人材開発支援助成金

【令和8年度】業務改善助成金の変更点|3コース再編と申請9月開始を解説

【令和8年度】業務改善助成金の変更点|3コース再編と申請9月開始を解説

この記事の結論

令和8年度の業務改善助成金は30円コース廃止・50円/70円/90円の3コース体制に再編。申請受付は9月1日開始。予算は前年比20億円増の35億円。AI導入・設備投資の対象経費と変更点を解説。

厚生労働省は令和8年度(2026年度)の業務改善助成金について、制度の大幅な見直しを発表した。最大の変更は「30円コースの廃止」と「50円・70円・90円の3コース体制への再編」、そして申請受付の開始時期が例年4月から9月1日へと後ろ倒しになる点だ。

前年度比で予算が20億円増の35億円に拡充される一方、コースの最低ラインが引き上げられるため、令和7年度とは異なる戦略で準備を進める必要がある。本記事では、制度変更の全容と、AIツール・設備投資への活用ポイントを整理する。


令和8年度の変更点まとめ — 令和7年度との対比

項目 令和7年度(参考) 令和8年度(変更後) 方向性
コース構成 30円・45円・60円・90円(4コース) 50円・70円・90円(3コース) ↑ 最低ラインを引き上げ
申請受付開始 例年4月頃 9月1日 ↓ 約5ヶ月後ろ倒し
受付締切 地域別最賃発効日の前日または11月末の早い方 同左(変更なし) — 同等
助成率の基準額 1,000円未満→4/5、1,000円以上→3/4 1,050円未満→4/5、1,050円以上→3/4 ↑ 基準額が50円引き上げ
対象要件 地域別最賃+30円以上引き上げなど複数要件 令和8年度の地域別最賃未満の事業場 → 要件が簡素化
予算額 約15億円 約35億円 ↑ 20億円増(133%増)

出典:厚生労働省概算要求(令和8年度)・各社労士事務所の公開情報(参照日:2026-03-16)

AI導入・DX化に関連する設備投資やソフトウェア導入の費用も対象経費に含まれる点は変わらない。ただし、令和8年度の公募要領はまだ正式公表されておらず(2026年3月16日時点)、本記事の数値は概算要求・社労士・補助金専門メディア各社の公開情報をもとにした参考値である。9月の申請受付開始後に公式要領で必ず最終確認を行ってほしい。

AI研修・リスキリングとの組み合わせについては、人材開発支援助成金リスキリングコースの最終年度ガイドも合わせて参照されたい。

コース廃止の詳細 — 「30円コース消滅」が企業に与える影響

令和7年度まで存在した「30円コース」は、最も申請しやすい入門的な選択肢だった。手取り賃上げの負担が小さく、製造業・小売業を中心に活用実績が多かったコースが、令和8年度から丸ごと廃止される。

正直、これは中小企業にとって痛い変更だ。「とりあえず30円上げて、設備投資費用を助成してもらう」という使い方ができなくなる。令和8年度からは最低でも50円の賃上げが必要になる点を経営判断に組み込む必要がある。

一方で、予算が前年比133%増の35億円に拡充された背景には、政府の「賃上げ優先」の政策意図がある。より大幅な賃上げを実施する企業を厚く支援する方向への転換と読める。

3コースの助成上限額(令和8年度・参考値)

以下は概算要求段階の情報をもとにした参考テーブルだ。正式な上限額は公募要領で確認すること。

賃上げコース 引き上げ人数: 1人 2〜3人 4〜6人 7人以上
50円コース 30万円 40万円 80万円 110万円
70円コース 40万円 50万円 170万円 230万円
90円コース 90万円 150万円 350万円 450万円

※ 事業場規模30人未満の場合は上限額が異なる場合がある。90円コース・全労働者(10人以上)では最大600万円となる見込み。

助成率は以下の通り(令和8年度予定)。

  • 事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場:助成率 4/5
  • 事業場内最低賃金が1,050円以上の事業場:助成率 3/4

令和7年度は基準が「1,000円」だったが、令和8年度は「1,050円」に引き上げられた。東京・神奈川・大阪など最賃が高い地域では助成率が3/4になるケースが増えることを念頭に置いておこう。

