デジタル化・AI導入補助金

省力化投資補助金カタログ型|賃上げ45円で上限1.5倍

この記事の結論

省力化投資補助金カタログ注文型の賃上げ要件を解説。事業場内最低賃金45円以上の引上げと給与支給総額6%以上の増加で補助上限が最大1.5倍に。第7回公募は7月下旬まで。

補助率1/2。賃上げを達成すれば上限が一気に1.5倍になる

中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は、IoT・ロボットなどの汎用製品をカタログから選んで導入する際に補助率1/2以下で支援を受けられる制度です。実はこの補助金、賃上げを達成すると補助上限額が最大1.5倍に引き上げられる設計になっています。具体的には、事業場内最低賃金を45円以上引き上げ、給与支給総額を6%以上増加させる——この2つの条件をクリアできれば、同じ補助率でも受け取れる上限額が跳ね上がります。

難しそうに聞こえるかもしれませんが、要するに社員の待遇を良くする会社には国がより手厚く支援するという話。人手不足に悩む中小企業にとって、省力化投資と賃上げをセットで進める絶好のチャンスです。

省力化投資補助金の全体像を知りたい方は、省力化投資補助金 完全ガイドで制度の基本を確認してから読むと理解が深まります。

カタログ注文型の補助上限額——賃上げの有無でここまで変わる

カタログ注文型の補助上限は、従業員数によって3段階に設定されています。賃上げ達成の有無で比較すると、以下の通りです。

従業員数 補助率 通常の上限額 賃上げ達成時の上限額
5人以下 1/2以下 200万円 300万円(1.5倍)
6〜20人 1/2以下 500万円 750万円(1.5倍)
21人以上 1/2以下 1,000万円 1,500万円(1.5倍)

どの規模でも賃上げを達成すれば上限が一律1.5倍です。従業員10人の会社なら500万円→750万円と250万円も上乗せ。導入したい省力化製品の価格が上限ギリギリのケースでは、賃上げ要件を満たせるかどうかが申請の成否を分けます。

賃上げ達成と認められる2つの条件

公募要領(2026年6月5日公表)によると、補助上限の引き上げを受けるには、以下の2つを補助事業期間終了時点で両方達成する必要があります。

条件1:事業場内最低賃金を45円以上引き上げる

申請時に自社の事業場内最低賃金を確認し、そこから45円以上アップすることが求められます。たとえば時給1,050円が最低賃金の会社なら、1,095円以上への引き上げが必要です。

「45円」という数字を見て「意外と少ない」と感じた方もいるでしょう。ポイントは「事業場内最低賃金」が基準になること。都道府県の法定最低賃金ではなく、実際に自社で最も低い時給の社員の賃金です。アルバイトやパートを含めた全従業員の最低額を必ず確認してください。

条件2:給与支給総額を6%以上増加させる

会社全体の給与支給総額を、申請時と比較して6%以上引き上げること。単に最低賃金だけを上げても、他の社員の給与が据え置きでは総額が6%に届かない可能性があります。

計算式:(補助事業期間終了時の給与支給総額)÷(申請時の給与支給総額)≧ 1.06

給与支給総額には役員報酬は含まれません。あくまで従業員の給与・賞与・手当等が対象です。

申請前に押さえるべき3つの前提

1. 販売事業者との共同申請が必須

カタログ注文型の最大の特徴は、中小企業だけで申請するのではなく、製品を販売する「販売事業者」と共同で申請することです。販売事業者は事前に事務局に登録された事業者である必要があり、申請手続きや事業実施のサポートも担います。まずはカタログから導入したい製品を選び、その製品を取り扱う販売事業者に連絡を取りましょう。

2. GビズIDプライムアカウントの取得

電子申請システム「jGrants」を利用するにはGビズIDプライムアカウントが必要です。法人の場合は印鑑証明書の準備も必要で、取得には1〜2週間ほどかかります。まだの方は今すぐ手続きを。

