富山県でDXに使える補助金の本命は、県が単独で運営する「富山県中小企業トランスフォーメーション補助金」。2026年度(令和8年度)は第3次募集として令和8年2月27日から7月31日まで公募されており、DX枠(補助率最大3/4・上限500万円)、AI導入枠(補助率最大3/4・上限500万円)、省力化・省人化モデル枠(補助率最大3/4・上限1,000万円)の3本柱が中小企業のAI導入・業務自動化に直結します。
くすりの富山として知られる医薬品製造、住宅用アルミサッシ全国シェア1位のアルミ加工、ホタルイカ・ます寿司などの水産加工、機械金属、ガラス工芸 — 県内主要産業のいずれにおいても、生成AI・RPA・AI画像認識を導入した業務改革に2026年度の枠が活用できます。本記事は国の主要補助金(IT導入補助金、ものづくり補助金)と組み合わせた使い分け、業種別の活用シナリオ、申請でつまずきやすいポイントまで2026年6月時点の公募要領ベースで整理しました。
富山県中小企業トランスフォーメーション補助金で受け取れる金額
2026年2月27日から募集が始まった第3次は、前年度までと比べて「AI導入枠」が独立した補助メニューとして新設されたのが最大の変化です。生成AI・予測モデル・AI画像認識などを活用した先進的な業務改革を、最初から補助率2/3(小規模事業者は3/4)・上限500万円で支援する枠が用意されました。
| 枠 | 補助額 | 補助率(中小企業) | 補助率(小規模事業者) | 主な要件 |
|---|---|---|---|---|
| 省力化・省人化モデル枠 | 200万円〜1,000万円 | 2/3 | 3/4 | 労働生産性4%以上向上+給与総額3%以上引き上げ |
| AI導入枠 | 100万円〜500万円 | 2/3 | 3/4 | 労働生産性4%以上向上+AI導入による先進的取組 |
| DX枠 | 100万円〜500万円 | 1/2(引上要件で2/3) | 2/3(引上要件で3/4) | 労働生産性3%以上向上+業務フロー見直し |
| GX枠 | 上限非公表(要綱参照) | 1/2(引上要件で2/3) | 2/3(引上要件で3/4) | CO2排出量1%以上削減 |
補助率の「引き上げ要件」とは、事業実施期間内に給与支給総額(月額)を前年同月比3%以上引き上げた場合に適用されるもの。賃上げを伴うDX計画なら、中小企業でも実質的に2/3まで補助が出ます。
※ 上記は2026年度(令和8年度)第3次募集の情報です。各枠の最終的な要件・対象経費は富山県新世紀産業機構の公式ページおよび交付要綱で必ずご確認ください。
制度間の比較や併用ルールはAI導入に使える補助金5選 徹底比較でも詳しく整理しているので、国の制度と組み合わせて検討する場合はあわせてご覧ください。
「とやまDXパートナー」連携で追加100万円が活きる
第3次の要綱で見落とされがちな実務上のポイントが、「とやまDXパートナー」による支援経費の別枠計上です。設備導入そのものとは別に、登録支援機関による業務分析・伴走支援・教育費用などを上限100万円まで補助対象に含められます。
これは、地方の中小企業がもっとも詰まりやすい「ツールは入れたが社内に使いこなせる人がいない」という典型的な失敗を、制度設計で先回りして潰すための仕組み。AI導入なら、ツール費とは別に伴走コンサル・社内研修費を組み込めるため、運用定着まで含めた事業計画を組みやすくなります。
とやまDXパートナーへの相談は無料で行えます。申請前の事業計画段階で活用すると、補助対象経費の組み立てや審査ポイントの押さえ方を含めて整理できる場合があります。
業種別 富山県内中小企業の活用シナリオ
富山県の製造品出荷額は化学(21.4%)、生産用機械(12.5%)、金属製品(11.0%)、非鉄金属(9.8%)、電子部品(8.2%)の上位5産業で63.0%を占めます。化学のうち78.5%が医薬品、金属製品のうち48.3%が住宅用アルミサッシ。極めて特徴ある産業構造の県だからこそ、業種ごとにAI・DXの当てどころが明確です。
シナリオ1:富山市の医薬品製造業 — GMP記録のAI-OCR化
事例区分: 想定シナリオ
100社以上のAI研修・導入支援経験から構成した典型例です。
