「AIを導入したいけど、どの補助金を使えばいいか分からない」。100社以上のAI導入を支援してきた中で、この質問が最も多い。正直、制度名だけで比べても答えは出ない。大事なのは「何をやりたいか」で選ぶことだ。
業務効率化、設備投資、人材育成、省力化、新事業——DX投資の目的は企業ごとに違う。そして目的が違えば、最適な補助金も変わる。この記事では2026年度に申請できる主要5制度を「投資の目的」で整理し、あなたの会社に合う1本を見つける手がかりを提供する。
目的別 早見表 — 30秒で最適な制度を把握
| DX投資の目的 | 最適な補助金 | 補助率 | 上限額 | 申請難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 既存業務のデジタル化(会計・勤怠・在庫管理のIT化) | デジタル化・AI導入補助金 通常枠 | 1/2〜2/3 | 最大450万円 | ★★☆☆☆ |
| AI×設備投資(検品システム・ロボット等) | ものづくり補助金 第23次 | 1/2〜2/3 | 最大2,500万円 | ★★★★☆ |
| 人手不足の省力化(カタログ登録製品の導入) | 省力化投資補助金 カタログ注文型 | 1/2〜2/3 | 最大3,000万円 | ★★☆☆☆ |
| DX人材の育成(AI研修・リスキリング) | 人材開発支援助成金 | 最大75% | 経費+賃金助成 | ★★★☆☆ |
| AIで新事業を立ち上げ(事業転換・新規市場参入) | 新事業進出補助金 第4回 | 1/2〜2/3 | 最大9,000万円 | ★★★★★ |
→ 各制度の補助率・上限額の詳しい比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてほしい。
目的1: 既存業務をデジタル化したい → デジタル化・AI導入補助金
「紙の請求書をなんとかしたい」「勤怠管理をクラウド化したい」「AIチャットボットで顧客対応を効率化したい」。こうした既存業務のIT化・AI化が目的なら、2026年3月30日に申請受付が始まったばかりのデジタル化・AI導入補助金が最有力だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金) |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 通常枠: 1/2以内(賃上げ要件達成で2/3) |
| 補助上限額 | 1プロセス以上: 5万〜150万円未満 / 4プロセス以上: 150万〜450万円 |
| 1次締切 | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 申請方法 | IT導入支援事業者と連携し、申請ポータルから電子申請 |
| 公式サイト | デジタル化・AI導入補助金事務局 |
この制度が向いている企業
- AIチャットボット、AI-OCR、クラウド会計などのソフトウェア導入がメイン
- 大型の設備投資は不要で、月額利用料やライセンス費を補助してほしい
- 初めて補助金を申請する(IT導入支援事業者がサポートしてくれるため手続きが比較的ラク)
注意点
IT導入支援事業者を通さないと申請できない。つまり、導入したいツールがその事業者の取扱い製品にないと対象外になる。「使いたいツールが決まっている」なら、まずIT導入支援事業者の選び方から確認するといい。
目的2: AI×設備投資で生産性を上げたい → ものづくり補助金
AIソフトだけでなく、専用ハードウェアやカスタムシステムの開発費も含めた投資なら、ものづくり補助金が適している。製造業のAI検品システムやサービス業のAI予約最適化システムなど、「ソフト+ハード」の組み合わせに強い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第23次 |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 中小企業: 1/2、小規模企業: 2/3 |
| 補助上限額 | 従業員5人以下: 750万円 / 6〜20人: 1,000万円 / 21〜50人: 1,500万円 / 51人以上: 2,500万円 |
| 申請開始 | 2026年4月3日(木)17:00 |
| 締切 | 2026年5月8日(木)17:00 |
| 公式サイト | ものづくり補助金ポータル |
デジタル化・AI導入補助金との決定的な違い
ものづくり補助金は機械装置・システム構築費が補助対象の中心。AI画像認識カメラ+解析ソフト+設置工事をまとめて申請できる。一方、デジタル化・AI導入補助金は基本的にソフトウェア費とクラウド利用料が対象で、ハードウェアの補助はインボイス枠のPC・タブレット等に限られる。
ぶっちゃけ、事業計画書の作成が最大のハードル。革新性・実現可能性・費用対効果を数字で語る必要があり、初めての申請では苦戦する企業が多い。申請書の書き方は補助金申請書の書き方完全ガイドにまとめている。
目的3: 人手不足をすぐ解消したい → 省力化投資補助金
「人が足りない。とにかく早く省力化したい」。そんな切迫した企業には省力化投資補助金(カタログ注文型)が使いやすい。事務局が認定したカタログから製品を選ぶだけなので、事業計画書を一から書く必要がない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) |
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2(賃上げ特例で2/3) |
| 補助上限額 | 従業員数に応じて最大3,000万円(2026年3月19日改定で引き上げ) |
