「AIを導入したいけど、補助金が多すぎてどれに申請すればいいか分からない」——中小企業の経営者や担当者から、この質問を本当によく受けます。
正直に言うと、会社の規模・やりたいこと・書類準備の余裕で最適な制度は変わります。この記事では、今まさに公募中の3つの制度——持続化補助金・デジタル化・AI導入補助金・ものづくり補助金——を「初めて申請する人の目線」で比較します。
あなたの状況に合う制度はこれ
| こんな会社 | おすすめ制度 | 補助上限 | 申請の手間 |
|---|---|---|---|
| 従業員5人以下、まずは低コストでAIを試したい | 持続化補助金 | 50万円(特例で最大250万円) | ★★☆☆☆ |
| AIチャットボットやAI-OCRなどソフトウェアを導入したい | デジタル化・AI導入補助金 | 最大450万円 | ★★★☆☆ |
| AI検品システムなど設備投資を伴う本格導入をしたい | ものづくり補助金(第23次) | 750万〜2,500万円 | ★★★★★ |
それぞれ補助率も採択率もまったく違います。以下で詳しく見ていきましょう。
持続化補助金——小さく始めるならここから
小規模事業者持続化補助金は、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の小規模事業者を対象にした制度です。AI導入に特化した補助金ではありませんが、販路開拓に関連するAIツールの導入にも使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 中小企業庁(商工会議所・商工会が窓口) |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例+赤字事業者は3/4) |
| 補助上限額 | 通常枠50万円 / インボイス特例で+50万円 / 賃金引上げ特例で+150万円(全部盛りで最大250万円) |
| 第19回締切 | 2026年4月30日(木)17:00 |
| 採択率(直近) | 第18回: 48.1% / 第17回: 51.0% |
| 公式サイト | 持続化補助金事務局 |
AI導入で使えるケース
たとえばこんな使い方ができます。
- AIチャットボットを自社サイトに設置して問い合わせ対応を自動化(販路開拓として申請)
- AI搭載のSNS運用ツールで集客を効率化
- AI-OCRで請求書処理を自動化し、営業時間を確保
ただし、「販路開拓や業務効率化につながること」が条件です。「AIを入れてみたい」だけでは通りません。「AIチャットボットで夜間の問い合わせに対応し、月○件の機会損失を回収する」のように、売上との接点を明確にする必要があります。
申請のハードル
3制度の中では最もシンプル。ただし、地元の商工会議所・商工会で「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう必要があり、その受付締切は2026年4月16日と、申請締切より2週間早い点に注意してください。
デジタル化・AI導入補助金——AIソフト導入の本命
旧「IT導入補助金」が2026年度から名称変更した制度です。名前に「AI」が入った通り、AIを含むITツール(ソフトウェア・クラウドサービス)の導入に最も直球な補助金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 通常枠: 1/2以内(最低賃金引上げ特例で2/3以内) |
| 補助上限額 | 通常枠: 1プロセス以上で5万〜150万円未満 / 4プロセス以上で150万〜450万円 |
| 申請開始 | 2026年3月30日(月) |
| 1次締切 | 2026年5月12日(火)17:00 |
| 申請方法 | IT導入支援事業者と共同で申請 |
| 公式サイト | デジタル化・AI導入補助金事務局 |
5つの申請枠、どれを選ぶ?
