ものづくり補助金

新事業進出・ものづくり補助金 統合|2026年度の大改編を完全解説

新事業進出・ものづくり補助金 統合|2026年度の大改編を完全解説

この記事の結論

2026年度にものづくり補助金と新事業進出補助金が統合。総額2,960億円パッケージの全貌と企業がとるべき対応を解説。

2026年度、中小企業向け補助金の制度が大きく塗り替わる。「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」(仮称)として新たに生まれ変わるのだ。令和7年度補正予算ではこのパッケージに総額2,960億円が計上されており、中小企業庁が手がける補助金の中でも最大規模の再編となる。

正直、「また制度が変わるのか」と感じる経営者も多いだろう。しかし今回の統合は単なる名称変更ではない。補助上限額が従来の最大4,000万円から最大9,000万円(グローバル枠)へと大幅に引き上げられ、枠の設計思想そのものが変わっている。製品開発・新市場進出・海外展開の3軸を1制度で支援する体制に移行するのだ。

本記事では、統合の背景・3つの申請枠の詳細・旧2制度との比較・AI/DX活用との接点・申請準備のポイントを、2026年3月時点の公開情報に基づいて徹底解説する。公募開始はまだ先だが、今から動ける企業が採択に近づく。


まず大枠を掴むために、旧制度との対比を整理しておく。

旧2制度の位置づけ

項目 ものづくり補助金 新事業進出補助金
開始時期 2009年度〜 2021年度〜(旧・事業再構築補助金の後継)
主な対象 試作品・設備開発、生産性向上 新分野進出・事業転換・海外展開
補助率(主) 1/2(小規模2/3) 1/2(条件付き2/3)
補助上限(最大) 4,000万円(グローバル) 9,000万円(賃上げ特例時)
申請窓口 ものづくり補助金事務局 新事業進出補助金事務局
直近採択率 製品・サービス高付加価値化枠:30%台 約37.1%(第3回)

2つの制度が並立していたため、「どちらを使えばいいか分からない」という中小企業の相談が後を絶たなかった。設備投資なのか新事業なのか、その境界が曖昧なケースも多く、事務局も申請者も判断に迷うことがあった。統合はその問題を解消するための政策的決断だ。

統合後の新制度「新事業進出・ものづくり補助金」の概要

項目 内容
制度名 新事業進出・ものづくり補助金(仮称)
所管省庁 経済産業省 中小企業庁
予算規模 総額2,960億円(「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」の一部)
申請枠 3枠(革新的新製品・サービス枠 / 新事業進出枠 / グローバル枠)
補助上限 750万円〜最大9,000万円(枠・規模・賃上げ特例による)
補助率 1/2〜2/3(枠・事業者区分による)
公募開始見込み 2026年夏(7〜8月)以降、年間3回程度の公募予定
採択目標 令和8年度末(2027年3月)までに約6,000件
申請方法 jGrants(電子申請)予定

※ 公募要領は2026年3月時点で未公表。上記は令和7年度補正予算・中小企業庁の公表資料をもとにした速報情報です。最新情報は中小企業庁公式サイトでご確認ください。

なお補助金比較の全体像は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較でもまとめています。こちらもあわせて参照してください。


なぜ統合されるのか ― 政策の背景を読む

制度の詳細に入る前に、「なぜ今このタイミングで統合なのか」を理解しておくと、申請書で政策の方向性と一致した事業計画を書きやすくなる。

ものづくり補助金が「生産性向上パッケージ」から外れた理由

ものづくり補助金はこれまで、政府の「生産性向上・賃上げ支援パッケージ」の柱として位置づけられてきた。ところが2025年度末(令和7年度)にこのパッケージの組み替えが行われ、ものづくり補助金は同パッケージから切り離され、新たな枠組みに移行することになった。

背景には2つの課題がある。

課題1: 制度の「飽き」と申請件数の低迷
ものづくり補助金は2009年度から続く老舗制度だ。長年にわたって改定を繰り返し、2025年度時点で第23次公募まで行われていた。一方で、毎回似たような改定が続き、「以前と同じ制度」という認識が広がったことで、申請件数が伸び悩む回も出てきた。