| 公募期間 | 常時公募中(〜2027年3月末頃まで) |
| 公式サイト | 省力化投資補助金事務局 |
カタログ型のメリットとデメリット
メリットは明快だ。カタログ登録済みの155以上の製品カテゴリ・2,000以上の製品から選ぶため、審査で落ちにくい。販売事業者が共同で申請してくれるので、補助金に不慣れでも取り組みやすい。さらに、2026年3月19日の改定で収益納付が撤廃された。補助金で導入した設備で利益が出ても返還不要になったのは大きい。
デメリットは、カタログに載っていない製品は対象外という点。カスタムAIシステムや独自開発のソフトウェアは申請できない。「うちが使いたいAIツールはカタログにあるか?」は省力化投資補助金カタログ型の対象製品の探し方で確認できる。
目的4: 社員のAIスキルを底上げしたい → 人材開発支援助成金
ツールを入れても使いこなせなければ意味がない。AI研修・DXリスキリングに投資するなら、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」が最も手厚い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース / 人への投資促進コース) |
| 所管 | 厚生労働省 |
| 経費助成率 | 中小企業: 最大75% / 大企業: 60% |
| 賃金助成 | 中小企業: 1人1時間あたり960〜1,000円 |
| 期限 | 2026年度が最終年度(2022年度〜2026年度の期間限定) |
| 公式サイト | 厚生労働省 人材開発支援助成金 |
2026年度が最後のチャンス
ここが一番伝えたいポイント。事業展開等リスキリング支援コースと人への投資促進コースは2026年度で終了予定。経費の75%+研修時間中の賃金まで助成されるこの水準は、後継制度で維持される保証がない。AI研修を検討しているなら、今年度中に計画を出すべきだ。
他の補助金と組み合わせられる
人材開発支援助成金の最大の利点は、設備投資系の補助金と併用できること。例えば、ものづくり補助金でAI検品システムを導入し、人材開発支援助成金で操作研修の費用をカバーする——この組み合わせなら、導入費用も研修費用も補助対象になる。
目的5: AIを軸に新事業を始めたい → 新事業進出補助金
既存事業のデジタル化ではなく、AI事業そのものを立ち上げたい。そういう挑戦をするなら新事業進出補助金(旧 事業再構築補助金の後継)一択だろう。上限額は主要補助金の中で最大クラス。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 新事業進出補助金 第4回 |
| 所管 | 経済産業省 |
| 補助率 | 中小企業: 1/2(大幅賃上げで2/3) |
| 補助上限額 | 従業員数に応じて最大9,000万円 |
| 締切 | 2026年6月19日(木) |
| 注意 | 2026年度にものづくり補助金と統合予定。第4回が現行制度のラストチャンスの可能性 |
| 公式サイト | 新事業進出補助金事務局 |
ハードルは高い。でもリターンも大きい
正直に言うと、この制度は審査が厳しい。事業計画書の審査に加え、口頭審査(面接)もある。第3回の採択率は約37%で、3社中2社は不採択になっている。ただし、採択されれば数千万円規模の補助が受けられる。新規事業として本気でAIに投資する覚悟があるなら検討する価値はある。
第4回の詳しい申請準備については新事業進出補助金 第4回の申請ガイドを参照してほしい。
5制度の横断比較 — 数字で見る違い
| 比較項目 | デジタル化・AI導入 | ものづくり | 省力化投資 | 人材開発支援 | 新事業進出 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最大補助額 | 450万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | 経費75%+賃金 | 9,000万円 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 | 1/2〜2/3 | 1/2〜2/3 | 最大75% | 1/2〜2/3 |
| ソフトウェア費 | ⭕ | ⭕ | △(カタログ製品のみ) | ❌ | ⭕ |
| ハード・設備費 | △(インボイス枠のみ) | ⭕ | ⭕(カタログ製品) | △(設備費助成新設) | ⭕ |
| 研修・人件費 | ❌ | ❌ | ❌ | ⭕ | ❌ |
| 申請の手軽さ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
| 採択率の目安 | 比較的高い | 約34%(第21次実績) | 高い(カタログ型) | 要件充足で高い | 約37%(第3回実績) |
| 次の締切 | 5/12(1次) | 5/8(第23次) | 常時受付 | 随時(計画届出制) | 6/19(第4回) |
「うちはどれ?」ケース別の判断フロー
Case A: 従業員10人の小売業。レジ周りと在庫管理をIT化したい
→ デジタル化・AI導入補助金(通常枠)がベスト。クラウドPOSレジ+在庫管理ソフトの導入であれば150万円未満で収まることが多く、申請もIT導入支援事業者が手伝ってくれる。5月12日の1次締切を目指して今すぐ事業者を探そう。
Case B: 従業員30人の製造業。AI検品システム+カメラ設置で不良品を減らしたい
→ ものづくり補助金 第23次。AI画像認識ソフト+産業用カメラ+設置工事を一括で申請できる。21〜50人の枠なら補助上限1,500万円。4月3日に申請開始だから、事業計画書のドラフトを今週中に仕上げよう。