富山県の主力である医薬品製造業では、GMP(製造管理及び品質管理基準)に基づく製造記録・検査記録の紙運用が、依然として中小企業を圧迫しています。手書きの記録を毎日転記・点検する人件費は、月単位で見るとかなり大きい。
- 導入候補:AI-OCRによる紙記録のデジタル化+電子記録管理システム
- 活用枠:AI導入枠(補助率2/3・上限500万円)
- 想定経費:AI-OCRソフトライセンス、電子記録基盤構築、現場端末、伴走支援費(とやまDXパートナー枠)
- 事業計画の書き方:「転記工数を月◯時間→◯時間(◯%削減)」「記録不備の発見率向上」「監査対応工数の短縮」を数値目標で明示
シナリオ2:高岡市・砺波市のアルミ加工業 — AI画像認識による外観検査
事例区分: 想定シナリオ
住宅用アルミサッシで全国シェア1位を持つ富山県。加工業者の中小企業では、目視による外観検査が熟練検査員に依存しており、後継者不足と検査ばらつきの2つの課題が同時進行しています。
- 導入候補:AI画像認識による傷・寸法の自動検査ライン
- 活用枠:省力化・省人化モデル枠(補助率2/3・上限1,000万円)
- 想定経費:AI画像認識システム、カメラ・照明設備、検査ライン改修、教師データ作成費
- 事業計画の書き方:「検査工数◯時間→◯時間」「検査員1人あたり処理数◯倍」「不良流出率の改善」をKPI設定
シナリオ3:氷見市・滑川市の水産加工業 — ホタルイカ等の選別自動化
事例区分: 想定シナリオ
富山湾の春の風物詩、ホタルイカやシロエビ。漁期が短く、選別・加工は人手の集中投入で凌いでいる中小水産加工業者が多い分野です。短期決戦の選別工程をAI画像認識でサポートできれば、人手不足の構造的解決につながります。
- 導入候補:AIによるサイズ別・品質別選別補助システム、需要予測AIによる生産計画最適化
- 活用枠:AI導入枠 または 省力化・省人化モデル枠
- 想定経費:AI選別補助システム、生産管理ソフト、現場タブレット、データ蓄積基盤
- 事業計画の書き方:「選別人員◯名→◯名」「加工歩留まり◯%向上」「ピーク時の残業時間◯%削減」
シナリオ4:富山市・高岡市の機械金属業 — 生成AIで設計補助・見積自動化
事例区分: 想定シナリオ
富山県は機械金属の集積地で、自動車・産業機械の部品サプライヤーが多数立地しています。中小規模の機械加工業では、技術営業の見積作成と図面起こしの工数が経営者の時間を奪っているケースが目立ちます。
- 導入候補:生成AIを活用した見積補助システム、CADと連携した類似図面検索、ChatGPT EnterpriseまたはClaude等によるドキュメント業務効率化
- 活用枠:AI導入枠(補助率2/3・上限500万円)
- 想定経費:AIライセンス、業務システム改修、社内向けプロンプト整備、社員研修
- 事業計画の書き方:「見積作成工数◯時間→◯時間」「初回提出までのリードタイム短縮」「営業1人あたり対応件数の増加」
シナリオ5:高岡市のガラス・伝統工芸産業 — ECとブランディングのDX
事例区分: 想定シナリオ
富山県には高岡銅器、井波彫刻、富山ガラスといった伝統工芸が根付いています。職人の高齢化と販路の頭打ちに直面する小規模事業者が多く、ECとブランディングのDXは生存戦略そのもの。
- 導入候補:越境ECサイト構築、AIによる商品撮影・翻訳・SNS運用支援、CRM導入
- 活用枠:DX枠(小規模事業者は補助率3/4・上限500万円)
- 想定経費:ECシステム、画像生成AI・翻訳AI、CRM、ブランディング設計支援費
- 事業計画の書き方:「国内売上◯%→◯%、海外売上構成比◯%」「制作工数◯時間→◯時間」「リピート購入率の向上」
富山県内の中小企業がAI導入で実際にぶつかる3つの壁と、補助金での解き方
補助金は「お金が出る制度」というよりも、AI導入の3つの典型的な壁を超えるための仕組みとして設計し直すと、活用効果が大きく変わります。富山県内の中小企業から相談を受ける中で繰り返し出てくる課題を、トランスフォーメーション補助金の枠組みで整理します。
壁1:初期投資が踏み切れない(資金面の壁)
AI画像認識システムを導入するには、ソフトウェアライセンスだけでなく、カメラ・照明・ネットワーク整備・現場端末・教師データ作成といった周辺投資が膨らみます。中小企業の経営判断としては、「投資回収まで何年かかるか」が即時に答えづらく、踏み切れないまま競合に先行されるパターンが頻発します。
