2026年3月10日、中小企業庁は「デジタル化・AI導入補助金2026」の公募要領を正式に公開しました。旧「IT導入補助金」から名称が変わり、AI活用を前面に押し出した制度として生まれ変わっています。
前年度からの最大の変更点は、過去に交付決定を受けた事業者への再申請要件の追加と、財務諸表の提出義務化です。
IT導入補助金2025からの変更点 — 何がどう変わったか
| 項目 | 2025年(旧IT導入補助金) | 2026年(デジタル化・AI導入補助金) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 名称 | IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | 変更 |
| 財務諸表 | 原則不要 | 必須提出 | ↑厳格化 |
| 賃上げ目標(150万円以上) | 加点項目 | 必須要件 | ↑厳格化 |
| 過去採択者の賃上げ率 | 年3% | 年3.5% | ↑引き上げ |
| AIツール検索 | なし | AI機能搭載フィルター追加 | 新設 |
| 通常枠 補助率 | 1/2以内 | 1/2以内(最低賃金近傍は2/3) | 条件付き↑ |
| 通常枠 上限額 | 450万円 | 450万円 | 据え置き |
出典: デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局、2026年3月10日公表)
財務諸表の必須化 — 地味だが影響は大きい
正直、この変更が一番インパクトがあるかもしれません。
2025年までのIT導入補助金では、財務諸表の提出は原則不要でした。ところが2026年版では全ての申請者に財務諸表の提出が義務化されています。決算書の準備がまだの企業、特に個人事業主は早めに対応が必要です。
もう1つ見落としがちなのが、IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた事業者が再度申請する場合の追加要件。交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画策定と、1人あたり給与支給額の年平均成長率を「物価安定目標+1.5%」以上にすることが求められます。要するに、「補助金をもらったなら、ちゃんと成果を出して賃上げしてね」という制度設計です。
全4枠の補助率・上限額を一覧で確認
各補助金制度の補助率・上限額の比較は、AI導入に使える補助金5選 徹底比較で詳しくまとめています。
| 枠 | 補助率 | 補助額 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(1〜3プロセス) | 1/2以内(最低賃金近傍: 2/3) | 5万〜150万円未満 | ソフトウェア・クラウド利用料 |
| 通常枠(4プロセス以上) | 1/2以内(最低賃金近傍: 2/3) | 150万〜450万円 | ソフトウェア・クラウド利用料 |
| インボイス枠(対応類型) | 〜50万円: 3/4(小規模4/5) 50万超: 2/3 | 〜350万円 | 会計・受発注・決済ソフト |
| インボイス枠(電子取引類型) | 中小2/3・大企業1/2 | 〜350万円 | 受発注間のクラウド型ソフト |
| セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内(小規模2/3) | 5万〜150万円 | サイバーセキュリティお助け隊サービス |
| 複数社連携デジタル化・AI導入枠 | 枠内類型に準じる | 最大3,000万円 | 消費動向分析等の連携事業 |
※ 上記はデジタル化・AI導入補助金2026の公募要領に基づく情報です。最新情報は公式サイトでご確認ください。
「AI機能搭載」フィルターの追加 — 制度名変更の実態
「デジタル化・AI導入補助金」という名称から「AI専用の補助枠ができた?」と期待した方もいるかもしれません。
結論を言うと、AI専用枠は設けられていません。ただし、ITツール検索画面に「AI機能搭載の有無」で絞り込めるフィルターが新設されました。IT導入支援事業者がツールを登録する際に「AI搭載」を明記する仕組みです。
つまり、制度として「AIを使いなさい」と言っているわけではなく、「AIを使いたい企業が探しやすくなった」というのが実態。ぶっちゃけ、名前ほど劇的な変化ではありません。とはいえ、国がAI導入支援を明示的に打ち出した意味は大きく、今後の枠拡充への布石と見る向きもあります。
申請スケジュール — 1次締切は5月12日
| マイルストーン | 日付 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年3月10日 |
| 交付申請 受付開始 | 2026年3月30日(月)10:00 |
| 1次締切 | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 1次 交付決定(予定) | 2026年6月18日 |
| 2次締切 | 2026年6月15日(月)17:00 |
| 2次 交付決定(予定) | 2026年7月23日 |
| 3次締切 | 2026年7月21日(火)17:00 |
| 3次 交付決定(予定) | 2026年9月2日 |
| 4次締切 | 2026年8月25日(火)17:00 |
| 4次 交付決定(予定) | 2026年10月7日 |
※ 複数社連携デジタル化・AI導入枠は1次: 6月15日、2次: 8月25日の2回のみ。
出典: デジタル化・AI導入補助金の公募スケジュール一覧(補助金ポータル、参照日: 2026-03-13)
賃上げ要件の強化 — 150万円以上の申請は要注意
今回の公募要領で見逃せないのが、賃上げ要件の必須化です。
