式(集合・eラーニング)を揃える: 集合研修とeラーニングでは価格体系が異なるため、同形式の研修を比較対象とする
- 最新の価格情報を使う: AI研修は新興市場のため価格変動が早い。調査日時を疎明書に記載しておく
事業展開等リスキリング支援コースでAI研修を申請する場合、「新分野への事業展開等に関連した訓練であること」の要件も確認しつつ、受講料の適正性を疎明書で説明することが重要です。
人材開発支援助成金でAI研修に活用できるコース・助成率の詳細は、【2026年最新】人材開発支援助成金 令和8年改定|AI研修に使える全コース解説をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 様式28号は全ての申請に必要ですか?
A. 令和8年5月14日以降に支給申請する案件(令和8年5月14日時点で未決定のものを含む)はすべて対象です。人材育成支援コース・人への投資促進コース(長期教育訓練休暇等制度を除く)・事業展開等リスキリング支援コースが対象となっています。最新の対象コースは公式ページで確認してください。
Q. 特別な関係の「あり」と書いたら不支給になりますか?
A. 特別な関係の「あり」はそれ自体で不支給になるわけではありません。「特別な関係がある訓練提供者が一般向けに提供している価格と同額で実施している」ことを証明できれば支給対象になります。「なし」と書いて後から発覚するほうが深刻なリスクになります。
Q. 様式は何度も変わりますか?
A. 人材開発支援助成金の様式は年度改正などで更新されることがあります。過去の様式を使い続けると受付不可になる場合があるため、申請前に必ず令和8年5月14日以降の公式ダウンロードページから最新版を入手してください。
Q. 社内研修(自社の社員が講師を務める訓練)は疎明書が必要ですか?
A. 経費助成の対象となる「受講料」は外部の訓練実施機関への支払いが前提です。社内研修の講師が自社社員の場合は経費助成の受講料に該当しないことが多いため、そもそも様式28号の記載対象とならないケースが多いと考えられます。詳細は管轄の労働局にご確認ください。
まとめ ― 様式28号対応の3ステップ
- 最新の様式をダウンロードする: 厚生労働省の公式ページから令和8年5月14日以降対応版を入手する
- 訓練提供者との関係性を確認する: 親子・グループ会社等の特別な関係の有無を確認し、該当する場合は独立価格を示す証拠資料を準備する
- 市場比較調査を先に実施する: 支給申請前に同種研修の相場を調べ、比較先企業名・価格をメモしておく
人材開発支援助成金は手続きが多く、書類の不備で差し戻しになると助成金の受取りが遅れます。余裕をもって準備し、不明な点は管轄の労働局に早めに相談することが重要です。
申請全体の流れ・必要書類一覧については、【2026年最終年度】人材開発支援助成金の申請手順|最大75%助成もあわせてご覧ください。
AI研修・DX推進に活用できる制度全体については、人材開発支援助成金2026公式|AI研修費用75%助成・厚生労働省制度の全手順でも詳しく解説しています。
免責事項・最終更新
本記事は令和8年(2026年)6月時点の公式情報をもとに作成しています。助成金の制度内容・様式・提出要件は改正により変更される場合があります。申請前は必ず厚生労働省の公式ページおよび管轄の都道府県労働局にて最新情報をご確認ください。
