申請ガイド

事業承継・M&A補助金 全4枠の要件と申請ガイド2026

この記事の結論

第14次採択率60.9%の実績データをもとに、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠の全4枠を徹底比較。補助率・上限額・必要書類・不採択パターンを解説します。

第14次公募(申請受付:2026年2月〜4月)が完了し、採択発表は5月中旬の予定です。第15次公募の正式なスケジュールはまだ中小企業庁から公表されていませんが、過去の公募ペースから2026年7〜8月頃に開始される見込みです。

正直、「この補助金は名前が難しすぎる」という声をよく聞きます。事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠、と4つの枠があって、どれが自社に当てはまるのかわかりにくい。でも構造さえ理解してしまえば、意外とシンプルです。


第14次実績から見る4枠の補助額

補助率 上限額 対象のざっくり説明
事業承継促進枠 1/2〜2/3 800万円(賃上げで1,000万円) 親族・従業員承継の後継者が新たな取り組みを行う
専門家活用枠(買い手) 2/3 600万円(DD込みで800万円、100億宣言で最大2,000万円) M&Aで経営資源を譲り受ける側
専門家活用枠(売り手) 1/2〜2/3 600万円 M&Aで経営資源を譲り渡す側
PMI推進枠(専門家活用類型) 1/2 150万円 M&A後の統合プロセスに専門家を使う
PMI推進枠(事業統合投資類型) 1/2〜2/3 800万円(賃上げで1,000万円) M&A後の統合効果を高める設備投資
廃業・再チャレンジ枠 2/3 150万円 M&A不成立で廃業する際の費用

第13次全体の採択率は60.9%(481件申請・293件採択)でした。事業承継系の補助金としては採択率が高く、しっかり準備した事業者なら十分に狙える水準です。

各補助金制度の比較については、AI導入に使える補助金5選 徹底比較もあわせてご覧ください。


あなたはどの枠? — 状況別の早見表

状況 使う枠
息子・娘・従業員に会社を引き継いで、その後に新規投資したい 事業承継促進枠
M&Aで他社を買収する費用(FA・仲介手数料)を補助したい 専門家活用枠(買い手)
自社をM&Aで売却する際の手続き費用を補助したい 専門家活用枠(売り手)
M&Aが完了し、統合後の業務改善に専門家を使いたい PMI推進枠(専門家活用)
M&A後の統合で設備投資・システム導入が必要 PMI推進枠(事業統合投資)
M&Aで売れなかった、廃業して新事業を始めたい 廃業・再チャレンジ枠

この早見表で自分のケースを特定してから先を読むと、情報量が多くても迷いにくくなります。


枠ごとの詳細と申請ポイント

1. 事業承継促進枠 — 後継者の新しい挑戦を最大1,000万円補助

こんな会社が対象:

親族や従業員が事業を引き継ぎ(承継済みでも可)、その経営資源を活用して新たな取り組みを行う中小企業者。「承継後に何かやろうとしている」こと自体が要件の核心です。

補助対象経費の具体例:

  • 設備購入費・機械導入費(AI検品システム、自動化設備など)
  • 店舗・工場の改修工事費
  • 新商品・新サービス開発のための外注費
  • 広報費(新ブランドの立ち上げ、ECサイト制作など)

800万円→1,000万円になる条件:

賃上げ実施が要件。事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上上乗せすること。計画書内に「いつ、誰の賃金を、いくら引き上げるか」を具体的に書く必要があります。

審査で評価されやすいポイント:

承継前の事業と新たな取り組みの「つながり」を明確にすること。「親の代から続く金型製造の技術を活かし、AIを使った精度検査に参入する」という流れが書ければ審査委員は評価しやすくなります。


2. 専門家活用枠 — M&Aの仲介・FA費用を最大2,000万円補助

買い手と売り手で補助率・上限が異なるため、自分がどちら側かを先に確認してください。

買い手支援類型:

FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や仲介業者への手数料が主な対象経費。上限600万円が基本で、デューデリジェンス費用が加わると最大800万円まで。中小企業庁が認定した「100億宣言」企業は特例で最大2,000万円まで申請できます。

売り手支援類型:

原則補助率1/2ですが、営業利益率が低下している場合や赤字の場合は2/3に引き上がります。売り手の方が補助率で不利なのは少し不思議ですが、FAへの依頼がより少額になりやすいという背景からです。

必須書類の押さえどころ:

申請時点でM&Aの着手を証明する書類(業務委託契約書など)が必要です。「これからM&Aを検討する」段階では申請できません。


3. PMI推進枠 — M&A後の「統合作業」をカバー

PMI(Post-Merger Integration)とはM&A後の経営統合のこと。「買収したはいいが、システムや業務プロセスの統合が大変」という段階を支援します。

