神奈川県に拠点を置く中小企業がDX・AI導入に使える補助金・助成金は、国の制度だけではない。県と市区町村がそれぞれ独自の支援制度を設けており、うまく組み合わせれば実質負担を大幅に下げられる。
この記事では、2026年度(令和7年度)に活用できる神奈川県・横浜市・横須賀市・平塚市・厚木市の5制度を比較しながら解説する。県の制度は上限500万円、平塚市のAI導入コースは上限200万円と、使いようによっては相当な金額が手元に残る。
神奈川県内で使えるDX・AI補助金 早見表
正直、制度名だけ並べられても「どれを使えばいいか」分からないと思う。まず自社の状況に応じた選び方を示す。
| 用途・状況 | おすすめ制度 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| AI・IoT本格導入(100万円超の投資) | 平塚市 IoT・AI導入支援コース | 1/2 | 200万円 |
| 設備投資と合わせた生産性向上 | 神奈川県中小企業生産性向上促進事業費補助金 | 1/2〜2/3 | 500万円 |
| 中小企業のデジタルツール導入(ソフト・クラウド) | 横浜市 中小企業デジタル化推進支援補助金 | 1/2 | 100万円 |
| 小規模事業者のICT導入(30万円以内) | 横須賀市 小規模事業者ICT支援補助金 | 3/4 | 30万円 |
| ロボット・AI・IoT導入(厚木市内企業) | 厚木市 ロボット関連産業等促進事業補助金 | 一部補助 | 70万円 |
国の「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」は2026年3月30日から申請受付が始まる予定だが、これと地方自治体の制度は原則として別経費であれば併用できる。たとえば、ソフトウェア費用を国の補助金で賄い、導入に伴う社員研修を地方の助成金で対応するといった組み合わせは現実的だ。
各補助金制度の詳しい比較はAI導入に使える主要補助金5選 徹底比較もあわせて確認してほしい。
神奈川県中小企業生産性向上促進事業費補助金|上限500万円の県独自制度
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業生産性向上促進事業費補助金(令和7年度) |
| 所管 | 神奈川県産業労働局 |
| 補助率 | 小規模事業者: 2/3以内 / 中小企業: 1/2以内 |
| 補助上限額 | 最大500万円(ITサービス導入費は上限50万円、施設工事費は上限100万円) |
| 下限額 | 25万円 |
| 対象者 | 神奈川県内に事業所を有する中小企業者 |
| 申請方法 | 電子申請(令和7年度は6月〜10月の複数回公募) |
| 公式サイト | 令和7年度中小企業生産性向上促進事業費補助金 ポータルサイト(参照日: 2026-03-15) |
※ 上記は令和7年度の情報です。令和8年度(2026年度)の公募は別途告知予定。最新情報は公式サイトでご確認ください。
DX・AI導入での活用ポイント
この補助金は「設備費+ITサービス費+施設工事費」を一括で申請できる点が特徴だ。たとえば、AIによる生産管理システムを導入する場合、サーバー等の機械装置費(上限500万円)とクラウドSaaS利用料(ITサービス費・上限50万円)を同時に申請できる。
ただし注意点がある。単なる設備更新は対象外。あくまで「生産性向上につながる新規導入」であることを申請書に明示しなければならない。「既存のExcel管理をAI-OCRに切り替える」といった具体的なBefore/Afterを書けるかどうかが採否を分ける。
申請タイミングの選び方
令和7年度は6月・7月・8月・9月〜10月の複数回公募が行われた。過去のデータから、申請が増加する夏以降の公募回は競争率が上がる傾向がある。令和8年度も同様のスケジュールが想定されるため、6月公募(最初の公募回)に照準を合わせて早めに準備するのが賢明だ。
横浜市 中小企業デジタル化推進支援補助金|DXコースで最大100万円
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 令和7年度中小企業デジタル化推進支援補助金 |
| 所管 | 横浜市経済局 |
| 補助率 | 1/2以内 |
| 補助上限額 | DXコース: 100万円 / 小規模事業者向け導入コース: 10万円 |
| 下限額 | 20万円(DXコース) |
| 対象者 | 横浜市内に事業所を有する中小企業(みなし大企業を除く) |
| 対象経費 | ソフトウェア導入費、クラウド費用、デジタル化関連機器、外注・委託費、専門家経費等 |
| 必須条件 | 脱炭素取組宣言の実施・デジタル化相談の受講 |
| 公式サイト | 横浜市公式ページ(参照日: 2026-03-15) |