課題2: 事業再構築補助金から新事業進出補助金への移行の総括
コロナ禍に創設した「事業再構築補助金」を縮小・廃止し、2024年度から「新事業進出補助金」として仕切り直した。ところが2制度が並立することで、申請者が「どちらに当てはまるか」で混乱するケースが頻発。これを解消するため、より明確な3枠体制への再編が決定された。

要するに今回の統合は「制度の整理整頓」だ。2つの補助金が担ってきた機能を3つの枠に再配置し、企業の投資目的に応じて選びやすくした。審査委員の視点からも、評価基準が統一されることで審査の一貫性が高まる。

2,960億円という予算規模の意味

令和7年度補正予算で計上された「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」の2,960億円は、新事業進出・ものづくり補助金だけでなく、中小企業省力化投資補助金(カタログ型・一般型)も含むパッケージの総額だ。

このうち新事業進出・ものづくり補助金に充てられる金額の内訳は2026年3月時点で未公表だが、旧2制度の合計予算が毎年数百億円規模だったことを踏まえると、相当の予算が確保されているとみられる。採択目標「6,000件」という数字も、制度への本気度を示している。

📖 あわせて読みたい: 【2026年最新】観光業向け補助金まとめ|観光庁予算2.4倍の支援制度活用法


3つの申請枠 ― 何がどう変わったか

新制度の核心は3枠構成だ。それぞれの対象・補助率・上限額を詳しく見ていく。

枠①: 革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金に相当)

旧ものづくり補助金の「製品・サービス高付加価値化枠」や「省力化(オーダーメイド)枠」に相当する枠だ。既存事業の延長線上で、技術的革新性のある製品・サービス・生産プロセスを開発する企業が主な対象となる。

項目 内容
対象 既存事業をベースにした革新的な製品・サービス・生産工程の開発
補助率(通常) 1/2
補助率(小規模・再生事業者) 2/3
補助上限(従業員5人以下) 750万円(賃上げ特例時: 約1,125万円)
補助上限(従業員6〜20人) 1,000万円(賃上げ特例時: 約1,500万円)
補助上限(従業員21〜50人) 1,500万円(賃上げ特例時: 約2,250万円)
補助上限(従業員51人以上) 2,500万円(賃上げ特例時: 約3,750万円)
主な対象経費 機械装置・システム構築費、外注費、技術導入費、クラウド利用費

ここで注目すべきは「賃上げ特例」だ。申請時に設定した賃上げ目標(給与支給総額の年平均3.5%増)を上回る水準での賃上げを行った場合、補助上限が約1.5倍に引き上げられる見込みだ。ただし詳細な特例要件は公募要領の公開を待つ必要がある。

AI・DX文脈でこの枠を活用するなら、たとえば「AIを活用した新しい検査ソフトウェアの開発」「機械学習モデルを組み込んだ生産管理システムの構築」などが想定される。既存製品の改良に留まる案件は採択が難しいため、「革新的」という要件をどう満たすかが申請書の核心になる。

枠②: 新事業進出枠(旧新事業進出補助金に相当)

旧新事業進出補助金の後継にあたる枠で、既存事業とは明確に異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する。補助上限が最も大きく、7,000万円〜賃上げ特例時9,000万円というスケールが魅力だ。

項目 内容
対象 既存事業と明確に異なる新分野への進出、高付加価値事業への業態転換
補助率 1/2
補助上限(従業員20人以下) 2,500万円(賃上げ時: 3,000万円)
補助上限(従業員21〜50人) 4,000万円(賃上げ時: 5,000万円)
補助上限(従業員51〜100人) 5,000万円(賃上げ時: 6,500万円)
補助上限(従業員101人以上) 7,000万円(賃上げ時: 9,000万円)
主な対象経費 製造設備、工場改装、建物費(一部)、販売促進費、外注費

旧新事業進出補助金を使ったことがある企業なら、この枠の要件感は近い。ただし「新事業」の定義が公募要領で明確化されると、旧制度より審査が厳しくなる可能性もある。ざっくり言えば、「今やっている事業の延長」ではなく「新しい事業カテゴリに入る」という判断が必要だ。

AI企業がこの枠を使う典型例は、「製造業がAI診断サービス事業に参入」「小売業がSaaS型在庫管理ツールの提供事業を立ち上げ」など、業種の垣根を越えたケースだ。

枠③: グローバル枠(従来のグローバル枠の大幅強化版)