専門家活用類型(上限150万円):

PMI支援専門家(中小企業診断士、コンサルタントなど)への費用が対象。上限が150万円と低めですが、着手のハードルが低い枠です。M&A後6ヶ月〜2年程度の事業者が主に使います。

事業統合投資類型(上限800万円〜1,000万円):

統合効果を最大化するための設備投資・システム導入が対象。「買収した工場のラインを自社のシステムと統合するためのIoT導入」などが典型例です。事業承継促進枠と補助率・上限額の構造が同じなので、混同しやすいですが、こちらはM&A後の統合投資という点が違います。


4. 廃業・再チャレンジ枠 — 「諦める」が「再出発」になる制度

この枠は他の3枠と組み合わせて使うことが多い(「廃業費用」として加算)ですが、単独でも申請できます。

対象経費:

廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費など。会社を畳む際のリアルな出費をカバーします。

再チャレンジ計画書:

廃業後に何をするかを書く「再チャレンジ計画書」の提出が必要。「次はどんな事業で立て直すか」の具体的な記述が審査で見られます。


第13次から変わった重要点 — 事前着手制度の廃止

第14次公募で最も大きな変更は「事前着手制度の廃止」です。

以前は「採択通知後〜交付決定前」に着手を始められる経過措置がありましたが、第14次からは原則廃止。交付決定通知を受け取ってから契約・発注・着手しなければ、費用全額が補助対象外になります。

採択と交付決定は別物です。採択通知が来てもすぐに業者に発注しないでください。


申請の全工程と現実的な所要時間

Step 1: GビズIDプライムの取得(2〜3週間)

法人の場合、印鑑証明書の取得も含めると2〜3週間はかかります。「申請締切の2週間前」に気づいた時点では手遅れです。第15次の公募発表があったらすぐに申請してください。

→ GビズIDの取得手順はGビズID登録ガイドに画像付きで解説しています。

Step 2: 使う枠の確定と対象経費の整理(1〜2週間)

上の早見表で枠を特定した後、「実際にかかる費用が補助対象経費に入っているか」を公募要領で確認。仲介業者やFA会社に費用の見積もりを取るのもこのタイミングです。

Step 3: 事業計画書・申請書類の作成(2〜4週間)

各枠で必要書類が異なります。共通して必要なのは以下の書類です。

全枠共通:

  • 直近3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 従業員の労働条件通知書(常時使用する従業員1名分)

事業承継促進枠・PMI事業統合投資類型 追加:

  • 事業承継計画表
  • 事業承継実施に係る誓約書
  • 承継要件の証明書類(登記事項証明書など)

専門家活用枠 追加:

  • M&A着手・実施を確認する書類(業務委託契約書など)
  • 買い手/売り手を証明する書類

PMI推進枠 追加:

  • M&A実施証明
  • PMI事業計画書

Step 4: jGrantsで電子申請(1〜2日)

jGrants上で申請書と添付書類をアップロードして提出。PDF形式が基本です。

Step 5: 採択発表・交付申請(採択後)

採択→交付申請→交付決定→事業実施、という順序を守ること。第14次の場合、採択発表が5月中旬、交付決定は6月上旬以降の予定でした。事業実施期間が短くなるため、採択後の動きが早いほど有利です。


採択率から見える難易度と傾向

公募回 申請件数 採択件数 採択率
第13次(全体) 481件 293件 60.9%
— 事業承継促進枠 182件 111件 61.0%
— 専門家活用枠 267件 163件 61.0%
— PMI推進枠 32件 19件 59.4%

出典:事業承継・M&A補助金事務局 採択結果(2025年)

採択率60%超は、ものづくり補助金(直近35〜45%)やIT導入補助金(50〜70%)と比べても比較的高水準です。「採択されやすい補助金」の部類に入ります。ただし、PMI推進枠は申請件数自体が少ない(32件)ため、相対的に不確定要素も大きいです。


加点項目 — 同じ内容の申請書でも差がつくポイント

加点項目を満たしていると審査の際に有利に働きます。第14次の全枠共通の加点事由は以下です。

1. 賃上げの実施

事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より30円以上上乗せする計画。事業承継促進枠とPMI事業統合投資類型では上限額の引き上げ(800万→1,000万円)にも直結します。

2. 経営革新計画等の認定

「経営力向上計画」「経営革新計画」「先端設備等導入計画」のいずれかの認定を受けていること。申請前に取得できていれば加点対象。

3. 中小会計要領の適用

中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)を使っている場合、チェックリストを提出することで加点。会計処理の信頼性を示す指標として使われます。

4. 健康経営優良法人認定

経済産業省の健康経営優良法人認定を受けている場合。2〜3ヶ月での取得も可能なので、次回公募を見据えた取り組みとして検討する価値があります。

5. 事業承継診断の受診(事業承継促進枠)

