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韓国AI基本法施行|日本企業のAIコンプライアンスと補助金活用戦略

この記事の結論

2026年1月22日に施行された韓国AI基本法。域外適用条項により日本企業も対象になりうる。コンプライアンスコストを人材開発支援助成金・デジタル化AI導入補助金で対応する戦略を解説。

韓国AI基本法施行|日本企業のAIコンプライアンスと補助金活用戦略

2026年1月22日、韓国のAI基本法が施行された。日本企業の多くは「韓国の法律なので関係ない」と思いがちだが、実際には域外適用条項があり、韓国市場に製品・サービスを提供している日本企業は対応が必要になる可能性がある。

そしてこれは、AI規制に備えるための「コンプライアンスコスト」が増大するという新しい経営課題でもある。

韓国AI基本法 vs 日本AIガイドライン — 何が違うのか

まず、両者のアプローチの根本的な違いを理解しておきたい。

項目 韓国AI基本法 日本AI事業者ガイドライン
法的性質 ハードロー(法律) ソフトロー(任意のガイドライン)
施行日 2026年1月22日 2024年4月公表(強制力なし)
高リスクAI規制 「高影響AI」として事前影響評価義務 リスクに応じた自主的対応を推奨
域外適用 あり(韓国市場・利用者に影響する活動) なし
国内代理人 一定規模以上の海外事業者に選任義務 不要
違反時の制裁 措置命令・罰則あり 特になし
基本方針 「許容が原則、例外的に禁止」(産業振興重視) 「人間中心のAI」を基本原則

韓国AI基本法は、EUのAI法と同様のリスクベースアプローチを採用しながら、EUより産業振興に傾いたバランスになっている。「まず許容し、例外的に禁止」というスタンスは、日本企業にとって比較的取り組みやすい内容と言える。

ただし法律である以上、対象事業者には義務が発生する。

日本企業に影響する可能性のある条文

韓国AI基本法の域外適用は「大韓民国の国内市場または利用者に影響を及ぼす海外でのいかなる活動にも適用される」と規定されている。

対象になりやすい日本企業の例:
– 韓国向けにSaaSやAIツールを提供している事業者
– 韓国法人・子会社を通じてAIシステムを活用している企業
– 韓国のパートナー企業とAIを使ったデータ連携を行っている企業

一方、純粋に国内向けビジネスのみで韓国との接点がない中小企業であれば、当面の直接的な規制対象にはなりにくい。

ただし、AI規制の国際的な潮流として見ると話は別だ。EUのAI法も2024年から段階的に施行されており、AIコンプライアンス対応は「いずれ必要になるもの」として準備を始めることが、先行投資として意味を持つ。

「高影響AI」の事前影響評価義務とは

韓国AI基本法が定める「高影響AI」は、採用・人事評価・融資審査・医療診断・法執行など基本的人権に直接影響する分野でのAI利用を指す。

高影響AIを活用した商品・サービスを提供する事業者には以下の義務が課される:
1. 事前影響評価: 基本的人権への潜在的影響を評価し、文書化する
2. 利用者保護措置: 利用者にAI利用を通知し、説明する
3. 人的監視の確保: AI判断に対する人間による監視・介入の仕組みを整備する
4. 文書の作成・保存: 安全性・信頼性に関する措置を文書として維持する

日本の中小企業が「採用AIツール」「融資審査補助ツール」を韓国向けに販売・提供する場合は、これらへの対応が必要になる可能性がある。

コンプライアンスコストを補助金で対応する戦略

AI規制対応のために発生するコストは、大きく2つに分けられる。

1. 人材・研修コスト: AIガバナンスを理解できる担当者の育成、AIリテラシー研修、法令解釈のための外部専門家費用

2. システム・ツールコスト: AI監視ツールの導入、ログ管理システム、説明可能AI(XAI)ツールの整備

これらのコストは決して小さくない。しかし、補助金を活用することで実質的な負担を大幅に圧縮できる。

→ 活用できる補助金の横断比較は[AI導入に使える補助金7制度を徹底比較](/articles/ai-hojokin-2026-complete-comparison/)を参照。

人材開発支援助成金でAIガバナンス研修費用を補助

人材開発支援助成金(デジタル人材育成支援コース)は、デジタル・AI関連の教育訓練費用に対して最大75%を助成する制度だ。

項目 内容
所管 厚生労働省
助成率 45〜75%(中小企業、賃上げ要件で最大)
対象経費 訓練費(受講料)、訓練中の賃金(一部)
主な対象訓練 AIリテラシー研修、AIガバナンス研修、データサイエンス研修 等