海外市場への進出・輸出体制の強化を支援する枠で、補助率2/3が特徴だ。旧ものづくり補助金のグローバル枠は上限3,000万円(特例時4,000万円)だったが、新制度では最大7,000万円〜9,000万円へと大幅に引き上げられた。

項目 内容
対象 海外市場開拓、輸出体制強化、海外進出に向けた設備・システム投資
補助率 2/3(3枠中最も高い)
補助上限 最大7,000万円(賃上げ特例時: 最大9,000万円)※従業員規模により異なる
主な対象経費 海外展示会出展費、翻訳・通訳費、設備費、システム構築費、外注費

採択率は「20%台」と3枠の中で最もハードルが高い。海外事業計画の実現可能性・資金調達能力・海外パートナーとの連携体制など、国内向けとは異なる審査観点が加わるためだ。AI・DXを活用した製品の海外展開を検討している企業には魅力的な枠だが、準備期間を長めに見ておく必要がある。

3枠の一覧比較

枠名 対象事業 補助率 上限額(最大) 難易度感
革新的新製品・サービス枠 既存事業の革新 1/2(小規模2/3) 3,750万円(賃上げ特例) ★★★☆☆
新事業進出枠 新分野への進出 1/2 9,000万円(賃上げ特例) ★★★★☆
グローバル枠 海外市場開拓 2/3 9,000万円(賃上げ特例) ★★★★★

「補助上限が大きいから新事業進出枠」という発想は一定合理的だが、新事業の定義要件を満たせないと審査で落ちる。まずは自社の投資目的と現在の事業内容を正直に整理し、どの枠に「素直に当てはまるか」を判断するのが先決だ。


旧制度との比較 ― 何が引き継がれ、何が変わったか

すでに旧制度を活用したことがある企業にとって、最も気になるのは「以前の経験を活かせるか」という点だろう。

ものづくり補助金からの主な変更点

変更項目 旧ものづくり補助金 新:革新的新製品・サービス枠 変化
補助率(通常) 1/2 1/2 → 変更なし
補助率(小規模) 2/3 2/3 → 変更なし
上限額(51人以上) 1,250万円(通常枠) 2,500万円 ↑ 2倍に拡大
グローバル枠上限 3,000万円(特例4,000万円) 7,000万円(特例9,000万円) ↑ 大幅拡大
申請枠の数 複数(製品、省力化、デジタル等) 1枠(革新的新製品・サービス枠)に集約 ← 簡素化
賃上げ要件 事業計画期間中の賃上げ 付加価値額4%増・給与3.5%増など △ 要件が明確化
成長加速化補助金との関係 独立 省力化投資補助金とパッケージ化 ← 体系整理

端的に言えば、ものづくり補助金の申請経験がある企業は、革新的新製品・サービス枠に移行しやすい。補助率の構造は同じで、上限額は引き上げられている。ただし枠が集約されたことで審査の競争倍率が変わる可能性があるため、以前より申請書の質で差がつきやすくなるかもしれない。

新事業進出補助金からの主な変更点

変更項目 旧新事業進出補助金(第3回時点) 新:新事業進出枠 変化
補助率(通常) 1/2 1/2 → 変更なし
上限額(20人以下) 2,500万円 2,500万円(賃上げ時3,000万円) → ほぼ同等
上限額(101人以上) 7,000万円(賃上げ時9,000万円) 7,000万円(賃上げ時9,000万円) → 変更なし
事業の性質要件 既存と「異なる」事業 同等の要件が継続される見込み → 引き継ぎ
制度ブランド 「新事業進出補助金」として独立 統合制度の1枠に ← 変更

新事業進出補助金を使ったことがある企業は、新事業進出枠への移行が自然だ。補助率・上限額の構造はほぼ引き継がれる。ただし「筆者も判断がつかない」部分として、旧制度で「既存事業との関連性」をどう説明していたかが、そのまま通用するかは公募要領の公開を待つしかない。制度が統合されることで審査基準が再定義される可能性がある。


省力化投資補助金との使い分け ― 迷ったらここで判断する

2,960億円のパッケージには「中小企業省力化投資補助金」も含まれており、新事業進出・ものづくり補助金とセットで語られることが多い。両制度の使い分けを明確にしておく。