補助金の解き方は明確で、省力化・省人化モデル枠やAI導入枠で初期投資の2/3〜3/4を補助でカバーすることで、投資判断のハードルが大きく下がります。「2年回収のはずが、補助金活用で実質1年弱で回収」というシミュレーションが組めれば、社内合意は格段に進みます。
壁2:社内に推進担当者がいない(組織面の壁)
地方の中小企業で最も多い相談は、「導入したいけど、社内にIT・AIに詳しい人が一人もいない」というものです。経営者が一人で勉強してプロジェクトを回す体制では、本業を圧迫しますし、定着前に頓挫します。
補助金の解き方は、とやまDXパートナーへの伴走支援費を補助対象経費(上限100万円)に組み込むこと。ベンダー任せにせず、業務分析・要件定義・運用設計・社内教育まで一体で伴走してもらえる支援機関を選ぶのが鍵です。事業計画段階から関与してもらえば、申請書のクオリティも上がります。
壁3:導入後に使われない(運用定着の壁)
「補助金を取ってツールを入れたけれど、現場で使われなかった」という失敗は、地方都市の中小企業で繰り返されている問題です。原因は概ね、(1) 現場の業務フローを変える設計をしていなかった、(2) 社内教育に予算を割いていなかった、(3) 効果測定の仕組みがなく、改善サイクルが回らなかった、の3点に集約されます。
補助金の解き方は、計画段階で運用フェーズを織り込んでおくこと。事業計画書の中で、現場業務フロー変更計画、社員研修スケジュール、月次KPIモニタリングサイクルまで含めて記載します。研修費が補助対象経費にならない枠の場合は、人材開発支援助成金(厚生労働省)の併用で対応するのも有効です。
国の補助金と県補助金、どう使い分けるべきか
富山県の事業者がDXに使える主な選択肢を整理すると、次のような構図になります。
| 制度 | 補助率の目安 | 上限額の目安 | 富山県事業者にとっての特徴 |
|---|---|---|---|
| 富山県中小企業トランスフォーメーション補助金 | 1/2〜3/4 | 500万円〜1,000万円 | 県内本社が対象。設備+伴走支援込みで設計しやすい |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 1/2〜3/4 | 類型により最大450万円程度 | 全国制度。ITツール・SaaS導入が中心、公募回が多い |
| ものづくり補助金 | 1/2〜2/3 | 類型により最大1,000万円超 | 設備投資込みの大規模案件向け。革新性が問われる |
| 人材開発支援助成金 | 最大75% | 原則人数・時間ベース | 研修費・賃金助成。AI研修・リスキリング向き |
※ 国の制度(デジタル化・AI導入補助金、ものづくり補助金、人材開発支援助成金)の最新の補助率・上限額・対象経費は、各公募回の最新公募要領を必ず中小機構のデジタル化・AI導入補助金公式サイト等で確認してください。
使い分けの原則は次のとおりです。
- 県内本社で県内事業所のDX → まず富山県中小企業トランスフォーメーション補助金(AI導入枠/DX枠)を検討
- 全国の汎用SaaS導入が中心、年内に申請したい → デジタル化・AI導入補助金(IT導入補助金)
- 製造設備+AI画像認識の大型投資 → ものづくり補助金 または トランスフォーメーション補助金 省力化枠
- 社員へのAI・DX研修を中心にしたい → 人材開発支援助成金(厚生労働省)
同じ経費を国と県で二重に補助対象にすることは原則できません。ただし「設備=県補助金、社員研修=人材開発支援助成金」のように経費を分けて組み合わせる併用は可能です。事業計画の段階で経費の切り分けを設計しておくのが重要。
富山県内主要市町別 DX補助金の検討時に押さえるポイント
富山県は10市2町1村の自治体構成で、産業構造が地域ごとにかなり違います。県補助金は県全体が対象ですが、市町独自の上乗せ補助・併用支援、商工会議所のサポート体制を把握しておくと、申請から運用までの伴走者を確保しやすくなります。
富山市 — 医薬品・機械金属・サービス業の集積