Case C: 従業員5人の飲食店。配膳ロボットを導入して人手不足を解消したい
→ 省力化投資補助金(カタログ注文型)。配膳ロボットがカタログに登録されていれば、販売事業者と共同申請するだけ。事業計画書を一から書く必要がなく、常時受付なのでいつでも申請できる。
Case D: 全社員20人にAI活用研修を受けさせたい
→ 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)。研修費の75%+研修時間中の社員の賃金も助成される。2026年度が最終年度なので、計画届出は早めに。研修開始前に管轄の労働局へ計画を提出する必要がある。
Case E: AI受託開発事業を新しく立ち上げたい
→ 新事業進出補助金 第4回。開発環境・人件費以外の設備費・外注費などをカバーできる。ただし口頭審査があり、事業の新規性・実現可能性を経営者自身がプレゼンする必要がある。6月19日締切なので、まず新事業進出補助金 完全ガイドで制度を把握するところから。
制度選びで失敗する3つのパターン
失敗1: 補助額だけで選んでしまう
❌ 「上限9,000万円って書いてある。新事業進出補助金にしよう」(実際は既存業務の効率化が目的)
⭕ 新事業進出補助金は「新たな事業への進出」が前提。既存業務の延長線上にある効率化は対象外になりうる
なぜ重要か: 制度の趣旨に合わない申請は、いくら事業計画が優秀でも不採択になる。「やりたいこと」と「制度の目的」のマッチングが最優先。
失敗2: 併用のルールを知らずにダブル申請
❌ 同じAIシステムの導入費用を、デジタル化・AI導入補助金とものづくり補助金の両方で申請する
⭕ 同一経費の二重計上は禁止。ただし「ソフト→デジタル化・AI導入補助金、研修→人材開発支援助成金」のように経費を分ければ併用可能
なぜ重要か: 不正受給とみなされると補助金の返還+加算金が発生する。併用ルールは補助金の併用戦略ガイドで事前に確認を。
失敗3: 締切ギリギリに動き出す
❌ 「締切まであと2週間。今から申請しよう」(GビズID未取得)
⭕ GビズIDの取得に1〜2週間、IT導入支援事業者の選定に1〜2週間、事業計画書の作成に2〜4週間。最低でも締切の2ヶ月前から動く
なぜ重要か: 特にものづくり補助金と新事業進出補助金は事業計画書の完成度が採否を分ける。やっつけ仕事の計画書で採択されることはまずない。
併用できる組み合わせと注意点
| 組み合わせ | 可否 | 条件・注意 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入 + 人材開発支援 | ⭕ 可能 | ソフト費用→デジタル化、研修費用→人材開発と経費を分離 |
| ものづくり + 人材開発支援 | ⭕ 可能 | 設備費→ものづくり、操作研修→人材開発。最も実用的な組み合わせ |
| 省力化投資 + 人材開発支援 | ⭕ 可能 | カタログ製品→省力化、活用研修→人材開発 |
| デジタル化・AI導入 + ものづくり | ❌ 原則不可 | 同一事業での併用は原則認められない |
| 新事業進出 + 自治体独自制度 | △ 要確認 | 自治体によっては国の補助金と併用可。同一経費の二重計上はNG |
2026年4月〜6月の申請スケジュール
| 日付 | 制度 | イベント |
|---|---|---|
| 3月30日 | デジタル化・AI導入補助金 | 申請受付開始 |
| 4月3日 | ものづくり補助金 第23次 | 電子申請受付開始 |
| 4月17日 | Go-Tech事業 | 締切 |
| 4月30日 | 持続化補助金 第19回 | 締切 |
| 5月8日 | ものづくり補助金 第23次 | 締切 |
| 5月12日 | デジタル化・AI導入補助金 1次 | 締切 |
| 6月15日 | デジタル化・AI導入補助金 2次 | 締切 |
| 6月19日 | 新事業進出補助金 第4回 | 締切 |
省力化投資補助金(カタログ注文型)は常時受付中のため表には含めていないが、2027年3月末頃まで申請可能だ。人材開発支援助成金も随時の計画届出制だが、2026年度が最終年度であることを忘れずに。
今日やるべきこと — 目的が決まったら3ステップ
- GビズIDの取得状況を確認する(未取得ならGビズID登録ガイドを見て今日中に申請)
- 上の早見表で自社の目的に合う制度を1つ選ぶ(迷ったら「既存業務の効率化→デジタル化・AI導入補助金」が一番取り組みやすい)
- 次の締切を手帳に書く(デジタル化・AI導入は5/12、ものづくりは5/8、新事業進出は6/19)
あわせて読みたい:
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この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定やどの補助金が自社に合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご質問ください。
免責事項
本記事の情報は2026年3月29日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領 — デジタル化・AI導入補助金事務局(参照日: 2026-03-29)
- ものづくり補助金 第23次 公募要領 — ものづくり補助金事務局(参照日: 2026-03-29)
- 省力化投資補助金カタログ注文型 制度改定(2026年3月19日) — 省力化投資補助金事務局(参照日: 2026-03-29)
- 人材開発支援助成金 — 厚生労働省(参照日: 2026-03-29)
- 新事業進出補助金 第4回 公募要領 — 新事業進出補助金事務局(参照日: 2026-03-29)