5月に締切を迎える補助金が2つある。ものづくり補助金 第23次(5月8日)とデジタル化・AI導入補助金 第1次(5月12日)だ。
AI導入を検討している中小企業の担当者からよく聞く悩みがある。「どちらに申請すれば良いのか分からない」「両方申請できるのか」「審査の難しさは同じ?」——そういった声だ。
結論から先に言えば、既存のAIツール・SaaSを導入するならデジタル化・AI導入補助金、自社専用のAIシステムを開発・カスタマイズするならものづくり補助金が合っている。ただしそれだけでは判断できないケースも多い。この記事では、両制度を6つの軸で比較し、5月の締切に向けた判断フローを示す。
| あなたの状況 | 推奨制度 |
|---|---|
| ChatGPT、AI-OCR、AIチャットボット等のSaaSを導入したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| 自社の製造ラインに合わせたAI検品システムを開発したい | ものづくり補助金 |
| 予算が500万円以下で、早期に事業開始したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| AI導入と設備投資(機械・設備)を同時に行いたい | ものづくり補助金 |
| 申請の手軽さ・スピードを優先したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| 補助額を最大化したい(1,000万円以上) | ものづくり補助金 |
| IT導入支援事業者と組んで申請したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| 認定支援機関(税理士・商工会など)に相談している | ものづくり補助金 |
補助金制度の全体比較は AI導入に使える補助金5選 徹底比較 も参考にしてほしい。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の特徴
2026年度からIT導入補助金が名称変更し、AI機能を持つツールの導入支援がより明確に位置づけられた制度だ。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) |
| 所管 | 経済産業省(中小企業庁) |
| 補助率(通常枠) | 1/2(小規模事業者で賃上げ要件達成: 最大4/5) |
| 補助上限額(通常枠) | 5万〜450万円 |
| 申請締切(第1次) | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 交付決定予定 | 2026年6月18日頃 |
| 申請方法 | IT導入支援事業者と共同申請(jGrants) |
| 公式サイト | デジタル化・AI導入補助金2026 |
申請に必要なのはIT導入支援事業者(登録済みベンダー)との共同申請だ。独自に申請書を書いて提出する形ではなく、導入するツールのベンダーがシステム上で申請手続きをサポートする。この点がものづくり補助金と大きく異なる。
AI導入での主な活用例
- 生成AI(ChatGPT・Claude等)の業務活用ツール: 月額費用2年分が対象
- AI-OCR(請求書・帳票の自動読取り): ソフトウェア費+導入設定費
- AIチャットボット(顧客対応自動化): 初期費用+月額費用
- AI需要予測システム: ライセンス費+カスタマイズ費
ポイントは「登録済みITツールの中から選ぶ」こと。自社だけのオーダーメイドシステム開発には使えない。
ものづくり補助金(第23次)の特徴
中小企業の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの抜本改善を支援する、歴史ある補助金制度だ。2026年度も継続して公募が行われている(第23次)。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第23次) |
| 所管 | 中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者・再生事業者: 2/3) |
| 補助上限額 | 750万円〜2,500万円(従業員数規模による) |
| 賃上げ特例 | 1人あたり年率3.5%以上の賃上げで補助率1/2→2/3に引上げ |
| 申請締切(第23次) | 2026年5月8日(金) |
| 採択発表予定 | 2026年8月上旬 |
| 申請要件 | 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認が必要 |
| 公式サイト | ものづくり補助金 総合サイト |
ものづくり補助金の特徴は「革新性」の要件だ。「新たな製品・サービスの開発」または「生産プロセスの革新的改善」が前提となる。既存のAIツールを導入するだけでは採択が難しく、自社の業務に組み込んだ独自システムの開発・改善が必要になる。
AI導入での主な活用例
- AI画像認識による製造ラインの自動検品システム開発
- AI需要予測エンジンと基幹システムの統合開発
- 農業・水産業向けの独自AI管理システム構築
- AIによるカスタム受注生産の自動見積システム
6つの軸で徹底比較
軸1: 補助額の規模
予算規模がそのまま制度選択の出発点になる。
- デジタル化・AI導入補助金: 上限450万円。大半のSaaS導入はこの範囲に収まる
- ものづくり補助金: 上限750万円〜2,500万円(従業員数次第)。大規模開発案件に対応
500万円以下の導入案件ならデジタル化・AI導入補助金で十分。それを超える場合はものづくり補助金を検討する価値がある。
軸2: 申請の難易度と準備期間
正直に言って、両制度の申請難易度には大きな差がある。
デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者がナビゲートしてくれるため、申請者側の書類作成負担が比較的軽い。GビズIDがあれば、ベンダーとの連携で2〜3週間での申請準備が可能だ。