3. 労働生産性CAGR 3.0%以上が必須

賃上げ要件とは別に、すべての申請事業者に課されるのが労働生産性の年平均成長率(CAGR)3.0%以上の目標です。補助事業終了後3年間、毎年の効果報告で達成状況を確認されます。労働生産性は「付加価値額 ÷ 従業員数」で計算し、付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」です。現実的な数値目標を事業計画書に落とし込みましょう。

賃上げ達成で受け取れる金額をシミュレーション

具体的にいくら変わるのか、従業員数別のモデルケースで見てみましょう。

モデルケース 製品導入費用 通常の補助額 賃上げ達成時の補助額 差額
従業員4人の飲食店、配膳ロボット導入 500万円 200万円(上限) 250万円 +50万円
従業員12人の製造業、AI検品システム 1,200万円 500万円(上限) 600万円 +100万円
従業員30人の物流業、自動仕分けシステム 2,500万円 1,000万円(上限) 1,250万円 +250万円

いずれも補助率1/2での計算です。上限額に達しない小規模な導入では賃上げ達成の有無で補助額は変わりませんが、まとまった投資をする企業ほど賃上げ達成の恩恵が大きくなる仕組みです。

公募スケジュール——第7回の締切は7月下旬

項目 内容
制度名 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
所管 経済産業省・中小企業庁/中小企業基盤整備機構
公募回 第7回
公募要領公開 2026年6月5日(金)
公募期間 2026年6月5日〜7月下旬(予定)
申請ポータル受付 7月上旬開始予定
申請方法 jGrants(電子申請)

受付は7月上旬開始予定。公募要領や様式はすでに公開されているので、受付開始前に書類を完成させておきましょう。過去の公募回で応募申請中・交付申請中の事業者は今回応募できません。

申請から補助金受取りまでの7ステップ

Step 1:カタログから製品を選ぶ(所要1〜2週間)

公式サイトのカタログから自社の業務課題に合った製品を選定します。製品カテゴリは清掃ロボット、配膳ロボット、自動チェックインシステム、AI-OCRなど多岐にわたります。カタログに掲載されていない製品は対象外なので、まず対象製品の探し方と選定ポイントを参考に候補を絞りましょう。

Step 2:GビズIDプライムを取得する(所要1〜2週間)

未取得の場合は並行してGビズIDプライムの取得手続きを進めます。

Step 3:事業計画書を作成する(所要2〜4週間)

販売事業者と協力して事業計画書を作成します。賃上げ達成を目指す場合は①事業場内最低賃金を45円以上引き上げる計画②給与支給総額を6%以上増加させる計画の両方を明記してください。また労働生産性CAGR 3.0%目標についても、導入後の付加価値額と従業員数の推移をシミュレーションして記載します。

Step 4:jGrantsで電子申請する

申請ポータルの受付開始後、jGrantsから販売事業者と共同で電子申請します。

Step 5:採択通知→交付決定→発注・契約

審査を経て採択通知を受け取った後、交付申請→交付決定通知を受領してから発注・契約します。交付決定前の発注は補助対象外です。

Step 6:補助事業の実施と実績報告

計画に沿って製品を導入し、実績報告書を提出。賃上げ達成を申告する場合は、事業場内最低賃金の改定と給与支給総額の増加を証明する書類(賃金台帳など)が必要です。

Step 7:確定検査と補助金の受取り

事務局の確定検査を経て補助金額が確定。賃上げが達成されていれば引き上げ後の上限額が適用されます。

よくある不備と対策

❌ 交付決定前に発注・契約してしまう

⭕ 採択通知≠交付決定。交付決定通知を正式に受領してから発注する。

審査に通って採択通知が来ると「もう大丈夫」と思いがちですが、採択後に交付申請→交付決定のステップがあります。交付決定前の発注は補助対象外。数百万円が無駄になるケースもあるので要注意です。

