2026年度から、多くの中小企業に使われてきた「IT導入補助金」の名称が変わった。新しい名前は「デジタル化・AI導入補助金」。ただ、名前が変わっただけではない。補助の対象も、申請要件も、制度の狙いそのものが大きく変わっている。
特に大きいのが、AI機能を持つツールの絞り込みが公式にできるようになったこと。そして、過去に補助金を受けた事業者には、2回目以降の申請で「賃上げ計画の達成」が求められるようになった点だ。知らずに申請すると、採択後に補助金を返還する羽目になるケースもある。
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まず変更点を一覧で整理する。前回(IT導入補助金2025)との比較を見ると、制度の重心がどこにシフトしたかが分かる。
| 項目 | IT導入補助金2025(旧) | デジタル化・AI導入補助金2026(新) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 制度名 | IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | ↔ 名称変更 |
| 通常枠 補助率 | 1/2以内 | 1/2以内(変更なし) | ― 同じ |
| 通常枠 上限額 | 最大450万円 | 最大450万円(変更なし) | ― 同じ |
| AI機能ツールの識別 | なし(検索で絞れない) | あり(AI機能ツールを検索で絞り込み可) | ↑ 新機能 |
| 2回目申請の要件 | なし | 賃上げ計画の達成報告が必須 | ↑ 厳格化 |
| 複数者連携枠の名称 | 複数社連携IT導入枠 | 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | ↔ 名称変更 |
| 小規模事業者の補助率 | 最大4/5 | 最大4/5(変更なし) | ― 同じ |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要(中小機構)(参照日: 2026-04-09)
補助額・補助率の構造は大きく変わっていない。一方で、「何を申請できるか」「どんな企業が使えるか」という要件側に変化が出ている。
2026年度の補助率・上限額(制度解説)
制度全体の枠組みは以下の通り。申請前にどの枠に該当するかを確認することが第一歩になる。
| 申請枠 | 補助率 | 補助額(上限) | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(業務プロセス1〜3つ) | 1/2以内 | 5万〜150万円 | ソフトウェア・クラウドツール導入 |
| 通常枠(業務プロセス4つ以上) | 1/2以内 | 150万〜450万円 | 複数業務をまとめてデジタル化 |
| 通常枠(最低賃金近傍事業者) | 2/3以内 | 5万〜450万円 | 賃金水準が低い事業者への特例 |
| インボイス枠(ITツール) | 3/4〜2/3以内 | 〜350万円 | インボイス対応のITツール |
| インボイス枠(PC・タブレット) | 1/2以内 | 〜10万円 | インボイス対応ハードウェア |
| インボイス枠(レジ・券売機) | 1/2以内 | 〜20万円 | 会計機器のインボイス対応 |
| セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内(小規模2/3) | 5〜150万円 | サイバーセキュリティ対策ツール |
| 複数者連携枠 | 条件による | 〜3,000万円 | 複数事業者が連携してデジタル化 |
AI導入で活用しやすいのは通常枠(業務プロセス4つ以上)で、上限450万円、補助率1/2(小規模事業者は最大4/5)が適用できる。複数の業務をAIでまとめて改善する計画を立てると有利になる。
各補助金の比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較でもまとめている。
最大の変更点1:AI機能ツールの明確化
旧IT導入補助金では、どのITツールがAI機能を持っているかを申請者自身で判断するしかなかった。事務局のツール検索サイトには「AI」という絞り込み項目がなかったためだ。
2026年度は違う。ITツール検索サイト上で、以下の2種類の絞り込みが可能になった。
- 生成AIを用いた機能を搭載したツール(ChatGPT連携、Copilot機能など)
- 生成AI以外のAI技術を用いた機能を搭載したツール(画像認識、需要予測、OCRなど)
正直、「AI対応」と謳いながら実態は単なる検索機能だったツールも少なくなかった。今後は事務局側がAI機能の有無を審査し、明示する仕組みになるため、申請者が誤認するリスクが下がる。
AI導入を検討している企業にとっては、「使いたいAIツールが補助対象かどうか」を確認しやすくなった。これは実務的に大きい変化だ。
最大の変更点2:2回目以降の申請に賃上げ要件が追加
これが今回の制度変更で最も注意が必要な点だ。
対象者:IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者
追加された要件:
- 翌事業年度以降3年間の事業計画を策定し実行すること