※ 令和7年度は2025年12月11日に予算上限に達し受付終了。令和8年度(2026年度)の公募は2026年度開始後に改めて告知予定。
ここが独特な申請要件
横浜市の補助金には「脱炭素取組宣言」が必要という、他市では見かけない条件がある。これはオンラインで簡単に登録できる仕組みだが、知らずに申請を進めようとして「要件不足」になるケースがある。申請前に横浜市の公式サイトで脱炭素取組宣言の登録状況を確認しておくこと。
また、「デジタル化相談を受けていること」も必須だ。横浜市中小企業支援センターのデジタル化相談を事前に予約し、相談を完了させてから申請に進む必要がある。
平塚市 中小企業等DX支援補助金|AI・IoT本格導入に最大200万円
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業等DX支援補助金 |
| 所管 | 平塚市産業振興課 |
| コース① | デジタルツール導入コース: 補助率1/3、上限50万円(市内発注の場合は上限100万円) |
| コース② | IoT・AI導入支援コース: 補助率1/2、上限200万円 |
| 対象者 | 平塚市内に事業所がある中小事業者・医療法人・学校法人・NPO・組合等 |
| 必須条件 | ITコーディネータによる事前確認・生産性向上目標の設定 |
| 申請期間(令和7年度) | 令和7年4月1日〜令和8年2月28日 |
| 公式サイト | 平塚市公式ページ(参照日: 2026-03-15) |
※ 上記は令和7年度の情報です。令和8年度の公募開始時期は平塚市産業振興課(0463-21-9758)にお問い合わせください。
AI導入に圧倒的に向いている制度
神奈川県内の自治体補助金の中で、AI・IoT導入に最も手厚いのが平塚市のIoT・AI導入支援コースだ。補助率1/2で上限200万円という設計は、単純なソフト導入だけでなく、システム設計委託費・ハードウェア費・コンサルティング費も対象になる点が大きい。
たとえば、AIによる品質管理システムを外部ベンダーに委託開発する場合、開発費400万円に対して200万円が補助される計算になる。ただし、事前にITコーディネータの確認を取得することが必須条件だ。この確認に数週間かかる場合もあるため、「4月から申請できると思っていたら5月になってしまった」という事態を防ぐため、年度が変わる前から準備を始めたい。
横須賀市 小規模事業者ICT支援補助金|商工会議所と連携した伴走型
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 小規模事業者ICT支援補助金 |
| 所管 | 横須賀市経済企画課・横須賀商工会議所 |
| 補助率 | 3/4以内 |
| 補助上限額 | 30万円 |
| 対象者 | 横須賀市内の小規模事業者 |
| 対象外 | 汎用PC・タブレット等の購入は対象外 |
| 特徴 | 横須賀商工会議所のICT相談員が伴走型で支援 |
| 公式サイト | 横須賀市公式ページ(参照日: 2026-03-15) |
※ 最新の公募状況は横須賀商工会議所(046-823-0402)にお問い合わせください。
補助率3/4は神奈川県内でもトップクラス
横須賀市の制度が際立っているのは、補助率の高さだ。補助対象経費の3/4という設計は、同じく神奈川県内でも珍しい水準。上限30万円なので大規模な導入には向かないが、従業員10人以下の小規模事業者にとって、最大22.5万円(30万円×3/4)の実質負担削減はインパクトがある。
商工会議所のICT相談員が伴走してくれる仕組みは、「何から始めればいいか分からない」という企業に特に向いている。申請書の書き方を含めたサポートが受けられるため、補助金申請が初めての企業でも比較的進めやすい。
厚木市 ロボット関連産業等促進事業補助金|さがみロボット産業特区の制度
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | ロボット関連産業等促進事業補助金 |
| 所管 | 厚木市産業振興課 |
| 補助上限額 | 70万円 |
| 対象 | 厚木市内の中小企業(ロボット・IT・IoT・AI等の先端技術導入) |
| 公募状況(令和7年度) | 予算上限に達したため受付終了 |
| 公式サイト | 厚木市公式ページ(参照日: 2026-03-15) |
※ 令和8年度(2026年度)の公募再開については、厚木市産業振興課(046-225-2830)にお問い合わせください。
厚木市が「さがみロボット産業特区」であることの意味