県人口の約4割が集中する県庁所在地。化学(医薬品)・生産用機械・サービス業が幅広く揃い、AI導入の論点も多岐にわたります。富山商工会議所が経営相談窓口として機能しており、補助金活用のオリエンテーションも受けやすい環境です。富山市は中小機構の北陸ブロック・地方経済産業局とのアクセスも近く、国補助金(デジタル化・AI導入補助金、ものづくり補助金)との併用設計の選択肢が広い点が特徴。
高岡市 — 高岡銅器・アルミ加工・伝統工芸の中核
金属製品の集積地で、住宅用アルミサッシのほか、高岡銅器・伝統工芸の事業所も多数。職人ベースの小規模事業者はDX枠(小規模事業者は補助率3/4)を活用してEC化・ブランディング・SNS運用のDXに踏み出すケースが現実的です。高岡商工会議所がDXセミナーや個別相談を継続的に行っており、申請前の事業計画ブラッシュアップで頼れる存在になります。
射水市・砺波市・南砺市 — アルミ・木工・農業の混在地域
射水市はアルミ加工と港湾物流、砺波市はチューリップ球根栽培と機械加工、南砺市は井波彫刻・南砺バイオマスといった独自の産業基盤を持ちます。製造業のAI画像認識による検査自動化、農業のAIによる出荷量予測、伝統工芸のEC化など、業種跨ぎでDX枠・AI導入枠の活用余地があります。南砺市商工会が中小企業トランスフォーメーション補助金の活用事例情報を継続的に発信しています。
魚津市・滑川市・黒部市・入善町・朝日町 — 新川エリアの製造業
YKKグループの企業城下町である黒部市を含む新川エリアは、機械金属の部品サプライヤーが分厚く集積。中小サプライヤーの生産管理DX、IoT・センサーによる稼働可視化、AIによる需要予測など、省力化・省人化モデル枠(上限1,000万円)の射程に入る案件が多数あります。労働生産性4%以上向上と給与3%以上引き上げの両方を満たす計画づくりが鍵。
氷見市・滑川市 — 水産加工と観光のDX
氷見の鰤、滑川のホタルイカに代表される水産加工は、漁期の短さと加工人員不足が構造的課題。AIによる選別・需要予測・在庫管理のDXは、富山県のトランスフォーメーション補助金(AI導入枠)の典型的な活用例といえます。観光面では、立山黒部アルペンルートを擁する立山町や、世界遺産・五箇山を擁する南砺市の観光業者でも、多言語AI接客・予約システムDXが補助金の射程に入ります。
富山県の中小企業が申請でつまずく4つの落とし穴
失敗1:交付決定前に契約・発注してしまう
❌ 採択通知が来たので、急いで業者に発注した
⭕ 「交付決定通知」を受け取るまで、契約・発注・支払いは一切行わない
なぜ重要か:これは富山県のトランスフォーメーション補助金に限らず、ほぼすべての補助金で共通する最大の落とし穴です。採択と交付決定は別の手続きであり、交付決定前に支出した経費は一切補助対象になりません。第3次募集の対象経費は「令和8年2月3日以降に実施し、令和9年1月8日までに支払いが完了する経費」と定められていますが、加えて交付決定後でなければ発注はできないため、ダブルで条件を満たす必要があります。
失敗2:労働生産性向上の数値目標が曖昧
❌ 「業務効率を改善し、生産性向上を図る」
⭕ 「営業1人あたりの月間提案件数を◯件→◯件(◯%増)」「製造1ライン1時間あたりの処理数を◯個→◯個」
なぜ重要か:トランスフォーメーション補助金のDX枠・AI導入枠・省力化枠は、いずれも労働生産性向上率3〜4%以上が要件です。これは事業計画上の数値目標ではなく、事業完了後の実績報告でも検証されます。指標と現状値と目標値を、計算根拠付きで明示する必要があります。
失敗3:富山県外の本社・事業所が主体になっている
❌ 県外本社の支店が富山県にあるので申請したい
⭕ 主たる事業所(本社登記)が県内にあることを確認してから申請する
なぜ重要か:富山県の単独補助金は「県内に主たる事務所を有する」事業者が対象です。県外本社の県内支店は原則対象外。県外進出を検討中の県内本社企業の場合は、補助対象事業を県内事業所で実施することが条件となります。
失敗4:とやまDXパートナー枠を最初から組み込まない
❌ ツール導入後に「使いこなせない」と気づき、別途コンサル契約する
⭕ 申請段階でとやまDXパートナーへ相談し、伴走支援費を上限100万円まで補助対象経費に含める
なぜ重要か:補助金で導入した設備・システムが社内で使われずに塩漬けになるのは、地方の中小企業で繰り返される失敗パターン。富山県は制度上、上限100万円の伴走支援枠を別途用意しているので、事業計画段階で組み込むのが合理的です。
