補助金の審査は、事業計画書の中身で勝負するもの——そう考えている方は多い。もちろん事業計画の質は重要だ。ただ、現実には「加点項目をいくつ持っているか」が採択・不採択を分ける局面が確実に存在する。
ものづくり補助金の過去の公募データでは、加点項目を4つ以上取得した事業者の採択率が80%を超えた一方、加点ゼロの事業者は30%台にとどまったという分析がある。正直、同じ事業計画なら加点の多いほうが勝つ。それが審査の仕組みだ。
この記事では、2026年度の主要補助金(ものづくり補助金・デジタル化・AI導入補助金・新事業進出補助金)で使える加点項目を「すぐ取れるもの」から「時間がかかるもの」まで難易度順に整理し、いつ・何から始めればいいかをステップバイステップで解説する。
主要補助金で使える加点項目一覧(2026年度版)
まず全体像を把握しよう。2026年度の主要3制度で設定されている加点項目を、取得難易度と所要期間で分類した。
| 加点項目 | 対応する補助金 | 難易度 | 取得目安 |
|---|---|---|---|
| パートナーシップ構築宣言 | ものづくり補助金 | ★☆☆ | 即日〜10日 |
| SECURITY ACTION 二つ星 | デジタル化・AI導入補助金 | ★☆☆ | 即日 |
| 成長加速化マッチングサービス登録 | ものづくり補助金・デジタル化・AI導入補助金 | ★☆☆ | 即日 |
| 賃上げ計画の策定・表明 | 全制度共通 | ★★☆ | 1〜2週間 |
| 事業継続力強化計画(BCP認定) | ものづくり補助金・新事業進出補助金 | ★★☆ | 約45日 |
| 経営革新計画の承認 | ものづくり補助金・新事業進出補助金 | ★★★ | 2〜3ヶ月 |
| DX認定 | ものづくり補助金・デジタル化・AI導入補助金 | ★★★ | 2〜4ヶ月 |
| 健康経営優良法人認定 | ものづくり補助金・デジタル化・AI導入補助金 | ★★★ | 年1回の申請 |
| くるみん・えるぼし認定 | ものづくり補助金・デジタル化・AI導入補助金 | ★★★ | 1年以上 |
※ 上記は2026年3月時点で公開されている公募要領に基づく情報です。加点項目は公募回によって変更される場合があるため、申請前に必ず最新のものづくり補助金事務局またはデジタル化・AI導入補助金事務局の公式サイトで確認してください。
Step 1: パートナーシップ構築宣言を登録する(所要: 即日〜10日)
一番最初にやるべきはこれ。手間が少ないのに効果が大きい。ものづくり補助金では毎回加点対象になっており、未登録だと不利になる。
具体的な手順
- パートナーシップ構築宣言ポータルサイトにアクセスする
- 「登録方法」ページから最新のひな形(2026年1月改正版)をダウンロードする
- 赤文字の説明文をすべて削除し、自社の取引方針を記入する
- 代表者名・企業名・日付を入力(手書き不可)し、PDF化する
- ポータルサイトの登録フォームから企業情報を入力し、PDFをアップロードする
- 登録受領メールを確認する。公開まで約10日
ここで引っかかる人が多いポイント
❌ 旧ひな形(2025年以前のもの)で提出してしまう
⭕ 2026年1月1日施行の新ひな形を使う。旧ひな形は差し戻しになる
❌ 補助金の締切直前に登録して間に合わない
⭕ 公開まで約10日かかるため、補助金の締切2週間前までに登録を済ませる
Step 2: SECURITY ACTIONの二つ星を宣言する(所要: 即日)
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)では、SECURITY ACTIONの「二つ星」宣言が加点対象であり、申請の必須要件にもなっている。やらない選択肢はない。
SECURITY ACTIONとは
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が運営する中小企業の情報セキュリティ対策自己宣言制度だ。一つ星(情報セキュリティ5か条の実践)と二つ星(情報セキュリティ基本方針の策定・公開)の2段階がある。
二つ星の取得手順
- SECURITY ACTION公式サイトにアクセスする
- 「自己宣言する」から「二つ星」を選択する
- 自社の情報セキュリティ基本方針を策定する(IPAのテンプレートあり)
- 基本方針をWebサイト等で公開し、URLを登録する
- 宣言完了。ロゴマークの使用許可が即日で発行される
所要時間は、情報セキュリティ基本方針の作成を含めても半日程度。自社のWebサイトに方針ページを1ページ追加するだけだ。
Step 3: 成長加速化マッチングサービスに登録する(所要: 即日)
2025年後半から追加された比較的新しい加点項目。中小企業庁が運営するプラットフォームに登録するだけで加点対象になる。
登録のポイント
単にアカウントを作るだけでは足りない。経営課題の登録まで完了させる必要がある。「AI導入による業務効率化」「DXによる生産性向上」など、補助金の申請テーマと整合する課題を登録しておくと一石二鳥だ。
ここまでの3つは、思い立ったらその日のうちに完了できる。パートナーシップ構築宣言の公開を待つ期間を含めても2週間以内。まずはこの3つを片付けてしまおう。
