省力化投資補助金のカタログ注文型は「製品カタログから選んで申請するだけ」と聞くと簡単そうに見えるが、実際にカタログを開くと製品数が多すぎて何を選べばよいか分からなくなる経営者が後を絶たない。
この記事では飲食・製造・サービスという3つの業種を取り上げ、それぞれで実際にどの製品カテゴリが使われているか、補助金を活用するといくらになるかを、事例シナリオ形式で具体的に整理する。カタログの「探し方の手順」が知りたい場合は省力化投資補助金カタログ型|対象製品の探し方と選定ポイントを参照してほしい。この記事は「自社の業種に近い事例から製品のイメージをつかむ」目的に特化している。
省力化投資補助金(カタログ注文型)2026年3月改定後の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業省力化投資補助金〈カタログ注文型〉 |
| 所管 | 経済産業省 中小企業庁 |
| 補助率 | 1/2(購入価格の50%) |
| 補助上限額(従業員5名以下) | 500万円(賃上げ達成時750万円) |
| 補助上限額(従業員6〜20名) | 750万円(賃上げ達成時1,000万円) |
| 補助上限額(従業員21名以上) | 1,000万円(賃上げ達成時1,500万円) |
| 申請受付期間 | 随時受付(2027年3月末頃まで延長) |
| 申請方法 | 販売事業者と共同で申請(電子申請) |
| 公式サイト | 中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型(中小企業基盤整備機構) |
※ 2026年3月19日の制度改定で補助上限額が引き上げられました(従業員5名以下:200万円 → 500万円など)。また申請受付期間が2027年3月末頃まで延長されました。最新情報は公式サイトでご確認ください。
各補助金の制度比較と使い分けはAI導入に使える補助金5選 徹底比較でも整理しているので参考にしてほしい。
カタログ製品の主なジャンル — 5つの大カテゴリ
カタログ製品は大きく以下の5つのカテゴリに分類されている。業種に関係なく、まずどのカテゴリが自社の課題に近いかを確認するのが第一歩だ。
| カテゴリ | 代表的な製品 | 省力化できる作業 |
|---|---|---|
| 飲食・店舗向け | 券売機、自動精算機、配膳ロボット、セルフレジ | 注文受付、会計、料理の運搬 |
| 搬送・物流向け | 無人搬送車(AGV・AMR)、コンベアシステム | 工場・倉庫内の資材搬送、ピッキング |
| 製造業向け | 産業用ロボット、協働ロボット、自動加工機 | 組立、溶接、検品、仕分け |
| IT・IoT活用 | 勤怠管理システム、センサー連携システム | 間接業務の削減、設備稼働の見える化 |
| サービス業向け | 清掃ロボット、自動チェックイン機、受付ロボット | 清掃、ホテル受付、医療・介護の受付業務 |
事例1: 飲食業(従業員12名・ラーメン店チェーン) — 配膳ロボット導入
事例区分: 想定シナリオ
以下は100社以上の省力化投資補助金支援経験をもとに構成した典型的な活用シナリオです。
背景と課題
関東圏に3店舗を展開するラーメン店チェーン。コロナ禍以降のアルバイト採用難が続き、土日のピーク時に常時2〜3名の不足が発生していた。料理の運搬(ホール担当の往来)で1日あたり約4時間の人件費が消えており、これを機械に任せたいと考えていた。
選んだカタログ製品と補助金額の計算
- 製品カテゴリ: 飲食・店舗向け/配膳ロボット
- 製品例: Keenon Robotics 配膳ロボット T5(1台)
- 購入費用(目安): 1台あたり100〜150万円(機種・リース条件によって異なる)
- 補助率: 1/2
- 受け取れる補助金(試算): 購入費100万円 × 1/2 = 50万円
- 補助上限(従業員6〜20名): 750万円(賃上げ達成時1,000万円)のため上限余裕あり
申請で押さえたポイント
