結論: 新事業進出補助金(旧: 事業再構築補助金)は、中小企業が新たな事業分野に進出する際に最大9,000万円(補助率1/2〜2/3)を受給できる大型補助金です。第3回公募の締切は2026年3月26日です。
この記事の要点:
- 従業員数に応じて最大2,000万円〜9,000万円、補助率は中小企業2/3・中堅企業1/2
- 申請には6つの要件をすべて満たす必要があり、事業再構築補助金より審査が厳格化
- 第3回公募の締切は2026年3月26日(水)17:00。年度内の最終回の可能性あり
対象読者: 新規事業への進出、業態転換を検討中の中小企業経営者
読了後にできること: 6つの申請要件を自社が満たすか確認し、第3回公募への申請判断ができます
新事業進出補助金とは?事業再構築補助金との違い
新事業進出補助金は、2024年度に「事業再構築補助金」の後継として新設された制度です。中小企業が新たな事業分野への進出や業態転換を行う際に、建物費・機械装置費・システム構築費などの大規模な設備投資を支援します。
事業再構築補助金との最大の違いは、「コロナからの回復支援」から「前向きな成長投資支援」に制度の目的が転換した点です。事業再構築補助金では売上減少要件(コロナ前比10%以上の売上減少)がありましたが、新事業進出補助金ではこの要件が撤廃されています。
事業再構築補助金との主な違い
| 項目 | 事業再構築補助金(終了) | 新事業進出補助金 |
|---|---|---|
| 売上減少要件 | あり(コロナ前比10%減) | なし |
| 口頭審査 | なし(書面審査のみ) | あり(一定額以上) |
| 補助対象 | 既存事業の転換も含む | 新事業分野への進出に限定 |
| 補助上限 | 最大1.5億円(一部枠) | 最大9,000万円 |
| 審査の厳しさ | 比較的緩やか | 厳格化(口頭審査追加) |
補助上限は事業再構築補助金より下がりましたが、それでも中小企業向け補助金としては最大級の補助額です。AI・DX分野への新規参入や、デジタル技術を活用した新サービスの立ち上げなどに最適な補助金です。
制度の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 中小企業新事業進出補助金 |
| 管轄 | 経済産業省 中小企業庁(事務局: 中小企業基盤整備機構) |
| 補助率 | 中小企業 2/3以内、中堅企業 1/2以内 |
| 補助上限額 | 2,000万円〜9,000万円(従業員数による) |
| 対象者 | 中小企業、中堅企業(資本金10億円未満) |
| 対象経費 | 建物費、機械装置費、システム構築費、技術導入費 他9種類 |
| 第3回締切 | 2026年3月26日(水)17:00 |
| 公式サイト | 新事業進出補助金公式サイト |
従業員数別の補助上限額
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率(中小企業) |
|---|---|---|
| 20人以下 | 2,000万円(廃業等を伴う場合: 2,500万円) | 2/3以内 |
| 21〜50人 | 4,000万円(廃業等を伴う場合: 4,500万円) | 2/3以内 |
| 51〜100人 | 6,000万円(廃業等を伴う場合: 6,500万円) | 2/3以内 |
| 101人以上 | 8,000万円(廃業等を伴う場合: 9,000万円) | 2/3以内 |
既存事業の廃業を伴う場合は、廃業費用分として最大500万円が上乗せされます。中堅企業(資本金10億円未満)の場合は補助率が1/2に下がりますが、同じ補助上限額が適用されます。
6つの申請要件
新事業進出補助金を申請するには、以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。事業再構築補助金よりも要件が増えており、一つでも欠けると不採択になります。
要件1: 新事業要件
申請する事業が「新たな事業分野への進出」であること。具体的には、これまで製造していない新製品の製造開始、これまで提供していないサービスの提供開始などが該当します。既存製品・サービスのマイナーチェンジは対象外です。
要件2: 市場性要件
進出する事業分野に十分な市場規模と成長性があること。市場調査データや業界レポートを活用して、進出先の市場が成長しているかパチンコ拡大していることを事業計画で示す必要があります。
要件3: 事業計画要件