枠が5つもあるので迷いますが、AI導入なら「通常枠(4プロセス以上)」が第一候補です。
- 通常枠: AIチャットボット、AI-OCR、AI搭載CRM/SFAなど → 最大450万円
- インボイス枠(インボイス対応類型): インボイス対応の会計・受発注ソフト → 最大350万円(小規模は補助率4/5)
- インボイス枠(電子取引類型): 受発注の電子化 → 最大350万円
- セキュリティ対策推進枠: セキュリティサービス → 5万〜150万円
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠: 複数の中小企業が共同で申請
各補助金の枠ごとの詳しい比較はデジタル化・AI導入補助金の全5枠を比較でまとめています。
最大のポイント: IT導入支援事業者との連携
この制度は自分だけで申請できません。事務局に登録された「IT導入支援事業者」と一緒に申請する仕組みです。つまり、先にベンダーを見つける必要があります。ベンダー選びで失敗すると、導入後のサポートが手薄になることも。IT導入支援事業者の選び方はIT導入支援事業者の選び方5ステップも参考にしてください。
ものづくり補助金(第23次)——大規模AI投資の決定打
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。2026年度からは新事業進出補助金との統合が予定されており、第23次は現行制度での公募です。設備投資を伴う本格的なAI導入に向いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 |
| 補助率 | 中小企業: 1/2 / 小規模事業者・再生事業者: 2/3 |
| 補助上限額 | 従業員5人以下: 750万円 / 6〜20人: 1,000万円 / 21〜50人: 1,500万円 / 51人以上: 2,500万円 |
| グローバル枠 | 3,000万円(大幅賃上げ特例で最大4,000万円) |
| 第23次申請期間 | 2026年4月3日〜2026年5月8日(金)17:00 |
| 採択率(直近) | 第21次: 34.1% / 第20次: 33.6% / 第19次: 31.8% |
| 公式サイト | ものづくり補助金総合サイト |
AI導入で活用できる場面
- AI画像認識による自動検品システム(カメラ+ソフトウェア)
- AIによる需要予測・在庫最適化システム
- AI搭載のロボットアームや自動搬送機
単価50万円以上の機械装置・システム構築費が必須という条件があるため、数十万円のSaaSだけでは申請できません。ハードウェアを含む投資が前提です。
3割しか通らない——事業計画書の勝負
採択率は30%台。ぶっちゃけ、3社に2社は落ちます。通る事業計画書には共通点があり、「課題を数字で示し、導入後のKPIをBefore/Afterで明示し、実施体制に説得力がある」ことが条件。補助金申請書の書き方のコツは補助金申請書の書き方完全ガイドで詳しく解説しています。
「書類の手間」で比べるとこうなる
| 項目 | 持続化補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | ものづくり補助金 |
|---|---|---|---|
| 事業計画書の分量 | A4で5〜8枚程度 | 申請フォーム入力(ベンダーと共同作成) | A4で10〜15枚、図表も必要 |
| 申請前に必要な準備 | GビズID+商工会の様式4 | GビズID+IT導入支援事業者の選定 | GビズID+詳細な事業計画策定 |
| 準備期間の目安 | 2〜3週間 | 3〜4週間 | 1〜2ヶ月 |
| 外部の協力 | 商工会・商工会議所 | IT導入支援事業者(必須) | 任意(認定支援機関の活用推奨) |
| 賃上げ要件 | 特例のみ(必須ではない) | 特例のみ(必須ではない) | 年平均3.5%以上の賃上げが必須 |
持続化補助金は「がんばれば自分で書ける」レベル。デジタル化・AI導入補助金はベンダーが申請を手伝ってくれるのでシステム面は楽。ものづくり補助金は正直、初めてだとかなり大変です。
「補助額」と「採択率」で比べるとこうなる
| 制度 | 補助率 | 補助上限額 | 採択率(直近) | AI導入との相性 |
|---|---|---|---|---|
| 持続化補助金 | 2/3 | 50万〜250万円 | 48.1%(第18回) | ★★★☆☆ |
| デジタル化・AI導入補助金 | 1/2〜4/5 | 5万〜450万円 | ※2026年度は初年度 | ★★★★★ |
| ものづくり補助金 | 1/2〜2/3 | 750万〜2,500万円 | 34.1%(第21次) | ★★★★☆ |