❌ 賃上げ計画が「最低賃金の引上げ」だけ

⭕ 給与支給総額6%増も必ず盛り込む。一時金やベースアップの計画も具体的に。

45円の最低賃金引上げだけでは給与支給総額6%増に届かないケースがほとんど。全社員を対象にした賃上げ計画を事業計画書に明記しましょう。

❌ 販売事業者に任せきりで自社の計画になっていない

⭕ 申請者は中小企業自身。販売事業者はサポート役。事業計画の主語は自社に。

「言われるままにハンコを押した」状態では、審査委員に事業への本気度が伝わりません。自社の課題と期待する効果を自分の言葉で書きましょう。

❌ 労働生産性の計算を間違える

⭕ 付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費。公募要領の式をそのまま使う。

労働生産性の定義を誤ると事業計画全体の根拠が崩れます。公募要領記載の定義と計算式を忠実に適用してください。

❌ 効果報告の義務を軽く見ている

⭕ 補助事業終了後3年間の効果報告は法的義務。怠ると補助金返還要請のリスクがある。

補助金を受け取って終わりではありません。事業終了後も3年間、毎年1回の効果報告が必須で、労働生産性CAGR 3.0%の達成状況と賃上げの継続状況を報告する必要があります。報告を怠った場合や虚偽報告が発覚した場合、補助金適正化法に基づき返還を求められることがあります。「申請して補助金を受け取ったら終わり」という認識は危険です。

カタログ掲載製品の具体例——自社に合うカテゴリを見つけよう

カタログ注文型の最大の利点は、製品カテゴリと販売事業者が事前に審査・登録されていること。申請者は「どの製品が補助対象か」で悩む必要がありません。2026年6月時点で登録されている主な製品カテゴリと、賃上げとの相性を見てみましょう。

製品カテゴリ 主な業種 価格帯の目安 賃上げとの相性
配膳・運搬ロボット 飲食業、宿泊業、病院 200万〜800万円 ★高い(慢性的な人手不足業種で賃上げ効果が大きい)
清掃ロボット ビルメンテナンス、宿泊業、商業施設 150万〜500万円 ★高い(夜間清掃からのシフトで従業員の待遇改善に直結)
自動チェックイン機 宿泊業、医療機関 300万〜1,000万円 ★中程度(フロント業務削減→接客品質向上への再配置が可能)
AI-OCR・帳票処理 全業種(間接部門) 100万〜400万円 ★中程度(残業削減→賃上げ原資の捻出に貢献)
自動倉庫・ピッキングシステム 製造業、物流業、小売業 500万〜2,000万円 ★非常に高い(重筋作業からの解放+生産性向上の両立)

とくに飲食業・宿泊業・物流業のように慢性的な人手不足に悩む業種では、省力化製品の導入→残業削減→浮いた原資を賃上げに回すという好循環が作りやすいです。製品カテゴリは随時追加されているため、最新情報は公式カタログで確認してください。

カタログ注文型と一般型——賃上げ要件の違いを知っておく

省力化投資補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2類型がありますが、賃上げ条件と補助上限の構造が大きく異なります。

項目 カタログ注文型 一般型
補助率 1/2以下 1/2以下(中小企業)
最大補助上限 1,500万円(21人以上・賃上げ達成時) 1億円(大幅賃上げ・大規模投資枠)
賃上げ条件 最低賃金45円以上+給与総額6%以上 最低賃金45円以上+給与総額6%以上
申請方式 販売事業者と共同申請 自社で申請(専門家支援可)
対象 カタログ掲載の汎用製品 個別現場に合わせた設備・システム
審査の難易度 比較的簡易(書類が定型化) 高(事業計画の独自性が問われる)

賃上げ要件そのものは両類型とも「45円+6%」で共通です。つまり、カタログ注文型でも一般型でも、賃上げ達成のハードルは同じ。違いは申請の手軽さと上限額のスケール感にあります。少人数の会社が手軽に始めたいならカタログ注文型、大型の設備投資を検討しているなら一般型という住み分けです。