省力化投資補助金とは

省力化投資補助金は、人手不足解消に特化した補助金だ。カタログ型(登録製品から選ぶ)と一般型(自由に設計できる)の2タイプがある。補助率は通常1/2で、補助上限は一般型で最大1億円(大幅改定後)。ただし「省力化」という目的に限定されており、新製品開発や新事業進出は対象外だ。

どちらを使うべきかの判断フロー

以下の順で自社の投資目的を確認してほしい。

  1. その投資は主に「人手を減らす」ためか?
    → YES: 省力化投資補助金(カタログ型または一般型)を検討
    → NO: 次の質問へ
  2. 既存事業の革新的な製品・サービス・工程開発か?
    → YES: 新事業進出・ものづくり補助金「革新的新製品・サービス枠」が候補
    → NO: 次の質問へ
  3. 既存事業とは明確に異なる新市場・新事業か?
    → YES: 「新事業進出枠」が候補
    → NO: 次の質問へ
  4. 海外市場進出・輸出拡大が主目的か?
    → YES: 「グローバル枠」が候補
    → NO: IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)も含めて再検討

この判断フローで当てはまる制度が複数出た場合でも、1つの投資案件に対して複数の国の補助金を重複して使うことは原則できない。ただし異なる経費について別の補助金を使う「棲み分け活用」は可能なので、詳細は公募要領の確認と専門家への相談を推奨する。


AI導入・DX投資との接点 ― どんな事業が補助対象になるか

補助金ナビの読者に多い「AI導入・DX推進」の文脈で、この制度をどう活用できるかを具体的に考えてみる。

革新的新製品・サービス枠で使えるAI/DXの経費例

この枠で補助対象になりやすいのは、「AI技術を活用した新しい製品・サービスの試作・開発」だ。具体例を挙げる。

  • AIを使った自動検査装置の開発: 画像認識AIを組み込んだ検品システムを自社開発する場合、システム構築費・機械装置費が対象になる可能性がある
  • 生成AIを活用したB2B SaaSの試作: 業務特化型のAIアシスタントツールを自社で開発し、顧客向けに提供するサービスを立ち上げる場合
  • AIによる品質管理プロセスの革新: 従来の統計的品質管理からAI予測モデルを使った次世代品質管理への移行。単なるツール導入ではなく、生産プロセス自体の革新性が問われる

ポイントは「革新性」の証明だ。単に市販のAIツールを導入するだけでは、この枠の要件を満たせない可能性が高い。既存技術の組み合わせや自社での開発・カスタマイズが求められる。

新事業進出枠で使えるAI/DXの経費例

「今の事業とは違う、AI事業を立ち上げたい」という企業向けだ。

  • 製造業によるAI診断サービス事業への参入: 長年の製造ノウハウをAIモデル化し、同業他社へのコンサルティング・診断サービスとして提供する新事業
  • 小売業によるDX支援ツールの販売事業: 自社でのDX経験をもとに、SaaS型ツールを開発・販売する事業への転換
  • サービス業によるデータ分析事業の立ち上げ: 顧客データ活用の知見を活かし、業界特化のデータ分析・AI活用支援事業に進出

「既存事業と明確に異なる」という要件がキーで、審査委員は「本当に新しい事業カテゴリか」を厳しく見る。従来の延長線上にある事業は、この枠ではなく革新的新製品・サービス枠の方が適切だ。

グローバル枠で使えるAI/DXの経費例

  • AI技術の海外展示会出展: 自社開発のAIソリューションを海外の見本市でプロモーションする場合の出展費・渡航費・翻訳費
  • 海外向けAIシステムのローカライズ開発: 既存のAI製品を海外市場向けに言語・法規制対応する開発費
  • 海外拠点向けシステム構築: 海外進出に伴うERP・AI活用の業務システム構築費

申請スケジュールの見通し ― 今から動くべき理由

2026年3月時点で、公募開始日はまだ未定だ。これを読んで「じゃあまだ早い」と思うのは間違いで、むしろ今が準備の好機だ。

想定スケジュール(推測を含む)

時期 想定イベント
2026年3〜4月 新事業進出補助金 第4回公募(最終回)の受付・審査
2026年4〜5月 新制度の事務局選定(中小企業基盤整備機構が選定主体)
2026年5〜6月頃 公募要領・事業計画策定の手引き等の公開(予測)
2026年7〜8月頃 第1回公募開始(予測)
2026年10月頃 第1回採択発表(予測)
2026年9〜10月頃 第2回公募開始(予測)
2027年1月頃 第2回採択発表(予測)