AI導入枠の事業計画で審査員が見るポイント
2026年度の第3次募集から新設されたAI導入枠は、補助率2/3(小規模事業者3/4)が賃上げ要件なしで適用される、現時点で最も使いやすい枠の一つ。ただし「AIを使えば採択される」という単純な話ではなく、事業計画書の書き方で大きく差がつきます。100社以上の支援経験からまとめた、審査員が評価する5つのポイントを整理します。
ポイント1:自社の業務課題を「現状値」で語れているか
「業務効率が悪い」「人手が足りない」という定性表現ではなく、「Aという業務に月◯時間を要し、担当者◯人が稼働している。同業他社のベンチマークと比較して◯%多い」のように、現状の工数・件数・コスト・歩留まり・離職率・残業時間といった指標で課題を語れているかどうか。AI導入の必要性を裏付ける材料がなければ、審査委員は「導入してもムダ」と判断します。
ポイント2:AIで何が「変わる」のかが具体的か
「生成AIを活用して業務を効率化する」では、何も具体的に示せていません。「文書作成業務において、ChatGPT Enterpriseのプロンプトテンプレートを社内に整備し、見積書ドラフト作成の初動工数を◯時間→◯時間に短縮する」のように、利用シーン、ツール選定理由、運用設計まで含めて書ききるのが目安です。「カタログ化」を避け、自社業務へのフィット感を示します。
ポイント3:労働生産性向上率の計算根拠が示せているか
AI導入枠は労働生産性4%以上向上が必須要件。事業計画書では、生産性指標(付加価値額/総労働時間 が一般的)の現状値、目標値、達成までのロードマップを計算式付きで示します。「だいたい4%は超えると思う」という曖昧な記載は、審査でも実績報告でも詰められます。
ポイント4:実施体制と社内推進担当者が明確か
「社長一人で推進」「ITに詳しい人が誰もいない」という申請は、実現可能性で大きく減点される傾向です。プロジェクト責任者、現場担当者、外部支援者(とやまDXパートナー、ITベンダー)の役割分担を明示し、月次の進捗管理サイクルまで設計するのが理想。社内に専任担当を置けない場合は、伴走支援費を補助対象経費に明示的に組み込むのが現実解です。
ポイント5:補助事業終了後の継続運用の絵姿があるか
補助金は導入時の費用を補助しますが、運用・保守・ライセンス更新は自社負担です。「導入したが2年後に解約」というケースは現場で頻発します。補助事業終了後の運用体制、社内教育の継続計画、効果測定の仕組みまで描ければ、審査でも実績報告でも筋が通った計画として評価されます。
申請から交付までの実務フロー
Step 1:GビズIDプライムの取得(所要1〜2週間)
富山県のトランスフォーメーション補助金はオンライン申請に対応しています。電子申請にはGビズIDプライムが必要。法人は印鑑証明書、個人事業主は印鑑登録証明書を準備のうえ申請してください。GビズIDの取得手順はGビズID登録の完全ガイドで詳しく解説しています。
Step 2:事業計画書の作成(所要2〜4週間)
事業計画には、現状の業務課題、AI・DX導入による改善内容、労働生産性向上率の根拠、実施スケジュール、補助対象経費の内訳、実施体制を盛り込みます。とやまDXパートナーへの事前相談で骨子の精査を受けるのも実務的に有効です。
Step 3:とやまDXパートナーへの相談(任意・推奨)
登録支援機関と事業計画の方向性をすり合わせ、伴走支援契約の見積を取得します。この費用も補助対象経費(上限100万円)に組み込めます。
Step 4:オンライン申請または郵送申請
富山県中小企業トランスフォーメーション補助金(第3次)の申請期限は令和8年7月31日(金)。郵送は同日消印有効ですが、持参での申請は受け付けていません。
Step 5:審査・採択通知
採択結果が通知されます。なお、採択は「交付決定」ではないため、この段階で発注・契約してはいけません。
Step 6:交付申請・交付決定
採択後に交付申請書を提出し、交付決定通知を受け取って初めて事業に着手できます。
Step 7:事業実施・実績報告・補助金交付
補助対象期間(令和8年2月3日〜令和9年1月8日)内に事業を完了させ、実績報告書と支払い証憑をそろえて提出します。審査後、補助金が後払いで交付されます。
2026年度 富山県のDX関連支援メニュー横断マップ