Step 4: 賃上げ計画を策定・従業員に表明する(所要: 1〜2週間)
2026年度の補助金で最もウェイトが重い加点項目が「賃上げ」だ。ものづくり補助金でも新事業進出補助金でもデジタル化・AI導入補助金でも、賃上げの計画・実績が加点に直結する。
求められる賃上げの水準
| 補助金 | 賃上げ要件(基本要件) | 加点の種類 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金(第23次) | 従業員1人あたり給与支給総額 年平均成長率+3.5%以上 | 基本要件(+大幅賃上げで追加加点) |
| 新事業進出補助金 | 給与支給総額 年平均成長率+2.0%以上 | 加点(大幅賃上げでさらに加算) |
| デジタル化・AI導入補助金 | 賃上げ計画の策定・表明 | 加点 |
※ ものづくり補助金の賃上げ要件は第22次公募の「年平均2.0%以上」から第23次公募で「年平均3.5%以上」に引き上げられている。公募回によって要件が変わるため、最新の公募要領を必ず確認すること。
具体的にやること
- 現在の給与支給総額と事業場内最低賃金を把握する
- 3年間(または5年間)の賃上げ計画を策定する。地域別最低賃金+30円以上を目標にすると追加加点の可能性がある
- 従業員に賃上げ計画を書面で表明する(社内掲示・通知書など)
- 申請書類に計画の根拠と表明の証拠を添付する
❌ 実現不可能な賃上げ率を書いてしまう
⭕ 無理のない範囲で設定する。未達の場合、補助金の一部返還を求められるペナルティ規定が2026年度は強化されている
賃上げは加点だけでなく、ものづくり補助金では基本要件にもなっている。つまり、賃上げ計画なしでは申請自体ができない。早めに経理・人事と相談して数字を固めておこう。
Step 5: 事業継続力強化計画(BCP認定)を取得する(所要: 約45日)
ここから少しハードルが上がる。ただ、事業継続力強化計画の認定は「やれば取れる」タイプの加点項目だ。補助金以外にも税制優遇や金融支援のメリットがあるので、取っておいて損はない。
事業継続力強化計画とは
自然災害や感染症など、自社の事業活動に影響を与えるリスクを洗い出し、事前の備えと発生時の対応をまとめた計画だ。経済産業大臣の認定を受ける。いわゆる「簡易版BCP」と考えればいい。
認定までの手順
- GビズIDプライムを取得する(未取得の場合は先に完了させる。1〜2週間)
- 中小企業庁の「事業継続力強化計画策定の手引き」(2026年2月18日更新版)をダウンロードする
- 手引きに沿って計画を策定する。主な記載事項は以下の通り:
- 自社の事業概要と想定リスク(地震・水害・感染症など)
- リスクが事業に与える影響(人員・建物・資金繰り・情報)
- 初動対応の内容(安否確認・緊急連絡体制・被害把握)
- 事前対策(データバックアップ・代替手段・保険加入など)
- 電子申請システムから申請する
- 審査(標準処理期間: 約45日)を経て認定
❌ 計画書をテンプレのまま提出する(具体性がないと差し戻される)
⭕ 自社の所在地のハザードマップを確認し、具体的なリスクと対策を記載する
逆算すると、補助金の申請締切の2ヶ月前には申請を出しておく必要がある。次のものづくり補助金の締切を見据えて、今すぐ着手しよう。
Step 6: 経営革新計画の承認を取得する(所要: 2〜3ヶ月)
最もインパクトが大きい加点項目のひとつが経営革新計画だ。都道府県知事等の承認が必要で、準備に時間はかかるが、承認を受けていると審査での評価は明らかに違う。
経営革新計画の概要
中小企業等経営強化法に基づき、新事業活動(新商品開発・新サービス・新たな生産方式など)を通じて経営の相当程度の向上を図る計画を策定し、都道府県知事の承認を受ける制度。承認後は補助金の加点だけでなく、政府系金融機関からの低利融資や信用保証の特例も利用できる。
承認に必要な数値目標
| 指標 | 3年計画 | 4年計画 | 5年計画 |
|---|---|---|---|
| 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の伸び | 累計9%以上 | 累計12%以上 | 累計15%以上 |
| 給与支給総額の伸び | 累計4.5%以上 | 累計6%以上 | 累計7.5%以上 |
※ 計画終了時点で経常利益が黒字であることも条件。
承認までの流れ
- 都道府県の担当窓口に事前相談する(必須ではないが強く推奨)
- 「経営革新計画」の申請書を作成する。AI導入による業務革新を軸にすると、補助金の事業計画書と整合性が取れる
- 都道府県に申請書を提出する
- 審査・ヒアリング(1〜2ヶ月)
- 承認通知の受領
先に経営革新計画を通しておけば、補助金の申請書は計画を再利用する形で効率的に作成できる。ぜひ早めに着手してほしい。
加点項目の「積み上げ戦略」— 何個取ればいいのか
結論から言うと、最低3つ、できれば4つ以上を目指したい。
補助金の審査は「事業計画の点数」と「加点」の合計で順位が決まる。事業計画の評価は審査員の主観が入るため読めないが、加点は条件を満たせば確実に積める。つまり加点は「自分でコントロールできる採択率」だ。
おすすめの組み合わせ
| 準備期間 | 取得する加点項目 | 加点数 |