※ 上記スケジュールは複数の補助金情報サイトの分析と過去の類似制度の実績をもとにした予測であり、公式発表ではありません。

公募開始を待たずに今やるべき準備

補助金申請で落ちる企業の多くは「公募が始まってから準備を始める」という共通点がある。特に事業規模が大きい新事業進出枠やグローバル枠は、申請書の完成度が採択を左右するため、早期準備が圧倒的に有利だ。

今すぐできること:

  1. GビズIDプライムの取得: jGrantsでの電子申請に必須。法人は印鑑証明書が必要で取得に1〜2週間かかる。まだ持っていなければ今日中に申請サイトへ
    GビズID登録ガイド(完全版)参照
  2. 自社の事業課題と数値の整理: 「現状の生産性はどのくらいか」「どのKPIを何%改善したいか」を数字で書き出す。この作業は申請書に直結する
  3. 3枠のどれが自社に合うかの仮決め: 上述の判断フローで、暫定的に「この枠」という目星をつけておく。公募要領が出たら要件確認をする
  4. 投資計画・資金計画の立案: 補助金は後払い(実績報告後に交付)。つまり最初に自己資金または借入で全額を出す必要がある。資金繰りを今のうちに確認しておく
  5. 連携IT/AI事業者の候補リスト作成: 枠によっては登録支援機関の活用が有利に働くことがある。実績ある事業者との関係構築を早めに進めておく

採択率を上げるために ― 審査で評価されやすい事業計画の要素

旧ものづくり補助金・旧新事業進出補助金の審査実績から、採択されやすい事業計画に共通するポイントを整理する。新制度でも基本的な評価観点は引き継がれると想定される。

審査で評価される5つの観点

観点 配点イメージ よくある失敗
技術・サービスの革新性 高め 「市販ツールを導入するだけ」という計画
事業化の実現可能性 高め 実施体制・スケジュールが曖昧
数値目標の具体性 高め 「生産性を向上させる」という抽象記述
賃上げ・地域貢献 加点要素 最低限しか書かない
費用対効果 中程度 根拠なしの概算金額

書き方でよくある不備 ― これで落ちた(❌⭕形式)

不備1: 革新性の説明がない

❌ 「最新のAIシステムを導入して生産性を向上させます」

⭕ 「現行の目視検査では月120時間・不良品流出率2.3%という課題がある。本事業では独自に開発するAI画像認識モデルを既存ラインに組み込み、月の検査工数を45時間(62.5%削減)・不良品流出率0.8%以下(65%改善)を目指す。類似のオフザシェルフ製品は当社の製品形状に対応しておらず、ゼロからのモデル学習が必要であり、技術的に革新的な取り組みである」

不備2: 新事業の「新しさ」が証明できていない

❌ 「現在の主力事業である機械部品製造の効率化を図ります」(これは新事業進出枠の対象外)

⭕ 「現在は機械部品の製造のみだが、本事業では製造工程で蓄積した品質管理ノウハウをAIモデル化し、同業他社向けの品質診断SaaSサービスとして提供する新事業を立ち上げる。製造業から製造+IT事業者への業態転換であり、主たる事業を新市場に拡大するものである」

不備3: 交付決定前に発注してしまう

❌ 「採択通知が来たのでITベンダーとの開発契約を締結した」

⭕ 採択通知 ≠ 交付決定。必ず「交付決定通知書」を受け取ってから発注・契約する。この順序を間違えると全額自己負担になる

不備4: 実施体制が「社長一人」

❌ 「代表取締役が全工程を指揮する」

⭕ 「プロジェクト責任者: 代表取締役(経営判断)、技術責任者: 製造部長(AI導入の実務)、外部支援: ○○AI開発会社(モデル設計・実装)、支援機関: ○○商工会議所(事業計画のレビュー)」


省力化投資補助金との「組み合わせ」が有効なケース

パッケージの中に含まれる省力化投資補助金との使い分けをさらに掘り下げる。実は2制度を別の経費に使う「棲み分け活用」が有効なケースがある。

具体的なシナリオとして考えてみる。

想定シナリオ(典型的な活用パターン)