賃上げ計画を成功させる実務ポイント

ぶっちゃけ「45円・6%」という数字だけ見ると簡単そうに思えますが、実際には細かな落とし穴があります。

時給制の従業員が多い場合:45円の引上げは時給1,080円なら4.2%のアップですが、時給1,500円なら3%。給与総額6%増を達成するには、時給引上げだけでは足りないことが多いため、賞与の増額や新たな手当の創設を検討する必要があります。

月給制の従業員が多い場合:事業場内最低賃金は時給換算します。月給者については「月給÷月平均所定労働時間」で時給を算出し、その最低額を45円以上引き上げる必要があります。

注意すべき制限:販売事業者から補助事業者への実質的な還元(ポイント・クーポン等による購入額の減額)は禁止されています。これが発覚した場合、交付決定の取消しや事業者名の公表といった厳しい措置が取られます。

よくある質問

Q. 賃上げ達成できるか自信がなくても、通常の上限額で申請できますか?

はい、可能です。賃上げ達成はあくまで上限引上げの条件であり、必須ではありません。賃上げ計画を盛り込まずに通常の上限額(200万円〜1,000万円)で申請することもできます。ただし、補助上限に余裕がある場合は、賃上げ計画を入れておいて損はありません。実績報告時に達成していなければ通常上限が適用されるだけで、採択が取り消されるわけではないからです。

Q. 最低賃金引上げの対象はアルバイト・パートも含まれますか?

含まれます。「事業場内最低賃金」とは、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態を問わず、その事業場で働くすべての労働者のうち最も低い賃金を指します。週20時間未満の短時間労働者も対象です。ただし、役員や個人事業主本人は含まれません。

Q. 第7回公募に落ちたら次はいつですか?

第8回の公募スケジュールは現時点で未発表です。過去のサイクルから推測すると、第7回の締切(7月下旬)から2〜3ヶ月後の秋頃に第8回の公募が開始される可能性が高いです。ですが確定情報ではないため、第7回での申請を前提に準備を進めることをお勧めします。

Q. カタログ注文型の製品はどこで確認できますか?

公式サイトの「カタログ注文型トップ」ページから製品カタログを閲覧できます。製品カテゴリごとに分類されており、清掃ロボット、配膳・運搬ロボット、券売機・自動チェックイン機、AI-OCR、自動倉庫システムなど、現場の人手不足を直接解決する製品が中心です。

Q. 効果報告はいつまで続ける必要がありますか?

補助事業終了後3年間、毎年1回の効果報告が義務付けられています。報告内容は労働生産性の推移と賃上げの達成状況です。3回目の報告までに労働生産性CAGR 3.0%の達成が求められ、未達成の場合は改善計画の提出が必要になることがあります。効果報告を怠ったり虚偽の報告をした場合、補助金の返還を求められる可能性があるため注意が必要です。

今すぐ始める3つのアクション

1. 今日中に:GビズIDプライムの取得状況を確認。未取得ならすぐに申請手続きを(GビズID公式サイト

2. 今週中に:公式カタログをチェックし、自社の課題を解決できる省力化製品の候補を3つに絞り込む

3. 来週中に:候補製品の販売事業者に連絡し、共同申請の可否と賃上げ計画の擦り合わせを始める

申請ポータルの受付は7月上旬開始予定。GビズID取得と販売事業者との調整は時間がかかるため、今すぐ動き出すのが賢い選択です。

AI導入やDX投資の計画策定について専門的なアドバイスが必要な場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。


執筆:株式会社Uravation 補助金ナビ編集部
監修:佐藤 傑(株式会社Uravation 代表取締役)

100社以上のAI研修・導入支援実績をもとに、中小企業のAI活用と補助金申請をサポートしています。


免責事項

本記事の情報は2026年6月17日時点の中小企業省力化投資補助金 第7回公募要領(独立行政法人中小企業基盤整備機構)に基づく参考情報です。補助金の制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。

参考・出典

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