都道府県の中小企業支援センター等で実施する事業承継診断を受診していると加点対象になる場合があります。


不採択になりやすい7つのパターン

❌ パターン1: 採択通知前に発注・契約している

採択通知と交付決定は別です。採択前に業者と契約・発注した経費は一切補助対象外。過去の公募ではこの理由での不採択(または採択後の辞退)が多数ありました。

⭕ 交付決定通知を受け取ってから発注してください。

❌ パターン2: 事業承継の「実績」や「計画」が書類で証明できない

事業承継促進枠では「承継を行った or 行う予定がある」ことを客観的に証明する必要があります。口頭説明や「準備中」では通りません。登記事項証明書、株主名簿の変更記録などが必要です。

⭕ 申請前に法的な手続き(株式譲渡、事業譲渡など)を完了させておくか、具体的なスケジュールと証拠書類を揃えてください。

❌ パターン3: M&Aの「着手前」に専門家活用枠を申請している

専門家活用枠は「M&Aに着手している」ことが前提。「これからM&Aを検討したい」段階での申請は対象外です。

⭕ FA・仲介業者と業務委託契約を締結してから申請。

❌ パターン4: 事業計画書の数値目標が定性的すぎる

「経営を改善します」「効率化を図ります」だけでは審査委員が評価できません。

⭕「受注処理工数を月120時間→50時間に削減(第1年次)」という形で定量目標を設定してください。

❌ パターン5: PMI推進枠で「M&A後」の証明ができない

PMI推進枠はM&A完了後の話。M&A実施を証明するデューデリジェンス完了記録やクロージング書類が揃っていないと審査で指摘されます。

⭕ M&Aのクロージング書類(株式譲渡契約書、最終合意書など)を保管しておいてください。

❌ パターン6: 廃業再チャレンジ枠で「再チャレンジ」の具体性がない

廃業するだけでは不十分。廃業後に何をするのかの「再チャレンジ計画」が審査の核心です。

⭕「新たにECサービスで○○業に参入し、××年までに△△を実現する」という具体的な計画を記載。

❌ パターン7: 申請書類の様式が旧バージョン

公募回が変わるたびに様式が更新されることがあります。公式サイトの最新様式を必ず使ってください。

⭕ 申請前に公式サイトの「公募要領等ダウンロード」ページで最新版を確認する。


認定経営革新等支援機関の活用判断

事業承継・M&A補助金では、認定支援機関(認定経営革新等支援機関)の確認書が必要な枠があります。商工会議所、税理士、中小企業診断士などが該当します。

正直なところ、この補助金は「認定支援機関がいないと詰む」というほどではありません。必要書類の収集と事業計画書の作成ができれば、自力申請は十分可能です。ただし以下のケースでは専門家の活用を検討する価値があります。

専門家を使う価値が高いケース:

  • 専門家活用枠で高額なFAへの依頼を検討している(費用の妥当性評価が必要)
  • PMI事業統合投資類型で複雑な統合投資を計画している
  • 加点項目(経営革新計画等の認定)を取得する必要がある
  • 過去に申請して不採択になった経験がある

自力申請が十分なケース:

  • 事業承継促進枠で比較的シンプルな設備投資を行う
  • 廃業・再チャレンジ枠で対象経費が明確
  • 事業計画書の作成に慣れている

なお、「申請書を作成します」と謳うサービスには注意が必要です。補助金申請書の作成代行は行政書士の独占業務です(行政書士法第1条の2)。適切な支援機関(行政書士・商工会議所・中小企業診断士など)に相談するか、認定支援機関の確認書取得のみ依頼する形が一般的です。


第15次公募に向けた今からの準備

第15次公募のスケジュールはまだ公表されていませんが、過去の公募ペース(概ね3〜4ヶ月おき)から2026年7〜8月頃の公募開始が想定されます。今から準備できることは以下の通りです。

  • GビズIDプライムの取得 — 未取得なら今日中に申請を開始。2〜3週間かかります
  • 3期分の決算書の整備 — 最新決算が未確定の場合は先に確定申告を済ませる
  • 加点項目の取得 — 健康経営優良法人の認定や経営力向上計画の申請を進める
  • M&A着手の証跡整備 — 専門家活用枠を狙う場合は業務委託契約書を早めに締結

  • 既存記事との関係


    参考・出典


    あわせて読みたい:


    執筆:株式会社Uravation 補助金ナビ編集部

    監修:佐藤 傑(株式会社Uravation 代表取締役)

    AI導入の計画策定や補助金活用についてのご質問は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。


    免責事項

    本記事の情報は2026年5月6日時点の中小企業庁・事業承継・M&A補助金事務局の公表資料に基づく参考情報です。制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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