従業員30名の食品製造業A社が、以下の2つの投資を計画している。

  • ①ライン工程の自動化(省力化目的): 産業用ロボット+制御システム導入(3,000万円)
  • ②AI品質検査システムの独自開発(革新的開発): AIモデル開発+専用装置構築(2,000万円)

①は省力化投資補助金(一般型)で申請し、②は新事業進出・ものづくり補助金(革新的新製品・サービス枠)で申請する棲み分けが考えられる。ただし同一の経費を2制度に計上することは厳禁で、経費の切り分けを明確にする必要がある。

※ この棲み分けが実際に可能かどうかは、各制度の公募要領の規定に依存する。公募要領公開後に必ず確認すること。


統合によって消えるもの、残るもの

旧制度のユーザーが気になる「移行期の注意点」を整理する。

新事業進出補助金 第4回が「最終公募」になる可能性

現時点(2026年3月)で、新事業進出補助金の第3回公募は3月26日締切で受付中だ。第4回は「最終公募」として実施される見込みで、その終了後に新制度「新事業進出・ものづくり補助金」へ移行すると予想されている。

つまり旧新事業進出補助金を使いたい企業は、第4回公募が最後のチャンスになる可能性が高い。新制度を待つのか旧制度で申請するのか、スケジュールと準備状況に応じて判断が必要だ。

ものづくり補助金 第23次以降の扱い

ものづくり補助金は2025年度で第23次公募を実施した。2026年度以降、「ものづくり補助金」というブランドで新規公募が行われるかどうかは、2026年3月時点では公式発表がない。生産性向上パッケージから外れたことを踏まえると、新事業進出・ものづくり補助金に完全移行する可能性が高いとみられている。

ただし「ものづくり補助金が完全に終わる」と断言するのは時期尚早だ。過去にも何度か「廃止」の観測が出ながら形を変えて継続してきた経緯がある。最終的には2026年夏以降の公募要領公開を待つしかない。


今すぐやるべきアクション ― 公募開始前にできる準備

まとめとして、今日から着手できるアクションを整理する。

今週中にやること

  1. GビズIDプライムの取得状況を確認する
    まだ取得していなければ今日から申請。GビズID登録ガイドを参照してほしい。法人の場合、印鑑証明書の準備を含めて1〜2週間かかる。
  2. 自社が「どの枠」に当てはまるか仮決めする
    本記事の判断フローをもとに、革新的新製品・サービス枠・新事業進出枠・グローバル枠のいずれかを暫定で選ぶ。「どれが最適か分からない」場合はAI導入の専門家への相談も有効だ。

今月中にやること

  1. 自社の課題を数値で書き出す
    「現在の○○業務は月△△時間かかっており、エラー率は□□%だ」という形で、課題を定量化する。これが申請書の骨格になる。
  2. 投資金額と資金計画を確認する
    補助金は後払い。採択から交付まで半年以上かかることもある。その間の資金手当て(自己資金・融資枠)を確認しておく。
  3. 中小企業庁・ミラサポplusのメールマガジンに登録する
    公募要領の公表は突然行われることが多い。ミラサポplusの更新情報を追う習慣をつけておくと、公募開始の見逃しを防げる。

AI導入の計画策定でお悩みなら

「自社はどの枠に当てはまるか」「事業計画の数値目標をどう設定すべきか」――こうした悩みはAI導入の専門家に相談するのが近道だ。株式会社Uravationは100社以上のAI研修・導入支援実績をもとに、中小企業のAI活用と補助金活用をサポートしている。

どの補助金が自社に合うか分からない場合、AI導入の計画策定について不安がある場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください(申請代行は行っておらず、AI活用のコンサルティング・研修が中心です)。


参考・出典


あわせて読みたい:


この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。


免責事項

本記事の情報は2026年3月14日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。「新事業進出・ものづくり補助金」は2026年3月時点で公募要領が未公表であり、本記事に記載した補助率・上限額・スケジュール等は変更される可能性があります。申請にあたっては、必ず中小企業庁公式サイトおよび公募要領で最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

Need help turning subsidy knowledge into action?

補助金を使ったAI導入を検討中の方へ

制度の最終適用可否は公募要領の確認が必要ですが、AI研修・PoC・導入計画の整理はUravationが無料相談でサポートしています。

この記事をシェア

X Facebook LINE

関連記事