製造業でAIを活用した省エネ投資を検討しているなら、今もっとも注目すべき制度が「省エネ・非化石転換補助金」です。中小企業なら補助率最大2/3、1事業あたり最大15億円の補助を受けられる大型制度で、2026年3月30日から一次公募が始まっています。
AI空調制御やAI生産最適化、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入がそのまま補助対象になる点が製造業にとっての最大のポイントです。同じ工場でも、設備更新とAI制御システムを組み合わせて複数の類型に申請できる仕組みになっています。
省エネ・非化石転換補助金でもらえる金額(2026年度 令和7年度補正予算)
補助金は事業の性質によって4つの類型に分かれています。製造業でよく使われる順に整理すると次の通りです。
| 類型 | 対象 | 補助率(中小企業) | 補助率(大企業) | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|---|---|---|
| Ⅰ型 工場・事業場型 | 工場全体の省エネ改善 | 先進枠:2/3以内 一般枠:1/2以内 |
先進枠:1/2以内 一般枠:1/3以内 |
単年度15億円 複数年度30億円 |
100万円/年度 |
| Ⅱ型 電化・脱炭素燃転型 | 化石燃料から電気・水素等への転換 | 1/2以内 | 1/2以内 | 3億円(電化事業は5億円) | 30万円 |
| Ⅲ型 設備単位型(GX型) | リスト指定の高効率設備への更新 | トップ性能枠:1/2以内 メーカー強化枠:1/3以内 |
同左 | 3億円 | 30万円 |
| Ⅳ型 エネルギー需要最適化型 | EMS・AI制御システムの導入 | 1/2以内 | 1/3以内 | 1億円 | 30万円 |
※上記は令和7年度補正予算 一次公募の情報です。最新情報は省エネ・非化石転換補助金 公式特設サイトでご確認ください。(参照日:2026年3月27日)
製造業でのAI投資は、Ⅰ型(工場全体最適化)とⅣ型(EMS・AI制御)を組み合わせるパターンが多くなっています。同一設備への重複補助はNGですが、対象設備が異なれば複数類型への申請は可能です。
補助金の選び方に迷う場合は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてください。
製造業のAI投資がなぜ省エネ補助金の対象になるのか
「省エネ補助金なのにAI投資が対象?」と思う方は多いです。正直、この点は制度の名前から直感しにくい。
ポイントは経済産業省が2026年3月3日に公表した「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」にあります。この手引きで、従来のハードウェア主体の省エネから「データ駆動型省エネ」への転換が明確に位置づけられました。AIを使って「いつ・どこで・どれだけ」エネルギーが消費されているかを把握・制御する取り組みが、正式に補助対象として整理されたのです。
Ⅳ型(エネルギー需要最適化型)では、SIIが指定するEMS機器を「エネマネ事業者」経由で導入した場合が対象です。このEMSの分類が3段階あります。
- 見える化型:エネルギー使用量を計測・表示・分析する
- 制御型:計測データをもとに省エネ制御を自動で実施する
- 高度型:AIが稼働パターンを学習して最適運転を自動で算出する
「高度型」がまさにAI×省エネの核心です。製造ラインの稼働データをAIに学習させて、エアコン・コンプレッサー・照明・生産設備の電力消費を一括でリアルタイム最適化するシステムが対象になります。
AI・IoTを活用した省エネ投資の具体例(補助対象になるもの・ならないもの)
補助対象になるAI省エネ投資
以下は実際の申請でよく使われる投資の種類です。
-
AI空調制御システム(Ⅳ型)
工場内の温湿度・稼働状況・外気温をAIが学習し、冷暖房・換気を自動最適化。圧縮空気の漏れ検知も組み込める製品が増えています。補助対象経費:設備費・設計費・工事費。 -
AI生産スケジューリング+エネルギー最適化(Ⅰ型・先進枠)
受注データと連動してAIが生産順序を最適化し、ピーク電力を平滑化する取り組み。工場全体の省エネ効果が定量的に計測できる場合はⅠ型・先進枠が使えます。 -
AIを搭載した高効率コンプレッサー・ポンプへの更新(Ⅲ型)