AI導入・DX投資で「対象経費」になるものとならないもの

業務改善助成金は「生産性向上に資する設備投資等」が助成対象だ。この定義の中に、AI関連の投資が含まれるかどうかを整理する。

対象になる可能性が高い経費

  • 業務用ソフトウェア・クラウドサービス:受発注管理、シフト管理、AI搭載の業務効率化ツールなど
  • 機械設備・省力化機器:POS端末、自動釣銭機、食洗機(飲食業)、自動搬送装置など
  • コンサルティング費用:業務プロセス改善のための専門家費用
  • 人材育成・教育訓練費:AI研修、業務改善に直結するスキルアップ研修

原則として対象外の経費

  • 汎用PC・タブレット・スマートフォン(業務改善との直接関連が証明できない場合)
  • 既存システムの保守・運用費(新規導入でなく維持費に相当するもの)
  • 土地・建物の取得費
  • 給与・人件費(賃上げ部分は対象だが、それ以外の人件費は不可)

重要なのは「その設備・ソフトウェアの導入が、どのように業務改善に直結するか」を申請書で明確に説明できるかどうかだ。たとえばAIチャットボットであれば「月○時間の問い合わせ対応業務を自動化し、その人員を他業務に振り向ける」という具体的な改善内容が書けるなら、申請の余地がある。

逆に「なんとなくAIを使って業務が良くなる」という説明では通らない。特例事業者(物価高騰等要件に該当)は定員7人以上の乗用車や貨物自動車も対象になるが、これは一般的なAI導入とは別の論点だ。

申請スケジュール — 9月1日受付開始の意味

マイルストーン 時期 対応アクション
公募要領公表(予定) 2026年夏頃 正式な上限額・要件を確認
申請受付開始 2026年9月1日 GビズID・必要書類の準備完了が必要
申請締切 地域別最賃発効日の前日または11月末の早い方 遅くとも10月末頃を目処に申請
交付決定(目安) 採択後数ヶ月以内 交付決定前に設備発注・契約を行わないこと
事業実施・実績報告 交付決定後〜年度末 賃上げ実施の証明書類を整備

例年4月頃に受付が始まっていたのに比べ、令和8年度は9月1日スタートと約5ヶ月の後ろ倒しになる。実質的な申請可能期間は9月〜11月の約3ヶ月に圧縮されている点に注意が必要だ。

この変更が何を意味するかというと、「夏のうちに準備を完了しておかないと、気づいたときには申請期間が終わっている」という状況が起きやすくなる。GビズIDの取得には1〜2週間かかるため、遅くとも8月中には手続きを済ませておきたい。

令和7年度と何が変わったか — 3つの論点を整理する

論点1: コース再編で「小規模な賃上げ」は助成対象外に

30円・45円コースが廃止され、50円がボトムラインになった。これは「中途半端な賃上げへの助成を絞り、より積極的な賃上げを促す」という政策転換だ。令和8年度の最低賃金は全国平均で1,000円を超える水準になる見通しであり、政府としては最低賃金1,500円を目指す長期方針の一環として、業務改善助成金も賃上げ額の底上げを図った形だ。

論点2: 助成率の基準額が1,050円に引き上げ

令和7年度は最賃1,000円未満の事業場が4/5の高助成率を受けられたが、令和8年度からは1,050円未満が基準になる。最賃が1,000〜1,050円の企業は、助成率が3/4から4/5に上がる可能性がある。ただし都市部など最賃が1,100円を超える地域では3/4のまま変わらない。

論点3: 対象要件が「令和8年度の地域別最賃未満」に統一

これまで複数の条件で判定していた対象要件が「令和8年度の地域別最低賃金額未満であること」に一本化される見通しだ。制度設計としては簡素化されるが、地域差が出やすくなる側面もある。自社の事業場内最低賃金と、地域別最賃の関係を事前に確認しておくことが重要だ。

申請で陥りやすい落とし穴 — 令和8年度特有の注意点

落とし穴1: 交付決定前に設備を発注してしまう

❌ 「9月に申請受付が始まったから、AIツールをすぐ導入してしまおう」

⭕ 交付決定の通知を受け取ってから、発注・契約・導入を実施する

採択の通知と交付決定は別物だ。交付決定前に実施した経費は一切補助対象にならない。「採択された≠補助金がもらえる確定」ではなく、交付申請と交付決定を経て初めて補助の確定となる。