認定経営革新等支援機関と共同で事業計画を策定すること。補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関(銀行・信金等)の確認も必要です。
要件4: 付加価値額要件
補助事業終了後3〜5年で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均4.0%以上向上させる計画であること。ものづくり補助金の3%より高い目標が求められます。
要件5: 給与支給総額要件
事業計画期間中に、給与支給総額を年率平均2.0%以上増加させる計画であること。
要件6: 最低賃金要件
事業場内の最低賃金が、地域別最低賃金+30円以上であること。
ポイント: 要件4の「付加価値額 年率4%以上」と要件5の「給与支給総額 年率2%以上」は、数値計画の根拠が審査で重視されます。「なぜこの数字が達成可能なのか」を、市場データや受注見込みなどの具体的な根拠で説明する必要があります。
対象経費(9種類)
新事業進出補助金は、新事業に必要な幅広い経費をカバーしています。
- 建物費: 新事業用の施設の建設・改修費用(最も金額が大きくなりやすい項目)
- 機械装置・システム構築費: 製造設備、AI搭載装置、業務システムなど
- 技術導入費: 特許権の導入、技術ライセンス料
- 専門家経費: コンサルタント、弁護士、中小企業診断士への謝金
- 運搬費: 設備の運搬・設置費用
- クラウドサービス利用費: AIプラットフォーム等のクラウド利用料
- 外注費: 加工・設計・デザインの外注費用
- 知的財産権関連経費: 特許出願、商標登録の費用
- 広告宣伝・販売促進費: 新事業のWeb広告、チラシ、展示会出展費用
特筆すべきは広告宣伝費が補助対象である点です。他の補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金)では広告費は対象外のことが多いため、新事業の販促活動を含めて申請できるのは大きなメリットです。
申請の流れ(6ステップ)
ステップ1: 認定支援機関の選定と事前相談
まず、事業計画の策定をサポートしてくれる認定支援機関を選定します。顧問の税理士、取引銀行、地域の商工会議所などに相談しましょう。新事業進出補助金は事業計画の質が採択を大きく左右するため、支援実績のある機関を選ぶことが重要です。
ステップ2: 事業計画書の作成
A4で15ページ程度の事業計画書を作成します。以下の項目を盛り込みます。
- 現在の事業概要と経営課題
- 新事業の内容、ターゲット市場、競合分析
- 投資計画(設備・システムの詳細と費用内訳)
- 収益計画(5年間の売上・利益・付加価値額・給与支給総額の数値計画)
- 新事業の実現可能性と自社の強みの活用
ステップ3: 認定支援機関の確認・金融機関の確認
事業計画書を認定支援機関に提出し、確認書を取得。3,000万円超の場合は金融機関の確認も取得します。
ステップ4: 電子申請(gBizIDで申請)
公式サイトの電子申請システムから申請。事業計画書、確認書、決算書等をアップロードします。
ステップ5: 口頭審査(対象者のみ)
補助金額が一定額以上の場合、オンラインによる口頭審査が実施されます。これは事業再構築補助金にはなかった新要素で、経営者自身が事業計画の内容を説明し、審査員の質問に回答する必要があります。
口頭審査のポイント:
- 事業計画の内容を経営者自身が理解し、自分の言葉で説明できること
- 「なぜ今この新事業に進出するのか」の動機を明確に語れること
- 数値計画の根拠を質問されても具体的に回答できること
- コンサルに丸投げしたような計画は見抜かれる — 自社の実情に即した説明が必要
ステップ6: 採択・交付決定・事業実施
採択後、交付申請を経て交付決定。その後に設備の発注・導入を行い、実績報告を提出して補助金を受給します。
よくある失敗と注意点
❌ 既存事業の延長を「新事業」として申請してしまう
⭕ 新事業進出補助金は「新たな事業分野への進出」が要件です。既存の飲食店がメニューを変えるだけでは不十分。「飲食店がAIを活用した食品EC事業を開始する」のように、明確に新しい事業分野への進出である必要があります。
❌ 口頭審査の準備を怠り、質問に答えられない
⭕ 口頭審査では経営者自身が計画を説明します。「この数字の根拠は?」「競合との差別化は?」「リスク対策は?」といった質問に、具体的に回答できるよう準備しましょう。計画書を作成した認定支援機関と事前に模擬面接を行うことをお勧めします。