トランスフォーメーション補助金以外にも、富山県内事業者が活用できるDX関連の支援メニューが複数存在します。補助金単独で考えず、相談窓口・金融支援・人材支援を組み合わせて使うのが、地方の中小企業にとって現実的なDX推進の進め方です。
相談・伴走支援
- とやまDXパートナー — 富山県が登録する伴走支援機関。事業計画相談から実装支援まで対応。トランスフォーメーション補助金の補助対象経費(上限100万円)に費用を組み込み可能
- 富山県よろず支援拠点 — 中小企業庁の全国ネットワーク。経営課題から補助金活用まで無料で相談可能
- 富山県中小企業団体中央会 — 組合・グループ型のDX案件で活用しやすい
- 地域の商工会議所・商工会 — 富山商工会議所、高岡商工会議所、各市町商工会が個別相談を実施
金融支援(融資制度)
富山県は中小企業向け融資制度の中に、DX推進を支援する資金メニューを設けています。補助金が「後払い」であるのに対し、融資は「先払いの資金繰り」として補完関係にあります。補助金の交付までのキャッシュフロー対策として併用する事業者が多い実情があります。詳しくは富山県商工労働部の融資制度ページで最新条件を確認してください。
人材支援
AI・DXを社内で内製化していくためには、社員のリスキリングが不可欠。厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、AI研修・DXリスキリング費用と賃金の両方を助成対象とします。トランスフォーメーション補助金で設備を、人材開発支援助成金で研修・賃金を — という二段構えが、運用定着まで含めて補助金を生かす設計です。
富山県のDX補助金を活用するために今日から始める3つのアクション
- 今日:GビズIDプライム未取得なら、印鑑証明書を取り寄せて申請手続きを始める
- 今週中:自社のAI・DX導入で解決したい業務課題を、現状の工数・件数・コストを数字で書き出す
- 今月中:富山県新世紀産業機構の公式ページで第3次募集の最新の交付要綱を確認し、自社に該当する枠を決める
あわせて読みたい
- AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — 国と地方の制度を横断比較
- GビズID登録の完全ガイド — 申請の第一歩を画像付きで解説
AI導入プロジェクトの予算感 — 富山県の事業者が組みやすい総額レンジ
「結局いくら必要なのか」が見えないと事業計画は描けません。100社以上のAI研修・導入支援の経験から、富山県の中小企業がトランスフォーメーション補助金を活用する場合の、典型的な総額レンジを整理します。実数字は事業者ごとに大きく変動しますが、検討の出発点としてご活用ください。
パッケージ1:生成AIによる業務効率化(300万円〜600万円規模)
ChatGPT EnterpriseやClaude等の生成AIを導入し、社内のドキュメント業務・営業資料作成・顧客対応文書作成を効率化する案件。AI導入枠の対象になりやすい構成です。
- 主な経費内訳の例:AIライセンス(年額)、社内向けプロンプトテンプレート整備、業務システム連携、伴走支援費、社員研修費
- 活用想定枠:AI導入枠(補助率2/3、小規模事業者3/4)
- 自己負担の目安:補助率2/3適用なら総額の1/3、3/4適用なら1/4
パッケージ2:RPA+AI-OCRによる事務作業の自動化(500万円〜800万円規模)
請求書処理、注文書転記、給与計算、勤怠管理など、定型事務作業をRPA(業務自動化ロボット)とAI-OCRで自動化する案件。バックオフィス改革の定番構成です。
- 主な経費内訳の例:RPAライセンス、AI-OCRライセンス、業務分析・要件定義費、シナリオ開発費、伴走支援費
- 活用想定枠:DX枠 または AI導入枠(AI-OCRが中心ならAI導入枠が有利)
- 自己負担の目安:AI導入枠なら総額の1/3〜1/4
パッケージ3:AI画像認識による検査自動化(800万円〜1,500万円規模)
製造ラインにAI画像認識を組み込み、外観検査・寸法検査・異物検出を自動化する案件。富山県のアルミ加工・機械金属の事業者で典型的に検討される構成です。
- 主な経費内訳の例:AI画像認識システム、カメラ・照明、検査ライン改修、教師データ作成、現場端末、ネットワーク整備
