中小企業が大学や公設試験研究機関と組んで、最大3年間・最大3億円の研究開発費用を国に補助してもらえる制度がある。Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)だ。
「うちみたいな中小企業が研究開発の補助金なんて…」と思うかもしれないが、実は採択率は約49%。申請した企業のほぼ半数が採択されている。AI・IoTを活用した製品開発やサービス高度化も対象で、製造業以外の企業にもチャンスがある制度だ。
2026年度の公募は4月17日(金)17:00が締切。本記事では、補助率・上限額から申請の全手順、審査で評価されるポイントまで、Go-Tech事業の全貌を解説する。
Go-Tech事業の補助額と補助率 — 通常枠と大型研究開発枠
Go-Tech事業には2つの枠がある。自社の研究開発の規模に応じて選択する。
| 項目 | 通常枠 | 大型研究開発枠 |
|---|---|---|
| 制度名 | 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) | |
| 所管省庁 | 経済産業省 中小企業庁 | |
| 補助率 | 中小企業者等: 2/3以内(課税所得15億円超の場合は1/2以内) 大学・公設試等: 定額 |
|
| 単年度上限 | 4,500万円 | 1億円 |
| 2年間合計上限 | 7,500万円 | 2億円 |
| 3年間合計上限 | 9,750万円 | 3億円 |
| 対象者 | 中小企業者等を中核とした共同体(大学・公設試と連携必須) | |
| 補助期間 | 最大3年間 | |
| 申請方法 | e-Rad(府省共通研究開発管理システム) | |
| 2026年度公募期間 | 2026年2月16日~4月17日 17:00 | |
| 公式サイト | 中小企業庁 Go-Tech事業 | |
※ 上記は2026年度(令和8年度)公募の情報です。最新情報は中小企業庁公式サイトをご確認ください。
大型研究開発枠は、令和7年度まで「出資獲得枠」と呼ばれていた枠を改編したもの。令和8年度から名称変更され、より大規模な研究開発を支援する位置づけになった。各補助金の比較についてはAI導入に使える補助金5選 徹底比較も参考にしてほしい。
そもそもGo-Tech事業は何を支援してくれるのか
Go-Tech事業は、中小企業が「ものづくり基盤技術」や「先端サービス」の研究開発に取り組む際の費用を補助する制度だ。ポイントは単独では申請できないこと。大学や公設試験研究機関(公設試)と共同体を組む必要がある。
「共同体なんてハードルが高い」と感じるかもしれない。だが実際は、地域の産業技術センターや工業技術研究所が共同研究のパートナーになってくれるケースが多い。都道府県の中小企業支援センターに相談すると、連携先を紹介してもらえることもある。
対象となる12の「ものづくり基盤技術」分野
- デザイン開発 — 製品設計・試作品のデザイン技術
- 情報処理 — AI・IoT・ビッグデータ等のデジタル技術
- 精密加工 — 微細加工・高精度切削等
- 製造環境 — 工場の生産効率・安全性向上
- 接合・実装 — 溶接・はんだ付け等の接合技術
- 立体造形 — 3Dプリンタ・金型等
- 表面処理 — めっき・塗装・防錆処理
- 機械制御 — ロボット・自動制御
- 複合・新機能材料 — 新素材の開発
- 材料製造プロセス — 材料の製造方法改良
- バイオ — バイオテクノロジー応用
- 測定計測 — センサー・検査技術
このうち「情報処理」分野にはAI・IoTが含まれるため、AI活用の製品・サービス開発にも使える。「AIを活用した画像検査システムの開発」「IoTセンサーによる予知保全システムの研究」といったテーマも対象になる。
「サービスの高度化」も対象
ものづくり基盤技術だけでなく、IoTやAI等の先端技術を融合した高度なサービス開発も支援対象だ。例えば、AI搭載の物流最適化システムや、IoTデータを活用した設備保守サービスなどが該当する。
Go-Tech事業でAI研究開発に使える補助対象経費
具体的にどんな経費が補助されるのか。AI・DX関連で特に活用しやすい経費をピックアップした。
補助対象になる主な経費
- 物品費 — AI開発用のGPUサーバー、センサー機器、試作品の材料費
- 人件費 — 研究開発に従事するエンジニア・研究者の人件費(自社社員もOK)
- 外注費 — AIモデル開発の一部を外部ベンダーに委託する費用
- 旅費 — 共同研究先の大学・公設試との打ち合わせ旅費
- 謝金 — 外部アドバイザーへの技術指導謝金
- その他 — クラウドコンピューティング利用料、特許出願費用
補助対象にならない経費(注意)
- 量産目的の設備導入 — Go-Techは研究開発専用。量産ラインの構築はものづくり補助金を使おう
- 研究開発を伴わない販路開拓のみ — 研究開発が主体でなければ対象外
- 外注費・委託費の合計が全体の1/2超 — 自社の研究開発が主体でなければNG