❌ 付加価値額の数値計画に根拠がない
⭕ 年率4%以上の付加価値額向上は高い目標です。「市場が成長しているから達成できる」ではなく、「ターゲット顧客○社への営業計画で年間○万円の受注見込み」のように、積み上げ根拠を示す必要があります。
❌ 交付決定前に設備を発注してしまう
⭕ 他の補助金と同様、交付決定前の発注・契約は補助対象外です。見積もりの取得までは問題ありませんが、発注書の送付や契約の締結は交付決定後に行ってください。
2026年度以降:ものづくり補助金との統合の可能性
中小企業庁は新事業進出補助金とものづくり補助金の統合を検討中です。統合後は「中小企業省力化・新事業進出補助金」のような形で一本化される可能性があります。
統合が実施された場合、現在の申請要件や補助率が変更される見込みです。現在の枠組みで新事業への進出を計画している場合は、統合前の現行制度で申請しておく方が確実です。
よくある質問(FAQ)
Q. 創業間もない企業でも申請できますか?
はい、創業間もない企業でも申請可能です。ただし、決算書(最低1期分)が必要なため、設立後最初の決算を終えている必要があります。
Q. AI関連の新事業は採択されやすいですか?
AI・DX関連の新事業は政策的にも推進されている分野であり、事業計画の質が高ければ採択されやすい傾向にあります。ただし、「AIが流行っているから」ではなく、自社の強みを活かしたAI事業である必要があります。
Q. 他の補助金と併用できますか?
同一経費に対する併用は不可です。ただし、異なる経費であれば可能です。例えば、新事業の設備投資に新事業進出補助金を、従業員のAI研修に人材開発支援助成金を使うパターンは有効です。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 公式サイトで最新の公募要領をダウンロードし、6つの申請要件を自社が満たすか確認
- 今週中: 認定支援機関(顧問税理士、取引銀行、商工会議所)に相談し、事業計画書の作成を開始
- 申請準備: 第3回公募(3月26日締切)を目指す場合は即座に行動。間に合わない場合は次回公募に向けて計画を練り込む
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著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。100社以上の企業向けAI研修・導入支援の実績を持ち、補助金を活用したAI導入プロジェクトも多数支援。X (@SuguruKun_ai)
免責事項: 本記事の情報は2026年3月時点の公表資料に基づく参考情報です。補助金の内容は年度や公募回次により変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請結果について、当サイトおよび株式会社Uravationは一切の責任を負いません。
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第3回公募の申請で押さえるべき3つの戦略
新事業進出補助金の採択率を高めるためには、単なる事業計画書の提出だけでなく、戦略的な準備が不可欠です。
1. 「事業再構築」との違いを明確にする
前身の事業再構築補助金との最大の違いは、新市場への進出が明確に求められる点です。既存事業の延長ではなく、自社にとって新しい市場・顧客層への展開であることを事業計画書で具体的に示しましょう。市場調査データや競合分析を盛り込むことで、審査員の納得感が高まります。
2. 加点項目を最大限活用する
賃上げ加点(従業員の給与を年率3%以上引き上げ)、デジタル技術活用加点(AI・IoT等の導入)、グリーン加点(脱炭素・環境配慮)など、複数の加点項目を組み合わせることで採択確率が大幅に向上します。特にデジタル技術活用加点はAI導入と相性が良く、取得しやすい項目です。
3. 認定支援機関との連携を早期に開始する
申請には認定経営革新等支援機関の確認書が必要です。商工会議所、地方銀行、税理士法人などが該当しますが、締切直前は混雑するため、締切の2ヶ月前には相談を開始することをおすすめします。事業計画のブラッシュアップにも時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
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