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率を「日本銀行の物価安定目標(2%)+1.5%」以上向上させること(合計3.5%以上が目安)
- 従業員への賃金引上げ計画を交付申請時に表明すること
- 実施後に事業実施効果の報告を提出すること
問題は要件未達成・効果報告未提出の場合、補助金の一部または全額返還を求められる可能性があること。「採択されれば終わり」ではなく、採択後も数年間にわたり事業計画の達成が求められる。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 賃上げ未達成 | 補助金の一部または全額返還 |
| 効果報告の未提出 | 補助金の返還対象になる場合あり |
| 事業計画未達成 | 次回申請時に不利に働く可能性 |
初めて申請する企業(2022〜2025で交付決定を受けていない企業)にはこの要件は関係ない。ただし、過去に補助を受けた企業は必ずこの点を確認してほしい。
「IT導入補助金」時代と何が同じか
変わった点ばかり強調したが、基本的な制度設計は継承されている。
- 対象者:中小企業・小規模事業者(資本金・従業員数要件は業種別)
- 申請方法:jGrants(電子申請)
- IT導入支援事業者との連携:引き続き必要(単独申請は不可)
- 事前登録ツールからの選択:登録済みITツールの中から選ぶ仕組みは変わらない
- 後払い方式:補助金は事業完了後に交付される
要するに、申請の基本的な流れは旧IT導入補助金と同じ。ただし名称変更を機に「AIの活用」「賃上げとの連動」が制度上の重点として位置づけられた、という整理になる。
2026年度 第1次申請スケジュール
| マイルストーン | 日付 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年3月30日(月)10:00〜 |
| 1次締切 | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 交付決定予定 | 2026年6月18日(木)頃 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(中小企業庁)(参照日: 2026-04-09)
5月12日の第1次締切まで残り1ヶ月ほど。IT導入支援事業者の選定とGビズID取得が最初の作業になるため、今すぐ動き始めたほうが余裕を持てる。
今すぐ確認すること — 企業ごとのアクション
状況別にやるべきことを整理する。
パターンA:デジタル化・AI導入補助金が初めての場合
- GビズIDプライムを取得する(取得に1〜2週間かかる)→ GビズID取得ガイド
- IT導入支援事業者を選定し、AIツールの候補を絞り込む
- 公式ツール検索サイトでAI機能対応ツールをフィルタリングして確認する
パターンB:IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある場合
- 交付決定時の事業計画書を引き出し、賃上げ計画の達成状況を確認する
- 効果報告書の提出期限を確認する(未提出なら即対応)
- 2回目申請の要件を満たせるか、社内の賃金水準データで試算する
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要 — 中小機構(IT補助金事務局)(参照日: 2026-04-09)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 — 中小企業庁(参照日: 2026-04-09)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領公開のお知らせ — ミラサポplus(参照日: 2026-04-09)
AI導入に補助金を活用するなら、まず計画から
今日からできる3つのアクション:
- 今日:GビズIDの取得状況を確認する。未取得なら今すぐ申請(1〜2週間かかる)→ 手順はこちら
- 今週中:IT導入支援事業者に問い合わせ、AI機能対応ツールの候補リストを作る
- 5月12日まで:公募要領をダウンロードして自社の該当枠と必要書類を確認する
どの補助金が自社の状況に合うか判断が難しい場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。AI導入の計画策定から補助金活用の方向性まで、一緒に整理します。
あわせて読みたい:
- GビズID登録ガイド — 補助金申請に必須のID、画像付きで手順を解説
- AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — デジタル化AI・ものづくり・人材開発を横断比較
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年4月9日時点の中小機構・中小企業庁の公表資料に基づく参考情報です。補助金制度の内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ずデジタル化・AI導入補助金公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。