厚木市や相模原市周辺は「さがみロボット産業特区」として国から指定されており、ロボットやAI、IoTを活用した実証実験を積極的に誘致している地域だ。厚木市の補助金はその一環として設けられたもので、他市と比べると「ロボットとの協働」「AIによる生産ライン自動化」など、製造業の現場実装に特化した申請が通りやすい傾向がある。令和7年度はすでに受付終了しているが、過去の実績から毎年度公募が実施されている制度であるため、令和8年度の開始を待って準備することをおすすめする。
5制度の比較まとめ
| 制度 | 対象エリア | 補助率 | 上限額 | AI・IoT向き度 | 2026年度公募状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 神奈川県 生産性向上補助金 | 県全域 | 1/2〜2/3 | 500万円 | ★★★★☆ | 令和8年度開始後告知予定 |
| 横浜市 デジタル化推進支援補助金 | 横浜市内 | 1/2 | 100万円 | ★★★★☆ | 令和8年度開始後告知予定 |
| 平塚市 DX支援補助金(AI・IoTコース) | 平塚市内 | 1/2 | 200万円 | ★★★★★ | 令和8年度開始後告知予定 |
| 横須賀市 ICT支援補助金 | 横須賀市内 | 3/4 | 30万円 | ★★★☆☆ | 令和7年度公募中(詳細は商工会議所へ) |
| 厚木市 ロボット関連産業等促進補助金 | 厚木市内 | 一部補助 | 70万円 | ★★★★☆ | 令和7年度受付終了(令和8年度再開待ち) |
国の補助金との賢い組み合わせ
地方独自制度を活用する最大のメリットは、国の補助金との組み合わせにある。ただし、いくつかの落とし穴がある。
組み合わせパターン①: デジタル化・AI導入補助金(国)× 神奈川県補助金
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)はソフトウェア費・クラウド費が主な対象。神奈川県の生産性向上補助金は設備費も対象に含む。同じ経費に二重で申請することはできないが、ソフト費用を国の補助金、機械装置費を県の補助金で申請するという分担は可能だ。
組み合わせパターン②: 平塚市 AI・IoTコース × 人材開発支援助成金
平塚市の補助金でAIシステムを導入したあと、そのシステムを使いこなすための社員研修に人材開発支援助成金を活用するパターン。設備導入と人材育成を組み合わせることで、補助金の実効性をさらに高められる。
よくある落とし穴
❌ 同一の設備・ソフトに対して国と自治体の補助金を「両方から受取る」
⭕ 設備費は県の補助金、ソフトウェア費は国の補助金と経費を明確に分ける
❌ 自治体補助金の申請期間を国の補助金の審査期間と混同する
⭕ 各制度の交付決定日を確認し、発注のタイミングをずらして管理する
❌ 補助金採択後、すぐに発注・契約してしまう
⭕ いずれの制度も「交付決定後に発注・契約」が原則。採択通知≠交付決定
GビズIDの準備から申請書の書き方まで、GビズID登録の完全ガイドも参考にしてほしい。
申請前に必ず確認する3つのこと
地方独自制度は国の補助金より予算規模が小さく、「先着順で受付終了」になるケースが多い。次のアクションを早めに動かしてほしい。
- 今日中に: 自社の本社・事業所の所在地を確認し、対象の市区町村の制度を絞り込む
- 今週中に: 各制度の公式サイトにアクセスし、令和8年度の公募予定日を確認(またはメール通知を登録)
- 今月中に: GビズIDの取得状況を確認。未取得の場合は申請開始(法人は1〜2週間かかる)
AI導入の計画策定でどの制度が自社に合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからご連絡ください。補助金申請代行ではなく、AI導入の計画策定と補助金制度の組み合わせ検討をサポートしています。
あわせて読みたい:
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- AI導入に使える主要補助金5選 徹底比較 — 国の制度を横断比較
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
免責事項
本記事の情報は2026年3月15日時点の各省庁・自治体の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- 令和7年度中小企業生産性向上促進事業費補助金 ポータルサイト — 神奈川県産業労働局(参照日: 2026-03-15)
- 令和7年度中小企業デジタル化推進支援補助金 — 横浜市経済局(参照日: 2026-03-15)
- 中小企業等DX支援補助金 — 平塚市産業振興課(参照日: 2026-03-15)
- 小規模事業者ICT支援補助金 — 横須賀市経済企画課(参照日: 2026-03-15)
- ロボット関連産業等促進事業補助金 — 厚木市産業振興課(参照日: 2026-03-15)