一方、ものづくり補助金は申請者自身が事業計画書を作成し、認定支援機関の確認も必要だ。事業計画書の作成に1〜2ヶ月かかることが珍しくない。審査基準に「革新性」「技術的な新規性」が含まれるため、内容も専門性が要求される。
軸3: 補助の対象となる経費
| 経費の種類 | デジタル化・AI導入補助金 | ものづくり補助金 |
|---|---|---|
| SaaSの月額利用料(2年分) | ⭕ 対象 | ❌ 原則対象外 |
| AIシステムの開発費 | △ 登録ツールに限る | ⭕ 対象(機械装置費等) |
| ハードウェア・設備 | ❌ 原則対象外 | ⭕ 対象(機械装置費) |
| 導入コンサルティング費 | ⭕ 対象(導入関連費) | ⭕ 対象(外注費) |
| 社員研修費 | △ 限定的 | ⭕ 対象(専門家経費) |
「SaaSのクラウド費用を2年分まとめて補助してもらいたい」という場合、これができるのはデジタル化・AI導入補助金だけだ。ものづくり補助金では月額料金は対象外になる。
軸4: 採択後に事業を開始できるタイミング
採択後の交付決定を経てからでないと補助対象の経費を使えない。
- デジタル化・AI導入補助金(第1次): 申請締切5月12日 → 交付決定6月18日頃 → 6月下旬から着手可能
- ものづくり補助金(第23次): 申請締切5月8日 → 採択発表8月上旬 → 交付決定は9〜10月頃 → 秋以降の着手
「今年度中に早期に導入を完了させたい」という事業者には、デジタル化・AI導入補助金の方がタイムラインが合っている。ものづくり補助金は採択から交付決定まで4〜5ヶ月かかり、事業開始が秋以降になる点を理解しておく必要がある。
軸5: 採択率と競争の激しさ
デジタル化・AI導入補助金の2024年度採択率は約75%と高かったが、2025年度以降は申請件数増加を受けて変動が予想される。申請要件が比較的シンプルな分、競争は激しい。
ものづくり補助金の第22次の採択率は非公表だが、過去の採択率は概ね40〜55%前後で推移している。事業計画書の質が合否を大きく左右するため、書ける人が書けば通るという側面も強い。
軸6: 両制度の同時申請はできるか
同一の経費を両制度で重複計上することはできない。ただし、用途が異なる経費をそれぞれで申請することは可能だ。
例: SaaSの導入費用でデジタル化・AI導入補助金を申請しつつ、別途の設備投資でものづくり補助金を申請するケースは、制度上は排除されていない(詳細は各公募要領で確認が必要)。
5月締切に向けた判断フロー
以下のチェックリストに沿って考えると、どちらの制度が自社に合うかが絞り込める。
- 導入したいAIツールは「既存のSaaS・クラウドサービス」か「自社専用の開発システム」か?
- 既存SaaS → デジタル化・AI導入補助金
- 自社専用開発 → ものづくり補助金(または両方検討)
- 必要な補助額は500万円以下か、それ以上か?
- 500万円以下 → デジタル化・AI導入補助金で十分
- 500万円超 → ものづくり補助金を検討
- 事業開始は6月下旬でも良いか、秋以降でも問題ないか?
- 6月以降に着手したい → デジタル化・AI導入補助金
- 秋以降でも問題ない → ものづくり補助金も選択肢
- 認定支援機関(税理士・商工会など)と相談できる体制があるか?
- ある → ものづくり補助金の申請準備を進める
- ない/体制が整っていない → まずデジタル化・AI導入補助金を検討
制度選びの落とし穴
落とし穴1: 「補助率が高い方を選べばいい」は間違い
❌ デジタル化・AI導入補助金は最大4/5だから有利、とだけ考える
⭕ 「4/5」が適用されるのは小規模事業者かつ賃上げ要件達成のケース。通常の中小企業の補助率は1/2
落とし穴2: 「とりあえず両方申請」は禁物
❌ 締切が近いから両方申請して採択されたら考える
⭕ 申請書作成は相当な工数がかかる。軸を絞って完成度を高めた申請書を出す方が採択率は上がる
落とし穴3: 交付決定前に発注してしまう
❌ 採択通知 = 補助金決定と思って業者に発注する
⭕ 採択後も「交付申請」→「交付決定」というステップがある。交付決定前の発注は補助対象外
今日から5月締切に向けて動く
- 今日中: 自社のAI導入の目的・規模を整理し、上記の判断フローで制度を絞る
- 今週中: デジタル化・AI導入補助金なら 公式サイト でIT導入支援事業者を探す。ものづくり補助金なら認定支援機関に連絡する
- 4月末まで: GビズID の取得確認(申請の必須要件)。未取得なら即申請
あわせて読みたい:
- AI導入に使える補助金5選 徹底比較 — 全制度を横断比較
- ものづくり補助金 第23次 事業計画書の最終チェック項目
「自社にはどちらの補助金が合うのか」「AI導入の計画策定から相談したい」という場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。AI研修・導入支援の実績をもとに、最適な制度選定をご提案します。
参考・出典
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公式サイト — ものづくり補助金総合サイト(参照日: 2026-04-11)
- ものづくり補助金 スケジュール — 公式スケジュールページ(参照日: 2026-04-11)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト — 中小機構(参照日: 2026-04-11)
- デジタル化・AI導入補助金 概要解説 — 補助金ポータル(参照日: 2026-04-11)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領公開 — 中小企業庁(参照日: 2026-04-11)
免責事項
本記事の情報は2026年4月11日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。