SIIのリストに登録されている高効率設備への更新はⅢ型で申請。最近はインバーター付きのAI自動圧力制御機能を持つコンプレッサーが登録されています。 -
電力デマンド監視・ピークカットAI(Ⅳ型)
電力需要のピーク時間帯をAIが予測し、設備の稼働タイミングを自動調整するシステム。契約電力の削減で毎月の基本料金が減ります。 -
製造炉・窯の燃焼制御AIシステム(Ⅰ型・Ⅱ型)
温度・流量・CO2濃度をAIでリアルタイム制御して燃料消費を削減。ガス炉から電気炉への転換も含めるとⅡ型の電化・脱炭素燃転型も適用できます。
補助対象にならない投資(注意点)
- 汎用PCやタブレットの購入費(原則対象外)
- 省エネ効果が定量化・計測できない取り組み
- エネマネ事業者を経由しないEMS導入(Ⅳ型の場合)
- 補助事業完了後に補助対象設備を他の用途に転用する場合
「省エネ補助金」と「非化石転換補助金」の違いと製造業での使い分け
名称に「省エネ」と「非化石転換」が並んでいますが、これは同一の補助金事業の中にある取り組みの方向性の違いです。
| 取り組みの方向性 | 概要 | 対応する類型 |
|---|---|---|
| 省エネ | 使うエネルギーを減らす(効率化) | Ⅰ型・Ⅲ型・Ⅳ型 |
| 非化石転換 | 化石燃料から電気・水素等に切り替える | Ⅱ型・Ⅰ型(一部) |
製造業でよくある「ガスボイラーを廃止してヒートポンプ電気ボイラーに更新し、同時にAI制御で熱需要を最適化する」というケースは、Ⅱ型(燃料転換)とⅣ型(AI制御)を組み合わせる複合申請が有効です。
ただし、同じ設備・同じ経費を2つの類型で重複計上することはできません。設備の役割を明確に区分して申請することが肝要です。この点の整理に迷うなら、エネマネ事業者(SII登録)への事前相談が近道です。
2026年度 申請スケジュール(一次・二次公募)
| 公募回 | 公募期間 | 交付決定(予定) |
|---|---|---|
| 一次公募 | 2026年3月30日(月)〜4月27日(月) | 2026年6月中旬 |
| 二次公募 | 2026年6月上旬〜7月上旬(予定) | 2026年9月上旬(予定) |
一次公募の締切は4月27日(月)です。ここから逆算すると、今すぐ着手しないと間に合いません。特にⅠ型の申請では、省エネ診断やエネルギー使用量データの整理に2〜4週間かかることが多い。
GビズIDを取得していない場合は最優先で申請を。法人の場合、印鑑証明書が必要で1〜2週間かかります。→ GビズID登録の完全ガイド
申請に必要な準備(Ⅳ型:AI・EMS導入の場合)
Step 1: GビズIDプライムの取得(所要:1〜2週間)
法人は印鑑証明書が必要。取得申請後、郵便で書類が届くまでの時間を見込んでおくこと。
Step 2: エネマネ事業者の選定(所要:1〜2週間)
Ⅳ型の申請には、SII登録済みの「エネマネ事業者」を通じてEMSを導入することが必須条件です。SII公式サイトでエネマネ事業者リストを確認し、自社の業種・規模に合う事業者に相談します。
Step 3: 省エネ効果の試算(所要:1〜3週間)
補助申請には省エネ効果の定量計算が必要です。エネマネ事業者が計算をサポートしますが、自社の電気・ガス使用量データ(直近1〜2年分)を事前に整理しておくと話が早い。
Step 4: 申請書類の作成・提出(所要:1〜2週間)
jGrants上で申請書を作成します。Ⅳ型では省エネ計画書、設備仕様書、エネマネ事業者との契約書等が必要。
Step 5: 採択通知・交付申請
採択後、交付申請を行い、交付決定を受けてから設備の発注・契約に入ります。交付決定前の発注は補助対象外になるため、この順番を絶対に守ること。
Step 6: 事業実施・実績報告・補助金の交付
設備導入後に実績報告書を提出。省エネ効果の測定期間(原則6ヶ月〜1年)があるため、補助金の最終受け取りまでには時間がかかります。
デジタル化AI補助金・ものづくり補助金との併用可能性
「省エネ補助金と他の補助金を併用できないか」は、製造業からよく聞かれる質問です。原則は「同一の設備・同一の経費への重複補助はNG」ですが、対象が異なれば併用できます。
| 組み合わせ | 可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 省エネ補助金(Ⅳ型:EMS)+ものづくり補助金(AI検品設備) | ⭕ 可能 | EMS導入と検品AI設備は別経費なら問題なし |