落とし穴2: 申請受付が9月1日なのに夏まで準備を放置する

❌ 「9月開始なんだからまだ時間がある」と油断して8月末に慌てて準備を始める

⭕ 6〜7月にGビズID取得・賃上げ計画・導入設備の検討を完了させ、8月に書類一式を整える

申請可能期間は9〜11月のたった3ヶ月しかない。書類の不備で差し戻されると締切に間に合わない可能性が高い。

落とし穴3: 「業務改善との直接関連」を説明できない経費を申請する

❌ 「AIをなんとなく導入したので設備費を申請する」

⭕ 「月100時間の受発注入力業務をAI-OCRで30時間に削減し、削減した工数をコア業務に再配置する」という具体的な改善計画を示す

業務改善助成金は補助金ではなく助成金(審査なし・要件を満たせば受給可能)だが、生産性向上との因果関係が明確でない申請は不支給・返還対象になるリスクがある。特に「AI導入」は「なぜその導入が業務改善につながるか」の説明が求められる点に注意しよう。

落とし穴4: 賃上げを先にやってから申請する

❌ 「4月に賃上げを実施し、10月に申請しようとしたら、計画書と実績が乖離している」

⭕ 申請→交付決定→賃上げ実施の順番を守り、計画と実態を一致させる

業務改善助成金は「計画に基づいて賃上げと設備投資を行う」という流れが基本だ。先に賃上げを実施してしまうと、申請のための計画書と整合しない場合がある。

今すぐやるべきこと — 令和8年度申請への準備ロードマップ

  1. 4〜5月: 自社の事業場内最低賃金と地域別最賃を確認する
    都道府県労働局が公表する地域別最低賃金と、自社の最低時給を照合。対象事業場かどうかを確認する。
  2. 5〜6月: 導入したい設備・AIツール・ソフトウェアを検討する
    どの業務課題に対して何を導入するか、Before/Afterの改善数値(時間削減・工数削減等)を試算する。
  3. 7月: GビズIDプライムを取得する(未取得の場合)
    GビズIDの取得には印鑑証明書が必要で、完了まで1〜2週間かかる。8月に入ってからでは申請に間に合わないリスクがある。
  4. 8月: 公募要領の公表を待ち、正式な上限額・要件を確認する
    本記事の数値は概算要求段階の参考値。正式公表後に上限額・対象要件を再確認し、申請書のドラフトを作成する。
  5. 9月1日〜: 申請書類を提出する
    都道府県労働局の雇用環境・均等部室が窓口。jGrants(電子申請)または紙媒体での申請が可能。

各補助金・助成金の年間スケジュールの全体像は、令和7年度 補助金スケジュール完全版で一覧化している。業務改善助成金との組み合わせ戦略を立てる際の参考にしてほしい。

AI導入を業務改善助成金で実現するための現実的なシナリオ

事例区分: 想定シナリオ
以下は弊社のAI導入支援経験をもとに構成した典型的な活用例だ。実際の採択を保証するものではない。

シナリオ: 食品製造業(従業員25名)での活用

事業場内最低賃金が950円(地域別最賃未満)の食品製造業者が、パート従業員全員の賃金を70円引き上げる(950円→1,020円)。同時に、受発注・在庫管理の業務を効率化するクラウド型の業務管理システム(月額利用料型)を導入する。

  • 賃上げコース: 70円コース
  • 引き上げ対象人数: 8名
  • 設備投資費用(システム初期費用+1年分利用料): 約280万円
  • 助成率: 4/5(事業場内最賃が1,050円未満のため)
  • 助成上限額(目安): 230万円
  • 実質負担: 約50万円

月に約80時間かかっていた受発注入力が約20時間に削減される見込みで、削減した工数を生産ラインの管理業務に回すことで製品不良率の低下も期待できる。このような「業務課題→導入ツール→改善効果の数値化」というストーリーが、業務改善助成金の申請書で求められる内容だ。

参考・出典


AI導入の計画策定でお悩みの場合は、こちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。どの助成金・補助金が自社に合うかの整理から、AI導入計画の策定まで、株式会社Uravationがサポートします。

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この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。


免責事項

本記事の情報は2026年3月16日時点の概算要求・各社会保険労務士事務所・補助金専門メディアの公開情報に基づく参考情報です。令和8年度の業務改善助成金の公募要領は2026年3月16日時点で正式公表されておらず、上限額・助成率・対象要件は変更される可能性があります。申請にあたっては、必ず厚生労働省の公式サイトおよび各都道府県労働局の最新公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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