補助金申請額が150万円以上の場合、以下の2つが必須要件になりました(2025年までは加点項目でした)。
- 給与支給総額の年平均成長率 3%以上
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に引き上げ
- 従業員に対して賃金引き上げ計画を表明すること
さらに、IT導入補助金2022〜2025の交付決定を受けた事業者が再申請する場合は、150万円未満でも年3.5%以上の賃上げが必要です。未達の場合は補助金の全額返還リスクがあるため、安易な申請は禁物です。
対象経費 — AI導入で使える具体例
通常枠の補助対象経費は大きく3カテゴリに分かれます。
カテゴリー1: ソフトウェア購入費・クラウド利用料
- AIチャットボット: 顧客問い合わせの自動対応(例: 月額3万円 × 24ヶ月 = 72万円)
- AI-OCR: 請求書・帳票の自動読取り(例: 導入費50万円 + 月額2万円)
- AI搭載の在庫管理システム: 需要予測による適正在庫化
カテゴリー2〜4: オプション
- 機能拡張(API連携、データ連携)
- セキュリティ対策オプション
カテゴリー5〜7: 役務
- 導入コンサルティング
- 導入設定・マニュアル作成
- 保守サポート(最大1年分)
補助対象にならない経費(ここは要注意):
- 汎用PC・タブレットの購入費(通常枠では対象外。インボイス枠のみ対象)
- 既存システムの保守・運用費
- 人件費(研修にかかる費用は人材開発支援助成金の対象)
申請の前に必ず準備しておくこと
1次締切の5月12日まで、実質あと2ヶ月。以下を並行して進めてください。
1. GビズIDプライムの取得(所要: 1〜2週間)
電子申請に必須のアカウントです。法人は印鑑証明書が必要。まだ未取得なら、今日中に申請を。GビズIDの取得手順はGビズID登録の完全ガイドで解説しています。
2. SECURITY ACTIONの宣言
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」で、★1つ星または★★2つ星の宣言が必須です。IPAの公式ページから即日申請可能。
3. IT導入支援事業者の選定
デジタル化・AI導入補助金では、登録済みのIT導入支援事業者との連携が必要です。事務局ポータルサイトのITツール検索から、AI機能搭載ツールを提供する事業者を探せます。
4. 財務諸表の準備
2026年からの新要件。直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)を準備しておきましょう。個人事業主の場合は確定申告書の控えでOKです。
5. 事業計画の骨子作成
「どの業務にAIを導入し、何を改善するか」を数字で整理。たとえば「月間の問い合わせ対応200件を、AIチャットボットで50%自動化し、対応コストを月20万円削減する」というレベルまで落とし込んでおくと、申請書がスムーズに書けます。
申請でやりがちなミス — この3つだけは避ける
ミス1: 交付決定前に発注してしまう
❌ 採択通知が来たらすぐベンダーに発注する
⭕ 交付決定通知を受け取ってから発注・契約する
採択と交付決定は別物です。交付決定前の支出は1円も補助対象になりません。
ミス2: 数値目標が曖昧
❌ 「業務効率化を図る」「生産性を向上させる」
⭕ 「受発注業務の処理時間を月40時間→15時間に短縮(62.5%削減)」
審査員は数百件の申請書を読んでいます。具体的な数字がないと評価のしようがありません。
ミス3: 過去に交付決定を受けたのに賃上げ要件を確認していない
❌ 前回もらったから今回も大丈夫だろう、と確認せず申請
⭕ 自社の給与支給総額の成長率が年3.5%を超えているか、事前に計算する
2026年の新要件です。未達だと補助金返還のリスクがあるので、申請前に必ず確認してください。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領 — 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局(参照日: 2026-03-13)
- デジタル化・AI導入補助金2026の概要について — 事務局ポータルサイト(参照日: 2026-03-13)
- デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました — 中小企業庁(参照日: 2026-03-13)
- デジタル化・AI導入補助金とは?【2026年・令和8年度】 — 補助金ポータル(参照日: 2026-03-13)
- デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開 — ミラサポplus(参照日: 2026-03-13)
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
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免責事項
本記事の情報は2026年3月13日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。 補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。 申請にあたっては、必ずデジタル化・AI導入補助金2026 公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。 本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
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