|---|---|---|
| 今日中 | パートナーシップ構築宣言 + SECURITY ACTION + 成長加速化マッチングサービス | 3つ |
| 2週間以内 | 上記 + 賃上げ計画の策定・表明 | 4つ |
| 2ヶ月以内 | 上記 + 事業継続力強化計画 | 5つ |
| 3ヶ月以上 | 上記 + 経営革新計画 | 6つ |
時間に余裕がない場合でも、最低限「パートナーシップ構築宣言」「SECURITY ACTION」「賃上げ計画」の3つは確保しよう。この3つだけで、加点ゼロの申請者とは大きな差がつく。
よくある失敗と回避策
失敗1: 加点項目の有効期限を確認していなかった
❌ 前年度に取得した事業継続力強化計画の認定が期限切れだった
⭕ 認定の有効期間は3年間。更新が必要かどうか、補助金の申請締切日時点で有効かを事前に確認する
失敗2: 書類の不備で加点が認められなかった
❌ パートナーシップ構築宣言を登録したが、ポータルサイト上でまだ「公開」になっていなかった
⭕ 登録から公開まで約10日かかる。補助金の応募締切日前日までにポータルサイトで公開されている必要がある
失敗3: 賃上げ計画を非現実的に書いた
❌ 加点を最大化するために年率+5%の賃上げを計画に書いたが、実際には達成できなかった
⭕ 2026年度はペナルティ規定が強化されている。未達の場合、補助金の一部返還を求められることがある。実現可能な水準で計画する
失敗4: 加点だけに頼って事業計画がおろそかになった
❌ 加点項目を6つ集めたが、肝心の事業計画書が薄い内容だった
⭕ 加点はあくまで「プラスアルファ」。事業計画の質が審査の基本であることは変わらない。事業計画書の書き方は補助金の事業計画書の書き方7つのポイントを参考にしてほしい
補助金ごとの加点項目対応表
「自分が申請する補助金ではどの加点項目が有効なのか」を把握するために、主要3制度の対応表をまとめた。
| 加点項目 | ものづくり補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | 新事業進出補助金 |
|---|---|---|---|
| パートナーシップ構築宣言 | ⭕ | — | ⭕ |
| SECURITY ACTION | — | ⭕(必須) | — |
| 成長加速化マッチングサービス | ⭕ | ⭕ | ⭕ |
| 賃上げ計画 | ⭕(基本要件+加点) | ⭕ | ⭕ |
| 事業継続力強化計画 | ⭕ | — | ⭕ |
| 経営革新計画 | ⭕ | — | ⭕ |
| DX認定 | ⭕ | ⭕ | ⭕ |
| 健康経営優良法人認定 | ⭕ | ⭕ | ⭕ |
| くるみん・えるぼし認定 | ⭕ | ⭕ | — |
※ 「—」は当該公募回の加点対象外(ただし今後の公募回で追加される可能性あり)。必ず最新の公募要領で確認してください。
各補助金の詳しい制度解説は、主要補助金5制度を徹底比較で詳しくまとめている。
今から間に合うスケジュール表
2026年度の主要な公募締切から逆算した、加点項目の準備スケジュールを示す。
| 時期 | やるべきこと | 対象の公募 |
|---|---|---|
| 今日 | パートナーシップ構築宣言・SECURITY ACTION・成長加速化マッチングサービスの登録 | 全補助金 |
| 今週中 | 賃上げ計画の策定。経理・人事と数字を詰める | 全補助金 |
| 今月中 | 事業継続力強化計画の策定・電子申請 | ものづくり補助金・新事業進出補助金 |
| 4月中 | 経営革新計画の事前相談・申請書作成開始 | 次々回以降の公募に間に合わせる |
ポイントは「即日でできるものは今日やる」こと。パートナーシップ構築宣言もSECURITY ACTIONも、作業時間は1〜2時間程度。明日ではなく今日やれば、その分だけ準備が前倒しになる。
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この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
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参考・出典
- ものづくり補助金 公式サイト — ものづくり補助金事務局(参照日: 2026-03-13)
- デジタル化・AI導入補助金 公式サイト — デジタル化・AI導入補助金事務局(参照日: 2026-03-13)
- 新事業進出補助金 公式サイト — 新事業進出補助金事務局(参照日: 2026-03-13)
- パートナーシップ構築宣言ポータルサイト — 内閣府・中小企業庁(参照日: 2026-03-13)
- 事業継続力強化計画 策定の手引き — 中小企業庁(参照日: 2026-03-13)
- SECURITY ACTION公式サイト — IPA 独立行政法人情報処理推進機構(参照日: 2026-03-13)
免責事項
本記事の情報は2026年3月13日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
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