補助率だけ見ると持続化補助金の2/3が一番高いですが、上限額が小さい。「少額でもいいから確実に」なら持続化補助金、「本格的なAIソフト導入」ならデジタル化・AI導入補助金、「設備投資込みの大型案件」ならものづくり補助金という棲み分けです。
デジタル化・AI導入補助金は2026年度の新制度のため採択率データがまだありません。ただ、前身のIT導入補助金は例年60〜80%程度と高かった実績があり、比較的通りやすい制度と見られています。
組み合わせて使える?併用のルール
| 組み合わせ | 可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 持続化補助金 + デジタル化・AI導入補助金 | ⭕ 可能 | 同一の経費を両方に計上するのはNG。販路開拓費は持続化、ソフト導入費はデジタル化・AI導入で分ける |
| 持続化補助金 + ものづくり補助金 | ⭕ 可能 | 持続化で広告・販促、ものづくりで設備と棲み分け |
| デジタル化・AI導入補助金 + ものづくり補助金 | ❌ 原則不可 | 同一事業での併用は認められないケースが多い。別事業であれば可能な場合も |
| 国の補助金 + 自治体の補助金 | ⭕ 可能な場合あり | 東京都や大阪府など独自の DX助成金との併用は制度による。東京都のDX補助金6選も参照 |
要するに、同じ経費を二重に申請しなければ併用できるケースは多いです。「AIソフトの導入はデジタル化・AI導入補助金、社員のAI研修は人材開発支援助成金」のように、費目で分けるのが鉄板パターンです。
初めての申請で失敗しやすい3つの落とし穴
落とし穴1: 交付決定前にAIツールを発注してしまう
❌ 採択通知が来た翌日にベンダーと契約してしまう
⭕ 交付決定通知を受け取ってから発注・契約する
「採択」と「交付決定」は別物です。採択されても、交付決定前に支払った経費は1円も補助されません。これは3制度すべてに共通するルールで、初めての方が最もやりがちなミスです。
落とし穴2: GビズIDの取得が間に合わない
❌ 締切1週間前にGビズIDを申請する
⭕ 今すぐGビズIDプライムを申請する(取得に1〜2週間かかる)
3制度すべてでGビズIDプライムが必要です。法人は印鑑証明書の郵送も必要なので、思った以上に時間がかかります。「申請しようと思ったらGビズIDがなくて締切に間に合わなかった」という相談は毎年あります。GビズIDの取得手順はGビズID登録の完全ガイドを参考にしてください。
落とし穴3: 「とりあえずAIを入れたい」で申請書を書く
❌ 「ChatGPTは業務効率化に有効なツールで…」とツールの説明を並べる
⭕ 「月間の顧客対応に120時間かかっており、対応遅延による機会損失が年間○万円」と自社の課題から書く
審査員が見ているのは「なぜこの会社にこのツールが必要か」であって、AIツールのすごさではありません。これはものづくり補助金で特に厳しく見られますが、持続化補助金でも同じです。
今日やるべきこと——制度別のアクションプラン
持続化補助金に申請するなら
- 今すぐ: GビズIDの取得状況を確認。未取得なら即申請
- 4月16日まで: 地元の商工会議所・商工会に相談し、事業支援計画書(様式4)の発行を依頼
- 4月30日まで: 経営計画書+補助事業計画書を完成させて申請
デジタル化・AI導入補助金に申請するなら
- 今すぐ: GビズID+SECURITY ACTION宣言を完了
- 今週中: 導入したいAIツールを扱うIT導入支援事業者を事務局サイトで検索・相談
- 5月12日まで: IT導入支援事業者と共同で申請書を作成・提出
ものづくり補助金に申請するなら
- 今すぐ: GビズIDを確認+認定経営革新等支援機関に相談
- 4月上旬: AI導入の課題・KPI・実施体制を整理した事業計画のドラフト作成
- 5月8日まで: 事業計画書を完成させ、ものづくり補助金総合サイトから電子申請
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。
AI導入の計画策定や、どの補助金が自社に合うか迷っている場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
参考・出典
- デジタル化・AI導入補助金事務局(参照日: 2026-03-22)
- 小規模事業者持続化補助金事務局(参照日: 2026-03-22)
- ものづくり補助金総合サイト(参照日: 2026-03-22)
- ものづくり補助金 第23次公募要領(PDF)(参照日: 2026-03-22)
- 中小企業庁(参照日: 2026-03-22)
免責事項
本記事の情報は2026年3月22日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助金・助成金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。