- 活用想定枠:省力化・省人化モデル枠(補助率2/3、小規模事業者3/4・上限1,000万円)
- 自己負担の目安:補助率2/3の場合は補助上限1,000万円を超える部分が自己負担に
パッケージ4:EC構築+AI活用ブランディング(300万円〜500万円規模)
越境ECサイトを構築し、AIによる商品撮影・翻訳・SNS運用・CRMを組み合わせる案件。高岡銅器・井波彫刻・富山ガラスといった伝統工芸の事業者や、富山産食品の販路拡大を狙う中小企業向け構成です。
- 主な経費内訳の例:ECシステム構築、AIによる画像生成・翻訳ツール、CRM、ブランディング設計支援費
- 活用想定枠:DX枠(小規模事業者なら補助率3/4・上限500万円)
- 自己負担の目安:補助率3/4適用で総額の1/4
これらはあくまで一般的な構成例です。実際の事業者ごとに業務内容・現状システム・社内体制が異なるため、具体的な見積りは複数のベンダー・とやまDXパートナーに相談しながら詰めていくのが現実的です。
よくある質問
富山県中小企業トランスフォーメーション補助金の2026年度の申請期限はいつまでですか?
第3次募集の申請期限は令和8年(2026年)7月31日(金)です。郵送の場合は同日消印有効、持参での申請は受け付けていません。
AI導入枠とDX枠はどちらを選ぶべきですか?
生成AI・予測モデル・AI画像認識など、AI活用が事業の中心となる場合はAI導入枠を選択するのが基本です。AI導入枠は中小企業でも最初から補助率2/3(小規模事業者は3/4)で、賃上げ要件なしで高い補助率が適用されます。一方、AIを使わないシステム導入・業務フロー改革が中心ならDX枠を選びます。同じ事業計画で両方の枠に同時に申請することはできません。
富山県外に本社がある会社の県内事業所は対象になりますか?
富山県中小企業トランスフォーメーション補助金は、富山県内に主たる事業所(本社登記)を有する事業者が対象です。県外本社の県内支店は原則として対象外となります。詳細は公募事務局へ直接お問い合わせください。
国のIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)と県の補助金は併用できますか?
同一の経費を国と県で二重に補助対象にすることはできません。ただし、補助対象経費を切り分ければ併用可能なケースがあります。たとえば「設備=県のトランスフォーメーション補助金、社員研修=厚生労働省の人材開発支援助成金」のように分ける運用です。事業計画段階で経費の切り分けを設計しておくのが重要です。
とやまDXパートナーへの相談は必須ですか?
必須ではありませんが、相談を経由することで補助対象経費に伴走支援費(上限100万円)を加えられるメリットがあります。事業計画の骨子整理・補助対象経費の組み立て・審査ポイントの整理という観点でも、申請前の活用が実務的に有利です。
著者・監修情報
執筆:株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修:佐藤 傑(株式会社Uravation 代表取締役)
100社以上のAI研修・導入支援実績をもとに、中小企業のAI活用×補助金申請をサポートしています。富山県内のAI導入計画策定や補助金活用についてのご質問は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
免責事項
本記事の情報は2026年6月時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- 第3次 富山県中小企業トランスフォーメーション補助金 募集要項 — 公益財団法人富山県新世紀産業機構(参照日:2026-06-06)
- 富山県中小企業トランスフォーメーション補助金(第3次募集)について — 富山県商工労働部(参照日:2026-06-06)
- 第3次 富山県中小企業トランスフォーメーション補助金 よくある質問 — 公益財団法人富山県新世紀産業機構(参照日:2026-06-06)
- デジタル化・AI導入補助金 公式サイト — 中小企業基盤整備機構(参照日:2026-06-06)
- 富山県の工業について(令和3年経済センサス) — 富山県(参照日:2026-06-06)