AIガバナンス・コンプライアンス研修は「デジタル人材育成」として対象になりやすい。研修の内容が「AI規制・倫理・リスク管理」にフォーカスしたものであれば、申請の根拠として説明しやすい。

ただし注意点がある: 研修プログラムが「OFF-JT」(通常業務を離れた訓練)として認められるかどうかを、事前に申請を行う都道府県労働局に確認しておくこと。特定の資格取得・スキル証明を伴う形式にすると審査が通りやすい。

デジタル化・AI導入補助金でAI監視ツールを導入

AI規制対応に直結するシステム投資として活用しやすいのが、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)だ。

項目 内容
所管 経済産業省・中小企業庁
補助率(通常枠) 1/2以内(最低賃金近傍事業者は2/3)
補助上限額(通常枠) 5万〜450万円
申請受付開始 2026年3月30日〜

以下のようなAI規制対応ツールが補助対象になりやすい:
AI利用ログ管理ツール: いつ・どのAIを・どう使ったかを記録・監査するシステム
説明可能AI(XAI)ツール: AI判断の根拠を可視化し、利用者への説明を可能にするもの
AI権限管理システム: 社内でのAI利用範囲を適切にコントロールするアクセス管理ツール

ただし、補助対象になるのは「IT導入支援事業者が登録したITツール」に限られる。導入を検討しているツールが登録済みかどうかを事前に確認する必要がある。

両制度を組み合わせるシナリオ

想定シナリオ(従業員50名の製造業、韓国向け部品検査AIを開発・提供)

> 事例区分: 想定シナリオ
> 以下は複数の支援案件をもとに構成した典型的な活用シナリオです。

現状の課題:
– 自社開発のAI検査システムを韓国の取引先に提供している
– 韓国AI基本法の「高影響AI」に該当する可能性があると弁護士から指摘
– 事前影響評価の仕組みとAI利用ログの整備が急務

補助金活用:
人材開発支援助成金: 担当者3名向けのAIガバナンス研修(受講料60万円)→ 45万円助成(助成率75%)
デジタル化・AI導入補助金: AI利用ログ管理ツール導入(導入費200万円)→ 100万円補助(補助率1/2)

合計145万円の補助により、規制対応コストを大幅に圧縮できる。

日本市場だけで事業を行う中小企業が今すべきこと

韓国AI基本法の直接的な適用がなくても、AI規制は国際的に強化される方向にある。今から準備することで、将来のコンプライアンスコストを下げられる。

具体的には以下の3点から始めるとよい:

1. AI利用の棚卸し: 社内でどのAIツールをどの業務に使っているかをリスト化する。これは日本の「AI事業者ガイドライン」でも推奨されている実践だ
2. 高リスク業務の確認: 採用・評価・与信・医療・法的判断などの業務でAIを使っている場合は、人間の関与(ヒューマン・イン・ザ・ループ)の仕組みを整理する
3. 研修の計画化: 人材開発支援助成金を活用したAIリテラシー・ガバナンス研修を年間計画に組み込む

あわせて読みたい:
– [人材開発支援助成金×AI研修 中小企業3社の活用事例](/articles/jinzai-kaihatsu-joseikin-ai-kenshu-case-2026/) — 助成率75%の申請実務を解説
– [デジタル化・AI導入補助金 最終準備チェックリスト](/articles/digital-ai-subsidy-2026-march30-final-checklist/) — 3/30開始前にやるべきこと

参考・出典

– [韓国AI基本法 施行](https://sustainablejapan.jp/2026/01/24/south-korea-ai-act/120958) — Sustainable Japan(参照日: 2026-03-22)
– [韓国AI基本法:アジアにおける包括的AI規制](https://arakiplaw.com/insight/2394/) — 荒木法律事務所(参照日: 2026-03-22)
– [韓国国会で「AI基本法」が議決](https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/01/2b80afa6e6a311b2.html) — ジェトロ(参照日: 2026-03-22)
– [AI事業者ガイドライン](https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20240419_1.pdf) — 経済産業省・総務省(参照日: 2026-03-22)
– [人材開発支援助成金](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html) — 厚生労働省(参照日: 2026-03-22)

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この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。

免責事項

本記事の情報は2026年3月22日時点の各省庁・公表資料に基づく参考情報です。韓国AI基本法の適用範囲・義務内容については専門家(弁護士・法律顧問)にご確認ください。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事の情報に基づく対応の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

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