| 省エネ補助金(Ⅱ型:電化)+デジタル化AI補助金(業務DX) | ⭕ 可能 | 電気設備更新と業務DXソフトは対象が異なる |
| 省エネ補助金+省エネ補助金(同一設備を2類型で申請) | ❌ 不可 | 同一設備の重複補助は禁止 |
| ものづくり補助金+IT導入補助金(同一業務プロセス) | ❌ 不可 | 同一事業への重複補助は原則禁止 |
省エネ補助金とものづくり補助金の組み合わせは、製造業においてもっとも有効な戦略の一つです。たとえば「省エネ補助金でAI空調・EMS導入(最大1億円)、ものづくり補助金でAI検品システム導入(最大1,250万円)」と分けることで、1つの工場に複数の補助金を組み合わせることができます。
具体的な組み合わせパターンはデジタル化・AI導入補助金2026完全ガイドも参照してください。
落とし穴になるケース(申請前に必ず確認)
落とし穴1: エネマネ事業者経由を忘れてEMSを発注してしまう
❌ 「良さそうなEMSシステムを見つけたので直接メーカーに発注した」
⭕ 「まずSIIのエネマネ事業者リストで対応業者を確認し、そこから導入する」
Ⅳ型はエネマネ事業者経由での導入が絶対条件です。いくら良いシステムでも、エネマネ事業者を通さなければ補助対象外になります。
落とし穴2: 省エネ効果の計算根拠が不明確
❌ 「AI導入で大幅に電気代が削減できると思います(根拠なし)」
⭕ 「現在の年間電力消費量○○kWh、AI制御導入後に○%削減(○○kWh削減)する根拠:同型設備での実績データに基づく試算」
審査委員は省エネ効果の計算根拠を厳しく見ます。エネマネ事業者に事前試算を依頼し、数字の裏付けを取ることが必須。
落とし穴3: 交付決定前に設備を発注してしまう
❌ 採択通知が届いた時点で設備の発注・契約をする
⭕ 交付申請 → 交付決定通知 → 発注・契約の順番を守る
採択≠交付決定です。この違いを理解していない申請者が毎回います。交付決定前の経費は補助対象外になるため、取り消しがあった場合は全額自己負担になります。
落とし穴4: Ⅰ型の「先進枠」要件を満たさずに申請してしまう
❌ 「中小企業だから先進枠で2/3の補助率が取れるはずだ」と思い込む
⭕ 先進枠に必要な省エネ率(対ベースライン△○%以上)を公募要領で確認し、要件を満たせるか事前に試算する
補助率が高い先進枠には省エネ効果の最低基準があります。一般枠(中小:1/2以内)と先進枠(中小:2/3以内)の違いは大きいので、要件確認は慎重に。
参考・出典
- 省エネ・非化石転換補助金 公式特設サイト — 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)(参照日:2026年3月27日)
- 令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金 公募情報(参照日:2026年3月27日)
- 経産省が「AI×省エネ」指針を初公表、最大1億円のEMS導入補助金開始 — SBクリエイティブ(参照日:2026年3月27日)
- 省エネ補助金とは?2026年はどう変わる? — 補助金ポータル(参照日:2026年3月27日)
- 令和6年度補正予算における省エネ支援パッケージ — 資源エネルギー庁(参照日:2026年3月27日)
省エネ投資×AI導入で何から始めるか迷ったら
- 今日やること:GビズIDの取得状況を確認。未取得なら今すぐ申請する(手順はこちら)
- 今週中:直近2年分の電気・ガス使用量データを経理か設備担当に依頼して入手する
- 4月第1週まで:エネマネ事業者またはAI省エネシステムの提供会社に問い合わせ、Ⅳ型申請の可否と補助額の試算を依頼する
どの補助金を使えばいいか、自社のAI導入計画に合った選び方がわからない場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。AI導入の計画策定をサポートしています。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年3月27日時点の資源エネルギー庁・一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず省エネ・非化石転換補助金公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。