結論: 東京都DX推進助成金は、都内の中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際に最大3,000万円(助成率2/3)を受給できる東京都独自の助成金です。国の補助金と併用はできませんが、東京都に事業所がある企業にとって非常に手厚い制度です。
この記事の要点:
- 生産性向上コースは最大3,000万円、助成率2/3。DX戦略策定支援コースは最大200万円
- 申請前に東京都中小企業振興公社のDXアドバイザーによる支援を受けることが必須条件
- 国の補助金(IT導入補助金、ものづくり補助金等)との併用は不可だが、人材開発支援助成金との併用は可能
対象読者: 東京都内に事業所を有する中小企業の経営者・DX推進担当者
読了後にできること: アドバイザー支援の申し込みから助成金申請までの流れを理解し、準備を開始できます
東京都DX推進助成金とは
東京都DX推進助成金は、東京都中小企業振興公社(以下、公社)が実施する、都内中小企業のDX推進を支援する助成金です。国の補助金制度とは別に、東京都が独自に設けている制度です。
この助成金の最大の特徴は2つあります。
1つ目は助成率2/3(約67%)という高い助成率です。国のデジタル化・AI導入補助金の通常枠が1/2(50%)であるのに対し、東京都の制度は2/3と手厚くなっています。
2つ目はアドバイザー支援が前提という点です。いきなり助成金を申請するのではなく、まず公社のDXアドバイザーが企業を訪問し、DX推進計画を一緒に策定します。この支援を受けた上で、計画に基づいた設備投資に対して助成金が支給される仕組みです。「DXに何から手を付ければいいかわからない」という企業にとって、アドバイザー支援から始められるのは大きなメリットです。
2024年度の実績では約300社がアドバイザー支援を受け、そのうち助成金の交付決定を受けた企業は約120社です。
制度の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | DX推進助成金(東京都中小企業振興公社) |
| 実施主体 | 公益財団法人 東京都中小企業振興公社 |
| コース | 2種類(生産性向上コース、DX戦略策定支援コース) |
| 助成率 | 2/3以内 |
| 助成上限額 | 最大3,000万円(生産性向上コース)/ 最大200万円(DX戦略策定支援コース) |
| 対象者 | 東京都内に事業所を有する中小企業(登記上の本店が都内 or 都内に事業所を有すること) |
| 前提条件 | 公社のDXアドバイザー支援を受けていること |
| 公募時期 | 年2〜3回(2026年度は4月・9月頃を予定) |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社 DX推進助成金 |
2つのコースと助成率
生産性向上コース(メインコース)
DXによる生産性向上を実現するための設備・システム導入を支援するコースです。AI導入、クラウドシステム構築、IoT機器の導入など、幅広いDX投資が対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成上限額 | 3,000万円 |
| 助成下限額 | 50万円 |
| 助成率 | 2/3以内 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から最大1年6か月 |
主な対象経費:
- ソフトウェア購入費・開発費(AI分析ツール、業務システムなど)
- 機械装置費(IoTセンサー、AI搭載検査装置など)
- クラウドサービス利用料(AWS、Azure、GCPなど最大1年分)
- システム構築費(外注によるシステム開発費用)
- コンサルティング費用(DX推進コンサル、データ分析コンサルなど)
例えば、AIを活用した在庫管理システム(600万円)を導入する場合、600万円 × 2/3 = 400万円が助成され、自己負担は200万円で済みます。
DX戦略策定支援コース
DX推進の前段階として、外部専門家と共にDX戦略を策定するための費用を支援するコースです。「まだDXの具体的な計画がない」「専門家に相談しながら計画を作りたい」という企業向けです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成上限額 | 200万円 |
| 助成下限額 | 10万円 |
| 助成率 | 2/3以内 |