カタログ型の事業計画書では「どの作業が何時間削減されるか」を具体的に示すことが評価される。このシナリオでは「ホール業務の移動距離:1日あたり推計12km → 3kmに削減、スタッフの実働時間:4時間/日削減」という数字を事業計画に記載した。
また、配膳ロボットの販売事業者がカタログ注文型の申請手続きに対応しているかを事前確認した(対応事業者でないと共同申請ができない)。
導入後の変化(6ヶ月後)
- ピーク時の人件費削減: 月20〜30万円相当
- スタッフの定着率向上(「体力的に楽になった」という声)
- 料理提供スピード向上による客回転率の改善
事例2: 製造業(従業員35名・金属部品加工) — AGV(無人搬送車)導入
事例区分: 想定シナリオ
以下は100社以上の省力化投資補助金支援経験をもとに構成した典型的な活用シナリオです。
背景と課題
金属部品加工メーカー。ライン間の資材搬送を作業員が台車で往復する作業に、1日あたり延べ6名・計15時間を投入していた。搬送専任者を置くほどではないが、加工作業の主担当者が搬送を兼任することで生産量が伸びない状態が続いていた。
選んだカタログ製品と補助金額の計算
- 製品カテゴリ: 搬送・物流向け/無人搬送車(AGV・AMR)
- 製品例: 工場内自律移動型搬送ロボット(AMR)1台
- 購入費用(目安): 200〜400万円(走行距離・ペイロードによって変動)
- 補助率: 1/2
- 受け取れる補助金(試算): 購入費300万円 × 1/2 = 150万円
- 補助上限(従業員21名以上): 1,000万円(賃上げ達成時1,500万円)のため上限余裕あり
申請で押さえたポイント
搬送ロボットは「どのルートを何往復するか」「どの材料を何kg搬送するか」が定量化しやすい製品だ。このシナリオでは「現在:作業員6名×2.5時間 = 15時間/日の搬送工数 → 導入後:1時間/日(AMR監視のみ)に削減」という計画を立てた。
賃上げ計画も事業計画書に含める必要がある(給与支給総額6%以上増加・事業場内最低賃金3%以上増加)。補助上限を通常の1,000万円から1,500万円に引き上げる賃上げ加算を狙うかどうか、資金計画と合わせて検討した。
導入後の変化(6ヶ月後)
- 搬送工数:月300時間以上の削減
- 加工担当者の集中時間増加 → 不良品率の低下
- 夜間・週末の自動搬送が可能になり、稼働時間が実質延長
事例3: サービス業(従業員8名・ビジネスホテル) — 清掃ロボット導入
事例区分: 想定シナリオ
以下は100社以上の省力化投資補助金支援経験をもとに構成した典型的な活用シナリオです。
背景と課題
ビジネスホテル(客室数60室)。清掃スタッフの確保が年々難しくなり、週末の繁忙期に外部の清掃業者に依頼する費用が嵩んでいた。廊下・ロビーの日常清掃(1日1〜2時間)をロボットに任せることで、スタッフを客室清掃に集中させたいという課題感があった。
選んだカタログ製品と補助金額の計算
- 製品カテゴリ: サービス業向け/清掃ロボット
- 製品例: 業務用自律走行清掃ロボット(床面積1,000m2対応)1台
- 購入費用(目安): 100〜200万円(機種によって異なる)
- 補助率: 1/2
- 受け取れる補助金(試算): 購入費150万円 × 1/2 = 75万円
- 補助上限(従業員5名以下の場合): 200万円(賃上げ達成時300万円)
注意点として、従業員8名であれば「6〜20名」区分(補助上限750万円)に該当するため、複数台の導入や他の製品との組み合わせも検討できる余地がある。
申請で押さえたポイント
サービス業の清掃ロボットは「清掃工数の削減 → 他の業務への転用」という事業計画が評価されやすい。「廊下・ロビー清掃(1日1.5時間)をロボットに移管 → スタッフの客室清掃対応件数を月20件増加」という計画を立てた。
導入後の変化(6ヶ月後)
- 廊下・ロビーの清掃時間:1日1.5時間 → 0.3時間(監視・補充のみ)
- スタッフが客室清掃に集中できるようになり、外部委託費を月10万円削減
- 清掃品質の均一化(深夜の自動巡回清掃が可能に)
カタログ型で申請する際の注意点 3つ
注意1: 販売事業者が「登録販売事業者」であること