- 間接経費 — 直接経費合計の30%が上限
令和7年度の採択率データ — 約49%が採択
Go-Tech事業の採択率は、他の補助金と比較して高めだ。
| 年度 | 枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和7年度(2025年) | 通常枠 | 241件 | 119件 | 49.4% |
| 令和7年度(2025年) | 出資獲得枠 | 12件 | 5件 | 41.7% |
| 令和7年度 合計 | — | 253件 | 124件 | 49.0% |
| 令和6年度(2024年) | 全体 | 230件 | 115件 | 50.0% |
| 令和4年度(2022年) | 全体 | 318件 | 137件 | 43.1% |
出典: 中小企業庁 Go-Tech事業 採択結果(参照日: 2026-03-30)
年間の申請件数は200〜300件程度で、ものづくり補助金(数千件規模)と比べると競争が穏やかだ。大学・公設試との共同体構成が必要なぶん、参入障壁はあるが、裏を返せば「しっかり準備すれば2人に1人は通る」制度ともいえる。
申請から採択までの6つのステップ
Step 1: e-Radアカウントの取得と研究機関コードの確認(所要: 1〜2週間)
Go-Tech事業の申請はe-Rad(府省共通研究開発管理システム)を通じて行う。GビズIDではないので注意。e-Radに研究機関として未登録の場合、新規登録が必要で2週間ほどかかる場合がある。
→ GビズID登録ガイド(他の補助金で必要になるので並行して取得しておくと便利)
Step 2: 共同体のパートナーを見つける(所要: 2〜4週間)
Go-Tech事業は中小企業単独では申請できない。大学または公設試験研究機関(産業技術センター、工業技術研究所など)と共同体を組む必要がある。
パートナーの探し方:
- 地元の公設試験研究機関に直接相談する(ほぼ全都道府県に設置)
- 都道府県の中小企業支援センター・よろず支援拠点に紹介を依頼
- 取引のある大学の産学連携オフィスに問い合わせ
- 過去のGo-Tech事業採択案件(中小企業庁サイトで公開)を参考に、同分野の研究者を探す
Step 3: 研究開発計画の策定(所要: 4〜8週間)
Go-Tech事業の審査で最も重要なのが研究開発計画だ。以下の要素を明確にしよう。
- 技術的課題の特定: 現在の技術では何ができないのか?
- 研究目標と達成基準: 具体的な数値目標(精度○%向上、処理速度○倍など)
- 研究方法・実施体制: 誰が何をやるかの役割分担
- 事業化の見通し: 研究成果をどう製品・サービスに展開するか
- 定量計画: 事業終了後5年以内に付加価値額と1人当たり給与を各15%以上向上
Step 4: 申請書類の作成・e-Radで提出(所要: 2〜3週間)
共同体の代表者(中小企業側)がe-Radを通じて申請する。申請には研究開発計画書のほか、直近の財務諸表や会社概要が必要になる。
注意: 中小企業者等が受け取る補助金額が、共同体全体の補助金総額の2/3以上でなければならない。大学側に予算が偏りすぎると要件を満たさない。
Step 5: 審査・採択通知(申請から約2〜3ヶ月後)
外部有識者による審査が行われる。審査観点は後述するが、技術的な新規性・優位性と事業化の具体性がカギ。令和7年度は6月末に採択発表だった。
Step 6: 交付決定・研究開発スタート
採択後、交付申請を経て交付決定となる。交付決定前に発生した経費は補助対象にならない。この点はものづくり補助金などと同じルールだ。
審査で評価される5つの観点
Go-Tech事業の審査では、以下の観点が重視される。
| 審査観点 | 見られるポイント | NG例 |
|---|---|---|
| 技術的新規性 | 従来技術との明確な差異、先行研究との違い | 「AIを使って効率化」だけでは新規性不明 |
| 研究方法の妥当性 | 目標達成のための手法が論理的・具体的か | スケジュールが曖昧、マイルストーンなし |
| 事業化の見通し | 研究成果の市場ニーズ、販路、競争優位性 | 「完成後に販路を開拓する」(具体性ゼロ) |
| 実施体制 | 共同体内の役割分担、中小企業が主体か | 大学に丸投げ、中小企業の関与が薄い |
| 定量計画の実現可能性 | 付加価値額・給与15%向上の根拠 | 達成根拠なしに「15%向上を目指す」 |
正直、ここが難しい — Go-Tech事業のハードルと対策
ハードル1: 共同体の構成に時間がかかる
❌ 締切1ヶ月前に公設試に初めて連絡して「一緒にやりませんか」
⭕ 日頃から地元の産業技術センターと関係を作っておく。年間を通じて技術相談を利用し、研究テーマが固まった段階で共同研究を提案する
なぜ重要か: 公設試も年度計画がある。急な依頼には対応しにくい。来年度以降のGo-Tech申請を視野に入れるなら、今から関係構築を始めよう。
ハードル2: e-Radの操作が初めてだと戸惑う
❌ 「GビズIDで申請できるでしょ」と思い込んで準備しない