| 対象経費 | 外部専門家によるDX戦略策定コンサルティング費用 |
DX戦略策定支援コースで計画を策定した後、生産性向上コースで実際の設備投資を行う — という2段階の活用も可能です。
申請の前提条件:アドバイザー支援が必須
DX推進助成金の最大の特徴は、申請前に公社のDXアドバイザーによる支援を受けることが必須条件である点です。
DXアドバイザー支援の流れ
- 申し込み: 東京都中小企業振興公社のDXアドバイザー支援ページから申し込み(無料)
- ヒアリング: DXアドバイザーが企業を訪問(またはオンライン)し、現状の業務課題をヒアリング
- DX推進計画の策定: アドバイザーと一緒に、自社に最適なDX推進計画を策定。どの業務をデジタル化するか、どんなツール・システムが必要かを整理
- 助成金申請のアドバイス: DX推進助成金の申請に向けたアドバイスも受けられる
アドバイザー支援は完全無料で、通常3〜5回の訪問・面談で完了します。期間は2〜3か月程度が目安です。
重要: アドバイザー支援の申し込みから助成金の申請資格を得るまでに最低2〜3か月かかります。次回の公募(2026年4月頃)に申請したい場合は、今すぐアドバイザー支援に申し込む必要があります。
申請の流れ(6ステップ)
ステップ1: DXアドバイザー支援の申し込み(助成金申請の3か月以上前)
公社のWebサイトから申し込み。DXに関する現状の課題を簡単にフォームに記入するだけでOKです。通常、申し込みから2〜3週間でアドバイザーが割り当てられます。
ステップ2: DXアドバイザーとの面談・DX推進計画策定(2〜3か月)
アドバイザーが企業を訪問し、業務の課題分析とDX推進計画の策定を支援します。この過程で、助成金で導入する設備・システムの方向性も固まります。
ステップ3: 助成金の公募開始を確認
公社のWebサイトで公募スケジュールを確認します。例年、年2〜3回の公募があります。公募期間は通常2〜3週間程度と短いため、見逃さないよう公社のメールマガジンに登録しておきましょう。
ステップ4: 申請書類の作成・提出
DX推進計画に基づき、以下の書類を作成して提出します。
- 助成金申請書(公社指定の様式)
- DX推進計画書(アドバイザー支援で策定したもの)
- 導入する設備・システムの見積書(最低2社からの相見積もりが必要)
- 直近2期分の決算書
- 登記簿謄本(法人の場合)
ステップ5: 審査(面接審査あり)
書類審査に加えて面接審査が実施されます。経営者または DX推進担当者が、DX推進計画の内容と期待される効果を説明する必要があります。面接は通常15〜20分程度です。
ステップ6: 交付決定・設備導入・実績報告
交付決定後に設備の発注・導入を行い、完了後に実績報告書を提出。審査を経て助成金が支給されます。
東京都のDX関連助成金4種類を比較
東京都には DX推進助成金以外にもDX関連の支援制度があります。自社の目的に合った制度を選びましょう。
| 制度名 | 助成上限 | 助成率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| DX推進助成金(生産性向上) | 3,000万円 | 2/3 | DXによる生産性向上の設備投資 |
| DX推進助成金(戦略策定) | 200万円 | 2/3 | DX戦略策定のコンサル費用 |
| 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 | 1億円 | 1/2〜2/3 | 大規模設備投資(DXに限定せず) |
| サイバーセキュリティ対策促進助成金 | 1,500万円 | 1/2 | セキュリティ機器・サービス導入 |
DX推進助成金の3,000万円では足りない大規模投資の場合は、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」(最大1億円)も検討してください。ただし、こちらはDXに限定しない設備投資全般が対象で、審査もより厳しくなります。
国の補助金との比較と使い分け
東京都のDX推進助成金と国の補助金を比較し、自社に最適な制度を選びましょう。
| 項目 | 東京都DX推進助成金 | デジタル化・AI導入補助金 | ものづくり補助金 |
|---|---|---|---|
| 助成/補助上限 | 3,000万円 | 450万円 | 1,250万円 |
| 助成/補助率 | 2/3 | 1/2 | 1/2 |
| 対象地域 | 東京都内のみ | 全国 | 全国 |