❌ 気に入った製品を見つけても、その販売事業者が省力化投資補助金の登録販売事業者でなければ共同申請できない
⭕ 公式カタログに掲載されている製品は登録販売事業者とセットになっているため、カタログから選んだ製品の販売事業者に直接問い合わせると申請サポートを受けられる
注意2: 補助上限額が2026年3月19日から引き下げられた
❌「200万円まで補助が出る(従業員5名以下)」という2026年3月19日改定前の情報を参照して計画を立てる
⭕ 2026年3月19日以降の申請は「従業員5名以下:上限500万円(賃上げ達成時750万円)」に引き上げられている。改定前(3月18日17:00以前)の申請には旧条件(200万円)が適用されるため、申請日を確認すること
注意3: 事業計画書にも賃上げ計画の記載が必要
❌「カタログから選ぶだけで採択される」と思って事業計画書を簡略化する
⭕ 労働生産性の向上(補助事業終了後3年間で年平均3.0%以上)と賃上げ計画(給与支給総額6%以上増加)の両方を事業計画書に明記することが要件。この点を甘く見ると審査で落とされる
業種で迷ったときの製品カテゴリ選定フロー
自社の業種に合うカテゴリが分からない場合は、以下の手順で絞り込むと効率がよい。
- 「一番時間がかかっている作業」を1つ挙げる — 搬送・清掃・会計・受付・検品など
- その作業をカタログの製品カテゴリと照合する — 公式サイトの「業種×業務プロセス」フィルタが有効
- 該当カテゴリの販売事業者に問い合わせる — 製品の仕様・価格・納期・共同申請の対応可否を確認
- 補助金額を試算して事業計画を作成する — 購入費 × 1/2 が補助金額。補助上限を超える場合は複数回申請も可能
製品の探し方・検索方法の詳細手順は省力化投資補助金カタログ型|対象製品の探し方と選定ポイントで丁寧に解説している。
3業種の事例から見えるカタログ型活用の共通点
飲食・製造・サービスの3事例に共通しているのは、「特定の作業に集中している人手不足コスト」を省力化製品で代替することで、採択された後の実質コスト削減効果が明確だという点だ。
カタログ型の強みは審査の難易度が相対的に低く、随時受付のため締切を気にせず申請できること。一般型(最大1億円)ほど金額は大きくないが、小規模な省力化投資を早期に実現したい企業にとっては使いやすい制度だ。
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参考・出典
- 中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型 公式サイト — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-04-11)
- カタログ注文型とは|中小企業省力化投資補助金 — 中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-04-11)
- 中小企業庁担当者に聞く「中小企業省力化投資補助金〔カタログ注文型〕」 — 経済産業省 中小企業庁(参照日: 2026-04-11)
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)公募要領 — 中小企業庁(参照日: 2026-04-11)
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免責事項
本記事の情報は2026年4月11日時点の各省庁・事務局の公表資料に基づく参考情報です。補助率・補助上限額・申請要件は2026年3月19日の制度改定後の内容に基づいていますが、制度内容は予告なく変更される場合があります。申請にあたっては、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。本記事の事例シナリオは実際の採択事例ではなく、支援経験をもとにした想定シナリオです。本記事の情報に基づく申請の結果について、当サイトは一切の責任を負いません。
この記事は補助金ナビ編集部がお届けしました。