⭕ Go-Tech事業はe-Rad申請。事前に研究機関コードの取得・登録を済ませておく
なぜ重要か: e-Radは一般的な補助金ポータル(jGrants)とは別のシステム。初めて使う場合は操作に慣れる時間が必要だ。
ハードル3: 「研究開発」と「製品開発」の線引き
❌ 既存のAIモデルを自社業務に導入するだけのプロジェクトで申請
⭕ 技術的に未解決の課題に取り組む要素を含める。「既存のAI技術では精度が不十分な○○分野で、独自のデータセットと学習手法を用いて精度90%以上を目指す」
なぜ重要か: Go-Tech事業はあくまで「研究開発」の補助金。既製品の導入はIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)の領域だ。
ハードル4: 外注費比率の制限
❌ AI開発のほぼ全てを外部ベンダーに委託する計画
⭕ 自社で研究開発の中核を担い、専門的な一部工程(データアノテーション、特殊な分析等)のみ外注する
なぜ重要か: 外注費と委託費の合計がプロジェクト全体の補助対象経費総額の1/2を超えてはならない。自社の研究開発能力を示すことが重要。
他の補助金との使い分け
「Go-Tech事業と他の補助金、どっちが合ってるの?」という疑問に答える。
| やりたいこと | 最適な補助金 | Go-Techが向いているか |
|---|---|---|
| 既存AIツールの導入(ChatGPT、AI-OCR等) | デジタル化・AI導入補助金 | ✗ 研究開発でないので対象外 |
| AI搭載の新製品を独自開発したい | Go-Tech事業 | ◎ まさに対象 |
| AI付き設備の導入(検品ロボ等) | ものづくり補助金 | △ 量産設備はものづくりの方が適切 |
| 社員向けAI研修 | 人材開発支援助成金 | ✗ 研修は対象外 |
| AIで新規事業を立ち上げ | 新事業進出補助金 | △ 事業化フェーズはGo-Techより新事業進出 |
| 大学と共同でAI研究開発(最大3年) | Go-Tech事業 | ◎ 長期研究開発はGo-Tech一択 |
→ 各補助金の詳しい比較はAI導入に使える補助金5選 徹底比較で確認できる。
令和8年度の変更点 — 「大型研究開発枠」の新設と収益納付の撤廃
2026年度のGo-Tech事業では、大きく2つの変更があった。
変更1: 「出資獲得枠」→「大型研究開発枠」へ改編
令和7年度までの「出資獲得枠」は、VCからの出資獲得を要件としていたため、ハードルが高かった。令和8年度からは「大型研究開発枠」として再編され、出資要件が見直された。単年度最大1億円、3年間で最大3億円という補助額は据え置き。
変更2: 収益納付の撤廃
従来は、補助事業で得られた収益の一部を国に返納する「収益納付」義務があった。令和8年度からこの義務が撤廃され、研究成果から得られた収益を100%自社で活用できるようになった。事業化へのインセンティブが大幅に向上した変更だ。
今から4月17日の締切に間に合わせるためのアクション
正直に言うと、4月17日の締切まで残り約2.5週間。今からゼロベースで準備を始めるのは相当厳しい。ただし、以下に該当する企業はまだ間に合う可能性がある。
- 今日やること: e-Radのアカウント登録状況を確認する。未登録ならe-Rad公式サイトで即申請
- 今週中: 共同体パートナー(公設試・大学)に連絡し、共同研究の意向を確認する。既に関係がある機関がベスト
- 来週まで: 研究開発計画書のドラフトを完成させ、パートナーとすり合わせ
今年度の公募に間に合わない場合でも、来年度以降の申請に向けて共同体構成と研究テーマの準備を始めておくことを強くおすすめする。
→ 補助金申請書の書き方ガイドも参考にしてほしい。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI活用の研究開発やどの補助金が自社に合うか分からない場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
免責事項
本記事の情報は2026年3月30日時点の中小企業庁の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず中小企業庁公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
参考・出典
- 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) — 中小企業庁(参照日: 2026-03-30)
- 令和8年度Go-Tech事業 公募要領 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-30)
- e-Rad(府省共通研究開発管理システム) — 文部科学省(参照日: 2026-03-30)
- Go-Tech事業 採択結果一覧 — 中小企業庁(参照日: 2026-03-30)