| 前提条件 | アドバイザー支援必須 | IT導入支援事業者必須 | 認定支援機関必須 |
| 審査 | 書類+面接 | 書類のみ | 書類のみ |
| 公募頻度 | 年2〜3回 | 年4回以上 | 年4回程度 |
東京都DX推進助成金がおすすめの企業:
- 東京都内に事業所があり、助成率2/3の恩恵を受けたい企業
- DXの方向性をアドバイザーと一緒に考えたい企業
- 450万円(IT導入補助金上限)では足りない、500万円〜3,000万円規模の投資を計画している企業
注意: 東京都の助成金と国の補助金は同一経費に対する併用不可です。どちらか一方を選ぶ必要があります。ただし、人材開発支援助成金(研修費用)は経費の種類が異なるため、併用可能です。
よくある失敗と注意点
❌ アドバイザー支援を受けずに助成金だけ申請しようとする
⭕ アドバイザー支援はDX推進助成金の申請前提条件です。支援を受けていない企業は申請資格がありません。まずは公社のWebサイトからアドバイザー支援に申し込みましょう。
❌ 相見積もりを取らずに特定業者で進めてしまう
⭕ 東京都の助成金では、導入する設備・システムについて最低2社からの見積もり(相見積もり)が必須です。1社のみの見積もりでは申請が受理されません。価格の妥当性を示すためにも、複数社から見積もりを取得しましょう。
❌ 公募期間を見逃してしまう
⭕ 公募期間は2〜3週間程度と短く、見逃すと次の公募まで半年以上待つことになります。公社のメールマガジンに登録し、公募情報を確実にキャッチしましょう。
❌ 面接審査でDX推進計画を説明できない
⭕ 面接ではDX推進計画の内容と期待される効果を経営者自身が説明します。アドバイザーに作ってもらった計画を理解せずに面接に臨むと、質問に答えられず不採択になります。面接前にアドバイザーと計画の内容を復習しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 東京都以外に本社がある企業でも申請できますか?
登記上の本店が都外でも、都内に事業所(支店・営業所等)があれば申請可能です。ただし、DX推進計画の実施場所が都内の事業所であることが条件です。
Q. 従業員が数名の小さな会社でも申請できますか?
はい、中小企業の定義を満たす全ての企業が対象です。個人事業主(従業員あり)も申請可能です。助成下限額は50万円(生産性向上コース)なので、比較的小規模な投資でも活用できます。
Q. AIツールの導入だけでも対象になりますか?
はい、AI分析ツール、AIチャットボット、AI-OCR等のソフトウェア導入も対象です。ハードウェアとソフトウェアの両方、またはソフトウェアのみでも申請可能です。
Q. アドバイザー支援にどのくらい時間がかかりますか?
通常、申し込みからDX推進計画の策定完了まで2〜3か月程度です。アドバイザーの空き状況や企業の状況によって前後します。助成金の次回公募に間に合わせるためにも、早めの申し込みをお勧めします。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 公社の公式ページでDX推進助成金の最新情報を確認し、自社が対象要件を満たすか確認
- 今週中: DXアドバイザー支援に申し込み(無料)。次回公募に間に合わせるには今から動く必要があります
- 来月まで: アドバイザーとの面談を開始し、DX推進計画の策定に着手。並行して導入するシステムの情報収集と相見積もりの取得
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著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。100社以上の企業向けAI研修・導入支援の実績を持ち、補助金を活用したAI導入プロジェクトも多数支援。X (@SuguruKun_ai)
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免責事項: 本記事の情報は2026年3月時点の公表資料に基づく参考情報です。助成金の内容は年度により変更される場合があります。申請にあたっては、必ず東京都中小企業振興公社の公式サイトで最新の公募情報をご確認ください。本記事の情報に基づく申請結果について、当サイトおよび株式会社Uravationは一切の責任を負いません。
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